2026年東大地理(第2問B)入試問題の解答(答案例)・解説

(編集部注1)難易度の評価など、当日解いた所感はこちらをご覧ください。

(編集部注2)実際の入試問題入手先
本解説記事を読むにあたって、事前に入試問題を入手なさることを推奨します。
※入試直後は新聞社のページから入手できます。
 しばらくすると、新聞社からは入手できず、東大HPからは入手できるようになります。

・産経新聞解答速報 https://www.sankei.com/article/20260226-7GXVJBPYIBC6TDSA7ZNXH27TQQ/?outputType=theme_nyushi
・東京大学HP https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_04.html

はじめに

中国の社会問題や産業などについてフォーカスがあてられた問題です。

中国地誌が大々的に出題されたのは1996年第3問以来ですから、約30年ぶりとなります。
特定の国にフォーカスをあてた大問は、2022年2Aのアメリカ地誌、2022年2Bのブラジル地誌、2020年3Aのドイツ地誌など、そう多くはありません。
とはいえ、本問に関して申し上げるなら、どこぞの入試問題のように細かな都市名を何十個も答えさせたり、ケッペンの気候区分を細かく問うたりするような地誌問題ではありません。
東大地理では、そうした切り口から地誌の知識が問われることはほとんどないと思います。

中国は日本のお隣さんの国ではありますが、どことなく遠い国でもあります。
それは、2A解説記事でも申し上げたようなチャイナリスクにみられるように、社会主義の国だからかどうにも日本の考え方と異なる言動が多いからです。
さて、東大地理では、しばしば日本と結びつきの強い地域を出してくることを講習会でお話ししましたが、今年度の第2問ではまさしく傾向どおりの地域が出題可能性されました。
過去問分析シートも参照しながら、ぜひ、どの地域を重点的に学習したら良いのか探究してください。

東大地理の過去問分析シート(1983~2026年)ダウンロード可能

 

それでは、個別の設問についてみていきたいと思います。

設問(1)

問題文

直轄市②と④の都市名を②ー◯◯のように答えよ。

①や③ではなく、②や④を問うてくるあたりが憎らしかもしれませんが、基礎知識であることに変わりはありません。
本問をサービス問題では出したのか、はたまた統計分析ばかりを重視するようになった地理探究のかげで知識力の低下がみられることを憂慮して出したのかは定かではありません。

ただ、②の天津も、④の重慶も中学地理で学ぶような都市ですから、確実に解かねばならない問題でした。

なお、都市名を答えさせる問題は過去にもありました。
ニューオーリンズ(2024年3A/2008年1A)、カルカッタ(2001年1C)、ダッカ(2001年1C)、カラカス(1993年2A)、ブラジリア(1993年2A)、ブエノスアイレス(1993年2A)くらいで、実は2000年代に入ってからは、ほとんど出題されていませんでした。

今後、出題頻度が高まる可能性もありますので、教科書で登場する地名くらいは、地図上で位置関係を確かめることを心がけるようにしましょう。

中華まるごと百科事典ホームページより一部改変
http://www.allchinainfo.com/

解答

②ー天津(テンチン)、④ー重慶(チョンチン)

 

設問(2)

問題文

表2ー2は2023年の人口あたりの消費支出とそのうちの住居支出を示したものである。この表より直轄市①や③でどのような都市問題が生じていることが読み取れるか。原因とあわせて2行以内で述べよ。

まず①と③の都市名を特定しなければいけません。
正直、②や④より思いつきやすいのではないでしょうか。
則ち、①が北京で、③が上海です。
日本史や世界史にも出てくる地名です。
万が一にも試験最中にど忘れしたとしても、本問では都市名を答えよとは設問要求されてませんから、書かなければ良いのです(笑)。

さて、本問では、北京と上海において、他の都市部と比べ、住居支出が高いことが問題視されています。
確かに、表2ー2をご覧いただきますと、両都市は全国平均よりも10%も高くなっています。
支出の1/3を家賃が占めるというのは、かなり大きなウェイトです。
日本でも賃貸借契約を結ぶ際、月収の1/3程度をMAXとする家賃の部屋を借りるよう不動産会社から指導されます。
これを超えてしまいますと滞納リスクが高まるので入居審査に通りづらくなるそうです。
中国の北京と上海では、「平均」で既に40%近くになっていますから、家計に占める負担が相当大きいことがわかります。

さて、色々申し上げましたが、本問は別に中国地誌の問題というより、単なる「経済」原理の話がなされているに他なりません。
どういう場合に、モノの値段が高騰しますか?と問われているわけです。
中学校の社会科の授業でも学んだ需要と供給の話ですね。
基本的な概念ですが、めちゃくちゃ大切な考え方ですので、敬天塾の東大地理鉄則集などでしっかり復習をしておきましょう。

話を戻しますと、家賃が高騰するということは、それだけ、その都市に住みたい人がいるということです。
では、なんのために北京や上海に人々がやってくるのか。
これは後続の設問(3)とも関係しますが、要は仕事を求めてワーーーっと押し寄せてくるわけです。
13億もの人口を誇りながら、大半が沿岸部に密集して暮らしています。
国土全体からみれば、非常に不均衡です。
だからこそ、設問(3)の政策が実施されたわけです。

最後に、入試当日の所感記事でもご案内した家賃高騰をめぐる思考レシピを再掲したいと思います。

敬天塾2025年2B解説記事より抜粋

なお、図表から読み取れることですから家賃高騰を書けば十分だと思いますが、そこからさらに人がたくさん流入したんだから都市化特有の問題も起きたはずだと考え、+αの知識を書いても良いとは思います。
このあたり、「読み取れる」の解釈次第だと思いますので、解答例では両案をご紹介いたします。

ちなみに、私が受験生なら住宅不足+家賃高騰くらいの記述に留めたと思います。
なぜなら、関連した「影響」についてまで書けとは要求されていないからです。

 

それでは、解答例です。

解答例

経済成長が著しく産業も集積しているため、農村部から出稼ぎ労働者が大量流入した結果、家賃が高騰し住宅不足が深刻化している。(60文字)

経済成長著しく就業機会も多いため地方から労働者が大量流入した結果、家賃が高騰し住宅難や交通渋滞、社会不安が顕著となった。(60文字)

 

追記

中国に関しては地価の高騰とは書かず、家賃や不動産価格の高騰と書きましょう。
なぜなら、中国の「土地」には所有権という概念がなく、売買できないのです。
そうしたこともあり、中国の富裕層は、日本の土地を買いまくっているというのもあります。
彼らからすると、土地を自分のモノにできるというのが感動ものなんだそうです。
もっとも、住むためではなく、株の売買のように日本の不動産を買っては売ってを繰り返しているせいで、東京都心部などでは異常なまでに不動産価格が高騰しています。
最近では、外国人による高級マンション買い占めを制限する動きも出てきています。
数年前まで家賃7万円で借りられたお部屋が、今は13万円になっていますから、日本人からすると迷惑以外のなにものでもありません。

 

設問(3)

問題文

政府が④を直轄市に指定した目的とその実現に向けて実施した施策の例を1つ、あわせて1行で述べよ。

入試当日の所感記事でも申し上げましたが、④(=重慶)が沿岸部から離れた内陸部であること、中国が行なっている「施策」のうち受験生が知っているものは、せいぜい一人っ子政策・改革開放政策・西部大開発くらいであることにみれば、答えは自ずと「西部大開発」と定まります。

ちなみに、西部大開発に関しては、過去にも問われています。

本問では、直轄市に指定した目的とありますから、ここで西部大開発の目的を書いて、実施した施策の例として西部大開発の名を挙げれば良いと思われるかもしれませんが、西部大開発で実際に何をやったのですか?まで設問要求されているようにも読めます。

とするならば、少しばかり難易度が上がるようにも思えますが、とはいえ、教科書にはしっかり書かれていますので、やはり基本問題の範疇を超えてはいないでしょう。

教科書では、

沿岸部に比べ発展が遅れた内陸部との格差を解消するため、2000年からは西部大開発や中部勃興、東北振興などの政策が進められてきた。それらの政策により、鉄道や高速道路、空港などのインフラや、内陸部から沿岸部への送電網やパイプラインが整備され、重慶や武漢などの都市が飛躍的に成長した。
(旧二宮書店2024地理探究p202)

とあり、しっかり重慶の話も登場していますね。
少しプラスアルファのお話をしますと、共通テストでもお馴染みの三峡ダム(2009年完成。
世界最大の水力発電用ダム)は重慶にあります。
西部大開発計画とあいまって、中国政府にとって重慶の地理的重要性は極めて高いものとなっており、モノレールなど公共交通網の整備に莫大な資金を投じているそうです。

 

それでは、解答例です。

解答例

沿岸部と内陸部間の経済格差解消を促す西部大開発が実施された。(30文字)

内陸部の経済発展を促す西部大開発のもとインフラが整備された。(30文字)

内陸部の経済発展を促す目的で西部大開発計画が実施された。(28文字)

内陸部の経済発展を促すべく交通インフラが大規模に整備された。(30文字)

 

追記

首都など特定の都市への人口集中は様々な都市問題を招いてしまい、国土全体の発展の妨げになる。
そこで、各国では、様々な策を講じて問題の解決にあたっています。

なお、中国、韓国、インドネシアにおける地域格差については地理探究の教科書でしっかりと書かれていますが、各国で採られている是正策についてまでは、意外と整理されていない受験⽣が多いのではないでしょうか。

中国は未発展な内陸部の経済発展を促す戦略を採り、韓国では⾸都機能や産業の地⽅分散を促す戦略を採り、インドネ シアにいたっては⾸都そのものを移転させることを既に決定しています。
注意すべきは、韓国は⾸都機能を分散させようとしているだけであり、⾸都ソウルそのものを移転しようとしているわけではないという点です。

また、ソウルには、⼈⼝の半数が集中し、企業の本社の7割、⼤学の4割が集まっているとされています。
そのため、地価の上昇が著しく、住宅不⾜も顕著で、⾼層マンションも数多く⽴ち並んでいることのです。
せっかくですから学習効果の高い問題をご紹介いたします。

いかがでしょうか。地理学は、2つ以上の事象の⽐較を通して本質を追究する学問であるところ、この論述問題のように、教科書のばらばらのページに書かれていることを特定のテーマで結びつけて考えさせる問題を東京⼤学はよく出してきます。
教科書の読み⽐べなどを通じて、各単元の理解を深める学習も極めて有益です。

また、本問に関連して、東⼤2020年第3問Bや2006年第3問設問Bは確認しておきましょう。
東京に⼈⼝が集中す る理由について端的にまとめるなら、「⾦融機能や官⺠の中枢管理機能が集積し、雇⽤吸収⼒の⾼い第三次産業が発展したから。」となるでしょうか。
こうした東京⼀極集中の是正に向け、たびたび⾸都移転や⾸都機能分散に ついて議論されてきました。
地震対策や地⽅分権を促すメリットなども挙げられていますが、議論は⼀向に進んでいません。
気になった方は、「首都移転 東京」でググってみてください。

 

設問(4)

問題文

表2ー3は地域別に米および小麦の生産量(2020年と2023年)と人口変化率(2000〜2023年)を示したものである。2000年以降に東北地域において米の生産量が増加した理由を、中国本土全体の動向を踏まえて、国土利用の観点と技術的観点のそれぞれからあわせて3行以内で述べよ。

少し歯ごたえのある設問に思えるかもしれませんが、設問(2)や(3)の背景事情を理解し、かつ、図表における東北部の数値の特異性に気づけたならば、すぐさま答案骨格を作れたことでしょう。

まず、表2ー3をご覧いただきますと、東北部だけ人口が減っています。
それにもかかわらず、米の生産量は20年で倍増しています。
普通に考えたら、おかしな話ですよね。

ただ、東北の人たちが米を作るのは必ずしも自分たちが食べる分の確保だけではないはずです。
では、いったい誰のために作っているのでしょうか。
表2-3では、そこに気づいて欲しかったわけです。

ですが、念には念を入れて設問文で「中国本土全体の動向を踏まえて」とヒントまで与えてくれているのです。
随所に東大教授の配慮がみられますね。
こうしたヒントを見落とさないことが東大地理制覇の極意です。

さて、他の地域で人口が増加しているのなら、当然、食料需要も高まるはずです。
それにもかかわらず、中国全土の人口増加に見合う米作りが長江中流でも華南でもなされていません。
これは、「需要」と「供給」の話に照らしますと、不自然な話です。

さらに、チンリン=ホワイ線の話を思い出してください。
上海あたりを通るこの線を境に南米北麦(チンリン=ホワイ線より南では降水量も多いためお米を作れるが、この線より北側では雨が少ないから小麦を作るほかないという意味です。中国北部の主食は昔から水餃子でした。小麦で作れるからです。その一方、チャーハン系は中国南部が起源だそうですよ。このように料理で地域の産業を考えてみるのも面白いですね。)
と言われますよね。
中国南部の華南や長江中流などは雨が多いので米作りが盛んに行われているということです。

要するに、よその地域が頑張ってつくらないから、未開発な東北部を地域振興も兼ねて大穀倉地帯にしちゃえと中国政府は考えたわけです。
では、一体どうしたら良いのか。
南米北麦なわけですし、東北部は非常に寒冷です。
ここで品種改良の話が反射的に出て来なければいけません。
寒さに強い品種が必要です。

ちなみに、教科書では

東北部では畑作が盛んだが、小麦より大豆やとうもろこしの栽培が多く、一部では稲作も行われている。稲は日本の東北地方や北海道で栽培されている冷害に強い品種を導入したもので、収穫量が多く、さらに高品質の新種を開発することで生産の安定化がはかられている。
(旧二宮書店2024地理探究p201)

と、しっかり書かれていますね。

 

ちなみに、なぜに長江中流や華南では稲作の増産をはからないのでしょうか。
先程ご案内した西部大開発の話でも出てきたように、沿岸部は経済発展が著しく都市化が進展しています。
それに伴い、農地転用や離農者も続出しました。
要するに、つらい農作業をつづけるより、楽してお金を稼ぐ仕事が他にもあるということです。
日本にも兼業農家の増加や高齢化による耕作放棄地増が見られますよね。
同じことが中国でも起きているのです。
このあたりを端的にまとめれば良いでしょう。

 

それでは、解答例です。

解答例

都市化や工業化の著しい南部では急増する人口の食糧需要に見合う稲作面積の確保が難しいため、人口が減るも広大な土地を確保できる東北に耐寒性品種や大型機械を投入し労働生産性を高めたから。(90文字)

工業化が進む南部では転作や離農が増え稲作面積拡大も難しいため、人口増に見合う収量を確保すべく、耕地確保が容易で未開発の東北部に耐寒性品種や大型機械を政策的に投じ生産性を高めたから。(90文字)

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上記の地理の記事は敬天塾の塾長とおかべぇ先生が執筆しています。
おかべえ先生は、東大地理で60点中59点を取得した先生です!
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