2012年 国語第1問(現代文) (一)の解説(傍線部アはどういうことか?)

国語の読解については、たまに扱っているテーマですが、今回は東大の現代文の解説に着手してみようと思います。

現代文の教え方は先生によってマチマチ。
数学の授業は全国どこにいっても、ある程度は同じような授業が受けられますが、国語はピンキリと聞きます。
特に、記述問題の書き方は、良い先生に当たらないと、何も習得せず終わることも多々。
先生選びに、特に気を付けて下さい。

トップ層の生徒の東大対策法

さて、このHPをご覧下さっている方であれば、幣塾でゼミ授業を行っていることをご存知でしょう。
そして、ゼミ授業では各社の解答比較を行っています。
有名進学校や、各教育機関のトップ講師も行っているという噂は聞きますが、これが本当に大事。
特に国語と社会では、必ず行った方が良いと思います。

そして、やれば分かりますが、各社バラバラです。
確かに共通点はあります。パッと見ると同じ解答のようにも見えます。
しかし、三大予備校が、ピタリ一致しているわけではなくバラバラ。
ということで私は、東大入試の模範解答は(採点者を除いて)誰にも分からないと解釈しています。

そこで幣塾では「正解は誰にも分からないけど、正解に近づくことはできる」ということで、塾生一同で知恵を絞っています。

と前置きが長くなりましたが、現時点の分析結果のご紹介です。

2012年 国語第一問の解説

国語の解説をするなら、今のところこのような色分けした資料を作るのが最適だと思っています。
どうぞ、読者の方々もご覧くださいませ。

1、設問を確認
まずは、問題を確認しましょう。
設問(一)は、傍線部アについての説明問題、「どういうことか?」を答える問題です。
傍線部アは第7段落にあり、物心二元論に引かれています。
ご存知のとおり、東大では「どういうことか?」と「なぜか?」という問題しかほとんど出ません。対策は非常にしやすいと言えると思います。

2、射程を決める
記述問題を解く際に真っ先に行うのは、「射程」の確認です。
「射程」とは、傍線部に対して、どのくらい広い範囲の文章を読めば良いのか、ということ。
先ほどの図をみてみると、私の手書きの赤い線や青い線が、第4段落から、第10段落辺りに複雑に書き込まれているのがわかると思いますので、射程は第4~10段落だということになります。

<左端を決める>
その根拠。
まず、カンタンなのが左端です。
東大の入試に関しては、ほぼ例外なく隣の傍線部を超える事はないので、第10段落の傍線部イが、一番左だと思って良いでしょう。

もう少し厳しく見積もると、第10段落の始めに「これが二元論的な認識論である。」とあります。
「二元論的な認識論」とは、傍線部アそのものです。つまり、
これが二元論的な認識論(=傍線部ア)である。」と書いてあるに等しいため、指示語は直前を指す法則にしたがって、直前の文章である第9段落の最後が傍線部アの内容に当たることが分かります。
よって、射程の左端は、第10段落の「これが二元論的な認識論である」までとなります。
(ただし、実際は第9段落までの内容をまとめることになりますね)

<右端を決める>
次に、右端ですが、これは異論が生まれることでしょう。上の方で申した通り、模範解答にはブレがあるからです。
もちろん、私も今回紹介するのが絶対に良いと確信しているわけではありませんが。

では、傍線部アを見てみると、上の方に「ここから第三の特徴として」というフリに対して傍線部アがあります。
ということは、もっと前の段落に、第一の特徴や第二の特徴があるということです。

第一の特徴や第二の特徴がどこにあるかと言うと、第5段落と第6段落の冒頭。
これらと並列になっているのが傍線部アだということが分かります。
(もしくは、第一の特徴と第二の特徴から生まれてくるのが、第三の特徴だと捉えても良いでしょう。)

では、何の特徴かと言うと、それよりさらに前の第4段落。
「近代科学の自然観には(中略)特徴がある。」という部分からの、話の流れであると確認できる。

つまり、傍線部アは
・近代科学の自然観である
・第一の特徴(機械論的自然観)と、第二の特徴(原子論的な還元主義)から生じたもの
という2点が言えるわけです。

もし字数が無制限だったらこの内容も盛り込みたいところですが、実際は「2行以内」という指定がありますし、傍線部アの直接の説明ではありませんから、字数を控えめに説明することになります。

いずれにしろ、ここまでが射程の左端です。

先ほどと同じ画像をご覧ください。

この画像の右の方に、赤い線で矢印が3本引いてあるのが分かると思います。

3、メインの内容
では、他の記述するポイントを探していきましょう。

先ほど<射程の左端>を決める時にも書きましたが、第9段落の最後の文章が、傍線部アの説明そのものです。
(手書きの図の、ピンクのマーカーで囲まれた部分です。)

見ると、このような骨子の文章です。

①物理学が記述する自然の客観的な真の姿と (物)
②私たちの主観的表象とは、 (心)
③質的にも、存在の身分としても、全く異質のものとみなされる。 (二元論)
(これが、二元論的な認識論である。)

このように、傍線部アの「二元論」とちょうど対応している内容です。

これは非常にわかりやすい♪
ということで、この内容を詳しく説明すれば、傍線部アの内容が説明出来ます。

<「二元論」について>
よく、「国語の問題では言い換えが大切だ!」と聞くと思いますが、この問題はまさに典型例。
傍線部アが物心二元論ですから、を言い換えて、を言い換えて、二元論を言い換えればよいわけです。

「二元論」という言葉には、「相反する2つの概念で強引に説明する。」というようなニュアンスで使われることがあります。
例えば、善と悪、質と量、精神と物体などです。
しかし、今回は二元論に対応する部分が、③質的にも、存在の身分としても、全く異質のものとみなされる。の部分ですから、特に日本語のニュアンスにこだわり過ぎなくても良いと思います。

4、二項対立の記述の作り方
さて、最後の物と心の記述の解答の作り方ですが、この問題では明らかに対立する概念として物と心を用いています。
このような場合、物と心の特徴のうち、反対の意味の言葉を拾ってきて解答を作ると上手くいきます。

ということで、まずは本文のうち、物の部分と、心の部分を見分けてみましょう。

この画像のうち、第7~9段落で、オレンジ色の部分が物理学的世界(物)の部分で、青い部分が心(知覚世界)の部分です。

この中で、対立的に使われている言葉を拾うと、客観主観実在表象などが見えると思います。
実は、没価値価値もあるのですが、没価値は第10段落の傍線部イより左側で初めて登場する言葉です。これを拾えるとパーフェクトな気がしますが、拾えなくても十分合格点には行くでしょうし、「没価値」と書けなくても、「価値がない」と書いてOK。
この3つの対立する言葉を解答に盛り込めば、かなり高得点の解答が作れるのではないかと思います。

5、ポイントの整理
では、ここまでの話を踏まえてポイントの整理です。

①近代科学の自然観の特徴である、機械論的自然観と、原子論的還元主義から生じたものである(射程の右端、ポイント低め?)
②物理学的世界では、客観的に実在し価値がない(物の言い換え)
③近く世界では、主観的表象であり価値を与える(心の言い換え)
④その二つが異質である(二元論の言い換え)

大きくこの4点で、2つ目と3つ目の中には、キーワードを3つずつ忍ばせました。

6、各社の解答比較
では、こういう観点で、最後に各社の解答比較をしてみましょう。

<教学社(赤本、25か年)>
精神性はなく原子と法則に還元できる自然の客観世界と、心・脳が生み出した人間の主観の知覚世界は全く異質とする考え。

<河合塾>
自然は法則にしたがう微粒子のみを実在とする物理的世界でありその近くを介して意味づけられた表象は主観的世界であるとして、両者を峻別すること。

<駿台予備校>
近代科学の自然観では微粒子と法則でできた物的世界こそが自然の実在で、心が生み出す知覚世界は表象にすぎないとすること。

<東進>
近代科学の自然観に特徴的な物理学的世界を没価値な客観的実在として一方で知覚世界をそれに価値を与える主観的表象として両者を異質なものと見なす考え方のこと。

いかがでしょう?
色分けすると、見やすくなると思います。

そして、その中身を見ると、黄色が短かったり、赤が長かったりと、色々個性がありますね。
この4社の中で最もキーワードを拾っているのは、東進の解答ではないでしょうか?他社も、キーワードを拾っているようで、表象、価値、実在などを丁寧に拾っているのは少ない。

皆さんは、どう思いますでしょうか?

では、今回は以上です。

国語の解説は、1本書くのに時間がかかるので、また時間が取れたら書きます。

あ、今月新著が出るので、どうぞお楽しみに!
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