東大英語 第4問A(英文法正誤)2022年実況中継

東大4A正誤問題というと、多くの東大受験生が「捨て問」にされています。
ですが、高得点合格者の多くは、この4Aに割り当てられている10点をきっちり取りに行っています。
苦手意識を持たれる方が多いのは、きちんとした対策を取っていないからです。

4Aは文法問題だと称されることが多いと思いますが、私は英作文+読解問題だと考えています。
英作文の解説記事でも申し上げるつもりですが、短時間で「正確な」英文を書くためには、英文の「点検項目」を明確化し、日頃から自分が書いた英文をチェックしているかが合格ポイントになります。

実のところ、4A正誤問題は、そうした英作文における「点検項目」の延長線上に位置しています。

また、1B文挿入で大意をスピーディーに把握する訓練を積んでいる方にとって、4Aの長文量は3〜4分で処理できるものであり、さほど労することなく得点できるサービス問題になっています(ただし、直近数年の4A長文はだいぶ歯ごたえのあるものになっています)。
4Aに極度の苦手意識を持たれている方は、1Bや2といった他の設問でも苦戦されている可能性もあるのです。
とはいえ、ただ単に分析力を上げてくださいね、総合力を上げてくださいねというアドバイスでは、ただでさえ時間が足りない受験生には酷でしょうから、本解説では、高得点合格者の目の付け所について詳述したいと思います。

【東大正誤の鉄則】4Aを捨て問にしようか悩んでいる、そこのあなた!実はコツがありますよ!

  • 3つ取れ!
    3問はスピーディーに取れる問題があります。
    難易度順に並んでいるわけではありませんから、過去問分析から目の付け所をテンプレ化してください。
    人間が解ける問題なら、あなたにも解けます。
  • 修正箇所は意外にシンプルだから過度に怯えるな!
    正しい英語長文が元々あって、それを東大教授がちょこっといじっているだけですから、私大のように正誤問題のためだけに無理して作られた短文とは異なり、シンプルに解けることが圧倒的に多いのです。
  • 文章自体は面白い
    正誤問題として解くだけではなく、ぜひ多読用にも活用してみてください。
    言語学のスペシャリストが作成されている東大英語は、全大問余すとこなく活用しましょう。
    言語関連の文章も多く、長文からエッセンスを吸収した受験生には、2020年に話題となった「言語が人を操るのか、人が言語を操るのか」という英作文問題の書くネタも思い付きやすかったかもしれません。

【2022-4A所感】今年の4Aは一段と歯ごたえのある文章が出されましたが、実は意外にも・・

2022年度入試は、多くの大問で東大側が本気を出した年でありました。
共通テスト数学の超難化にはじまり、二次試験でも全教科えげつない問題が出題されましたので合格最低点が数十点落ちた伝説の年だとも言われています。

東大足切りライン考察に役立つデータ集

4Aも例外ではありません。
近年、抽象度の高い長文が出されるようになった4Aにあって、2022年度の問題は群を抜いてレベルが高かったと言えます。
ただ、それでもやはり高得点合格者は4Aでもきっちり点数を取ってきています。
その理由は、目の付け所が他の受験生と違うからです。
本稿を通じて、ぜひ、その極意をマスターしてください。併せて、2023年度4A実況中継解説を参照すると学びが大きいことでしょう。

東大英語 第4問A(英文法正誤)制覇の極意(2023年実況中継)

それでは、設問(21)〜(25)の5つの問題を前にして、高得点合格者達はどのような思考プロセスで解いていったのか実況中継風に解説していきたいと思います!

【設問別実況中継】設問の解説だけに終わらない! しっかり学んで4Aを得意にしよう!

設問(21)文意(語法)本年度の4A最難関の設問がいきなり!?

誤った選択肢は(c)

A government that generates a disaster like this may have (b)some chance of escaping public anger if the news of (c)it is to be effectively suppressed, so that it doesn’t have to face criticism of its policy failure.

本問は、2022年度4Aで最も難しい設問であった。
一読したときに、明らかな間違いが見つけられなかった一問である。

だが、下線(c)には「こんな構文あったっけ?」と強烈な違和感を覚えたことは間違いない。
まず、下線(c)を含んだ一文を精査してみるとしよう。

すると、この下線部(c)はif節の中に入っていることがわかる。
ifとbe to構文がセットで出てくるフレーズと言えば、教科書レベルでは「if it were to〜」で始まる、話者が実際に起こりえないと考える未来の想定で用いる構文くらいではないだろうか。
当然、if内が現実に起こりえない話をしているのだから、帰結節(if節に対する主節のこと)も現実的に起こりえないと話者が考える話が書かれているはずだ。

さて、話を下線部(c)に移すとしよう。
仮に[if it were to]構文を用いようとしているのなら、be to構文がwere toになっていないことにも違和感を覚える。
また、帰結節の主たる動詞ががmay haveとなっていることからもif it were to構文の話ではないと判断した。
となると、このto beはいったい何のためにあるのだろうかと疑問に思った。
モヤモヤした気持ちを抱えながら、敢えて視点を変えて他の下線部を確認することにした。

下線部(e)では意味深にbeが書かれていて、ここに食いついた受験生ももしかしたらいたかもしれない。
だが、demandやrequireやinsistやsuggestといった要求提案系の動詞のあとのthat節には、見えないshouldの効力が働き動詞が必ず原形になるということは教科書レベルの知識である。
TOEICなどでも頻出であり、天下の東大受験生がこんなところで引っ掛かってはいけない。

下線部(a)や(b)も特に下線部(c)で感じたような謎の違和感を覚えない。
消去法からみてもやはり、下線部(c)なのだ。
私が受験生なら、このモヤモヤした直感を信じて選択肢(c)を選んだことだろう。
もう少し詳しく説明するなら、このbe to構文を入れることでいったい何を表現できているのかが文脈上理解できなかったのである。
つまり余事記載と言え、削除をした。
こうした余事記載パターンは、余計な前置詞を付け足して自動詞/他動詞の判別が出来ているかを試す設問(たとえば、2021年設問(25)、2017年(21)など)で散見されるが、今回のようなbe to構文の余計な付け足しパターンは記憶の限り東大4Aでは初めてのことのように思われる。

なお、本文全体を熟読すべきかは人により判断が分かれるところではあるが、少なくとも下線を含む一文はちゃんと読むべきであろう。
殊に、2022年4Aの長文は、おそらくこの年の英語長文の中で最も読みづらい部類の文章だった。
このレベルの文章をすらすら読める受験生にとっては、1Bや4Bや5の長文は赤子の手をひねるくらい簡単に思われたであろう。

逆に、1Bや4Bや5の長文で苦戦したり共通テストの英語R程度の長文で手こずったりする受験生は4Aの長文すべてを読み込むよりも、下線部における目の付け所を学んでサクッと解答することを心がけた方が残り時間や他教科とのバランスを考えた時に現実的かもしれない。

以上、ざっと書いてみたが、この空所(21)は、2022年度の4Aの中では、最も気付きづらい選択肢であったため、本番で出くわした場合、一旦、別の選択肢を先に吟味する駆け引きも重要である。
冷静さを維持できた人が、東大英語で勝利できることを肝に銘じなければならない。
ちなみに、2023年4A(21)も難易度が高かった。
最初の設問に難問を投下して受験生の冷静な思考を奪おうとするのが、近年の東大英語部会の戦略なのかもしれない。
やはり、こうした時ほど、冷静に、取れる問題から、キッチリ得点していくことを心がけたい。時間制約の厳しい東大英語だからこそ、「1分で1点を稼ぐ」スタンスを貫かれたい。

設問(22)前置詞 ちょっといやらしい問題だけれども、意外に正答率は高い!

誤った選択肢は(e)

Though, incidentally, are not Mill’s exact words, but those of Walter Bagehot ー though Mill (e)had made→done the done most for the idea to be understood.

東大4A頻出の前置詞が正誤判断の要となった設問である。前置詞は実に奥が深く、2000ページ級の前置詞辞典も存在している程である。だが、そのような本を読まずとも、東大4Aは制覇できる。前置詞が入試で問われる切り口は後述するところであるが、本問で何よりも大切なことは、

・前置詞は動詞に付随した熟語の一部としての働くケース

・単独で機能するケース

・to不定詞における意味上の主語を導くために機能するケース

など、いくつかの役割を前置詞が文中で担っているという事実である。

本問であれば、make the most for〜なんていう熟語を聞いたことがないから、直感的にこの下線部(e)が間違いなのではないかと選んだ合格者も多くいた。
make the most of〜で「〜を最大限生かす」を意味することを知っている熟語力がある受験生にできる力技であるが、たいした語彙力のない受験生には、そうした直感も働かない。

では、どうしようもないかというと、そんなことはない。
このforが、すぐ後ろの不定詞to be understoodの意味上の主語を表すforとしての役割を担っていることを文法的に気付けたなら、「had made the most」と「for the idea to be understood」でゾーンが分かれることになり、had made the mostがいったい何を表すのか文脈的にも不明瞭となってしまうよなと判断することもできたであろう。
この下線部(e)を通じて、東大側は前置詞は動詞の熟語表現の一部とは限らないんだよ、いくつもの役割を文中で担っているんだよ、そうしたことを意識した英語学習を心がけてくださいねと受験生に問いかけているように思えた。

さて、上述した前置詞が入試で問われる切り口の代表例を2つほどご紹介したい。

  • 動詞や形容詞とセットで使われる熟語知識としての前置詞

→たとえば、lookという基本動詞は、look atやlook forやlook intoなど、様々な前置詞とコラボして熟語を形作っている。
これらを丸暗記せずとも、前置詞の原義と組み合わせれば暗記量はググッと減る
atなのかforなのかで意味が変わるケースでは、文章をちゃんと読んでいないと正誤判断はできない。

動詞関連では、他動詞か自動詞かの区別が重要であると2023年度設問(21)の解説でも述べたが、そうした知識を前置詞を使って確かめさせる問題もよく出る。
たとえば、discuss about environmental problemsといった文を見かけた時に、直ちにdiscussは前置詞のチカラを借りずとも目的語を持ってこれる一人前の動詞(=他動詞)だから、aboutが不要と判断できることが大事なのだ。
その一方、be interested inやbe satisfied withのように熟語(連語)として丸暗記しないと正解できない前置詞知識もある。
なお、差がつきやすい英熟語については、敬天塾の公式LINEに登録した方にもれなくプレゼントしているので、そちらもぜひご活用いただきたい。

  • 前置詞単独の原義

最近では、前置詞を漫画で学べる書籍が多く刊行されるようになった。
一昔前までは、前置詞の原義をテキトーに説明いた学校や塾が多かった。
原義とは何かというと、たとえば、Our family lived through the civil war.という文があったとする。
live throughなどという熟語は市販参考書には載っていない。
ここで登場するのがthroughの原義(核となる意味)なのだ。
throughはトンネルを貫通するイメージが強い前置詞である。
なので、内戦(the civil war)という名のトンネルを突っ切ったというイメージが生まれ、「私達の家族は内戦を生き延びた」と訳されることになる。
なお、前置詞の用法が単独で問われるものの代表格に附帯状況のwithがある。4Bや5(2023年度の第5問空所(28)でも問われた)でも頻出なので用例をしっかりと押さえておきたい。

設問(23)名詞 これは瞬殺で正誤判断して欲しかった! 典型パターンです!

誤った選択肢は(b)

Public reasoning in pursuit of better decision-making (a)has been used not just in the post-Enlightenment Western world, but (b)in other societies and at other time→times, too.

本問は、できれば瞬殺で片付けたかった一問である。
文脈から言えば、他の複数の社会や他の複数の「時代」と捉えるべきだから、timesとすべきだと説明されることが多い。
だが、これだけでは何の学習効果もない。
timeという名詞を目にしたとき、「反射的に」複数形だと意味が変わる名詞の代表格だなと思い出さねばならないのである。
本文全体を読んで、at other timeだと違和感を感じるから下線部(b)を選択できるのではなく、timeという名詞が可算名詞か不可算名詞かで大きく意味が変わる知識をちゃんと頭に叩き込み、そうした切り口から問うてくることを事前に過去問探究のなかで心積もりしているから、下線部(b)に疑いの目を向けることができるのである。
 
文章をちゃんと読んでれば解けると4A対策でアドバイスされる人がいるが、そうした解答に至る思考過程を言語化できていないアドバイスに価値はない。
 
正誤問題をちゃんと分析していると、英文を読む時に、このあたりに罠が仕掛けれていそうだなと感じ取れる「嗅覚」が研ぎ澄まされる。
 
過去問探究を通じて、そうした「嗅覚」を養っていただきたいのである。
 
ここで、名詞が絡んだ出題の切り口をいくつかご紹介するとしよう。
 
  • 可算名詞か不可算名詞で意味が大きく変わる OR 「s」がつくと別の単語になるパターン
 
これは、よくあるパターン。
意外に盲点とする受験生が多く、4B英文和訳で誤読する原因の一つでもある。いくつか例を挙げるなら、
 
time(時間)/ times(時代、〜倍)
good(名詞なら利益・善) / goods(商品)
letter(手紙、文字)/ letters(文字、文学)
arm (腕) / arms(武器)
work (仕事)/ works(作品)
custom(習慣) / customs(税関)
paper(紙) / papers(書類、論文)
communication(意思疎通)/ communications(通信)←2004東大4B英文和訳下線部(2)参照
room(不可算名詞だと空間やスペースや余地)/ room(s) (可算名詞なら部屋)
 
といった具合に幾つでも挙げられる。
これらは、主に4Aや4Bでよく出てくる印象である。必ず辞書で用例確認を!
  • 不可算名詞なのに可算名詞であるかのように振る舞わせ、受験生を引っ掛けようとするパターン

代表的な不可算名詞は、water, advice, homework, money, information, weather, funといったものでしょう。
その他にも、baggage, luggage, music, poetryといった集合名詞や五感で捉えるものは原則不可算名詞となります。
ただし、複数形の「s」をつけたり具体的な修飾語句が伴うことで、そもそも別の意味に変わったり可算名詞扱いになったりすることもありますので、英作文の時には注意しましょう。

ただ、この程度のことなら中学生でも知っています。
大学側が長文の中でこれらの知識を問う時には、いくつかの切り口があることを過去問探究や市販の正誤問題集を通じてマニュアル化せねばなりません。
たとえば、

①不可算名詞なのにaやanをつける手口

→東大では2007年4A(3)でinformationにanをつけて可算名詞であるかのように振る舞わせていました。

②不可算名詞なのにfewやmanyといった可算名詞用の修飾語句をさりげなく伴わせる手口
ex) many water

③不可算名詞なのに「s」をつけて、そんな表現があるかのように受験生を惑わす手口

→たしかに修飾語句をつけることで可算名詞化するものもあるのですが、homeworkやfurnitureやinformationのようにどんなことがあっても複数形にはならない不可算名詞もあります。How many pieces of 〜となっていても、baggagesやinformationsといった具合に「s」をつけてはいけません。

④「sがついている可算名詞は複数形扱いで、不可算名詞は必ず単数扱いだ」とバカのひとつ覚えをしている受験生を痛い目に遭わせる手口

→意外に盲点としている受験生が多いので、しっかりお手持ちの文法書などで確認をしてください。注意すべきパターンを2つほど挙げると、

 1)「s」は付いているが、単数扱いする複数形の可算名詞。単数形扱いなので、be動詞は(is/was)で受けることとなる。学問形の英単語に多いパターン。
ex) Economics is a social science that studies the production, distribution, and consumption of goods and services.

news(ニュース)、mathematics(数学)、economics(経済学)、physics(物理学)、measles(はしか)、

 2)常に複数扱いする集合名詞→aやanをつけることはできない。複数形扱いなので、be動詞は(are/were)で受けることとなる。
ex) The police in Japan are very kind to elderly persons.

police(警察)、people(人々 ⚠️)、cattle(牛)など

⚠️「国民」という意味でpeopleを用いる場合、peoplesとすることもある。
たとえば、the peoples of Europe(ヨーロッパ諸国民)

  • 条件が伴えば可算名詞扱いにもなる不可算名詞(英作文の際に勘違いしがち)

たとえば、beautyは「美」という抽象名詞ではありますが、「金髪の美しい人」をといった具合に具体的な人を指す時には、a blond beautyといったように可算名詞扱いになります。
とはいえ、複数形にするのは見たことがありませんので、せいぜいaやanをつけるくらいでしょうか。

kindnessも「親切」という意味の抽象名詞で普段は不可算名詞として振る舞わせるのですが、親切にしてもらった具体的な行為の数々を表す時には、Thank you for your many kindnesses.と複数形にすることもあります。

effortも「努力が大事だ」といった場面では不可算名詞扱いとなりますが、make an effort toのような熟語や、1つ1つの努力の積み重ねを強調したい時にはeffortsといった具合に可算名詞扱いとすることもよくあります。

ただ、正誤問題で、この手のレベルの知識を問うのは酷なので、このようなパターンは英作文を書く時に留意すべきことだと思います。
熟語をたくさん覚えておいた方がいいと申し上げているのは、きちんと覚えていれば、「あれ、aをつけるのかな、sをつけていいのかな」といちいち悩まなくて済みますね。

(英熟語の覚え方)英熟語を制する者、東大英語を制する

  • 複数形のsを付け忘れ/複数形の不規則変化

高校受験レベルでは、可算名詞にmanyがついているのに複数形のsをつけ忘れるような問題がよく問われます。
大学受験レベルであれば、不可算名詞を数えるには、a piece ofやa glass ofという熟語を用いる必要があり、複数形にする時には two pieces ofやthree glasses ofのようにこれら熟語にsをつける必要があることに留意しなければ解けない問題が出されます。
make friends withやshake hands withやchange trainsといった登場人物(事物)が複数名出てくることを前提とした熟語でもsがつきます。

なお、複数形の不規則変化には注意をしましょう。
ex) child→children, tooth→teeth, foot→feet, mouse→mice, woman→women, medium→media, hypothesis→hypotheses, phenomenon→phenomena, passerby→passersby

  • 適切な代名詞で受けているか

代名詞というと、itやthemやoneが思いつくと思います。
不可算名詞を受けたければitを用いましょう。
itは可算名詞にも不可算名詞にも使えます。
oneは可算名詞を受けるものです。
なので、milkやmusicといった不可算名詞をoneで受けることはできません。

ただし、a bottle of milkといったカタマリをoneで受けることは可能です。
たとえば、Did you buy a bottle of milk? Yeah, I bought one.といった具合にです。
これが、Did you buy milk? なら、 I bought some.といった感じで表すべきです。
不可算名詞に用いる代名詞は、原則itを使いましょう。
たとえ、a lot of snowやmuch waterといった具合に「たくさんの」という意味の形容詞がくっついていたとしても、theyで受けないようにしてください。
ただし、money and milkのように複数の不可算名詞を受けるのであれば、theyやthemは使えます。

  • 同格のthatや関係代名詞の使い方は適切か

同格のthatを伴える名詞には限りがあります。
experienceやsituationやmemoryは同格のthatを取れない名詞の代表格です。
また、同格のthat節内では文が完結していなければいけません。
その一方、関係代名詞節の中では主語やら目的語が省略されています。

「何を当たり前のことを!」と鼻で笑われた方もいらっしゃると思いますが、東大受験生の英作文を添削していると、この中学3年レベルのことがわかっていない答案が次から次へとあらわれます

正誤問題でも、関係詞関連の問題は、2017年、2014年、2012年、2010年、2008年、2005年に出題されています。
そして、多くの東大受験生が間違えています。
つまり、基礎のなっていない東大受験生が腐るほどいるということであり、東大側はそれをわかっているから、繰り返し繰り返し、この手の問題を出題して平均点を下げようと試みているわけです。
基礎を大切に!

  • 本当にその単語は名詞でつかわれているのか(品詞が変わると意味まで大きく変わる単語に注意せよ)

品詞の理解が雑な受験生は「非常に多い」です。
英会話であれば、多少の文法ミスがあっても相手がこちらの意図を汲み取ってくれる優しさを施してくれることもありますが、入試や研究論文は、こちらが相手を説得させる課題なのですから、基本的に相手からの憐れみや気遣いはありません。

ですので、テキトーに文を作ると容赦なく減点されますし、品詞理解が乏しいと、4Bや5の和訳問題や空所補充で東大側が用意した罠に引っかかることになります。

たとえば、thoughtを目にした時、thinkの過去形thoughtだなと性急に判断してしまうと痛い目に遭います。
なぜなら、thoughtは思考という意味の名詞形でも使われるからです。
ここを突いてきたのが2023年度第5問の空所補充でした。
では、頭の中に入っている全ての単語の品詞を総確認しなければいけないのかというと、ベストはそうですが、時間がない受験生は、品詞が変わると意味が大きく変わる単語を中心に先ずは高速で品詞と意味との関係を確認してください。

たとえば、

tearは、名詞なら「涙」、動詞なら「引き裂く、破る」

resumeは、名詞なら「履歴書」、動詞なら「再開する」

desertは、名詞なら「砂漠」、動詞なら「見捨てる」

suspectは、名詞なら「容疑者」、動詞なら「〜ではないかと疑う」

bookは、名詞なら「本」、動詞なら「予約する」

windは、名詞なら「風」、動詞なら「〜を巻きつける、曲がりくねって進む」」

このあたりは、要注意です。
もちろん、これに限らず、品詞が変わると意外な意味を持つものはないのか、今まで愛用してきた英単語帳を探してみると新たな気づきや発見があるかもしれません。

いかがでしたでしょうか。
「名詞」1つとっても、このような情報整理の仕方があることを意外に教えられていない人が多いと思います。
高得点合格者は、文法書で1度は学んだことのある上記のような基礎知識を実戦でスムーズに引き出せるよう「情報整理」しているのです。
この整理の「差」が、点数の「差」につながります。

設問(24)動詞(語法) これもサービス問題! 見落としてはいけない1問です!

The idea that democracy is ‘government by discussion’ーand not just about votingー(d)remains as削除 extremely relevant today.

本問では動詞の語法にスポットライトが当てられた設問が出題された。
後述するチェックリストを意識した学習をしてきた受験生にとってはサービス問題だと言えよう。
できれば瞬殺したいところである。

remainは名詞や形容詞や分詞を前置詞の力を借りずに持ってこれる自動詞である。
そのため、asなしでrelevantを目的語に持ってこれる。

そもそも、as 形容詞/副詞 asの構造でもなく、asの後ろにSV構造があるわけでもなく、as + 名詞(〜として)というパターンになっているわけでもない。
このasが何を意味しているのか、文法的にも不明瞭なのである。設問(21)と同様に、余事記載パターンの問題であった。

(動詞関連の正誤問題チェックリスト)

東大英語 第4問A(英文法正誤)制覇の極意(2023年実況中継)
上記の(22)と(24)の解説参照。

設問(25)動詞(時制)

誤った選択肢は(a)

(a)I was→have been interested in this question since my schooldays when my grandfather Kshiu Mohan drew my attention to Emperor Ashoka’s rulings on public arguments, but Mill and Keynes offered me a new understanding about the role of public discussion in social choice.         

設問(24)に続いて、動詞にフォーカスをあてた出題である。
動詞は文章の要であるから、語法や時制に伴う語形変化には細心の注意を払わねばならない。

そして、設問(21)でも注意喚起したように、下線部を含む一文くらいはちゃんと読み込みたいところである。
今回でいえば、下線部(a)の直後にsinceとある。
高校受験でも頻出な現在完了とsinceの話を思い出せたなら、wasをhave beenにすべきことは瞬時に決められたはずであろう。

冒頭の下線部(a)に、こんな簡単な引っ掛けを用意してくれているのは、東大側の優しさとも言えるだろう。
難しかった設問(21)でくじけることなく、4Aのラスト(25)まで辿り着けた勇者への褒美のつもりだったのかもしれない。

 

その他に注意すべき動詞(時制)に絡む出題切り口をいくつか挙げると、

  • 時・条件の副詞節の中では、未来のことでも、動詞は現在形で表記することに注意せよ。
  • 時制の一致の諸ルールを確認せよ。特に、不変の真理や仮定法といった時制の一致の例外事由は念入りに復習せよ
  • demandやrequireやinsistやsuggestといった要求提案系の動詞のあとのthat節には、見えないshouldの効力が働き動詞が必ず原形になることは意外に盲点とする受験生が多い→2022年度4A設問(21)の下線部(e)を参照のこと。

のあたりも、正誤問題ではよく出される切り口だと言える。

いかがでしたでしょうか。
東大4Aは、コツをつかめば、ほんのちょっとの労力で3問は確実に正解できる「おいしい」問題です。
今年度の問題で言えば、(23)(24)(25)は瞬時に気づいて欲しかった設問でした。

ぜひ、過去問探究や敬天塾の映像授業などを通じて、ノウハウを学び取っていただき、東大英語で高得点を奪取していただければ、この上ない幸せです。

(編集後記)

なお、蛇足ではあるが、東京大学が4A正誤問題を出題し続ける理由について私見を述べたい。
昨今、センター試験が廃止され共通テストに移行したことに伴い、共通テストでは語法や文法問題が出されなくなった。
それに伴い、東大側としては、受験生の語法知識や文法知識を二次試験で問う必要性を以前にもまして強く感じているのかもしれない。

東大教養学部の内部資料で、正確な訳読の重要性や正確な構文解釈力の必要性について教授陣が寄稿していたが、これは、英語は不正確な文法知識でも堂々と話せればOKという風潮が広がっていることへの警戒感の表れのようにも思えてならない。
会話においては、こちらの表情やジェスチャーから、相手がこちらの意図を汲み取ってくれることもあるだろうが、ペーパーテストや研究論文においては、書かれているものが全てである。
稚拙な文法ミスやスペルミスを犯そうものなら、内容以前に、本文すら読まれないこともありうる。
そうした危険性を排するためにも、ちゃんと文法のお勉強もしてくださいねと東大側は入試問題を通じて受験生に訴え続けているのかもしれない。

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【他年度など】

東大英語 第4問A(英文法正誤)制覇の極意(2023年実況中継)

2022年東大英語(第4問A 英文法正誤)入試問題の解答(答案例)・解説

2021年東大英語(第4問A 英文法正誤)入試問題の研究

 

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