2023年東大英語(第1問B 文挿入(段落整序))入試問題の解答(答案例)・解説

第1問B 文挿入(段落整序)

(編集部注)難易度の評価など、当日解いた所感はこちらをご覧ください。

東大1B文挿入は、客観式問題のみで構成されており、12点前後の配点が予想されている問題です。
挿入する選択肢を誤ると、連鎖的に他の選択肢も間違えてしまう危険性が大きく、パズルのようだと苦手意識を持つ受験生も多くいます。

この第1問では、一文一文の精読よりも、文と文、段落と段落同士の繋がりを考え、本文全体で言いたいことをスピーディーに掴み取る力が求められています。

空所(1)の思考プロセス

空所を含んだ段落にまずは着目します。

ともなれば,  心理学者たちがかつては笑いの研究にしっかり取り組むことをためらい,  それと同時に多くの心理学者達が, 笑いは不幸や絶望ほど重要なものだとは言えないと考えていたことは、実に驚くべきことである。(1)

段落というのは相互に共鳴し合っているものですから、空所(1)を含んだ第2段落のはじめにthen(ともなれば)があることから、第1段落の内容が絡むことがわかります。
第1段落の最後では、

笑いは, 人間のほんの僅かに存在する普遍的な特徴の1つである。 多くの人々は, 困難を前にした時でさえも, くすくすと笑うことでストレスや不安感に対処できることをわかっている。

と書かれています。
その上で、第2段落では、心理学者たちが、笑いというものをそれほど重要視していなかったことがsurprisingなのだと述べ、最後に空所(1)を持ってきています。

念のため、次の第3段落のはじめも確認してみると、

このことは科学にとっての損失であった。 なぜなら,近年の研究によると, あなたが思っているよりも遥かに多くのものを笑いに見出せることが明らかになっているからである。

としており、第2段落に同じく、笑いを重要視してこなかったことを憂う内容のことが書かれています。

つまり、この空所(1)の前後で大きな論理転換や話題の変容はないことを意味します

ここで、選択肢をチェックするとしましょう。
選択肢を本文に先立って読むか、空所を埋めるに際して読むかは人それぞれですので、ここではどちらが優れているか言及することは避けたいですが、選択肢を分析するだけで答えが見えてくる年もあったことは付言したいと思います。
もっとも、それを変に公式化しないことも大切です。

a) 以前はとりわけ人間的だと考えられていた現象が, 他の種にも共有されている行動と密接に結びついていることが判明している

b) その結果, 人間の笑いは進化して, 力強くて柔軟な社会的な道具になった

c) それは, 社会の調和の体裁を保っている

d) それは, 育児をする人を幼児とつながりをもたせ続ける, 一種の 「結びつけるもの」として役立つかもしれない

e) それは、他の人が考えていることに自分が影響を及ぼすことができることを幼児がわかっているのだということを明らかにしている

f) 心理学は, ネガテイブな感情と知られていることと, ポジティブな感情とのバランスをはかるためにまだやるべきことが多くある

g) 一見ばかげて重要ではないように思われることが, 実は人々の生活の中で最も重要な要素であるかもしれない

まず、気をつけて欲しいことは、正解の選択肢は必ずしも光らないということです。
例年、2個くらいの空所は簡単に見つかりますが、残る2〜3個の空所が厄介で悩ましいものになります。

なぜ、このようなことが起こるかというと、正解とされる選択肢がどうにもスッキリしない、間違っているとも言えないし、ハッキリと正しいとも言えない何ともモヤっとした感じの文面になっているからです。

これは、共通テストの英語や現代文の選択肢を吟味されたことのある方であれば、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。

さて、本題に戻ります。
まず、空所(1)は第2段落の終わりに位置していることから、この段落の内容に矛盾することや全く別の話題が取り上げられることは余程のことがない限りはありません。

しかも、念のために次の第三段落冒頭をチェックしても、主張内容が大きく変わるところもありませんでしたから尚更です。
となれば、「他の種」やら「幼児」といった新情報が唐突に出てくるa・d・eは一旦検討候補から外しても良いことになります。それでは残る選択肢を見てみましょう。

b) その結果, 人間の笑いは進化して, 力強くて柔軟な社会的な道具になった

c) それは, 社会の調和の体裁を保っている

f) 心理学は, ネガテイブな感情と知られていることと, ポジティブな感情とのバランスをはかるためにまだやるべきことが多くある

g) 一見ばかげて重要ではないように思われることが, 実は人々の生活の中で最も重要な要素であるかもしれない

これらを実際に(1)に入れて考えてみるとしましょう。

ともなれば,  心理学者たちがかつては笑いの研究にしっかり取り組むことをためらい,  それと同時に多くの心理学者達が, 笑いは不幸や絶望ほど重要なものだとは言えないと考えていたことは、実に驚くべきことである。

( b) その結果, 人間の笑いは進化して, 力強くて柔軟な社会的な道具になった。)

このことは科学にとっての損失であった。なぜなら,近年の研究によると, あなたが思っているよりも遥かに多くのものを笑いに見出せることが明らかになっているからである。笑いはユーモアと明白なつながりがある他に, (笑いを分析することで)私達の人間関係の本質や私達の健康状態を深く理解することもできる。 幼児がクスクスと笑うことを研究することで,  我々は自己意識や他人の心を読む能力を如何にして高められるのか知ることさえできるかもしれない。

うーん、正解の選択肢は光らないとはいえ、bを入れると次段落の冒頭との関係もわかりませんし、意味不明です。
第2段落も第3段落も心理学の研究について扱われているので、fのような気もしますが、東大教授のワナの可能性もあるので即決は避けたいところですね。
次はcを入れてみましょう。

ともなれば,  心理学者たちがかつては笑いの研究にしっかり取り組むことをためらい,  それと同時に多くの心理学者達が, 笑いは不幸や絶望ほど重要なものだとは言えないと考えていたことは、実に驚くべきことである。

( c) それは, 社会の調和の体裁を保っている。)

このことは科学にとっての損失であった。なぜなら,近年の研究によると, あなたが思っているよりも遥かに多くのものを笑いに見出せることが明らかになっているからである。笑いはユーモアと明白なつながりがある他に, (笑いを分析することで)私達の人間関係の本質や私達の健康状態を深く理解することもできる。 幼児がクスクスと笑うことを研究することで,  我々は自己意識や他人の心を読む能力を如何にして高められるのか知ることさえできるかもしれない。

うーん、これも、いきなり社会の調和だのと新情報が来ていますし、明らかに空所前後で浮いていますので、候補から外して良さそうです。
では、次にfを入れてみましょう。

ともなれば,  心理学者たちがかつては笑いの研究にしっかり取り組むことをためらい,  それと同時に多くの心理学者達が, 笑いは不幸や絶望ほど重要なものだとは言えないと考えていたことは、実に驚くべきことである。

( f) 心理学は, ネガテイブな感情と知られていることと, ポジティブな感情とのバランスをはかるためにまだやるべきことが多くある)

このことは科学にとっての損失であった。なぜなら,近年の研究によると, あなたが思っているよりも遥かに多くのものを笑いに見出せることが明らかになっているからである。笑いはユーモアと明白なつながりがある他に, (笑いを分析することで)私達の人間関係の本質や私達の健康状態を深く理解することもできる。 幼児がクスクスと笑うことを研究することで,  我々は自己意識や他人の心を読む能力を如何にして高められるのか知ることさえできるかもしれない。

はい。来ました。これが東大1Bです。正直、何言っているのか全然わかりませんよね(笑)。
念のため、英文の選択肢も確認してみましょう。

psychology still has a lot of catching up to do to balance out what is known about negative emotions with positive ones

うーん、あんまり変わらないでしょうか。

で、ここで反射的にfを取り除くと袋小路にハマります。
そして焦り始めます。
そういういやらしい選択肢を初っ端の空所(1)に配置するあたりが東大のいやらしさにも思えますが、
意外に「『心理学』の話をしている段落間に空所(1)があるから、心理学について言及しているfが答えかな〜」とアッサリ考えて答えを出す人の方が有利にも思えます。

まず抑えるべきは、選択肢の文言が抽象度フルマックスで何を言っているかわからないからと言って性急に候補から外すべきではないということです。

前後の文脈に一切書かれていない新情報、あるいは論理的に明らかに矛盾をきたしたものをはじくべきです。
この点、negative emotionsは直前のunhappiness despairに対応しそうです。

        It is surprising, then, that psychologists were once reluctant to devote serious attention to laughter, with many believing it to be less important than  unhappiness or despair. ( f) psychology still has a lot of catching up to do to balance out what is known about negative emotions with positive ones )

では、positive onesは何を指しているのでしょうか。
本文のメインテーマがlaughterであることや、第2段落と第3段落の記載内容からもlaughterだと合理的に推測できそうです。
謎なのが、catching up to do to balance outの部分でしょうが、これまではunhappinessdespairの研究ばかりなされて、laughterを研究対象とすらしてこなかったという研究対象の「偏り」を正せということなんだと思考を巡らせることができたなら勝ちです。

ですが、試験会場で焦っている時に、そのような考察ができない時は、一旦、fを有力候補とメモだけして、後続の空所の検討を優先すべきです。
性急な判断は、後続の空所での間違いをも誘発する可能性があるからです。

では、最後に選択肢gも入れてみましょう。

ともなれば,  心理学者たちがかつては笑いの研究にしっかり取り組むことをためらい,  それと同時に多くの心理学者達が, 笑いは不幸や絶望ほど重要なものだとは言えないと考えていたことは、実に驚くべきことである。

( g) 一見ばかげて重要ではないように思われることが, 実は人々の生活の中で最も重要な要素であるかもしれない。)

このことは科学にとっての損失であった。なぜなら,近年の研究によると, あなたが思っているよりも遥かに多くのものを笑いに見出せることが明らかになっているからである。笑いはユーモアと明白なつながりがある他に, (笑いを分析することで)私達の人間関係の本質や私達の健康状態を深く理解することもできる。 幼児がクスクスと笑うことを研究することで,  我々は自己意識や他人の心を読む能力を如何にして高められるのか知ることさえできるかもしれない。

うーん、笑いの研究を馬鹿げて重要でないように思うだなんて書かれていませんし、人々の生活の話なんかしていないようにも思えます。
「正解の選択肢は光らない」とは言え、前後の文章で繋がる要素も少ないので、はじくべきだとは思いますが、試験会場で混乱している時には、考えうる候補の選択肢を空所(1)の横にでも書いて、後続の空所に視点をうつしましょう。

空所(2)の思考プロセス

こちらのページでは省略しております。映像授業【東大英語第1問B 文挿入(段落整序)】に入れております。

空所(3)の思考プロセス

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空所(4)の思考プロセス

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空所(5)の思考プロセス

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