東大英語 第1問B文挿入(段落整序)2022年実況中継
東大1B文挿入は、客観式問題のみで構成されており、12点前後の配点が予想されている問題です。
ですが、挿入する選択肢を誤ると、連鎖的に他の選択肢も間違えてしまう危険性が大きく、パズルのようだと苦手意識を持つ受験生も多くいます。
まず、なぜ、この1B文挿入が、1Aの英文要約と同じ第1問に配されているのかを考えると、東大教授が受験生に問うているメッセージが浮かび上がってきます。
この第1問では、一文一文の精読よりも、文と文、段落と段落同士の繋がりを考え、本文全体で言いたいことをスピーディーに掴み取る力が求められているのです。
そんなことはわかっているけど解けないという方のために、本講では、敬天塾オリジナルの東大1B対策資料を公開し、論理を紡いで正解を導き出す思考プロセスを余すとこなくお伝えしたいと思います。
まず、東大1Bで求められている力は、ざっくり言えば、速読速解力です。正確に読むためには文法力や語彙力も求められますし、速く読んで速く理解できるためには、howeverやthereforeといった逆説や因果を表すディスコースマーカーや段落相互の関係に着目することも必要です。
これだけなら、塾や学校で訓練している人も多いでしょうが、1Bのような設問形式になると、途端に論理を紡げず大混乱に陥ってしまう受験生が後を絶ちません。
その理由の一つに、4Aや4Bのように一文一文を細かく分析するあまり、木を見て森を見ずの状態になっていしまい、東大教授が用意したヒントと、東大教授が用意したワナに気付かぬまま時間ばかりを奪われ冷静さを失ってしまうことが挙げられます。
ただでさえ、時間制約の厳しい事務処理能力テストと揶揄される東大英語にあって、激しい緊張状態のなか、なかなか答えが定まらないことで焦り始めようものなら総崩れすることもあり得るわけです。
その一方で、短時間で1Bを処理して全問正解を容易に叩き出せる合格者もいます。
その違いはどこにあるかというと、上述した東大教授が本文に散りばめたヒントとワナを見分ける嗅覚の有無にあります。
そこで、本講では受験生の皆さんに、この「嗅覚」を効果的に身につけていただけるよう、敬天塾オリジナルの訓練ドリルをご提供することといたします。
それは、本文と選択肢の全てを日本語にしたものです。
まずは、この日本語バージョンに取り組まれてみてください。
英語になっていない分、より一層、空所前後の論理構造を把握することに集中でき、東大教授が用意したヒントとワナに気付きやすくなるはずです。
この際、答えが合っていたかどうかよりも、正確に論理を紡げたのかをチェックしましょう。
その上で、今度は英語バージョンに取り組まれてみてください。
日本語バージョンで気づいたポイントが以前にも増して浮かび上がって見えてくるようになります。
それでは、まずは、以下よりダウンロードをして取り組んでみましょう。そののち、後述する解説記事を熟読していただけると視界が晴れていくことをお約束いたします。
2022-1B練習ドリルいかがでしたでしょうか。ここからは、答えを導くまでの思考プロセスについて詳述してみたいと思います。
🔵 空所(1)の思考プロセス
空所(1)を含んだ第2段落にまずは着目します。
マストロヤンニの考えは、的を射ていたのかもしれない。とある最近の研究では、ある特定の会話がどれくらいの長さ続いたほうが良いのかについて、話し手達がどう感じているのかを推し量るべく、話し手達の脳を調べた時に研究者達が発見したことについて報告がなされている。 (1) 事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。しかしながら、いくつかのケースでは、会話が長続きし過ぎたからではなく、あまりにも短かったからという理由で、人々が不満を抱くこともあった。
段落というのは相互に共鳴し合っているものです。この点、空所(1)を含んだ第2段落のはじめに「マストロヤンニの考えは的を射ていたかのかもしれない」とあることから、その中身について第1段落の内容が絡むことがわかります。第1段落の最後では、
もしも双方が全く同じことを考えていたらどうなるだろうか。双方ともに話は済んでいるのにその場を離れられないという理由で、共に(会話から)抜け出せなくなってしまっていたとしたら、どうなるのだろうか。
と、マストロヤンニは疑問に感じていると書かれています。
その上で、第2段落の冒頭で、この考えは的を射ていたのかもしれないと言及しているわけですから、しばらくこのテーマで話が進んでいくことが予測できます。
第二段落の2文目では、いきなり研究者達が何かを「発見」したと述べています。
その中身について、必ず言及があるはずで、その流れのなかで空所(1)が登場するわけです。
後続の文章ではいきなり「事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。」と来ていますが、ここでは研究者達が発見した内容についての言及はありません。
このことから、空所(1)に発見内容が書かれている可能性が高いことをうかがいしれます。
さらには、空所(1)直後の文で、いきなり「事実(In fact)」と来ています。In factは、直前の内容を補強解説するときに使われる語句ですので、空所(1)に入る内容を探るヒントになります。
その中身も、「人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。」という、第一段落で言及されたマストロヤンニの考えと一致する内容ですから、空所(1)に入る内容も、会話を終わらせるタイミング関連の選択肢だと合理的に推察できそうです。
ここで、選択肢群を確認するとしましょう。
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
b) 他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。
c) それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。
d) 概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。
e) 双方が会話を終わらせたいと望んだ時に会話が終わることはほとんどないことを、そのチームは発見した。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
選択肢のグループ分けをはじめにすると、選択肢a)・b)・f)は疑問形で文章が終わっていますね。
d)とe)は研究結果の内容報告に関連した選択肢であり、c)はなんだか他の選択肢に比べて中身の薄いものになっていますが、「それらのほとんど」という指示語がヒントになる予感がします。
その上で、正解の選択肢を探していくわけですが、留意すべきこと、気をつけて欲しいことは、正解の選択肢は必ずしも光らないということです。
例年、2個くらいの空所は簡単に見つかりますが、残る2〜3個の空所が厄介で悩ましいものになります。
なぜ、このようなことが起こるかというと、正解とされる選択肢がどうにもスッキリしない、間違っているとも言えないし、ハッキリと正しいとも言えない何ともモヤっとした感じの文面になっているからです。
これは、共通テストの英語や現代文の選択肢を解いたことのある方であれば、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
もちろん全ての年度の問題で言えるわけではありませんので、疑心暗鬼になりすぎないことも大切です。
さて、本題に戻ります。まず、空所(1)は上述した通り、研究者達が発見した内容について書かれていなければなりません。
ともなれば、疑問文で文章が終わっている選択肢a)・b)・f)が来るのはおかしいですし、いきなり「家族」や「友人」という新情報を持ち出しているc)も不適と言えそうです。
残るは、d)とe)なわけですが、d)では「両方の研究」と書かれており、空所(1)前後にそれらしき記載はありません。
さらには、研究者達の発見内容が示されるべきところ、選択肢d)では被験者達の報告内容が記されています。
この時点で、e)を正解だと確定しても良さそうですが、不安な場合は、空所(1)の横に「d) OR e)」と書いて、いったん空所(2)以降に視点をうつすことも本番では大切です。
なお、上記のように選択肢群をグループ化した後でなければ空所(1)に入るものを特定できないのかというと、そんなことはありません。
1つ1つを空所(1)に当てはめてみるのも有効です。
空所(1)あたりでは選択肢群の載っているページをいちいち見返さなくてはいけませんから面倒に思えるかもしれません。
ですが、何度も行き来している間に、いちいち見返さなくても内容を短期記憶することもできると思います。
それができないよという方は、選択肢の載っているページを半分に折ってみたり、少し面倒でも、各選択肢の要点を長文掲載の見開きページの余白に日本語で書いて、いちいちページをめくる手間を省いてみるのも良いでしょう。
その上で、各選択肢を空所(1)に入れて確かめてみるとしましょう。まず、空所(1)前後の構造のおさらいです。
会話はどれくらい続いたほうがいいのかについて、研究者達が発見したことがある。
↓
(1)
↓
話し相手がどのタイミングで会話を終えたいかを判断することは困難
という流れでした。空所(1)に入る内容は、こうした文脈を崩したものではいけません。
つまり、全く関係のない話題や、前後の文脈にはない新情報が唐突に入っていては論理性が崩れてしまいますね。
そうした観点に照らして各選択肢をみてみましょう。
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
b) 他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。
c) それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。
d) 概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。
e) 双方が会話を終わらせたいと望んだ時に会話が終わることはほとんどないことを、そのチームは発見した。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
いかがでしょうか。では、各選択肢を空所(1)に入れていくとしましょう。
吟味検討コーナー空所(1)に選択肢aを入れてみた
マストロヤンニの考えは、的を射ていたのかもしれない。とある最近の研究では、ある特定の会話がどれくらいの長さ続いたほうが良いのかについて、話し手達がどう感じているのかを推し量るべく、話し手達の脳を調べた時に研究者達が発見したことについて報告がなされている。(話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。)事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。しかしながら、いくつかのケースでは、会話が長続きし過ぎたからではなく、あまりにも短かったからという理由で、人々が不満を抱くこともあった。
うーん、会話を終えるタイミングの話をしているのに、いきなり会話をいつ始めたいかという話が来ているのは違和感しかありませんね。
しかも、研究者達が発見した内容について何も言及がなされていませんので、選択肢aは明らかに不適です。
吟味検討コーナー空所(1)に選択肢bを入れてみた
マストロヤンニの考えは、的を射ていたのかもしれない。とある最近の研究では、ある特定の会話がどれくらいの長さ続いたほうが良いのかについて、話し手達がどう感じているのかを推し量るべく、話し手達の脳を調べた時に研究者達が発見したことについて報告がなされている。(他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。)事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。しかしながら、いくつかのケースでは、会話が長続きし過ぎたからではなく、あまりにも短かったからという理由で、人々が不満を抱くこともあった。
こちらも、会話を避けるだの、目新しい考え方だのと新情報がガンガン来ていますし、何より研究者達の発見内容に言及できていませんので、明らかに空所前後で浮いています。
吟味検討コーナー空所(1)に選択肢cを入れてみた
マストロヤンニの考えは、的を射ていたのかもしれない。とある最近の研究では、ある特定の会話がどれくらいの長さ続いたほうが良いのかについて、話し手達がどう感じているのかを推し量るべく、話し手達の脳を調べた時に研究者達が発見したことについて報告がなされている。(それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。)事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。しかしながら、いくつかのケースでは、会話が長続きし過ぎたからではなく、あまりにも短かったからという理由で、人々が不満を抱くこともあった。
こちらも、家族やら友人と何が取り交わされたのか不明瞭ですし、「それら」が何を指すかも分かりません。
研究者達が発見した内容としても意味不明ですから、選択肢cも不適となります。
吟味検討コーナー空所(1)に選択肢dを入れてみた
マストロヤンニの考えは、的を射ていたのかもしれない。とある最近の研究では、ある特定の会話がどれくらいの長さ続いたほうが良いのかについて、話し手達がどう感じているのかを推し量るべく、話し手達の脳を調べた時に研究者達が発見したことについて報告がなされている。(概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。)事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。しかしながら、いくつかのケースでは、会話が長続きし過ぎたからではなく、あまりにも短かったからという理由で、人々が不満を抱くこともあった。
既に述べた通り、「両方の研究」といっても、2つの研究内容が示されている形跡は空所(1)の前部分にはなく、さらには、研究者達の発見内容が示されるべきところ、選択肢dでは被験者達の報告内容が記されていますので、不適だと言ってよいと思います。
ここで、選択肢eをいったん飛ばして選択肢fを入れてみます。
吟味検討コーナー空所(1)に選択肢fを入れてみた
マストロヤンニの考えは、的を射ていたのかもしれない。とある最近の研究では、ある特定の会話がどれくらいの長さ続いたほうが良いのかについて、話し手達がどう感じているのかを推し量るべく、話し手達の脳を調べた時に研究者達が発見したことについて報告がなされている。(グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?)事実、人々は、話し相手がどのタイミングで会話を終えたいと望んでいるのかを判断することにとても不得手である。しかしながら、いくつかのケースでは、会話が長続きし過ぎたからではなく、あまりにも短かったからという理由で、人々が不満を抱くこともあった。
こちらも、いきなり感満載の内容になっています。研究者達の発見内容についての言及は皆目なく、「グループチャット」やら「dynamics」やら、これまでの文脈にはない新情報が羅列されているだけですので、選択肢fも不適です。
以上より、消去法で考えても選択肢eの他にはないと言えましょう。
🔵 空所(2)の思考プロセス
さて、引き続き、空所(2)に参ります。
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamics(⚠︎人間関係など会話に影響を与えるあらゆる事柄の相互関係を「力学」と称している)を調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。 (2) 被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
この空所(2)は第5段落の中盤に位置しています。第5段落は、第4段落とそれほど強い関係性を持っていません。マストロヤンニ氏を軸に話が進んでいるという共通点はありますが。会話におけるdynamicsについて調べるべく、2つの実験をしたとあります。このように、個数が明示された時には(その他にも、「3つの理由がある」「2つの具体例を示すとしよう」など)、それらがどこに書かれていて、何を指しているのかについてチェックするクセをつけましょう。本問であれば、第6段落の冒頭で、「2つ目の実験では(In the second experiment)」と来ていますので、第5段落では1つ目の実験の話のみをしているのだろうと推測することもできます。なぜ、この点を強調しているのかと申しますと、ここに東大教授がワナを仕掛けているからです。その中身については、選択肢d)と選択肢f)の適不適を説明する際に詳述いたします。
さて、改めて空所(2)の「前」と「後ろ」を確認してみますと、
会話におけるdynamicsの調査のために「2つの実験」が行われた
↓
被験者に、会話がどれくらい続いたか尋ねた
↓
空所(2)
↓
被験者達は、いつ会話を終わらせたいと思ったかを報告した
という流れになっています。
空所の「直前」の内容からしますと、(2)に入りうる内容としては、会話がどれくらい続いたのかという質問に対する回答なのかなと推測できます。
ですが、選択肢群を見ても、具体的な時間を示した肢は見当たりません。
そこで、空所(2)の「直後」に注目しますと、「会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。」とありますから、この報告内容を導く質問項目が空所(2)に入るように思います。
そこで、選択肢群を確認すると
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
b) 他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。
c) それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。
d) 概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。
e) 双方が会話を終わらせたいと望んだ時に会話が終わることはほとんどないことを、そのチームは発見した。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
そのような質問項目は全く見当たりません。
この時点で、この空所(2)に東大教授はワナを仕掛けたのだろうなと推測し、いったん飛ばして空所(3)に移りました。
なお、マークを1問1問逐一されている方は、設問をいったん飛ばす場合、マークずらしをしないよう最大限注意を払ってください。
ちなみに、本問にワナを仕掛けたと推測する理由が他にもあります。
それが、先程ちらっとお話をした選択肢d)とf)です。
実際にこの2つを空所補充して適不適を精査してみるとしましょう。
吟味検討コーナー空所(2)に選択肢dを入れてみた
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamicsを調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。(概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。)被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
いかがでしょうか。もし、正解なのではないかと一瞬でも思われた方は、東大教授のワナにハマる可能性大です。
確かに、この段落の冒頭では「2つの実験」と述べていますから、選択肢d)における「両方の研究」という記述は正確なように思えることでしょう。
しかも、空所(2)の直前で、会話が続いた時間が尋ねられるところ、選択肢d)では「約半分程度」と会話の長さを匂わせる言葉を入れてきています。
ですが、d)は空所(2)には不適なのです。
なぜなら、2番目の実験の詳細が次の第6段落で言及されるはずなのに、この第5段落で早くも「両方の研究における」と記述するのは少し先走り過ぎているとも言えます。
また、時間についても、問われているのは、会話の持続時間の数値であるのに対し、選択肢dでは「望んだ会話の長さ」と対象が変わってしまっています。
焦って空所(2)の直前だけ読んで済まそうとした受験生を戒めようとした選択肢とも言えます。
では、選択肢f)についてはどうでしょうか。
吟味検討コーナー空所(2)に選択肢fを入れてみた
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamicsを調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。(グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?)被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
単語だけ拾い読みして正解の肢を定めようとした受験生を狙い撃ちしようとしています。空所(2)を含む第5段落の冒頭で、「会話におけるdynamics(the dynamics of conversation)」とあります。
このdynamicsという珍しい単語に目がいった受験生が、選択肢f)の中にdynamicsがあるのを見て、無思考に飛びついてくれるかもしれないと、東大教授はきっと作問段階でほくそ笑んでいたはずです(笑) ですが、落ち着いてください。
「グループチャット」の話なんて、空所(2)の前後でしていませんし、何より、唐突に疑問文を空所(2)に入れるのもおかしな話です。
それに対する回答が空所(2)の後ろでなされているわけでもありません。
このことから、この空所(2)が今年度のワナだと考え、いったん飛ばして、他の選択肢を埋めてから最後に確認すべきだろうと私は判断しました。
それでは、いったん空所(3)に移るとしましょう。
🔵 空所(3)の思考プロセス
空所(3)は、第7段落の中盤に位置しています。かなり長い段落ですので、まずは本文を確認しましょう。
マストロヤンニと彼の同僚達は、たった2%の会話だけが双方が望んだ時に終わり、片方が会話の終了を望んだ時に終わったのは全体の30%しかなかったことを発見した。約50%の会話において、双方が会話はもっと短いほうが良いと望んでいたが、会話を終えたいと思った時点がたいていは異なっていたのだ。 (3) 研究者達が驚いたことに、人々は必ずしも会話を早く切り上げたいと思っているばかりではないということも発見したのだ。 則ち、会話の10%において、被験者達は双方ともに、やり取りがもっと長く続けばよかったのになあと願っていたのだ。 さらには、 見知らぬ人同士のやり取りのうち約31%で、 2人のうち少なくとも1人は会話を続けたいと思っていた。
↑
第7段落が、第5〜第6段落で説明された「2つの実験」結果を総まとめ的に記述したものだということを先ずは頭に叩き込むことから全ての物語は始まります。
仮に時間が足りずに空所前後だけを拾い読みして答えを出さなくてはならない状況でも、せめて各段落の冒頭と末尾のところだけでも読んで、段落相互の関係について出来る限り把握することをオススメします。
ここで、空所(1)で確定した選択肢e)を除く5つの選択肢群を確認するとしましょう。
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
b) 他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。
c) それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。
d) 概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。
e) 双方が会話を終わらせたいと望んだ時に会話が終わることはほとんどないことを、そのチームは発見した。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
まず、選択肢a)では、いつ会話を「始めたい」のかに力点を置いていますが、第7段落ではいつ会話を「終えたい」のかにフォーカスをあてていますので、ベクトルがそもそも異なります。
次に、選択肢b)ですが、ここでは会話を避けてきたがために発生した損害について記されています。
選択肢b)は疑問文であるところ、空所(3)の直後には、「会話を切り上げたいと思っているばかりではない」としか書かれてなく、疑問に対する回答が空所(3)の後ろでなされていませんので不適となりそうです。
続けて、選択肢群のなかで最も浮いている選択肢c)をご覧いただきますと、空所(3)に入れても大きく論を崩すことにはならないかもしれませんが、具体的な数値情報が列挙される中で、「家族や友人と取り交わされた」という話が唐突に出てくるというのは違和感しかありません。
ただ、ここで注意せねばならないことがあります。今年度の東大1Bの空所補充問題においては、空所5つに対して選択肢が6つ、則ち、ダミーの選択肢が1つあるということです。
このダミーは何なのかを考えるに際して、他の選択肢に比べてc)は浮いているから、これをダミーだと決めつけることは避けるべきです。
東大教授が1年かけてつくった問題が、そんな単純な思考で攻略できるはずもありません。
下手なテクニックは東大英語に通用しないと考えるべきでしょう。
さて、本論に戻りますと、この空所(3)に選択肢c)を入れるのには正直躊躇いはありますが、絶対に不可能、「論理的に破綻」というわけでもありませんので、この時点では一旦保留にしても良いかもしれません。
続けて、選択肢d)です。
吟味検討コーナー空所(3)に選択肢dを入れてみた
マストロヤンニと彼の同僚達は、たった2%の会話だけが双方が望んだ時に終わり、片方が会話の終了を望んだ時に終わったのは全体の30%しかなかったことを発見した。約50%の会話において、双方が会話はもっと短いほうが良いと望んでいたが、会話を終えたいと思った時点がたいていは異なっていたのだ。(概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。)研究者達が驚いたことに、人々は必ずしも会話を早く切り上げたいと思っているばかりではないということも発見したのだ。 則ち、会話の10%において、被験者達は双方ともに、やり取りがもっと長く続けばよかったのになあと願っていたのだ。 さらには、 見知らぬ人同士のやり取りのうち約31%で、 2人のうち少なくとも1人は会話を続けたいと思っていた。
いかがでしょうか。第7段落が、第5〜第6段落で説明された「2つの実験」結果を総まとめ的に記述したものであることに照らせば、「両方の研究における参加者達」(Participants in both studies)という選択肢d)の記述内容はしっくりきますし、会話の長さに関して望むようにはいかなかったという主張骨子も第7段落のなかで浮いているとは言えません。
現時点では、最有力候補になると言えます。
そして最後に、選択肢f)をご覧いただくとしましょう。「グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?」と記された選択肢ですが、第7段落では第5〜6段落で説明がなされた2つの実験結果についてまとめられた段落ですので、段落中盤にいきなり「グループチャット」なる新情報を持ち出すのは違和感しかありません。
うまい文章というのは原則、1段落で1テーマに留めるべきものであり、新しい話題を出すにしても、それは段落の冒頭や末尾に記すべきなのです。
段落の冒頭で記したなら、直前の段落末尾との関係性を意識せねばなりませんし、段落末尾に新情報を記したなら、その補足説明を次の段落で行うのが筋です。
ですので、段落の中盤でいきなり新たな論点を持ち出すのは、段落の構成上、違和感しかありませんし、その中身(グループチャット)の正体について空所(3)の後ろで詳述されているわけではありませんから、選択肢f)を空所(3)に入れてしまいますと第7段落のなかで激しく浮いてしまうことになります。
以上より、空所(3)には選択肢d)が無難なように思えます。
🔵 空所(4)の思考プロセス
それでは、引き続き空所(4)を考察してみましょう。
ニコラス・エプリーは、シカゴ大学で行動科学を研究する専門家で、この研究チームには所属していなかったものの、もし会話の多くが我々の望んだその瞬間に終わったら一体どうなるのだろうかと疑問に思っている。「 (4) 」と、彼は問う。
このことは日常生活で取り交わされる無数のやり取りにおいて確かめることなど出来はしないが、 科学者達には、被験者が会話をやめたいと初めて思ったその瞬間に会話を終わらせる、あるいは会話がいくつかのタイミングを越えるまで続くようにする、のいずれかになるような実験をつくりだすことはできる。 「ちょうど終わってほしいと思ったタイミングで会話が終わった人々は、それより長く会話を続けることになってしまった人々よりも、本当に会話を良い形で締めくくることができたのだろうか」とエプリーは問う。 「私にはわからない。ただ、その実験の結果を心から見てみたい」。
空所(4)は、第10段落の末尾に記されています。
ここでは、ニコラス・エプリーという人物がいきなり登場し、次の第11段落にまでエプリー氏の話が続いています。
まず、空所(4)は、エプリー氏が尋ねている(ask)内容を” “の引用符で表していますから、疑問文が来る可能性が高いと言えます。この時点で、選択肢a),b),f)の3つに候補が絞れると言えます。
第10段落で、エプリー氏は、望んだ時に会話が終わったらどうなるのかと述べています。
さらには、次の第11段落のなかで、エプリーは続けて、「ちょうど終わってほしいと思ったタイミングで会話が終わった人々は、それより長く会話を続けることになってしまった人々よりも、本当に会話を良い形で締めくくることができたのだろうか(Do those whose conversations end just when they want them to actually end up with better conversations than those that last longer?)」とも述べており、第10段落の内容と抵触するものではありませんから、空所(4)に来る内容も文脈に沿ったものではないかと予測することができます。ここで、選択肢a), b), (fをご覧いただくとしましょう。
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
b) 他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
いかがでしょうか。先述したように、第10段落でエプリー氏は、会話が望んだ時に終わったらどうなるのかと疑問に思っています。
その流れを受けて尋ねた質問が空所(4)です。
この点、選択肢a)は会話を「始めたい」となっていますので、会話が「終わる」時点の話をしている第10段落の内容と齟齬が生じてしまいます。
選択肢f)は「グループチャット」という新情報が登場していますが、その中身については第11段落でなんら言及がなされていません。
残る選択肢b)を実際に本文に当てはめてみますと、
吟味検討コーナー 空所(4)に選択肢bを入れてみた
ニコラス・エプリーは、シカゴ大学で行動科学を研究する専門家で、この研究チームには所属していなかったものの、もし会話の多くが我々の望んだその瞬間に終わったら一体どうなるのだろうかと疑問に思っている。「他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。」と、彼は問う。
このことは日常生活で取り交わされる無数のやり取りにおいて確かめることなど出来はしないが、 科学者達には、被験者が会話をやめたいと初めて思ったその瞬間に会話を終わらせる、あるいは会話がいくつかのタイミングを越えるまで続くようにする、のいずれかになるような実験をつくりだすことはできる。 「ちょうど終わってほしいと思ったタイミングで会話が終わった人々は、それより長く会話を続けることになってしまった人々よりも、本当に会話を良い形で締めくくることができたのだろうか」とエプリーは問う。 「私にはわからない。ただ、その実験の結果を心から見てみたい」。
望んだ瞬間に会話が終わったことに伴う損害について選択肢b)は示していると言えますので、空所(4)の直前部と流れは一致しますし、次の第11段落末尾に記載されている「本当に会話を良い形で締めくくることができたのだろうか」というエプリー氏の疑問内容とも矛盾しませんので、選択肢b)が答えだと確定して良さそうです。
🔵 空所(5)の思考プロセス
それでは、ラストの空所(5)に参ります。
ここまで順当に空所を埋められた人なら、残る選択肢は2つになっているはずですから、だいぶ楽になります。
ですが、ここでは、空所(5)を迎えても、何を入れて良いか未だわからなかったり、前半の空所を読んでいる時にはパニックを起こしてしまい、一旦空所(5)あたりから処理しようとした受験生も一定数いたことから、きちんと吟味検討を試みたいと思います。
このことは日常生活で取り交わされる無数のやり取りにおいて確かめることなど出来はしないが、 科学者達には、被験者が会話をやめたいと初めて思ったその瞬間に会話を終わらせる、あるいは会話がいくつかのタイミングを越えるまで続くようにする、のいずれかになるような実験をつくりだすことはできる。 「ちょうど終わってほしいと思ったタイミングで会話が終わった人々は、それより長く会話を続けることになってしまった人々よりも、本当に会話を良い形で締めくくることができたのだろうか」とエプリーは問う。 「私にはわからない。ただ、その実験の結果を心から見てみたい」。
そうした発見の数々は、多くの他の問いが投げかけられる端緒にもなっている。 会話を規定するルールは他の文化では、もっとハッキリしているものなのか? コツというものがあるのなら、トークがうまい人達は、何かをつかんでいるのだろうか? (5)
「会話について新たに科学するには、この研究のような厳密な記述的研究が求められるが、同時に私達は、会話における重要かつ広範囲に渡る難題に対処するのに寄与するであろう方法を試すべく、因果関係の検証実験も必要としている。」と、この研究には参画していない、ハーバード大学経営大学院で経営管理学の教授をしているアリソン・ウッド・ブルックスは語る。 「私が思うに、かなり荒っぽくはあるが、 人々がどのように互いに話をするのかについて、私達は厳密に理解し始めたところなのです。」
いかがでしょうか。
空所(5)は、第12段落の末尾に位置していますので、次の第13段落との関係性を疑わねばなりません。ですが、第13段落では、新出のブルックス氏の話が登場し、第12段落に列挙されている疑問文の数々に答えているわけでもありませんので、空所(5)に適した選択肢を考える際には一旦横に置いて良いでしょう。
続けて、空所(5)を含む第12段落の冒頭では、「そうした発見の数々(The findings)」と来ていますから、第11段落の内容を指しているのかどうかをまずは疑います。
ですが、空所(5)の後ろに列挙された疑問文の内容とそれほど強く関係しているとは言えませんし、何より、第10〜11段落でエプリー氏がなんらかの発見を数多くしたとは書かれていません。
ですので、ここでいうThe findingsは、第1段落〜第11段落に至るまでに言及された全ての発見事項のことを総まとめ的に指していると言えます。
そして何より、この第12段落では、「そうした発見の数々は、多くの他の問いが投げかけられる端緒にもなっている(The findings also open up many other questions.)」と記したのちに、
- As the rules of conversation clearer in other cultures?
会話を規定するルールは他の文化では、もっとハッキリしているものなのか?
- Which cues, if any, do expert conversations pick up on?
コツというものがあるのなら、トークがうまい人達は、何かをつかんでいるのだろうか?
と、疑問文を立て続けに並記しています。
この流れからしますと、空所(5)にも疑問文が来るように思えます。
これまでの空所分析で、空所(1)には選択肢e)が、空所(2)は不確定、空所(3)にはd)が、空所(4)にはb)が入ると判断しましたので、残る選択肢はa), c), f)となります。
このうち、疑問文を表していたものは選択肢a)とf)です。
未確定の空所は(2)と(5)になりますので、各選択肢をいずれに補充すれば良いのか「天秤」にかけることとなります。
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
b) 他の誰かと交わしていたかもしれない、より長く、より深いレベルでの会話を私達が避けたがために、どれだけ多くの新しい見識や、目新しい考え方や、人生における興味深い事実の数々を私達は見逃してきたのだろうか。
c) それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。
d) 概して、両方の研究における参加者達は、望んだ会話の長さが実際の長さの約半分程度だったということを報告した。
e) 双方が会話を終わらせたいと望んだ時に会話が終わることはほとんどないことを、そのチームは発見した。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
まず、残る選択肢のうちc)については、疑問文ですらありませんし、「それらのほとんど(Most of them)」でいうところのthemの対象が、空所(5)の直前部にある複数形findings・questions・rules・cues・conversationalistsのいずれを取っても「家族や友人」とつながりませんので不適と言って良いでしょう。
残る選択肢はa)とf)になります。
多くの東大受験生が選択肢f)をはなから除外し、a)を入れたようです。
ただ、本文のテーマが会話を「終えたい」タイミングの話であるところ、最後の最後で、会話を「始めたい」タイミングの話を持ち出すことには若干の違和感を覚えます。
選択肢f)でいうところのdynamicsについては、空所(2)を含んだ第5段落の冒頭でもHe and his colleagues undertook two experiments to examine the dynamics of conversation.(彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamicsを調べた)と登場しています。マストロヤンニ氏は、被験者を2人ペアにして実験考察しました。
ともなれば、3人以上の会話ならどうかとまで考えられたなら、グループチャットが「多人数間の会話」を指していることに気づけ、選択肢f)を空所(5)に入れることもできたでしょう。
ですが、ここまで、頭が回らなかった受験生も多かったようで、最後の最後まで、a)とf)の間で悩み、さらには既に確定したはずの他の選択肢までゼロから吟味し始め、かなりのタイムロスをしてしまったようです。
入試は満点を取るゲームではありませんから、この1問を捨てても構わないと覚悟を決めることも時には必要です。
2点を取るために、20点を失うことだけは避けねばなりません。
120分で120点、つまり、1分で1点稼ぐスタンスで臨むべき試験が東大英語だということを肝に銘じましょう。
なお、ここで未確定だった空所(2)を再考します。
🔵 空所(2)の再考
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamics(⚠︎人間関係など会話に影響を与えるあらゆる事柄の相互関係を「力学」と称している)を調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。 (2) 被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
空所(2)を最初に検討した段階で、なかなかピッタリはまる選択肢が見つかりませんでしたね。
東大1Bでは例年2個程度の空所はすぐさま確定できるのですが、最後まで頭を悩ます選択肢も2個程度あります。
本年で言えば、空所(2)と(5)が東大教授が用意した「ワナ」だと感じました。
ここで、既に確定している空所(1)(3)(4)で選んだ肢を除外した選択肢群を再掲すると
a) 話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。
c) それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。
f) グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?
の3つとなります。いずれを入れてもピンと来ないかと思いますが、誰が見ても明らかな答えを選ぶよりも、論理的に矛盾しているもの、唐突な新情報に対して補足フォローが直後になされていないものを外す消去法を実施する必要が時としてあります。
差のつく空所では、正解の選択肢は「光らない」と申しましたが、それが意味するのは、万人が見て納得する選択肢でなくても、矛盾がなければ選ぶ必要が時としてあるのだということです。
この感覚を是非とも東大過去問で培っていただきたいのです。
では、実際に各選択肢を当てはめてみましょう。
吟味検討コーナー 空所(2)に選択肢aを入れてみた
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamicsを調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。(話し相手がいつ会話を始めたいと思っているのかを誰しもが正確に推測することなど、どうやったら可能になるのだろうか。) 被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
これは、空所前後の内容と真逆を指していますから、「論理的に」外さなくてはならない選択肢となります。会話を「終わらせる」タイミングについて調べている実験のなかで、いきなり、会話を「いつ始めたいか」という疑問文が来るのは文脈を破壊することになってしまいます。
吟味検討コーナー 空所(2)に選択肢cを入れてみた
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamicsを調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。(それらのほとんどは、家族や友人と取り交わされた。) 被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
選択肢c)は、正直、唐突感があり、一見して「なに、これ?」と思われた方も多いでしょう。
ですが、「論理的に」入れてはいけない選択肢なのかというと、そこまでではありません。
直近に交わされた会話が、家族や友人となされたと補足説明しているだけとも判断できます。さらには、次の第6段落で
2つ目の実験は、実験室で行われた。 研究者達は252名の実験参加者を見知らぬ人とペアを組ませ、 1分から45分の間であれば、話したいことを何だってかまわないので話すよう指示した。 その後、研究チームは被験者達に( イ )を尋ね、そして、同じ問いに対して、話し相手がどう答えるのかについて推測するように依頼した。
第二の実験では、「見知らぬ人とペアを組ませた」とあります。つまり、第一の実験では、親しい人との会話を主たる対象とし、第二の実験では、顔も名前も知らない人との会話を考察対象としているわけです。このように対比してみたならば、選択肢c)を空所(2)に入れても問題ないように思えます。
吟味検討コーナー 空所(2)に選択肢fを入れてみた
彼と彼の同僚達は、 2つの実験を通じて、会話におけるdynamicsを調べた。 最初の実験では、オンラインで参加した806名の被験者に、直近に交わされた会話の持続時間について尋ねた。(グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?) 被験者達は、会話のなかで話を終わらせたいと思った時があったのかどうかを報告し、会話が実際終わった時点と比べてそれがいつだったのかを推定した。
では、最後に、選択肢f)を入れて考えてみましょう。先の考察も合わせてご参照いただきたいですが、空所(2)の直前では、被験者達に会話の持続時間について尋ねられたばかりです。
そんななか、いきなり、「グループチャットのdynamicsについてはどうだろうか?」という、会話の持続時間と全く関係のない質問事項を付加するというのは「論理的に」外さなくてはいけないはずです。
空所直後で詳しい補足説明がなされているならまだしも、そのような記述も見当たりません。以上より、空所(2)には選択肢c)が入ると確定します。
以上より、空所(1)〜(5)が一通り確定しましたので、最後に正解の選択肢を挿入した本文を掲載したいと思います。
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2021年東大英語(第1問B 文挿入(段落整序))入試問題の研究