日本語文章能力向上のための12の極意

極解するなら、東京大学二次試験はほぼ全科目で、
要約のチカラを問うていると言っても過言ではありません。

思い出してみてください。
東大国語で問われる「どういうことか」、
東大地理における用語定義や因果関係の説明問題、
東大日本史や東大生物で試される資料読解問題、
東大世界史で受験生を悩ます600字前後の大論述問題など、
いずれの科目でも端的かつ明瞭にエッセンスを纏め上げる要約力が高度に求められています。

つまり、要約力を上げることで、
英語1Aは当然のことながら、全教科的に点数を底上げすることが可能になる
のです。

私大全滅でも東大だけ受かる人が現役生を中心にそこそこいます。
その子たちにヒアリングしてみると、日本語文章作成能力や要約力が優れている子がほとんどだとわかります。

全教科的に点数の伸び悩みに直面している方は、
東大入試が全教科的に求めている国語力(読解力・文章作成力・語彙力・要約力などで構成)を磨くことから始めてみましょう。

「英語力を上げるなら、まずは国語力を上げろ」
この言葉を皆様にお送りします。

(参考)映像授業コース【東大現代文】

それでは、能書きはこれくらいにして文章作成に資する12の技を伝授したいと思います。

極意① 助詞の使い方に注意せよ。

まずは、こちらの動画をご覧ください。

https://m.youtube.com/watch?v=tzLGA1-QWfU&feature=share

いかがでしたでしょうか。
ダンゴムシ「にも」と、ダンゴムシ「も」では、意味が大きく変わることを実感していただけたのではないでしょうか。
会話の中でなら、「それ、どういうこと?」と聞き返すこともできますから、相手の真意を掴むことも容易です。
ですが、入試においては、提出された答案用紙だけが唯一の判断材料ですから、答案に書かれた言葉だけがすべてであり、採点官は答案で述べられた言葉だけを評価の対象にします。

さて、ここで4つの例文をご紹介したいと思います。採点官になったつもりで、添削をしてみてください。

(1)先輩敬天塾で東大合格を果たしたので、私敬天塾に興味を持った。

(2)先輩敬天塾で東大合格を果たした、私敬天塾に興味を持った。

(3)先輩敬天塾で東大合格を果た、私敬天塾に興味を持った。

(4)先輩敬天塾で東大合格を果たす、私敬天塾に興味を持った。

いかがでしたでしょうか。
違和感のない文は(1)だと思います。
その他も似たような文ではあるのですが、助詞の使い方で違和感を覚える表現があったと思います。
その他は、下線部に意識を巡らし、どのように変えれば良いか考えてみてください。

他の人の答案を採点してみることで、自分の答案の問題点にも気付きやすくなります。
敬天塾の授業で、答案比較検討会を毎回取り入れている理由でもあります。

なお、受験生答案で全教科的に散見されるのが(2)のように不必要な「が」です。

ここで、いくつか例文を挙げます。

A. 東大の文化祭に行きたかったのだ、風邪を引いてしまったため行けなかった。

B. 東大の文化祭に行ったのだ、そこで旧友と出会いすごく楽しかった。

なんの変哲も無い二つの文章のように思えるかもしれませんが、
Bの「が」は論述答案で極力避けねばなりません。

まず、文法的な説明からしますと、
Aの「が」は逆接を意味し、
Bの「が」は単純な接続を意味します。

AもBも日本語としては意味が通じるかもしれませんが、接続助詞の「が」は逆接を意味することが多いので、一読した時に、誤解を生む可能性があるのです。

たとえば、Bを逆接と捉えると、東大の文化祭に旧友がいるなどありえない、それにもかかわらず旧友がいたから驚いたというニュアンスを見出すことも出来なくはありません。
このような「が」は、世界史や地理の大論述でもよく見られます。

たとえば、

ウェストファリア条約で西欧に確立された主権国家体制は、アメリカ独立革命やフランス革命を経てラテンアメリカなど非西欧圏にも拡大したが、多民族帝国たる独墺の敗戦や露の革命による解体により東欧を中心として多くの主権国家が第一次世界大戦期に誕生した。

この世界史答案における「が」の前のゾーンと、後のゾーンには何らの関係性もありません。
ラテンアメリカ諸国が独立を果たしてから、第一次大戦までは100年近く離れており、無関係な二つの事柄を一文でまとめる意義も見出せません。
さらには、この「が」は単純な接続で用いているのか逆接で用いているのか不明瞭であり、読み手からするとスムーズに読み進めることができません

東大教授ともなれば、因果関係の嘘偽りを見落とすことはなく、事実誤認には厳しい態度で臨むことはよく知られているところです。
仮に、この「が」を逆接の意味で解釈された場合、
意味不明な論理関係だとして低評価されることもありえます。

引き続き、こちらの地理答案をご覧いただくとしましょう。

官民の中枢管理機能や金融機能が集積する恩恵、並びに雇用吸収力の高い第三次産業の急速な発展や高賃金が人々を魅了したのだが、その結果として多くの人が東京圏に流入した。

単純接続の「が」を使いたい人の心理は、
「が」で接続することで、うまく文章が繋がったように錯覚するからなのでしょう。
これは一種のクセのようなものです。
会話では、話を途切れさせないために、しばしば「が」を用いる気持ちも分からなくは無いですが、論述答案では避けるに越したことはありません。
さて、この地理答案に話を戻しますと、「その結果として」という因果性を示すワードがあるにもかかわらず、
この「が」の存在が前半部と後半部の繋がりを不明瞭にしてしまっています。

なんのために、どういう意味で、「が」を用いる必要があったのか全くわかりません。
ちなみに、この文は、二文に分けて書いた方が読みやすい文章になるでしょう。

官民の中枢管理機能や金融機能が集積する恩恵、並びに雇用吸収力の高い第三次産業の急速な発展や高賃金が人々を魅了した。
その結果として、多くの人が東京圏に流入した。

 

極意② 修飾・被修飾の関係に注意せよ

修飾・被修飾の関係が不明瞭な答案は実に多くみられます。幾つか具体的な例をご紹介したいと思います。

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