必要条件で絞って、十分性をチェックするってどういうことなのか、超かみ砕いて説明した

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突然ですが、まず次の問題を見てください。

2、3、4、6、8の最小公倍数を求めよ。

小学生でも解ける問題ですね。答えは24です。こんな簡単な問題、なにが意味あるんだ、と思うかもしれませんが、これが必要条件と十分条件の説明につながるので、少し待ってください。

では、まずは必要条件と十分条件の定義の復習です。

目次

ベン図で、言葉の意味をつかみます

整数について、P を「4の倍数である」、Q を「偶数である」という条件とします。4の倍数はすべて偶数なので、P を満たす数の集まりは、Q を満たす数の集まりの中に入ります。

整数全体の中で、4の倍数の集合Pが偶数の集合Qに含まれるベン図。Pの中は4、8、12など。QのうちPの外は2、6、10など。Qの外は1、3など。
P⇒Q(4の倍数なら、偶数)

さて、4の倍数(P)ならば、必ず偶数(Q)となりますね。このようなとき、Q は P の必要条件といい、P は Q の十分条件と言います。

つまり、4の倍数であるためには、偶数であることが必要なのです。だから、偶数でない数は、4の倍数の候補から外せます。

また、4の倍数だと分かれば、それだけで偶数だと言えます。偶数だと結論するには、4の倍数であることで十分です。

矢印を逆にしてよいとは限りません

ここで、図の6を見てください。Q の中にいても、P の中にはいませんね。ですから、「偶数だから4の倍数」とは言えません。必要条件を満たす数には、本当の答え以外も含まれることがあるのです。

一方、両方向、つまり P から Q も、Q から P も言えるときは、互いに必要十分条件であるといいます。

このページの結論

P から Q が言えるとき、Q は P の必要条件、P は Q の十分条件です。次のページで、この言葉を最小公倍数の計算に当てはめます。

導入 普段の計算を振り返る:必要条件で絞り、十分性を確認する

では、冒頭の最小公倍数の問題に戻りましょう。

先ほど、最小公倍数を求めたとき、無意識に「あ、6と8だけ見て最小公倍数を求めればよいな」と気づきませんでしたか?

6の倍数は2の倍数に含まれるし、3の倍数にも含まれる。

8の倍数は4の倍数に含まれる。

ということは、2と3と4は考えずに、6と8だけに注目すれば、最小公倍数が求められるな。

もしかしたら、注目したのが、6と8ではなかったかもしれませんが、似たようなことをした人が多いはずです。

そして、この瞬間、あなたは必要条件を求めて、十分性を確認しているのです。

具体的に書くと、

① 6と8だけに注目して公倍数を求め、一番小さいものを探して24とする

② 2と3と4は、6や8の約数だから、わざわざ調べる必要はない

(つまり、2と3は6の約数、4は8の約数なので、6と8の最小公倍数24を求めたら、自動的に2と3と4の公倍数にもなっていることを確認している)

という二つを頭の中でやったはずです。

②を先に行い、①を後で行ったかもしれませんが、両方が合わさって、答えの24にたどり着いているはずです。

この①が必要条件で候補を絞る作業で、②が十分性を確認している作業なのです。

もう少し一般化すると、複数の条件があるとき、特定のいくつかの条件だけを使って候補を絞るのが必要条件を使うことで、絞った候補が残りの条件を満たすか確認するのが十分条件の確認なのです。

しかし、まだなぜ、必要条件なのか、十分条件なのか、分からないと思いますので、次は図を描きながら説明しましょう。

このページの結論

①で候補を絞り、②で残りの条件も満たすことを確かめています。両方の理屈が合わさって答えになることを、次のページで矢印と図から確認します。

導入 最小公倍数をベン図で見る:必要条件が、十分条件にもなっているか

先ほどの計算を、ベン図と言葉で確かめてみましょう。正の整数 n について、次のように決めます。

  • P:n は2、3、4、6、8すべての公倍数である。
  • Q:n は6と8の公倍数である。

5つのすべての公倍数なら、6と8の公倍数でもありますね。つまり

P⇒Q

です。このとき、Q は P の必要条件となっていますね。

さて、Q とは「n は6と8の公倍数である」です。具体的には、「n=24,48,72,…」となりますね。

では、Q⇒P は言えるでしょうか

具体的には、「n=24,48,72,…」ならば、「P:n は2、3、4、6、8すべての公倍数である」と言えるかどうかを考えてみましょう。

といっても、これは考えればすぐに分かりますね。

24も48も72も(もちろん、それ以降も)、2の倍数だし、3の倍数だし、4の倍数だし、6の倍数だし、8の倍数です。これらはすべて n=24k(k は正の整数)と書け、24が2、3、4、6、8の倍数なので、24k もそれぞれの倍数です。

よって、Q⇒P も言えました。(Q は P の十分条件になっていると確認できました。)

よって、P⇔Q(P は Q の必要十分条件)となることが分かりました。

このように、はじめに必要条件について考え、あとから十分条件にもなっていると確かめることで、必要十分条件になることを証明できます。

正の整数全体の中で、2、3、4、6、8すべての公倍数の集合Pと、6と8の公倍数の集合Qが一致する図。共通の領域は24、48、72など。

図の P と Q は同じ領域です。その共通の集合 24,48,72,… から最小の正の数24を選ぶので、5つすべての最小公倍数も24と分かります。

このページの結論

P⇒Q で必要性を、Q⇒P で十分性を示しました。両方向が言えたので、P と Q は必要十分条件です。

導入 友達と集まる日時を決める:一人の予定から絞り、全員の条件を確かめる

このように、複数の条件が提示されたときに、特定のいくつかだけに注目して考えることはありませんか?

例えば、友達みんなで集まる日を決めるときです。部活や帰る時刻など、いろいろな条件が出てきますね。そのとき、「まずは、特に予定の詰まっている人の空いている日時に注目すればよいな」と考えることがあると思います。

では、A、B、Cの3人で考えましょう。候補は土曜午前・土曜午後・日曜午前・日曜午後の4つとします。午前は10〜12時、午後は14〜16時で、帰る時刻も含めて参加できる枠を確認したところ、次のようになったとします。

  • Aさん:土曜午後と日曜午前に参加できる。
  • Bさん:日曜午前と日曜午後に参加できる。
  • Cさん:土曜午前と日曜午前に参加できる。

P を「3人全員が参加できる」、Q を「Aさんが参加できる」としましょう。全員が参加できるなら、Aさんも参加できますね。

P⇒Q

したがって、Q は P の必要条件、P は Q の十分条件です。「全員が参加できる」と分かれば、「Aさんが参加できる」と言うには十分なのです。

候補日時のベン図。全員が参加できる集合Pは日曜午前。Aさんが参加できる集合Qは日曜午前と土曜午後。Qの外は土曜午前と日曜午後。

絞り込みと、十分性の確認はどこでしょうか

まず Q で絞ると、候補は土曜午後と日曜午前です。ただし、Q だけから P とは言えません。土曜午後にはAさんが参加できても、BさんとCさんは参加できませんね。

そこで、残りの条件 R を「BさんもCさんも参加できる」とします。候補の日曜午前は R も満たすので、全員が参加できると確かめられます。

Q かつ R⇒P

これが、この日時についての十分性の確認です。一人の都合だけで決定せず、残りの人の条件まで合わせて、初めて全員を保証できました。

このページの結論

一人の予定は候補を絞るための必要条件です。残りの人の条件も確かめて、全員が参加できることを保証します。Q だけを P の十分条件だと思わないようにしましょう。

導入 希望に合う物件を探す:調べる順番と、満たすべき条件を分ける

他にも、物件を探すとき、駅の近くがよい、家賃は10万円以内、日当たりがよい、など、いろいろな希望があります。この三つをすべて満たしたいとしましょう。

まずは駅近くの物件から探して、次に家賃が10万円以内のものを選び、その中で日当たりも確認する、という探し方ができますね。まず候補を絞りやすそうな条件から調べるのは、自然なことです。

説明のため、検討する物件が次の架空の4件だったとします。「駅の近く」「日当たりがよい」の基準は、あらかじめ同じ基準で決めておきます。

物件

駅との距離

家賃

日当たり

甲

近い

9万円

よい

乙

近い

12万円

よい

丙

近い

8万円

よくない

丁

遠い

8万円

よい

P を「三つの希望をすべて満たす」、Q を「駅の近くにある」とします。三つ全部を満たす物件なら、駅の近くにもありますから

P⇒Q

です。ここでも、Q は P の必要条件、P は Q の十分条件ですね。

物件のベン図。三条件すべてを満たす集合Pは甲。駅の近くの集合Qは甲、乙、丙。乙は家賃が条件外、丙は日当たりが条件外。丁は駅から遠い。

駅の近くだけでは、まだ決められません

Q で絞ると丁が外れ、甲・乙・丙が残ります。ところが乙は家賃、丙は日当たりが条件外なので、Q だけから P とは言えません。

そこで R を「家賃が10万円以内で、日当たりがよい」とすると、甲は Q と R の両方を満たします。つまり

Q かつ R⇒P

によって、甲が三つ全部を満たすと保証できます。これが十分性の確認です。先に調べる条件を選んでも、最後に満たすべき条件は減らしていません。

このページの結論

必要条件で外れる候補を除き、残った候補について残りの条件も確かめます。調べる順番を工夫することと、条件を省いてよいことは別です。

1 使い慣れた二次関数で考える:必要条件で絞り、平方完成で全体を示す

例題1 すべての実数 x に対して

x2−2x+a≥0

が成り立つような、実数 a の範囲を求めます。

答えは a≥1 です。

まず、普段の解き方を思い出しましょう

このように「指定された範囲のすべてについて成り立つ」という条件を全称条件といいます。この冊子では、その条件を満たすための条件を求める問題を全称問題として扱います。

この問題なら、判別式や頂点を使う解き方が浮かぶと思います。y=x2−2x+a は上に開く放物線なので、次のどちらでも解けます。

判別式を使うときは、グラフが x 軸と異なる2点で交わらなければ、全体で0以上です。接する場合もよいので

D=(−2)2−4a=4−4a≤0⇔a≥1

です。

頂点を使うときは、y=(x−1)2+a−1 より、頂点は (1,a−1) です。その y 座標が最小値なので

a−1≥0⇔a≥1

と求められますね。

実は、これは必要条件と十分条件で解けます。今の計算を手掛かりにして、「まず一つの値で候補を絞り、次に全体を確かめる」という流れで考えてみましょう。

必要条件:軸の x=1 を調べます

まず、平方完成してみましょう。x2−2x+a=(x−1)2+a−1 なので、放物線の軸は x=1 ですね。(x−1)2 が0になるこの点で、左辺は最小になります。普段の平方完成が、いちばん厳しい場所を教えてくれます。 そこで、x=1 を調べます。すべての x で成り立つなら、ここでも成り立つはずなので

1−2+a≥0⇒a≥1

が必要です。候補は a≥1 に絞れました。

このページの結論

判別式でも頂点でも、答えは a≥1 です。必要条件から考えると、x=1 の検査で同じ候補が得られます。次に、その候補が全体で使えることを示します。

1 使い慣れた二次関数で考える・続き:候補から、すべての実数へ戻る

先ほど、x=1 を調べて a≥1 が必要だと分かりましたね。では、この条件で本当に十分かを確かめましょう。

逆に、残った候補で全体を確かめます

今度は a≥1 を出発点にして、元の条件へ戻ってみましょう。どの実数 x を選んでも、平方は0以上なので

x2−2x+a=x2−2x+1+(a−1)=(x−1)2+(a−1)≥0

となります。つまり、二つの項がともに0以上なので、残りのすべての x でも成り立つわけです。

a≥1

一方、x=0 だけを調べて終えるとどうなるでしょうか

x=0 を選んでも、元の条件から a≥0 が必要だと分かり、a<0 は除けます。では、これをそのまま答えにしてよいでしょうか。

たとえば a=12 は a≥0 を満たしますが、x=1 では

1−2+12=−12<0

となってしまいます。ですから、答えを a≥0 とはできません。x=0 の検査には合格しても、元の条件には不合格なのです。

このページの結論

一つの値で得た条件は、まだ候補です。残った範囲でどの x でも0以上となる理由を示すと、答えにできます。

2 区間のすべてで成り立つ:両端で成功しても、途中で失敗します

例題2 0≤x≤3 のすべての実数 x で

x2−4x+a≥0

が成り立つような、実数 a の範囲を求めます。

答えは a≥4 です。

両端を調べるだけでは足りません

まず両端の x=0,3 を調べてみましょう。それぞれ

a≥0,9−12+a≥0

です。合わせると a≥3 が必要ですが、これで十分でしょうか。a=3 のとき、区間内の x=2 では

22−4⋅2+3=−1<0

となります。区間の両端が大丈夫でも、区間全体が大丈夫とは限りません。

区間内の最小になる点を見つけます

そこで、平方完成してみましょう。

x2−4x+a=(x−2)2+a−4

と書けます。x=2 は区間 0≤x≤3 に含まれ、そこで最小値 a−4 を取りますね。

したがって、元の条件が成り立つなら x=2 でも成り立つので、a−4≥0、つまり a≥4 が必要です。

候補がすべて使えることを示します

では、逆に a≥4 ならどうでしょうか。0≤x≤3 のどの x に対しても、(x−2)2≥0 かつ a−4≥0 なので、x2−4x+a≥0 が成り立ちます。よって

a≥4
y=xの2乗−4x+3のグラフ。区間0以上3以下で、端点は(0,3)と(3,0)、頂点は(2,−1)。両端では0以上でも途中で負になる。

図は a=3 の場合です。端点では0以上でも、x=2 では負になります。

このページの結論

区間の両端だけでは、途中での失敗を見落とすことがあります。指定された区間全体での最小値を確かめれば、全体の成立を判断できます。

3 二つの値で候補を絞る:候補が正しくても、全体の説明は必要です

例題3 すべての実数 x に対して

x2+ax+1≥0

が成り立つような、実数 a の範囲を求めます。

答えは −2≤a≤2 です。

必要条件を出します

今度は、計算しやすい x=1 と x=−1 を調べてみましょう。すべての x で成り立つなら、この二つでも成り立つはずです。

x=1:1+a+1≥0⇒a≥−2x=−1:1−a+1≥0⇒a≤2

両方を満たす必要があるので、候補は −2≤a≤2 まで絞れました。

候補の範囲で、すべての x をまとめて確かめます

では、この候補なら残りの x でも大丈夫でしょうか。逆に −2≤a≤2 とすると、a2≤4 なので

1−a24≥0

です。そこで平方完成すると、どの実数 x に対しても

x2+ax+1=x2+2⋅a2x+a24+1−a24=(x+a2)2+1−a24≥0

となります。したがって、候補の a はすべて元の条件を満たします。

−2≤a≤2

「2点で調べたから十分」ではありません

結果を見ると、2点から得た候補が、そのまま答えになっていますね。ただし、2点での成功だけでは、それ以外の点での成功は説明できません。上の平方完成まで示したからこそ、この候補で十分だと分かるのです。

最後に端も見ておきましょう。a=2 では (x+1)2、a=−2 では (x−1)2 です。どちらも0以上なので、両端を含めてよいわけです。

このページの結論

特定の値から正しい答えの範囲が出ても、そこで証明は終わりません。残した候補がすべて使えることを、全体の式で保証します。

4 すべての自然数で成り立つ:無限個を、一つの式で確かめます

例題4 すべての自然数 n=1,2,3,… に対して

n2−an+1≥0

が成り立つような、実数 a の範囲を求めます。

答えは a≤2 です。

必要条件:まず最初の自然数を入れます

まず、最初の自然数を入れてみましょう。すべての自然数で成り立つなら n=1 でも成り立つので

1−a+1≥0⇒a≤2

が必要です。ここまでは、n=1 の検査を通る a を残しただけです。

十分性:n を特定せずに計算します

では、逆に a≤2 で全体を確かめましょう。どの自然数 n でも n>0 なので

(2−a)n≥0

です。また、(n−1)2≥0 も使えますね。そこで、この二つが現れるように式を分けてみましょう。

n2−an+1=n2−2n+1+2n−an=(n−1)2+(2−a)n≥0

したがって、すべての自然数で元の不等式が成り立ちます。

a≤2

なぜ、この一つの計算で無限個を確認できたのでしょうか

上の計算では、n=1 や n=2 と固定していませんね。「平方は0以上」「自然数 n は正」という共通の事実を使ったので、どの自然数にも同じ説明ができるのです。

数個だけ試す方法との違い

これに対して、n=1,2,3,4 を順番に入れて全部成功しても、n=5 以降については何も示せていません。「ほかも同様に成り立ちそう」は、十分性の証明の代わりにはなりません。

別冊第6問の 2n−an≥0 では、数学的帰納法で全体を示します。どの方法を使うかは、問題の式に合わせて選びましょう。

このページの結論

無限個の値は、数個の成功例では確かめられません。どの自然数にも使える不等式や帰納法で、残りをまとめて示します。

5 選ぶ値に文字が入ってもよい:条件が「すべて」なら、x=a も選べます

例題5 すべての実数 x に対して

(x−a)2≥x2

が成り立つような、実数 a を求めます。

答えは a=0 です。

必要条件:左辺が0になる値を選びます

ここでは、左辺が0になる x=a に注目してみましょう。元の条件を満たす実数 a を一つ固定すると、x=a も実数ですね。すべての実数 x で成り立つのですから、この値でも成り立つはずです。

(a−a)2≥a2⇒0≥a2

一方、実数の平方は0以上なので a2≥0 でもあります。両方を満たすには

a2=0⇒a=0

が必要です。

十分性:その値で元の条件へ戻ります

逆に a=0 とすると、どの実数 x に対しても

(x−a)2=(x−0)2=x2

です。つまり、どの x でも等号が成り立つので、元の不等式を満たします。

a=0

「x=a と勝手に決めてよいの?」

ここは、前半と後半を分けて考えてください。すべての x について示す後半では、x=a だけに限定できません。一方、必要条件を得る前半では、全体の中の一つを選べるのです。

ここでは「どんな a も答えだ」としているわけではありません。答えとなる a があれば、その a に対して x=a の検査も通る必要がある、という順番です。

ここまで選んだ値の役割

ここまで選んできた値は、まず候補を絞るためのものでしたね。それだけで全体を調べたことになるわけではないので、次の区別を押さえておきましょう。

  • 代入して失敗する候補は、確実に外せます。
  • 代入して成功する候補は、まだ残すだけです。
  • 平方完成、因数分解、増減、帰納法などで全体を示すと、答えにできます。

このページの結論

必要条件を得るときは、x=a のような値も選べます。十分性では x をその値に限定せず、すべての xへ戻ります。

6 「存在する」は何を求める問題か:少なくとも一つ、解を作れる a を探します

例題6 x2−2ax+a+2=0 が実数解をもつような、実数 a の範囲を求めます。

結論は a≤−1 または a≥2 です。この範囲の a なら実数の解 x が見つかり、それ以外の a なら見つかりません。

答えるのは、x の値ではなく a の範囲です

まず、具体的に見てみましょう。a=2 なら x2−4x+4=0 となり、x=2 が解です。一方、a=0 なら x2+2=0 となり、実数解はありません。今回は、どの a なら解が見つかるかを調べるのです。

必要条件を出します

実数解 x があるとして、方程式を変形してみましょう。

x2−2ax+a+2=0x2−2ax+a2=a2−a−2(x−a)2=(a−2)(a+1)

と変形できます。左辺が0以上ですから、(a−2)(a+1)≥0 が必要ですね。a<−1 では両因子が負、−1<a<2 では異符号、a>2 では両因子が正なので、境界も含めると

a≤−1またはa≥2

が候補です。

十分性:候補の a から、実際に解を一つ作ります

では、この候補から解を作ってみましょう。この範囲の a なら (a−2)(a+1)≥0 なので

x=a+(a−2)(a+1)

とおけば、この x は実数で、(x−a)2=(a−2)(a+1) を満たします。変形を逆に戻すと

x2−2ax+a+2=(x−a)2−a2+a+2=0

です。元の方程式に戻れたので、本当に実数解が存在すると分かりました。境界では平方根が0になるだけですから、a=−1,2 も含む範囲が答えです。

「すべて」との違い

今回は「存在する」ことが目標なので、解を一つ作れば十分でしたね。一方、「すべて」なら、どの値でも大丈夫な理由が必要です。なお、この例の判別式は D=4(a−2)(a+1) です。D≥0 を使う解法にも、ここで示した両方向が含まれています。

このページの結論

「存在する」は、条件を満たすものを一つ作れば十分です。「すべてで成り立つ」は、一つ作るだけでは足りません。

7 平方すると候補が増える:符号を消したあと、元の式へ戻ります

例題7 x+6=x を満たす実数 x を求めます。

答えは x=3 です。

解答例

元の式を満たす実数 x があるとします。平方根が定義されるので x+6≥0 です。また、平方根は0以上なので、右辺も x≥0 です。

両辺を平方すると

x+6=x2x2−x−6=0(x−3)(x+2)=0

より x=3,−2 です。x≥0 なので、候補は x=3 だけです。

逆に x=3 のとき

x+6=3+6=9=3=x

であり、元の式を満たします。したがって

x=3

必要性・十分性の確認ポイント

ここで、平方して得た x+6=x2 に注目してください。これは、元の式が成り立つなら必ず成り立ちます。しかし逆は、平方だけでは言えません。なぜなら、異なる数 2 と −2 も、平方すると同じ 4 になるからです。

そこで、余分な候補 x=−2 を元の式に戻してみると

−2+6=2≠−2

です。平方した方程式の解であっても、元の方程式の解ではありません。

すべて同値な変形なら、十分性は途中に含まれます

では、符号の条件も一緒に残すとどうでしょうか。この例では

x+6=x⇔x≥0かつx+6=x2

と書けます。右側からは x+6=x2≥0 と分かり、さらに

x+6=x2=|x|=x

と戻れます。逆向きがどこで保証されているかが大切です。全段階が同値と説明できるなら、最後に同じ代入検査を繰り返す必要はありません。

このページの結論

平方は符号の違いを消すため、余分な候補が出ることがあります。元の式への代入か符号も含めた同値変形で、逆向きを確かめます。

8 置き換えと変数の範囲:新しい文字の解が、元の解とは限りません

例題8 4x+2x−6=0 を満たす実数 x を求めます。

答えは x=1 です。

解答例

t=2x とおきます。実数 x に対して 2x>0 なので、必ず t>0 です。また

4x=(22)x=(2x)2=t2

なので、方程式は

t2+t−6=0(t+3)(t−2)=0

となります。よって t=−3,2 ですが、t>0 により t=−3 は除きます。

t=2 から 2x=2=21 となり、指数関数 2x は単調に増加するので x=1 です。逆に x=1 なら

41+21−6=4+2−6=0

です。したがって

x=1

範囲を持っていかないと、どこが間違うのでしょうか

t2+t−6=0 から t=−3,2 が出る計算自体は正しいですね。では、両方を元の x に戻せるでしょうか。実は、t=−3 を作る実数 x はありません。なぜなら、どんな実数 x でも 2x>0 だからです。

ですから、「t の方程式に実数解があるので、元の x の方程式にも実数解がある」とだけ言ってしまうと、元の文字から作れない t を使って存在を結論する危険があります。たとえば 2x=−3 は、t=−3 と書き直せても実数 x では解けません。

十分性で確かめるのは、二つのことです

そこで、置き換えたあとは、次の二つを順に確かめましょう。

  1. 残した t が、元の実数 x から本当に作れること。
  2. その x が、元の方程式を満たすこと。

一般に t>0 なら x=log2t とおけるので、2x=t が実現します。この例でも、t=2 から具体的に x=1 と戻し、元の式を満たすことまで確かめましたね。置き換えは「t=2x、t>0」をひとまとまりで使います。

このページの結論

置き換えた文字の解が出ても、まだ元の解とは限りません。変数の範囲を保ち、元の文字から作れることまで確かめます。

9 置き換えの範囲を両方向から確かめる:「その範囲しか取れない」と「全部取れる」

例題9 実数 x≠0 に対して t=x+1x とおきます。t の範囲は

t≤−2またはt≥2

です。

範囲の外が無理なことと、範囲の中がすべて可能なことを確かめます。

まず、この範囲に入ることを示します

まずは、x の正負に分けて考えましょう。x>0 のとき、(x−1)2≥0 を正の数 x で割ると

x−2+1x≥0⇒t≥2

です。一方、x<0 のときは、先ほどの正の数の場合を使うために u=−x>0 とおくと

t=−u−1u=−(u+1u)≤−2

です。したがって t≤−2 または t≥2 が必要です。

逆に、その範囲の t をすべて作れることを示します

ここまでで、範囲の外は無理だと分かりました。では、中の値は本当に全部取れるでしょうか。t≤−2 または t≥2 とすると t2−4≥0 です。x+1x=t を満たす x≠0 を探すため

x2−tx+1=0

を考えます。判別式は t2−4≥0 なので、実数解

x=t±t2−42

をもちます。ただし、元の式に戻すには x≠0 も必要ですね。この方程式に x=0 を入れると左辺は1なので、解は0ではありません。したがって x で割って x+1x=t に戻せます。こうして、上の範囲のどの t も実現できました。

このページの結論

置き換えの正確な範囲は、その範囲に入ることとその範囲のどの値も作れることの両方を示して決めます。

9 置き換えの範囲・続き:範囲のずれは、答えのずれになります

前のページで、実数 x≠0 に対して

t=x+1xの正確な範囲は|t|≥2

と分かりましたね。では、この範囲を省いたり変えたりすると、どこで困るのでしょうか。二つの間違い方を見てみましょう。

存在しない x に対応する、余分な候補を残す誤り

まず、次の方程式を考えてみてください。

(x+1x)2=1(x≠0)

t=x+1x とおくと t2=1 なので、t=1,−1 が出ます。ところが、どちらも |t|≥2 の範囲に入っていませんね。この t を作れる実数 x はなく、元の方程式は実数解をもちません。

作れない値にも要求して、本当の答えを落とす誤り

今度は、範囲を広げるとどうなるか考えましょう。|t|≥2 なら |t|≥1 でもあります。しかし、「|t|≥1 のすべてで成立」と要求すると、実際には取れない値まで調べることになるので、元より厳しい問題に変わります。

たとえば、x≠0 では

x4+1×2=t2−2

です。左辺は分子も分母も正なので、必ず正ですね。正確な範囲 |t|≥2 を使えば、右辺も t2−2≥2>0 となり、同じ結論になります。

ところが「|t|≥1 のすべてで t2−2≥0」を要求すると、t=1 で −1<0 となり失敗します。元の x から作れない値まで検査したため、本来成り立つものを誤って落としたのです。

別冊第8問でも、この区別が大切です。t の範囲を正確に決めてから、その全範囲で二次式が0以上かを調べていきましょう。

このページの結論

存在を考えるときも「すべて」を考えるときも、元の変数から実現する範囲を使います。元の問題と同じ条件に置き換えるには、正確な範囲が必要です。

10 答案を最後まで書く・準備:計算しやすい値から候補を絞ります

例題10 すべての実数 x に対して

x2+ax+a≥0

が成り立つような、実数 a の範囲を求めます。

結論は 0≤a≤4 です。

最初に、何を求める問題か確認します

最後は、答案までつなげてみましょう。求めるのは a の範囲ですね。一つの a を決めたら、x をどの実数に動かしても成り立つ必要があり、x を一つ見つけるだけでは足りません。

必要条件を探すための計算

まず x=0 から a≥0 が必要ですね。では、x=−1 を試すと

1−a+a=1≥0

となり、a の条件は出ませんね。こんなときは、別の値を試してかまいません。

そこで x=−2 を代入すると

4−2a+a≥0⇒a≤4

が得られます。したがって候補は 0≤a≤4 です。

十分性のための式を準備します

候補が出たので、次は全体の確認です。どの x でも0以上と示すため、平方を作ってみましょう。

x2+ax+a=x2+2⋅a2x+a=x2+2⋅a2x+a24+a−a24=(x+a2)2+4a−a24=(x+a2)2+a(4−a)4

ここで、候補の条件を使います。0≤a≤4 なら a≥0 かつ 4−a≥0 なので、後ろの項も0以上になりますね。これで、候補の範囲が十分だと示せそうです。

次のページが、提出できる一続きの答案です

では、答案にまとめましょう。試行錯誤をすべて書く必要はありません。候補を絞れた代入と、全体を保証する平方完成を残します。この解法では、必要条件だけで答案を終えず、「逆に」から後まで書きます。

このページの結論

代入で候補を絞ったら、次は全体の確認を準備します。平方などの0以上の式に分けると、十分性を示す見通しが立ちます。

10 答案を最後まで書く・完成:解答例と、その読み方

解答例

すべての実数 x に対して x2+ax+a≥0 が成り立つとします。

x=0 を代入すると a≥0 です。また、x=−2 を代入すると

4−2a+a≥0

より a≤4 です。したがって

0≤a≤4(1)

が必要です。

逆に、a が (1) を満たすとします。このとき a≥0 かつ 4−a≥0 なので、どの実数 x に対しても

x2+ax+a=(x+a2)2+a−a24=(x+a2)2+a(4−a)4≥0(2)

となります。よって、すべての実数 x で元の不等式が成り立ちます。

以上より、求める必要十分条件は

0≤a≤4

です。

答案のどこで何を確かめたでしょうか

まず、(1) までを見てください。ここが必要性です。元の条件が成り立つなら、特定の二つの値でも成り立つはずでしたね。だから、この絞り込みで本当の答えを落とすことはありません。

次に、(2) が十分性です。候補の範囲の a をどれでも選べる形で、さらに x も特定せずに0以上と示しました。つまり、残した候補は全部使えるので、余分なものもないと分かります。

最後に、境界も確かめておきましょう。a=0 なら左辺は x2、a=4 なら (x+2)2 ですね。いずれも0以上なので、両端を含む結論とも一致します。

このページの結論

「全称問題」の答案は、必要条件で候補を絞る→十分性で全体を保証する→結論を書くの順です。この二方向で、余分も取りこぼしもない答えになります。

 

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