全集中「合格の呼吸」漆ノ型~「時間が足りなかった」「間に合わなかった」を科学せよ~【毎月10日掲載】

入試や模試のあと、決まって「あと5分あったら解けたのに」「最後の最後にミスに気づいたのですが、間に合いませんでした。」と口にする人がいます。

私は、それに対して「惜しかったね!」とは言いません。もちろん、落ち込んでいる子には、温かな声がけをしますが、基本的に同情はしません。

なぜなら、それは、シミュレーション不足・訓練不足を露呈したに過ぎないからです。

シミュレーションさえしっかりしていれば、時間内に問題を解ききることもできますし、合格可能性も格段に跳ね上がります。同じ過ちをおかさぬためにも、「時間が足りなかった」原因を徹底分析しましょう。

2000人近い生徒たちを見てきた中で、集約される元凶は8つです。

① 知識不足・知識の整理不足

知識不足はわかりやすいですね。三項間漸化式を学んだことのない人が、いきなり解けることはありません。これは、定石を知れば伸びるものです。試験的にも、知っているか知らないかで運命が分かれる問題に時間を割くのは御法度です。

問題は、知識の整理不足の方です。中級レベルの受験生が、上級クラスに上がるために必要なのは、インプットした知識の整理なのです。

わかりやすい例を挙げましょう。タンスの中に、下着や靴下やシャツがぐちゃぐちゃに詰め込まれていたとします。朝起きて、学校に行く前に、そんな状態のタンスから服を見つけ出すのは一苦労ですよね。学校に遅刻してしまうかもしれません。

そう、これと同じことが試験中に起きているのです。ただ漫然と覚えただけで、テーマごとに整理整頓できていない知識は、スピーディーに引っ張り出すことなど出来はしません。頭の中に入っている知識をスピーディーに引っ張り出す練習を日頃から実践することが大切なのです。

類題演習や用語集の徹底反復が有益です。

② 読解の不慣れ(情報抽出訓練の絶対量不足)

化学の重要問題集や、世界史の一問一答系参考書は、長いリード文を全て端折っています。ですが、東大では、長いリード文を読ませて考察させる能力をも求めています。

ですので、日頃から短文ばかりの問題を解き、長文からの情報抽出訓練を怠っていると、脳がスムーズに順応できず、やたらと時間を食ってしまうのです。

過去問や東大模試を利用して、長いリード文から必要な情報を抽出する訓練を始めていきましょう。

③ 計算力(一括りに捉えてはいけない)

よく、「僕には計算力がない」「私は計算スピードが遅い」と仰る方がいます。

ですが、それは考察とは言えないものです。計算といっても、「1+1=2」のレベルの話なのか、分数が絡むとスピードが落ちるのか、対数計算の演習量が不足していることから遅いのかetc、的確に診断していかなくてはなりません。

「計算力がありません」というのは、何らの吟味検討がなされていない無益な分析です。どのような類の計算が絡むとミスが頻発しやすいのか、それは、「量」によって克服されるものなのか、正しい計算方法を学ぶことで解消される弱点なのか、計算力不足の実態を科学することが重要なのです。

④ 問題の見極め(時間資源の適正配分が出来ていない)

A判定の人が入試で不合格になる要因の筆頭にも挙げられます。取るべき問題に時間をかけられず、捨て問に莫大な時間資源を投下した結果、総合点で敗北を喫するというパターンです。慢心を抱いた者に送られる辛い現実です。

東大理系数学で70点を目指した場合、どこで50点を落とせるか考えてみよ、と生徒には申しています。全部を取りに行こうとすると、総崩れすることが高確率で起きるのです。ですので、取れる問題からきっちり取りに行き、わからないところは、一旦「捨」てて、最後に余った時間で、「拾」っていけと指示しています。

取れる問題の見極めがうまい子は、入試の成功確率が格段に上がります。頭の良い子が必ずしも東大に合格するわけではありません。取れる問題の選別眼が優れた子の方が、東大に合格します。東大入試は、数学特別入試といった一芸入試ではありません。各科目の総合点で合否が決する以上、1点でも多くもぎとれるようにする工夫が必要なのです。

そうした意味で、早くにセット演習をこなせるよう基礎学力を身につけられると合格可能性は格段に跳ね上がります。

⑤ 筆記速度・字体・余白の使い方

制限時間がある以上、だらだらと書いていてはタイムロスが大きいです。かといって、象形文字のように判読が容易でない文字や数字を書けば、ミスが誘発され、採点官の心象を悪くもします。

字体の大きさも問題です。共通テストの理系科目において、雑然と余白を用いていると、途中で計算ペースが足りなくなり、動揺したりもします。だからこそ、余白を有効活用するために2分割してみたり、式を小さく書く訓練が必要なのです。

早く解こうとして、自分でも判読できない雑然とした式を書き、結局、もう一度書き直すハメになった経験はありませんか。急がば回れ、とはよく言ったものです。

⑥ 環境刺激を想定していない

人間には、居心地の良い環境を望む本能があります。自宅にせよ、塾の自習室や図書館にせよ、スターバックスにせよ、心が落ち着ける場所で勉強をするのです。

ですが、入試会場で座る座席の位置や机の高さなどは、一切指定できません。与えられた環境、しかも、しばしば、居心地の悪い環境で合計20時間近く拘束をされるのが共通テスト入試であり、東大入試なのです。

さらには、このコロナ禍でマスクの着用も義務付けられ、不快指数はこの上なく高まります。その結果、本来のパフォーマンスを出せなかったと嘆く方も非常に多いのです。

だ・か・ら・こ・そ、

そうした環境刺激を想定した訓練を怠ってはいけないのです。模試や入試になると実力が発揮できない方の多くが、試験会場の環境に適応できなかったと口にします。

そこで、

・本番と同じ時間割で過去問なり共通テスト問題パックを解いてみる

・普段と異なる環境で問題を解いてみる。外出が恐ければ、机の向きを変えたり、問題演習の時だけ違う部屋で解いてみる

・マスクをつけて解いてみる

・外行きの服を着て解いてみる

これだけでも、かなりストレスを感じながら問題を解くことになり、より実戦的なチカラが身につくはずです。

居心地の良い空間で、いつでも自由に休める状況で勉強を進めた受験生ほど、本番で大きく崩れます。脳への負荷をかけた学習をそろそろ始めてゆくべきでしょう。

⑦ 演習量不足・分析不足

INPUTばかりして、OUTPUTが足りない人は、いきなり模試で華々しい結果を残せるわけがありません。

どの科目においても、「解き慣れ」は必要です。目でさらっと確認するだけでマスターできるのなら、DVDを見るだけでメジャーリーグで本塁打王にもなれます。

同様に、模試を受けっぱなし、授業を受けっぱなし、これもダメです。お風呂の排水栓を開いた状態で、お湯を貯めようとしているのと一緒です。

勉強した「つもり」で、成績が伸びない人は、ぜひ確認をなさってください。

⑧ 時間を意識した学習を日頃やっていない・緊張感を持って勉強していない

模試は確かにペースメーカーにはなりますが、模試の時だけ一生懸命頑張る、模試の時だけ時間を意識したのでは、訓練回数がまるで少ないです。

普段から、厳しい時間制約を課して問題を解く、タイマーで時間を測るといった訓練をしなければ、本番で思うように力は発揮されません。

優雅な貴族階級のように勉学を楽しむのも長期的には良いかもしれませんが、短期決戦においては鬼気迫る勢いで学習する姿勢が大切なのです。

日常でそうした学習を心がけている人は、本番で敢えて緊張するまでもないのです。「日々是決戦」とは、まさにこのことです。

以上、8つのカギを元に、徹底した自己分析を図ってください。きっと何か新たな気づきを得られることでしょう。皆様のご健闘を心よりお祈りしております。

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