2026年(令和8年) 共通テスト本試 国語第4問 古文『うつほ物語』現代語訳

『うつほ物語』について

『うつほ物語』は漢字で『宇津保物語』と表記されることも多いですね。
『源氏物語』より前の「作り物語」として有名です。
(文学史では、竹取物語・宇津保物語・落窪物語の3点セットで載っていることが多いです。)

「琴(きん)」という楽器の秘伝にまつわるファンタジーです。
琴の伝授が世代に渡って行われます。
俊蔭としかげ〔=仲忠の祖父〕
 遣唐使で唐に渡る際に難破して漂着し、そこで天人・仙人から秘琴の技を伝えられた。
②俊蔭の娘〔=仲忠の母〕
 太政大臣の息子(藤原兼雅)との間にもうけた子〔=仲忠〕を伴って山に入り、大樹の空洞〔=うつほ〕で育てながら秘琴の技を教えた。その後、兼雅と再会して京に戻った。
仲忠
 女一宮と結婚した。母と一緒に娘のいぬ宮に秘琴を伝授した。
④いぬ宮〔=仲忠の娘〕

 

また、「あて宮」という女性に対して多くの男性が求婚するエピソードが有名かなと思います。
上記③仲忠も多くの貴公子たちと同様に「あて宮」に求婚しましたが、「あて宮」は東宮に入内しました。
東大2009年『うつほ物語』はまさに、あて宮への恋に落ちた人の話でした。

現代語訳

さて、現代語訳を作成しました。漢文『松陰快談』の現代語訳はこちら。

このページの内容は、学校や塾でプリントして配っていただいても構いません。
その際は、敬天塾のロゴを取らないようにお願いします。
(現代語訳のテキストをコピペされる際は、「敬天塾の現代語訳」と明記してくださいませ)

本文と現代語訳の併記(JPEG)

本文と現代語訳の併記(PDF)

R8(2026)年本試 古文『うつほ物語』現代語訳

現代語訳

1⃣ 仲忠は、「あの龍角〔=祖父から母へ伝わる名琴〕をいただいて、いぬ〔=生まれたばかりの娘〕のお守りにいたしましょう」(と仰る)。仲忠の母は、ふっと笑って、「(誕生したばかりで)早々にも、また。それにしても、このような(出産の)時には、(そのように)言い伝えがあるのか」とおっしゃると、(仲忠は)「世間一般のことはどうでしょうか。(存じません。しかし、)この琴の一族がいる所、琴の音がする所には、天人が(降臨して)翔けてきてお聞きになるということなので、(いぬの誕生にあたり、天人の加護を)添えようと思って申し上げるのだ」(と答えた)。 尚侍のおとどは、典侍〔=女官の一人〕に命じて、仲忠の父に、「あの、私の琴が、ここで必要とされるようだ。あげよう(と思う)」と申し上げなさったので、(仲忠の父は)急いで三条殿〔=夫妻の邸宅〕へ行きなさって、(その琴を)取らせていらっしゃった。

2⃣ 三の宮〔=仲忠の妻の兄弟〕が(琴を)お受け取りになって、仲忠に渡しなさったところ、(琴は)唐物の刺繍のある袋に入っている。(仲忠は)いぬを懐に抱いたまま、琴を取り出しなさって、「長年、この(秘伝の)琴の奏法をどのようにしましょう〔=誰に伝授しよう〕と嘆いておりましたが。後は(どうなるか)分からないけれども」などと言って、「ほうしょう」という曲を華やかに弾く。(その)音色は、とても誇らしげで賑やかだけれども、また、しみじみと、ぞっとするほど素晴らしい。あらゆる楽器の音色が多く(混じり合い)、琴と合唱した(ような大きな)音は、目の前で聞くよりも、遠くで(聴く方が良く)響いている。

 3⃣ 仲忠が、このような(子の誕生に際して弾くのに)ふさわしい曲を、音高く弾くと、風がとても荒々しい音を立てて吹く。空の様子が騒がしげなので、「いつものように、この琴は(天変地異などの不思議な現象が起きて)扱いづらいよ。やっかいだ」と思って、弾くのをやめて、母に申し上げなさる。 「もう一曲演奏し申し上げようと思うけれど、(空が)騒がしいので、(弾くことが)できません。これに、あなた様の手で一曲お弾きになって、鬼を退散させてください」と申し上げなさると、(母は)「(私が弾くのは)体裁が悪いように思います」(とおっしゃる)。仲忠が「仲忠にとっては、これ以上の(演奏にふさわしい)機会はございません」と申し上げなさったので、母は、寝台の台座から下りなさって、琴をお取りになり、一曲弾きなさる。 その音色は、まったく言い尽くせない(ほど素晴らしい)。仲忠の演奏は、趣深く険しいほどで、雲や風の様子が異様になる(ほどだ)けれども、この(母の)演奏は、病を持つ者も、(何かを)恐れ、悲しみに沈んでいる人も、これを聞けば皆(苦しみを)忘れて、楽しく(なり)心も強く(なり)、寿命が延びるような心地がする。こういうわけで、仲忠の妻は、お琴の音をお聞きになったところ、普段のご様子よりも若々しく、(出産という)大仕事を終えた後ともお思いにならず、苦しいこともなくて起き上がって座っていらっしゃる。仲忠が、「(起き上がるのは身体に)悪いようだ。まだ横におなりになってお聞きください」と申し上げなさると、仲忠の妻は、「少しも今は苦しくはない。このお琴を聴いたので、苦しかったことも、皆なくなってしまった」と言って座っていらっしゃる。自分の母と仲忠の母が、「風邪をおひきになってしまうだろう」と言って、騒いで(仲忠の妻を)寝かせ申し上げなさった。琴は、弾き終わりなさったので、袋に入れて、仲忠の妻の枕元に、守り刀を添えて置いた。

補足

『新編 日本古典文学全集』(小学館)によると、龍角は「秘琴の伝授を受ける者が用いる学習用の琴。」のようです。

つまり、仲忠の「龍角をいぬの守に」という発言を聞いて、仲忠の母〔=尚侍のおとど〕はまだ赤ん坊のいぬ宮に秘琴の伝授を授けようと言い出したのだ!早すぎっ!と思い、ふっと笑ったのです。

『日本古典文学大系』(岩波書店)には、仲忠の母の「いつしかとも、はた」は「すぐにでもこの子が弾くように仰有ること。」と書いてあります。生まれたばかりの赤ん坊が琴を弾くのを想像すると、笑っちゃいますね。

結局、いぬ宮に琴の秘伝は受け継がれます♪

『うつほ物語』において、この作品を理解するのに大変良い箇所が出題されましたね~。

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