2023年東大英語(第3問 リスニング)入試問題の解答(答案例)・解説
(編集部注)難易度の評価など、当日解いた所感はこちらをご覧ください。
目次
2023年東京大学 英語 第3問リスニング 総括
2023年度東大リスニングの概略についてざっくりご説明すると、
設問総数15問と選択肢の数が5つであるという点は2022年度入試と変わりありませんでした。
問題構成は(A)(B)(C)の3つのパートに分かれ、それぞれが独立した放送内容でした。
2023年度の放送英文概略は次の通りです。
(A) 伝書鳩が特定のルートを通って帰巣する特性についての研究紹介
(B) 大気中の二酸化炭素を減らす取り組みについての説明
(C) 脱成長に関する本を書いたJason Hickelをゲストに迎えたラジオ番組での対談
気になる点としては、いずれのパートでも補注が付されたこと、昨年と同じbuoyという英単語が注意書きになっていたことでしょうか。
加えて、パートBの放送英文が多くの教室で不明瞭な音質だったらしく、聴き取りが非常に難しかったという声が多く寄せられました。
その他、設問ごとの詳細な解説は後述いたしますので、ぜひご参照ください。
東大リスニングの出題形式
東大リスニングの出題形式について見ていくとしましょう。
(放送時間)30分程度
(放送開始)2月26日午後2時45分〜(変更可能性あり。必ず受験要項や問題冊子の注意事項で確認を!)
(設問総数)15問←A・B・Cの3つのパートに分かれており、各パートに5問ずつ割り当てられています。
(予想配点)2点×15問=30点
(選択肢数)5つ ←2018年入試より各設問の選択肢数が5つに増量しました。
(解答方式)マークシート
( その他 ) 放送の流れは、冒頭の説明
→パートA→30秒のインターバル→パートA→60秒のインターバル
→パートB→30秒のインターバル→パートB→60秒のインターバル
→パートC→30秒のインターバル→パートCの流れです。
市販の過去問CDとは異なり、冒頭の説明はサクッと終わり、すぐAが流れます。
(放送英文語数&出題テーマ)
(各パートの関係性・放送内容)
2021年まではパートAとパートBが内容的に関連していましたが、2022年からはすべてのパートが独立した内容となりました。
出題テーマは、文系理系に偏りなく出題されています。
ただ、これはリスニング問題に限った話ではありませんので、東大英語対策には様々な内容の文章に触れて教養力を上げることも大切です。
(2023年入試の変更点と試験会場での心構え)
2022年度入試の出題形式を踏襲しています。
パートBの放送音源が悪く、多くの試験教室で上手く聞き取れなかったという声が寄せられました。
パートAとパートCは難なく聴けた教室でも、この問題は起きていますので、スピーカーといった放送設備が問題なのではなく、音源そのものに問題があったように思われます。
ただ、どのような意図が東大側にあったのかは不明ではあるものの、合格者の多くは設問文と選択肢を読み込んで、正解を類推して答えを出していました。
聴き取れないからと言って、その場で絶望するのではなく、「与えられた情報を駆使して、1点でも多くもぎ取ってやる!」と自分を鼓舞する姿勢が合格を引き寄せるのだと思います。
2023年 問題A 総論
まずは、こちらをご覧ください。
上図のように、説問(6)〜(10)の解答根拠は、放送順に並んでいることがわかります。
注目すべきは設問(6)と(7)です。
近接した箇所に解答根拠が集中していました。
設問(6)に関連する箇所の聴き取りがうまくいかず、
「あれ、今なんて言ってたんだろう・・」といった具合に4〜5秒考え込んだとしましょう。
ですが、考え込んだところで答えが出るわけでもなく、それどころかリスニングに集中できなかった4〜5秒の間に10〜15words近くが新たに放送されてしまった結果、
設問(7)の解答根拠箇所をも聴き逃すことになってしまいます。
となると、精神的に動揺してしまい、後続の放送英文を冷静に聴き取れなくなることよくあります。
リスニング問題における極意は、常に意識を「次」に向けることにあります。
次の単語、次のフレーズ、次の文といった具合にです。
1問を取りに行こうとして全問を取りこぼすことは絶対に犯してはならない禁忌です。
以下の表の赤丸箇所をご覧ください。
たとえ、各パートの最初の設問や放送英文の冒頭が難しかったとしても、そこで心折れるのではなく、取れる問題は必ずあるんだ!と強く信じて、最後まで放送の聞き取りに全集中することが大事なのです。
なぜなら、赤丸箇所で示したように後半に易問(サービス問題)が用意されていることも多いからです。
諦めるのは0.1秒でできます。
2回目の放送が終わるまで、いや、午後4時の試験終了の鐘が鳴り終わるまで、決して諦めないようにしましょう。
次に、各設問の選択肢群ですが、パートAに関しては上図の通り、似通った単語や内容を並べています。
ですので、下読みはしやすいのですが、似ているがゆえに間違えてしまうこともありますのでご注意ください。
なお、正解の選択肢の文章内容とほぼ同じフレーズの言葉がパートAでは流れています。
ですので、下読み段階で選択肢群の内容を事前把握し、
かつ、各選択肢群のキーフレーズを一目瞭然化できた受験生は反射的に答えを出せたことでしょう。
そんな器用なことは出来ないと嘆かれる方は、下読み時に後々思い出しやすいようメモや印を残すなど工夫をしてみましょう。
もっとも、選択肢群に目を通すと逆に混乱するから、純粋に放送英文の全てに集中し、意味を完全に把握することに注力なさる方もいらっしゃいます。
合うやり方は人それぞれですが、最初から決めつけずに色々と試行錯誤してみましょう。
2023年 問題A 各論
設問(6)易
How often are animals required to use the information stored several years before, according to Dora Biro?
a) Almost every day.
b) Hardly ever.
c) Once a month.
d) Once a year.
e) Once in four years.
【プチ解説】
本問は、易問の部類に入ると評価したが、受験生の「思い込み」によって難問にも化けうる一問です。
共通テストや模試で選択肢を絞る「小手先の」テクニックを学んだ人ですと、選択肢の中で大きく浮いているものはすぐに斬るといった変なクセがついています。
共通テストや模試程度であれば、そうした技術で点数を稼ぐこともできるかもしれませんが、本問は日本最高峰の東京大学の精鋭が1年かけて作った問題です。
そんな小手先のテクニックをもって、選択肢b「Hardly ever」は変な選択肢だなと思って最初から検討対象外にしてしまうと、沼にハマります。
ここでは、やはり正攻法で設問文で示されている情報に着目すべきです。
Dora Biroという固有名詞は聴き取りのポイントになるでしょうし、the information stored several years beforeというカタマリにも要注意です。
東大リスニングは意外に設問文や選択肢群の表現をそのまま放送しているので、聴き取り時のヒントになるからです。
概ね設問順に放送されますから、冒頭が大きな鍵となります。
すると、放送開始から少しして、Dora Biroが流れ、そこからすぐにan animal is rarely required to retrieve the information it stored in its memory several years before. と放送がされます。
放送文では選択肢bのhardlyのまんまではなくrarelyと言い換えられていますが、
hardly, rarely, scarcely, seldom, few, littleといった準否定の語句は、
4Aや4Bなど他の大問でも重要な語句ですから、
この程度は反射的に脳内で言い換えできてほしいです。
なお、ここでうまく聴き取れなかっったってからといって動揺してはいけません。
この直後に設問(7)の解答根拠が放送されるのです。
次に意識を向けることが大切です。
ちなみに、rarelyを聴き取れなかった人の中には、設問(7)の解答根拠部分で流れるthree or four yearsという単語を拾い聴きして、選択肢eを選んでしまった人もいるかもしれません。
やはりちゃんと文脈を把握した聴き取りを心がけたいものです。
設問(7)並
The study by Biro and her colleagues examined if domestic homing pigeons would take the same route from
a) a farm 8.6 kilometers away, after an interval of three or four years.
b) a farm built in 2016, without GPS devices attached to the pigeons’ backs.
c) a hill located as far as 8.6 kilometers away, after a gap of ten years.
d) a house three or four kilometers away, after several years.
e) three or four different places, which are located 8.6 kilometers away from one another.
設問(8)易
The flight paths which a group of pigeons took in 2016
a) proved to be similar when they were escorted by the pigeons which knew the route.
b) varied as many pigeons lost their way.
c) were surprisingly similar to their routes in 2019 or 2020.
d) were never followed by the other pigeons which did not know their way.
e) were significantly different from those taken by pigeons flying in 2019 or 2020.
設問(9)並
The research confirms that homing pigeons depend on
a) the information which they memorize only when they fly alone.
b) the memory of landmarks which they store only while flying incompany.
c) their internal compasses and sense of smell.
d) their memory of landmarks as well as their internal compasses.
e) visual signs as well as their peers.
設問(10)並
According to Vermer Bingman, the research shows that animals’ capacity is
a) almost equal to humans’, just as we tend to think it should be.
b) closer to what we thought of as humans’ capacity.
c) equal to humans’ in terms of memory capacity.
d) much more developed than humans’ in comparing the lengths of different routes.
e) only slightly inferior to humans’, just as we imagine it should be.
2023年 問題B 総論
まずは、こちらをご覧ください。
2023年度東大リスニングの鬼門は、このパートBでしょう。
放送音源が不明瞭だったため、多くの受験生が激しく動揺したとのこと。
ただ、扱われている話題は比較的シンプルですし、難易度の高かった設問(11)以外は解答根拠も明確なものばかりでしたから、なんとか聴き取れる範囲ででも食らい付きたかった問題でした。
なお、パートAとは異なり、本文の複数箇所に解答根拠が点在している設問もパートB2は見受けられました。
このあたりが、それから、2023年度入試では、NOT問題(正しくない選択肢を選べ問題)が3問出されましたが、うち2問がパートBから出されています。
消去法で解くのも手ですが(本年度の設問12番)、一発で仕留めること(本年度の設問15番)も肝要です。
また、上述したようにパートBの音声が不明瞭で全然解けなかったとしても、パートCで挽回することもできます。東大英語は時間制約が厳しい試験であることは有名です。
上の図のように、東大英語の出題形式は8種類と多く、読解語数も5000wordsを超えています。
それゆえ、1つにこだわりすぎず、取れる問題をどんどん拾っていくくらいの気持ちで臨みましょう。
時間制約が厳しいということは、冷静さを失った場合、リカバリするだけの時間的なゆとりがないということなのです。
頭が真っ白になろうものなら、総崩れすることもあり得ます。
頭がいいから東大に受かるわけではありません。
終始冷静に対処できるから東大に合格できるのです。
ぜひ、合格の呼吸シリーズなど敬天塾の記事を通して、合格者の心構えも学ばれてください。
2023年 問題B 各論
設問(11)難
(11) The “buoys” designed by Running Tide are intended to
a) be boiled in water and eaten.
b) float away into the atmosphere.
c) release carbon into the atmosphere.
d) sink to the bottom of the sea.
e) warn ships of shallow waters.
設問(12)並
Which of the following is NOT a reason for Running Tide to use kelp as its material of choice?
a) It can be allowed to sink to the ocean floor.
b) It can be easily discarded.
c) It can be harvested.
d) It can be used as a building material.
e) It can grow fast and absorb a lot of carbon.
設問(13)易
According to Marty Odlin, how much carbon produced by fossil fuels do we need to remove in order to effectively combat climate change?
a) Gigatons.
b) Hundreds of gigatons.
c) Hundreds of tons.
d) Megatons.
e) Thousands of tons.
【プチ解説】
本問はキーワード拾い聴きの受験生にとって至福の一問だったと思います。
設問文のMarty Odlinが登場した、少し後にhundreds of gigatons of carbon released by fossil fuelsと放送されますので、選択肢bを瞬殺で選べたと思います。
ここで注意すべきは、そのすぐ後に設問(14)の解答根拠も流れるということです。
パートAの設問(5)と(6)でも似たようなことがありましたね。
常に意識を次の音に向けることがいかに大切かを肝に銘じましょう。
なお、数量表現については盲点とする受験生も多いので、関連表現を参考書などで固めましょう。
① 年号はどのように読まれるか
750 seven fifty
1066 ten sixty-six
1492 fourteen ninety-two
1903 nineteen oh three / nineteen three
2008 two thousand and eight
2020 twenty twenty
② 時刻で注意すべき読まれ方
5:45 をfive fourth-fiveと読むのは中1でもわかりますが、a quarter to six (15分が6時に向かっている=6時15分前)
7:01 をa minute past seven (1分が7時ジャストから過ぎ去った) 10:30をhalf past ten (30分が10時ジャストから過ぎ去った)といった言い方もあるので要注意です。
③長文などで時々出てくる単位
1 inch は 約 2.54cm
1 foot=12 inches は約30cm
1 yard は約91cm
1 mile は 約 1.6km (約1600m)
1 pound = 16 ounces は約 0.45kg
1 ounce は 約28g
1 acre は 約 4000㎡
Celsius→https://hugkum.sho.jp/179221
④分数表現
3 one-third
1/5 one-fifth
2/3 two-thirds
4/5 four-fifths
7/10 seven-tenths
1/2 a half / one half
1/4 one- fourth または a quarter ( one quarter)
3/4 three-fourths または three quarters
④ その他
人口絡みではbillion、国家予算絡みではtrillionといった巨大な数量を表す単語も出てきますので、貪欲に知識を仕入れましょう!
設問(14)易
What happens in the “fast cycle”?
a) Carbon becomes neutral.
b) Carbon is pumped deep into the ocean.
c) Carbon is transferred to fossil fuels.
d) Carbon moves from fossil fuels to the air to plant matter.
e) Carbon remains locked away in the earth.
設問(15)並
Which of the following statements about Odlin is NOT correct?
a) He founded Running Tide in 2017.
b) He is CEO of Running Tide.
c) He lives in Maine.
d) He taught robotics in college.
e) He was born into a fishing family.
2023年 問題C 総論
省略しております。
2023年 問題C 各論
設問(16)並
According to Hickel, the aim of “degrowth” is
a) combining traditional economics with indigenous philosophies.
b) holding high-income countries accountable for environmental destruction.
c) promoting capitalism at the expense of environmental protection.
d) providing good lives for all through technological innovation.
e) reducing inequality and resource use to stay within planetary boundaries.
設問(17)難
According to Hickel, the idea of “growth”
a) has been sold by countries in the Global South to high-income countries.
b) is a fundamental concept in the emerging field of ecological economics.
c) is a natural phenomenon in nature, but is unnatural in the discipline of economics.
d) is essential for economists, but needs to be redefined.
e) is generally accepted on both sides of the political spectrum.
設問(18)並
Which of the following statements about “the steady-state” in ecological economics is NOT consistent with what Hickel says in the interview?
a) It is important to maintain a balance with the ecosystem that you live with.
b) It is similar to indigenous thoughts about economies and exchange.
c) You should never extract more from the environment than can be replaced on a yearly basis.
d) You should never extract natural resources from indigenous communities.
e) You should never produce more waste than the environment can safely absorb.
設問(19)易
The interviewer suggests that ecological economics
a) has rebranded ideas from indigenous knowledge for the Global North.
b) is fundamentally different from indigenous knowledge.
c) is highly critical of ideas from indigenous knowledge.
d) is just catching up with indigenous knowledge that has been around for thousands of years.
e) is just copying ideas from indigenous knowledge that has been around for thousands of years.
設問(20)易
According to Hickel, people who live close to the land interact with the living world
a) in a variety of ways.
b) in similar ways.
c) in the same ways as rich economies do.
d) in ways which have remained the same for thousands of years.
e) with respect for their ancestors.
(編集部注)こちらのページでは、設問(6)と(13)以外はプチ解説を省略しております。映像授業【東大英語 リスニング】に入っています。
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