2026年東大英語(第5問 物語読解)入試問題の解答(答案例)・解説
目次
- 【2026年東京大学 英語第5問総括】6年ぶりに小説がでました。状況把握が難しく、本問で多くの時間を溶かした受験生も多かったはずです。
- 【本文全体の流れ】
- 設問(A)最初の設問だからと言って簡単というわけではありません。いったん後回しにすべき問題です。
- 設問(B)情景を自分なりに描写できると早くに答えにたどり着けたでしょう。
- 設問(C) 一世を風靡した描出話法に関する和訳問題です。文脈を把握できれば、それほど難しくはありません。描出話法という言葉に踊らされないようにしましょう。
- 設問(D)(27)the schedule is this : の意味をうまく理解できなかった受験生には酷な1問でした。
- 設問(D)(28)前問に引き続き、熟語力が問われています!
- 設問(D)(29)downの意味を考えるとわかりやすかったかもしれません。お掃除を手伝ったことのある方には易問でしょうか。
- 設問(D)(30)使われている単語は簡単なのになぜか答えをうまく導けない、東大らしい1問でした!
- 設問(D)(31)なんだか私大入試のような問題ですね。実は2007年の第5問でも問われています。
- 設問(D)(32)心情を把握できれば容易に正解できます。困った時は消去法で攻めましょう。
- 設問(D)(33)家政婦さんの真意はいずこに?困った時は消去法で攻めよう!
- 設問(D)(34)本文の表現技法が問われています。まるで共通テストの国語のような問題です。
- 【さらに深く学びたい方のために】
【2026年東京大学 英語第5問総括】6年ぶりに小説がでました。状況把握が難しく、本問で多くの時間を溶かした受験生も多かったはずです。
2023〜2025年と非常に読みやすい文章が出されており、満点奪取も不可能ではなく「お得な問題」とされていた第5問でしたが、ここに来て、東大英語部会が本気を出して来ました。
純粋な小説が6年ぶりに出題され、冒頭からのストーリー展開を正確に把握しませんと、いったい何を言っているのかうまく掴めないまま、全問落としてもおかしくはない問題セットでした。
要するに、お得な設問がほとんどなかったわけです。
第5問から解き始めてリズムを掴んだうえで、他の大問も撃破するという試験戦略を打ち立てている受験生は例年かなりいますが、今年度は出鼻をくじかれ、頭が真っ白になった受験生も多くいたことでしょう。
塾生にも注意喚起をしておりますが、解く順番は最低でも2つ設けるようにしてください。
僕は必ず第●問から解きたいんだという執着が、時として自分の首を締めることにもなります。
事務処理能力テストと揶揄されることの多い東大英語においては、1つの問題に執着することなく、総合得点を上げるために切り捨てる勇気も重要です。
なお、今年度の設問(C)では描出話法が登場しまして、巷ではかなり話題になりました。
ただ、後述するところではありますが、描出話法を知っているかどうかが重要なのではなく、文脈に沿って登場人物が何を言おうとしているのかを掴み取れる力が重要なのです。
誰が誰に語りかけているのか、回想シーンやら、主人公の心の声やらが登場する小説(物語文)だからこそ登場する話法ではありますが、専門的な知識がなければ読めないわけではありません。
きちんと、誰が誰に対して、どのような場面で語りかけた言葉なのかを考えれば、自ずと答えは定まるようにできています。
今年度に関しては簡易解説に留めておりますが、2023年〜2024年度の第5問につきましては、日本一(?)詳しく解説をしておりますので、併せてご参照いただけると力がつくと思います。
(2023年第5問実況中継解説)映像授業【東大英語 第5問 エッセイ(物語読解)】に入っています。
(2023年第5問ざっくり解説)https://exam-strategy.jp/archives/13371
(2024年第5問実況中継解説)https://exam-strategy.jp/archives/20697
【本文全体の流れ】
2026年度第5問では、家政婦のMrs.Hatanoと、その雇用主夫妻の3人がメインで話が進められていきます。
雇用主の奥さんが亡くなっていますから全体的にどんよりした話の展開がなされています。
文章のところどころで段落間に空白部分が設けられていますね。
これは、日本語の小説にもみられるものですが、場面が変わっていることを指し示しています。
この空白地帯を区切りとみなして、2026年の第5問の長文を区分けしますと、「8つ」のゾーンに分けることができます。
以下、各設問の解説をするにあたっても、形式的な段落番号ではなく、これら8つのゾーンで説明を試みたいと思います。
なお、出題形式は記述式3問、空所補充や内容説明などのマーク式問題の8問、合計11問で構成されています。
並べ替え問題は昨年と同様、今年も出題されませんでした。
設問は本文全体に比較的均等に散りばめられていますので、文章全体を読む必要性はありました。
もっとも、時間がなくて空所や下線部前後だけ拾い読みしようとした受験生もいたことでしょう。
この点、今年の空所(27)〜(31)は割と空所前後の拾い読みだけでも答えを出すことができたかもしれませんが、例年より正解の選択肢を選びづらかったと思います。
設問(A)最初の設問だからと言って簡単というわけではありません。いったん後回しにすべき問題です。
長文の一番はじめに書かれているIt is just inside the front door.という文の「It」が指すものを、「物語全体をふまえて」説明するよう要求されています。
このような注意書きがなされているわけですから、一番最後に回すべき問題です。
ゾーン1(⚠︎便宜上、段落間にある大きな空白部分を境に長文全体を8つのゾーンに分けて説明をいたします)の第3段落でいう[the stain]が「シミ」だと訳せると一気に見えてきます。
かりに、「シミ」という意味が思いつかなかったとしても、ゾーン4〜8において、家政婦のHATANOさんがお酢やらスプレーやらで懸命にカーペットの汚れを落とそうとしている描写がみられますから、せめて「汚れ」くらいの訳は紡ぎ出してほしかったです。
このシミの詳細な説明は、下線部(A)からずいぶんと離れたゾーン6でなされます。
That’s where the lady diedとあります。
雇い主の奥さんが亡くなった場所についたシミだと言っています。
さらには、ゾーン8の中盤でも、The white traced shape is like a chalk–drawn victim on a sidewalk.とあります。
家政婦さんがなんとかシミを消そうとしたのですが、かえって目立ってしまい、まるで遺体発見現場に警察が白いチョークで描く犠牲者の跡のように見えてしまったと言っています。
このことに対して、家政婦さんは申し訳ないと思って、ゾーン8の最後の下線部(33)で、In its place she leaves a five–dollar bill from her purse because she still could not get the spot out(その代わりに、彼女は自分の財布から5ドル札を取り出し置いていきました。なぜなら、彼女は、その場所を消すことができなかったからです。)と書かれています。
the spot(その場所)とは、雇い主の奥さんが亡くなってシミになってしまった場所ですね。以上より、
(解答例)
雇い主の奥さんであるthe Mrs.が亡くなった際に付いたカーペットのシミ。
主人公のMrs.Hatanoの雇用者の妻であるThe Mrs.が亡くなったときについた、玄関ホールのカーペットに付着したシミ。
設問(B)情景を自分なりに描写できると早くに答えにたどり着けたでしょう。
ゾーン1(⚠︎便宜上、段落間にある大きな空白部分を境に長文全体を8つのゾーンに分けて説明をいたします)の中盤で、雇い主の妻the Mrs.が逝去したことが物語られていましたが、それを受けてのゾーン2で書かれているのが下線部(B)です。
Upstairs, there is one room she never cleaned. The door was always closed, the Mrs. never well. But the door is open now.とあります。
下線部の直前は過去形で表記されていたのに対し、下線部(B)では現在形になっていることから推測したいところです。
このような時制の対比が見られた場合、過去と現在とでなんらかの「変化」「大きな出来事」が生じたかどうかを考えるのが鉄則です。
雇い主の奥さんが鬼籍に入られたことが「大きな出来事」として挙げられますから、存命中は部屋がしまっていたのに、亡くなられた後に、部屋のドアは開くようになった理由を考えれば解答の方向性は見えてくるはずです。
皆さんの身の回りに、どなたかご体調の悪い方がいらっしゃればイメージしやすいと思うのですが、体調が悪い方は基本的に部屋で横になっていることが多いはずです。
そんなところに、赤の他人である家政婦さんがいくらお掃除のためとはいえ、自由に出入りするというのは当人からしたらイヤなものではないでしょうか。
だからこそ、扉は閉められていたわけです。
ただ、仮にそこまで考えが及ばなかったとしても、「存命中は扉がしまっていたこと」+「逝去後は扉が開いたこと」を書ければ、ある程度の点数はいただけるはずです。
なお、the Mrs. never wellといのはbe動詞が省略されていますから文としては不完全なのですが、小説だから許容されているのでしょう。
彼女が最終的に亡くなったことを加味すると、ここでのnever wellは体調がずっと優れなかったと推測したいところです。
(解答例)
病床に臥していたthe Mrs.の部屋は常にドアが閉められていたが、彼女が亡くなったことを機に、居室のドアは開放されるようになった。
Mrs.Hatanoの雇用者の妻は体調がずっと優れなかったため、居室のドアはいつも閉まっており、Mrs.Hatanoはその部屋をお掃除をする必要がなかった。しかし、雇用者の妻が逝去されたことで、居室のドアが閉ざされることはなくなり、Mrs.Hatanoはその部屋に出入りが可能となった。
⚠︎東大英語の解答欄はかなり書けるだけのスペースがありますが、すべてを埋める必要はありません。残り時間との兼ね合いや、解答根拠に自信があるかどうかを勘案して、記述量を加減してください。
設問(C) 一世を風靡した描出話法に関する和訳問題です。文脈を把握できれば、それほど難しくはありません。描出話法という言葉に踊らされないようにしましょう。
From the doorway the Mr. Says hello. He smiles at Mrs. Hatano and offers to help her make her make up the bed.
(C)Before she can tell him no, he should please read his paper, the man takes two corners of the blanket and flaps it over the mattres. He waits for Mrs. Hatano to smooth out her side. She is unable to tell him, until she does, that the sheet goes first.
東大入試が終わった直後から、予備校の先生や英文学の専門家までもが大激論を交わすこととなった和訳問題です。
描出話法という表現技法が本下線部では用いられているのですが、そうした知識を東大側がどこまで受験生に求めているのかという議論もなされていました。
まず、描出話法とはいかなるものなのかということですが、引用符なしで主人公の心の声や発言を地の文(引用符のない普通の文)で描き出した文のことです。
これだけではよくわからないと思いますので、中学で学ぶ直接話法と間接話法を簡単におさらいしてみましょう。
- My mother said, ” I want to visit New York.” のように、日本語の「 」にあたる引用符を使って発言内容を紹介する文章を直接話法と言います。それに対して、
- My mother said that she wanted to visit New York.のように引用符を使わずthat節だけで、誰かの発言を紹介したものを間接話法と言います。
そして、この直接話法と間接話法の中間をいくものが描出話法と呼ばれるもので、最近では、自由間接話法とも呼ばれます。
なんなのかというと、that節も、引用符も使わずに、地の文でいきなり、誰かの発言内容や考えを紹介するものです。
今回の下線部(C)を例にとりますと、家政婦さんに対して、雇い主さんがベッドのシーツ取り替えを手伝うよと提案してきたわけですね。
皆さんが家政婦さんなら、どのように返答しますか?
「いえいえ、私がやりますので。旦那さんはお休みください」と言うのが普通じゃないでしょうか。
「あら、そう。手伝ってもらおうかしら」と言うのは、けっこう勇気がいると思います(笑)。
こうした場面を想起して読んでいただきたいのですが、下線部(C)では、どうぞ新聞でも読んでてくださいと言っているわけです。
一見して、tell himのあとにthatが隠されていると考えるとも言え、単なる間接話法のようにも見えるかもなのですが、「no」が邪魔しているんですね。
“No(いえ)”という言葉を、ダイレクトにthat節の中に持ってくることは普通はありえませんので、
文法学者の先生方としては、
She can tell him ” No, you should please read your paper.”という文を引用符もthat節もなしで描出話法として書き出したものだ、これは本当に難しい、受験生レベルを超えているのではないか、東大の先生はこうした高級な知識を受験生に求めているんだなんて凄い
と話題にされているわけです。
ただ、名もない塾講師のわたくしが申し上げるのも恐縮ではあるのですが、本当に東大英語部会は描出話法なる文法知識の有無を確かめるために本問を出したのだろうかと疑問に感じています。
文脈を追えば、ベッドメイキング(シーツとかを取り替えること)を、雇い主が手伝おうと言ってきたら、普通は丁寧に固辞するものだと思うのです。
この下線部(C)が描出話法だと気付いて、その文法的な理解に基づいて答えを出した東大受験生がどれほどいるのでしょうか。
この下線部(C)で求められているチカラは、むしろ、Before節が何番目のカンマまで続いているのか、文脈をもとに句切れ箇所を正確に把握できるかにあるように私は思いました。
下線部(C)は、2つのカンマによって3つのゾーンに分けられています。則ち、
①Before she can tell him no,
②he should please read his paper,
③the man takes two corners of the blanket and flaps it over the mattress.
です。①〜③はいずれも、SVOの文が完結しています。
ということは、文と文をつなぐための接続詞が必要となります。
①〜③は各々言い替え表現の関係にもありません。
内容的に③は雇い主さんがベッドメーキングをお手伝いしている様子が描写されています。
それに対して、①と②は共に、家政婦目線で旦那さんに手伝って欲しくない旨が書かれています。
このことから、(①+②)v.s. ③の構図が浮かび上がってきます。
つまり、家政婦さんが雇い主さんに「いえいえ。ご主人様は、どうか新聞でもお読みになってください」と声がけする前に、雇い主さんはベッドメイキングを始めてしまったと言っているわけです。
この”no”が厄介な存在ではあるのですが、小説である以上、綺麗な文構造を求めるというのもおかしな話です。
日本語の小説もそうではありませんか?
たとえば、お父さんが子供に、「学校どうだった?」と質問したとして、そこは「あなたにとって、学校における今日一日はどのようなものでしたか」と明確に言うべきであるとお父さんに求めることまではしませんよね(笑)。
ですので、描出話法が先にありきなのではなく、文脈が先にありきなのであって、その上で、この文構造を敢えて名付けるとしたら描出話法だよねというだけの話だと捉えるべきだと私は思います。
ちなみにですが、過去にも東京大学は描出話法を何度か出してきています。たとえば、
Why didn’t sheturnandsmileandcalltohim, ” Don’t youlikemycompany?” (東大1999-1B)
あたりが代表例でしょう。
想いを寄せる女性に対する主人公の願望が地の文で表現されています。
とはいえ、主人公の心の動きを表すものが小説なのですから、描出話法云々以前に、まずは、情景描写を正確に行うことが重要だと私は思います。
もちろん、浅学を恥じ、しっかりと諸先輩方々のご意見も学びたいとは思います。
少し長くなりましたが、解答例をご紹介するとしましょう。
(解答例)
彼女が、「いえいえ。ご主人様はどうぞ新聞でもお読みになられてください。」と言う前に、彼は毛布の両端を手にとって、マットレスの上に広げてしまう。
彼女が、いいえ、どうか新聞でもお読みくださいと雇用主の男性に伝える前に、雇用主は毛布の2つの隅を持って、それをマットレスの上にパサっと広げてしまった。
設問(D)(27)the schedule is this : の意味をうまく理解できなかった受験生には酷な1問でした。
Now the schedule is this: She will come every day at five o’clock to make dinner for the Mr. She will do some light cleaningーa load of laundry, an upstairs dustingーthen she will wash the dinner dishes, collect her forty dollars, and let herself out.
選択肢
a) get up b) put away c) set off d) take over e) turn back
こちらはちゃんと文脈を追った受験生にはサービス問題となったでしょう。
下線部(27)の前で、主人公であるMrs. Hatanoの勤務スケジュールが示されています。
何時に来て、何をするかが書かれています。
当然、その最後には退勤の話が来るはずですよね。
herself(彼女自身を)、out(外に)、let(彼女が望む通りに)出すということなわけです。
ということで、勤務先を出発するというニュアンスがある熟語を選べば良いので、set offとなります。
映像授業などでも申し上げているところですが、東大は受験生が熟語知識に乏しいことをご存知です。
意識の高い東大受験生は、鉄壁やら英検準1級単語帳やら、高級な英単語はたくさん覚えようとするのですが、なぜか熟語に関してはオマケ程度にしか覚えず、多義語についても日本語訳をたくさん覚えれば良いと勘違いされている方が非常に多いです。
熟語の学習に時間を割けていない方は、速やかに熟語力を上げる取り組みをしましょう。
なお、英熟語の覚え方がわからない方は、以下の記事がお役に立つかもしれません。
正解はc) set offとなります。
設問(D)(28)前問に引き続き、熟語力が問われています!
Mrs. Hatano hears the front door open. She puts down the letter and moves to the bed, which is stripped ( 28 ) its sheets. On a chair beside the bed is a stack of clean line, and a queen-size folded blanket.
選択肢
a) by b) from c) of d) off e) to
こちらは単純な知識問題です。
deprive A of B
rob A of B
cure A of B
といった奪う系(cureはガンなど悪い病気を奪う)のグループの一つに、strip A of Bというのがあります。
もともと、このofは切り離すという意味のoffが派生してできた前置詞のようです。
そうした昔の名残りが、これらの熟語に残っているんですね。
珍しい用法だからこそ、入試ではよく問われます。
ちなみに、stripの仲間にripという動詞があります。
実は、2024年の4B英文和訳で登場していました。
ついつい、難問にばかり目が行きがちですが、 こういった基礎的な知識問題で取りこぼしをしないようにすることが東大入試では重要です。
正解は c)ofとなります。
設問(D)(29)downの意味を考えるとわかりやすかったかもしれません。お掃除を手伝ったことのある方には易問でしょうか。
She waters down the vinegarーso that it will not take out the color. But scrubbing the stain with vinegar fails to bring up the nap. That place on the carpet, that darker surface like geography on a map, it can still be seen……… Maybe the spray cleaner she thinks, and ……..
選択肢
a) She drinks the vinegar.
b) She paints the carpet with the vinegar.
c) She pours the vinegar into the bucket.
d) She sees the vinegar flowing.
e) She thins the vinegar.
家政婦さんがvinegar(お酢)を用意している描写は下線部(29)の前にあるゾーン4((⚠︎便宜上、段落間にある大きな空白部分を境に長文全体を8つのゾーンに分けて説明をいたします)で示されています。
設問Aでも確認したように、この長文は全体を通じて、カーペットについたシミを家政婦さんが懸命に拭き取ろうとされている光景を描いているわけです。
そのことがわかっているのなら、お酢がお掃除のために用いられることは自明のはずです。
お掃除をやったことのある方ならわかると思いますが、お酢を原液のままカーペットにぶちまけたりはしないはずです。
水で薄めるはずなんですね。
たとえ、そのことを知らずとも、下線部(29)ではwaterが動詞として使われており、それをdownしてvinegarに注いでいるわけですから、希釈していることは自明のはずです。
ただ、希釈という発想がなかった方には、かなり難しく思えたかもしれません。
とはいえ、お酢を飲んだり、お酢でお絵描きをしたりするというのは, water downという単語の原義を無視した勝手な解釈ですし、バケツ(the bucket)の話は書かれておらず、お酢が流れるのを見るというのも、水の要素が消えてしまっていますから、消去法で正解を導くことはできたようにも思います。
正解はe) She thins the vinegar.となります。
設問(D)(30)使われている単語は簡単なのになぜか答えをうまく導けない、東大らしい1問でした!
May be the spray cleaner, she thinks, and points the aerosol can. She presses the button and traces the spot(=シミの場所) with foam. It must be allowed to dry, so Mrs. Hatano returns to the kitchen.
選択肢
a) No one can tell her not to dry the spot.
(誰も彼女にその場所を乾かさないようにとは言えない)b) She cannot wait for the spot to dry.
(彼女はその場所が乾くのが待ちきれない。)c) She must leave the spot to dry.
(彼女はその場所を乾くまで放置しておかなければならない。)d) She needs to obtain permission to dry the spot.
(彼女はその場所を乾かすために許可を得る必要がある。)e) The spot cannot stay dry for long.
(その場所は長い間乾いたままにすることはできない。)
これは文章の概要を掴めていたとしても正答するのが難しかったと思います。
allowという単語につられて、何か雇い主さんから許可をもらうのかなと考え、選択肢dを選ばれた受験生もかなり多かったのではないでしょうか。
ただ、それなら、直後に雇用主が登場するはずなのですが、主人公の家政婦さんが赴いたのは、冷蔵庫でした。
それゆえに文脈的にd)はありえないと考えなくてはいけません。
スプレー缶から泡(foam)が出て来るわけですね。
その泡の力で汚れをおとすわけですから、相応に時間もかかるはずです。
b)もなんだか悩みそうですが、allowのニュアンスが一切ないのが気になるところです。
そのように順序立てて考えれば、正解は選択肢の c)だと気づけたかもしれません。
設問(D)(31)なんだか私大入試のような問題ですね。実は2007年の第5問でも問われています。
While the man has his dinner, Mrs. Hatano uses the phone. She calls her friend Ruthie, who cleans down the block.
選択肢
a) Charlie wants to wash down the driveway today because it’s finally sunny in Philadelphia after a week of cold rain.b) I can tell that Jerry and Kramer are still arguing over the Puerto Rican parade because I can hear them down the hall.
c) Jennifer tried to write down the address, but she couldn’t because the paper was wet with the drink she spilled.
d) Larry looks down on his neighbors because he believes their houses are not as clean as his.
e) While Jack was driving down the street towards his office, the idea of building a house suddenly came into his mind.
実は2007年の東大第5問でも、Down the hallを訳させています。ここでのdownは「下に」という意味ではなく、「〜に沿って」という意味なんですね。
walk down the streetなら「通りに沿って歩いていく」という意味になります。
このように私達が当たり前のように知っている前置詞や副詞といった単語の意味をあなたは本当にわかっていますか?と問う問題を東大はよく出してきます。
最近では、前置詞マンガのような本も多く売り出されていますから、ぜひ貪欲に学びましょう。
話を戻しますと、下線部(31)のdown the blockというのは、同じ街区の先にというニュアンスを示したものです。
その上で、各選択肢の意味について見ていきますと、選択肢a,c,d,eはそれぞれ動詞の付随していますよね。
それもヒントになっています。
d)であれば、軽蔑する=見下げるという意味ですから、ここでのdownには「下」という意味合いが強く込められています。
c)は紙に書き留めるですから、ペン先を紙に上から下へ押し付けるイメージでしょうか。
a)はwashのニュアンスが強く反映され汚れを洗い流すというニュアンスが生まれます。
要するに汚れを排水溝に向かって上から下へ流すようなイメージですね。
少し悩ましいのはe)でしょうか。
こちらも通りに「沿って」というニュアンスを見出せそうですが、通りを下っていくとも考えられますし、車で移動している点、下線部(31)とは毛色が異なります。
ここはやはり、b)の廊下の先が正解だと言って良いでしょう。
よって、正解は b) となります。
設問(D)(32)心情を把握できれば容易に正解できます。困った時は消去法で攻めましょう。
That is when Mrs. Hatano sees him see the carpet. There is no question that they see the same thing…..
The white traced shape is like a chalk-drawn victim on a sidewalk, The man excuses himself after a pause, and Mrs. Hatano washes the dishes.
選択肢
a) He apologizes to Mrs. Hatano, as he must ask her to leave.
b) He begins to talk about his wife with Mrs. Hatano.
c) He thinks he has to buy a new carpet because it is too dirty.
d) He wants to avoid the spot because it reminds him of his wife’s death.
e) He wants to explain to Mrs. Hatano why he does not wash the dishes.
これは、典型的な心情問題ですね。
前後の文脈や、本文全体の趣旨が理解できたなら、即答できたはずです。
下線部自体はちょっとわかりづらいかもしれませんが、下線部の直前で、雇用主が自分の奥さんが亡くなった際に付いたカーペットのシミを見ていたことに家政婦さんは気づいたわけです。
しかも、あたかも殺人事件現場に警察が白いチョークで遺体の場所を描いた後のような感じで、お掃除の泡でその場所が縁取られてしまっているわけです。
自分の大切な人が亡くなってショックを受けるのが普通であり、大切な人の死を思い出させるシミが泡のせいでいつも以上に目立ってしまったわけですから、雇用主の筆舌に尽くしがたい感情を理解するのはたやすいことだと思います。
ここで、各選択肢の日本語訳をご覧いただきますと、
a) 彼はハタノさんに、出て行ってもらわなければならないので謝罪している。
b) 彼はハタノさんに亡くなった妻のことを話し始める。
c) 彼はカーペットがあまりに汚れているので、新しいものを買わなければならないと考えている。
d) 彼はその場所(シミ)が妻の死を思い出させるので、そこを避けたいと思っている。
e) 彼はなぜ自分が皿洗いをしないのかをハタノさんに説明したいと思っている。
とあります。
下線部前後を読む限り、a,c,eに関する記述は見当たりません。
bのような描写も描かれていませんので、消去法で考えても、正解はd)となります。
設問(D)(33)家政婦さんの真意はいずこに?困った時は消去法で攻めよう!
When the counters are clean and the pots are put away, Mrs. Hatano gets here coat and boots. She takes the forty dollars from the table in the hall. In its place she leaves a five-dollar bill from her purse because she still could not get the spot out.
選択肢
a) She doesn’t need money because she is already rich.
b) She feels some guilt for her inability to ease the Mr.’s grief.
c) She puts back the five dollars to help the Mr. buy a new rug.
d) She returns the money as a protest against her working conditions that require physically demanding tasks.
e) She wants to show her gratitude to the Mr. for her employment.
文脈を把握できたら容易に正解できたでしょうが、そうでない方にとっては意味がわからなかったことでしょう。
そうした時には躊躇いなく消去法で攻めるのが得策です。
せっかくですから、各選択肢の日本語訳をご覧いただくとしましょう。
a) 彼女は、既にお金持ちだから、お金を必要としない。
b) 彼女は、旦那さんの悲しみを和らげることができなかったことに、ある種の罪悪感を感じている。
c) 彼女は、旦那さんが新しい絨毯を買うのを助けるために5ドルを返した。
d) 彼女は、体力を要する仕事を強いる労働条件に対する抗議の意思表示としてお金を返した。
e) 彼女は、雇ってくれていることへの感謝を雇用主に示したいと思っている。
まあ、ツッコミどころ満載の選択肢ばかりですので、詳説するまでもなく、正解はb)となるでしょう。
他の選択肢はあまりにピントハズレだからです。
設問(D)(34)本文の表現技法が問われています。まるで共通テストの国語のような問題です。
a) This story allows readers to imagine the characters’ feelings by withholding detailed explanation about their emotions.
この物語は、登場人物の感情に関する詳細な説明を控えることで、読者が彼らの気持ちを想像できるようにしている。
b) This story depicts the characters’ actions so vividly that readers can enjoy the twists and turns of the plot.
この物語は、登場人物の行動を非常に鮮明に描写しているため、読者は筋書きの紆余曲折を楽しめる。
c) This story describes the characters’ thoughts so closely that readers can understand them easily.
この物語は、登場人物の思考を非常に緻密に描写しているため、読者はそれらを容易に理解することができる。
d) This story gives only a minimum of information about the characters and presents them as if living in a fantasy world.
この物語は、登場人物に関する最小限の情報しか与えず、彼らをまるで空想の世界に住んでいるかのように示している。
e) This story helps readers to sympathize with the characters deeply by providing sufficient details about their backgrounds.
この物語は、登場人物の背景について十分に詳しく説明することで、読者が彼らに深く共感できるようにしている。
いかがでしょうか。本文を完璧に理解していないと解けない問題だったと思います。
共通テストの国語にも、この手の問題はよくありますね。
まず選択肢の前半で大きく分けてみますと、aとdでは登場人物に関する情報をあまり詳しく本文は提供していないとあり。bとcとeでは詳しく説明されていると書かれています。
本文を読み返していただくとわかるように、妻を亡くした雇い主の心情などをストレートには書いてはいません。
ですので、この時点でaとdに絞られることになりそうです。
次に選択肢の後半部分にフォーカスをあてますと、dでは空想の世界に住んでいるとし、aでは彼らの気持ちを想像できるとしています。
改めて本文を読み返しましても、主人公たちを空想上の存在だと感じさせるような記述はありませんから、消去法で、正解はa)となります。
以上、長くなりましたが、2026年第5問の実況中継風解説を終えたいと思います。ぜひ、本稿で申し上げた思考プロセスを他年度の過去問でも応用していただければ幸いです。
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他年度の過去問に対して、これでもかと噛み砕いて説明した《実況中継》の解説もございます。
↑ まずは目次と無料部分だけでもどうぞ。

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