2026年(令和8年)東大地理を当日解いたので、所感を書いてみた。〔難易度・講評・プチ解説など〕

敬天塾の塾長と講師が東京大学の二次試験当日(2026年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、速報で所感を記した記事です。他の科目については、こちらにございます。

※当日の所感なので、今後の研究によって難易度などを変更する可能性もございます。

【科目全体の所感】

難易度  難化

本年は、あきらかに難化したと言って良いでしょう。
東大地理史上 最高難度と評して問題はないでしょう。
1問1問はそれほど重厚ではないのですが、設問数の多さ指定語句問題の激減、 市販の参考書はおろか教科書や資料集にも一切載っていない最新トピックのオンパレードなどを前にして、ほとんどの東大受験生はお通夜状態になったと言われています。
ただでさえ時間制約が厳しい東大社会において、 地理の超難化は地獄のような気持ちになったはずです。
それを受けてか、今年の世界史と日本史はだいぶマイルドになりました。
ただ、そうなりますと、世界史・日本史選択者が圧倒的に有利な問題セットだったということになります。

さて、昨年の東大地理もそうでしたが、頻繁に改訂がなされていない市販の参考書や一般的な塾テキストで勉強している受験生にとって、努力が報われない問題に東大地理は変貌を遂げようとしています。
暗記量が少ないからという消極的な理由で地理を選択される方が世の中には多いと思いますが、そうした受験生にとっては受難の時代がやってきました。

今年受けられた方は、あまりの難度に悲嘆の念に駆られたかもしれませんが、必ず突破口はありますので安心してください。
正しい戦略のもと、東大地理対策に特化した教材で、しっかりと訓練を行えば、必ず得点力は底上げされます。
ささやかな応援ではございますが、塾生向けの教材から有益な問題や資料をいくつか本記事で公開することにいたしますので、ぜひ学習の一助になさってください。

 

なお、設問別の難易度表をご覧になられて「並」ばかりなのに、なぜ総合評価では難化としているのか疑問に思われた方も多いと思います。

先程も申し上げましたように、1問1問はきちんと丁寧に読めばそれほど難しくはないと思いました。
ただ、問題なのは、きちんと資料を読む時間、冷静に分析できる時間を捻出できるかいなかです。
90分という時間制約のなかではかなり苦しかったと思います。

また、どういう勉強をやってきたかによっても体感難易度は変化するというのが正確なところです。
参考書や赤本青本の解答例を丸暗記をしているような受験生にとっては、ほぼ全てが未知の問題、難問に思えたはずです。

その一方で、過去問探究をしたうえで、しっかり文章を読み込んで地理的考察を日頃から実践してこられた受験生にとっては例年並みの問題ばかりで、あとは分量との勝負であり、傾向変化を前にしても動揺しない心を持っていたならば高得点を奪取することもできたでしょう。

東大地理2018-2026分析表

こちらの表をご覧いただきますと、2026年入試は、2025年や2022年と同程度の分量のように思われるやもしれませんが、下の設問別分析シートをご覧いただきますと、2026年の異質さが浮かび上がってくるかと思います。

●指定語句という名のヒントが付された設問が大幅に減少

●受験生にとっては馴染みのない最新論点が1B・1C・3Bで登場

●第1問が10年ぶりに3題構成に

●受験生が盲点とする分野が1A・3Aで登場

するなど、あまり巨大な傾向変化が見られました。
人生をかけた一世一代の勝負をかけている受験生にとっては酷以外の何ものでもなかったでしょう。

なお、出題分野につきましては、表で示した通り、これまであまり問われたことのなかった林業に関して大々的に出題されました。
変にヤマを張ることなく、満遍なく系統地理は学習することが重要だとご理解いただけたのではないでしょうか。
系統地理は、地理学全体の礎をなすものです。
系統地理に対する理解がしっかりしていれば、地誌で暗記すべきことは1/3にまで圧縮されると言っても過言ではありません。
それくらい、系統地理は重要なのです。

東大地理2026年 設問別分析シート

2026東大地理設問簡易分析

 

第一問

設問A 

難易度 標準

毎年のことではありますが、1Aに見慣れぬ図表や論点を出して受験生の戦意を喪失させようとするのが東大地理の特徴です(笑)。
しかも、今年度は、1A〜1Cの全てで多くの受験生が見慣れない論点が出されましたので、問題冊子のページをめくるたびに冷や汗が流れた方も多かったのではないでしょうか。
市販の参考書や一般的な塾テキストで勉強されてこられた受験生にとって、2025年や2026年の入試問題は努力が報われにくくなっています。
2025年の入試問題では最新の教科書や資料集で掲載されているトピックが多く出題されました。
up-to-dateが間に合っていない市販の参考書の類では、もはや追いつけない領域に東大地理は達しています。
そこで話が終わるかと思いきや、2026年度入試では、更にその先をいくこととなりました。
教科書や資料集には載っていない「旬」な論点がこれでもかと問われたのです。
敬天塾では最新ワード集や比較編といった教材をリリースしておりますが、5年先まで使える教材として作ったつもりが、2026年度入試で数多く出題されることとなりましたので、来年以降どうしようと戦々恐々しております(笑)。
塾長とともに3000時間以上をかけて教材開発に努めて参りましたが、2026年度入試をみて、努力の方向性が間違っていなかったのだと救われた気持ちにもなりました。
手前味噌ではありますが、敬天塾の東大地理対策問題集や映像授業など東大地理の出題傾向に沿った教材や授業で学習を進めていただく必要性が以前にもまして高まっています。
読者の皆様にはぜひご活用いただけますと望外の喜びです。

 

さて、設問の所感に移るとしましょう。
設問Aでは、サンゴ礁にまつわる論点が大々的に問われました。
共通テストや他の国公立大学でも近年頻繁に問われていますので、出題のトレンドなのでしょう。
この手の問題が出されますと、決まって拒否反応を示される方がいらっしゃいますが、過去問や教科書探究をしっかり進めてこられた受験生にとって、本問はサービス問題だと言っても過言ではありません。
実際にみていくとしましょう。

 

第一問 設問A(1)

こんな問題見たことがないと思われましたか?
いいえ、2017年1A(1)で類題が既に登場しています。
それに、本問のリード文ではご親切なことに「サンゴ礁をともなうハワイ島は現在ホットスポット上にある活火山の島」とヒントまで書かれています。
ホットスポットは地学基礎で詳しく説明されますが、地理探究の教科書にもちゃんと載っています。
こうしたホットスポットであるハワイ島から離れれば離れるほど、島の標高が下がっていくと言っているわけです。
解答行数も1行ですから、別に高級なことを書かなくても良いと東大側は暗示しています。
ゴツイ図表があるからと言って難問とは限らないことを示す良い例だと言えましょう。

 

第一問 設問A(2)

引き続き、設問2番に移るとしましょう。
問われていることは2つです。
1つ目は、ハワイ島から1000km〜2500kmの範囲における海域でサンゴ礁島が海面近くまで発達している理由です。
そして、2つ目は、X地点より北西にサンゴ礁が存在しない理由です。

1つ目は、2017年1A(1)をきちんと過去問探究をしていた受験生にはサービス問題でしょう。
よろしければ2017年1Aの解説記事も併せてご参照ください。

2つ目は、サクッと答えられます。
サンゴ礁が存在しないということは、サンゴ礁が生育できない理由があるからです。
ハワイから北の高緯度側の地域に行けば寒くなるわけです。
サンゴは暖かい海に生息する生き物ですから、海水温が低くては生育できません。
ちなみに、サンゴ関連では敬天塾の科目特訓ゼミのテキストでも取り上げておりました。

 

第一問 設問A(3)

これは単なる読解問題です。
海洋国家である日本の石灰石には砂や泥の粒子(要するに不純物)の混入が少ないわけですね。
ということは、大陸側の縁では不純物が多いことになります。
海岸に砂や泥を大量にもたらすものは河川ですよね。
そのあたりのことを端的に書けば合格点をいただけたはずです。
この1Aに限らずですが、東大教授陣は随所にヒントをちりばめてくださっています。
設問文が長いということは、それだけヒントが載っている可能性が高いとポジティブに捉えなければなりません。
「見たことがない問題=難問ではない」ことを映像授業でも幾度となく申し上げて参りましたが、本問は好例の一つと言って良いでしょう。

アメリカ海洋大気庁ホームページ画像を編集 https://oceanservice.noaa.gov/facts/coralwaters.html

なお、敬天塾の科目特訓ゼミのテキストに以下の問題を載せておりました。
的中と言ってよいでしょうか(笑)

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2026年東大地理(第1問A)入試問題の解答(答案例)・解説

 

設問B

 
難易度 標準(ブルーカーボンを知らない人にとっては難しく思えたでしょう)

ブルーカーボンについて大々的に問われた大問です。
敬天塾の最新ワード集でご案内していたほか、ゼミ授業や直前演習でも繰り返し注意喚起をしていたテーマでしたので、塾生たちから喜びの声が続々と届いています。
政府系白書や数千以上の論文を解析するなかで数多くの予想問題を苦労して作成して参りましたので、私も思わずガッツポーズをしてしまいました。

さて、ブルーカーボンの概略ですが、まずは国土交通省のこちらの資料をご覧ください。

いかがですか? この資料を事前に読んでいたか否かで解答スピードがはまるで変わったはずです。
なお、ブルーカーボンは、今年の2月上旬に行われました早稲田実業中学の入試問題でも取り上げられました。
令和8年4月に改訂される地理総合の教科書では取り上げられないようですが、令話9年に大改訂がなされる地理探究の教科書ではもしかしたら紹介されるかもしれません。
冒頭でも申し上げましたが、2025年の東大地理が最新の教科書から数多くの論点が出されたのに対し、本2026年の東大地理では教科書にすら載っていない最新のトピックが数多く出題されました。
市販の参考書ではもはやカバーできない領域に達していますので、ぜひ敬天塾の東大対策問題集映像授業をご活用ください。

 

それでは、個別の設問について見ていくとしましょう。

第一問 設問B(1)

ブルーカーボン生態系の分布面積が海洋全体からみて僅か0.5%以下であるにもかかわらず、海洋全体の炭素貯留量の半分以上を占める理由を答えさせる問題です。
要は、少ない面積で物凄く炭素を吸収&貯留できるのはなぜかと問われています。
そんなの知らんと思われたかもしれませんが、困った時はリード文からヒント探しです。
ブルーカーボン生態系とは、海草藻場、塩性湿地、マングローブ林が主たる代表例だと示されていますね。
これらが、海洋のどこに存在しているのかというと、陸地に近い水深の浅い海域ではないでしょうか。
ワカメやマングローブが、大海原のど真ん中でプカプカ生えているのを見たことはないはずです。

話は変わって、植物が生きるためには光合成が必要ですよね。
光合成には太陽「光」が必要なわけです。
深海奥深くに太陽光は届きません。
やはり浅瀬の方が良いわけです。
大陸棚に好漁場ができる理由を思い出してみるとイメージしやすいかもしれません。
東大地理では植物に絡めてしばしば光合成の話が登場しますので、しっかりと過去問探究をしましょう。

また、国土交通省の資料にもあるように、「密生する海草が水流を弱めて浮遊物をこしとり、網の目のように張った地下茎が底質を安定させている」ことや、陸地に近いことから河川をつたって「植物や動物の遺骸」が海底に溜まりやすいことも挙げられそうです。

そのほか、東大地理ではよく出される微生物の分解という視点も考えられます。
則ち、海底の泥場は酸素が乏しいですから有機物の分解が抑制されることで長期にわたって炭素を貯留しやすいとも言えそうです。
東大地理ではしばしば理科基礎の知識が問われています。
講習でも改めて詳述いたしますが、しっかりと過去問探究をしましょう。

 

第一問 設問B(2)

これは絶対に落としてはいけないサービス問題です。
もはやブルーカーボン云々の話ではなく、1960〜1970年代ときたら何を思い浮かべなければいけませんか?という歴史の問題です。
人口動態の論点でもそうですが、高度経済成長期や石油危機、バブル崩壊、ソ連崩壊といった主要な出来事の時期は脊髄反射で答えられるようにしなければなりません。
時代感覚に不安のある方は、敬天塾の東大対策問題集 歴史編もよろしければご活用ください。

1960年代と言えば高度経済成長期の真っ只中でした。
その時期に、瀬戸内海という閉鎖性海域で海草藻場が大幅に減っているわけです。
海草が生きていけないような環境になってしまったわけです。水質汚染しかありませんね。
ちなみに、瀬戸内海に対してわざわざ「閉鎖性海域」という言葉を出したことにお気づきでしょうか。
このキーワードだけで「あ!東京湾の論点ですね!」と反射的に気付いた方は過去問探究をしっかり出来ている証ですので、自信を持ってください。

第一問 設問B(3)

ラストは単なる小学校の算数問題です。
小難しいことがツラツラ書かれていますが、タテに整理するとわかりやすいと思います。

 

以上より、答えは7倍となります。
計算と聞いただけで拒否反応を示される方が時々いらっしゃいますが、別に数Ⅲの積分計算をやれと言っているわけではありません。
東大2020-1A(5)や東大2019-1B(2)のように、東大は計算問題を時折問うてきています。
これは地理学が理系的な科目であることとも関係するものですが、東大入試で問われている計算はハッキリ言って小中学生レベルですから安易に捨て問にしないようにしましょう。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2026年東大地理(第1問B)入試問題の解答(答案例)・解説

 

設問c

難易度 標準(本論点を知らなかった人には難しく思えたと思います)

マイクロプラスチックが海洋生態系に与える影響について問われた1問です。
本問が割り当てられている第1問Cが設けられたのは2016年以来(一応、2018年に第3問で3題構成はありましたが)でしたので、動揺した受験生も多かったことでしょう。
設問が3つもあると解答欄に埋まりきるか心配なところですが、本問では1行問題も多いので問題はありません。
そう、既にお気づきだと思いますが、ここまで設問A〜設問Cを通じて、指定語句のある設問が1つもありません
そして、用語書き取りや記号選択といった客観式問題が1問も出されていないのです。
こうした傾向変化の方が私には衝撃が大きかったです。

マイクロプラスチックに関しては、2023年の1A(5)でも取り上げられていました。
最新の地理探究教科書でも取り上げられている「旬」なトピックですので、塾生には予想問題と共に注意喚起をしておりましたが、合成繊維に絡めて出題してくるあたり流石だなと思いました。
繊維といえば、2025年度入試においても、ファストファッションに絡めて衣類の大量生産がもたらす弊害について問われましたので、2年連続で繊維関連の問題が出題されたことに大変驚かされました。
こういった論点は、もはや教科書や資料集にすら載っていません。
それゆえに、日頃から環境省や国土交通省、経済産業省などのホームページで紹介されている特集記事を読むように塾生には任意で促して参りましたが、今後はMUSTで熟読するよう指示をしなくてはならないかもしれません。
東京大学が今年度の問題を通じて、現在進行形で深刻化する現代世界の諸問題を地理的思考で分析できる力を受験生に求めている以上、受験生としても攻めの姿勢で学び取らなければ太刀打ちできないからです。
直近の2025〜2026年度入試を見る限り、日本史や世界史と比べて覚える量が少なく楽そうだからという消極的な理由で地理を選択された受験生にとって、暗黒時代が幕開けしたといっても良いかもしれません。

さて、話を戻します。マイクロプラスチックが環境に与える影響を先ずはざっくりと概観するとしましょう。

環境省ホームページより https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20250423.html

いかがでしょうか。恐ろしいことに、私達の肺からも既にマイクロプラスチックは検出されているそうなのです。
これがどういう影響を人体に及ぼすのか未知数なところも多いらしく、決して遠い世界で起きている他人事ではなくなっています。
さて、イントロダクションが長くなりましたので、早速、設問分析に入るとしましょう。

第一問 設問C(1)

太平洋におけるマイクロプラスチック分布域に季節差が生じる理由を考察させる問題で、本大問の花形とも言えます。
こんなの知らないよと思われるかもしれませんが、敬天塾の鉄則集でも申し上げているように困った時ほど「目に見えない力」を疑うことが重要です。
則ち、風や海流です。
そのことに気づかせようと、東大側は様々なヒントを用意してくれていますね。
たとえば、8月の日本付近について言及されていますが、冬にはなくて夏にはある日本特有のものと言えば、台風や梅雨だと気付けなくてはいけません。
もっとシンプルに言えば、季節に特有なものと言えば季節風くらいしかご存知ないはずです。
次に、プラスチックの「供給と移動の過程を考慮」せよという設問条件です。
いったい、どこから大量にプラスチックゴミが湧いて出てくるのかという話です。
ここで図1ー3と同じ図をご覧いただくと、夏に東アジアや東南アジア周辺が物凄く多いことがわかります。

Natureホームページより抜粋
https://www.nature.com/articles/s41467-019-08316-9/figures/6

日本海側にお住いの方なら、よくお分かりだと思いますが、台風のあとに海岸に行くと、ハングルや中国語で書かれたプラスチックゴミが大量に漂着していますよね。
そうした漂着ゴミのことを考えれば、夏の季節風で陸から海洋に大量流出したという議論の方向性が見えてくるはずです。
東アジアや東南アジアには発展途上国が多く、わざわざお金をかけて環境対策を講じるという発想すらない国も多く環境規制もあってないようなものです。
日本の近隣諸国にこういった国々が多く存在している弊害についても真剣に考えるべき時が来ています。

次に、東アジアや東南アジアで発生したプラスチックゴミが冬場になると東の方に移動する理由についてですが、これは反射的に「偏西風」というキーワードを思いついて欲しいところです。
東大は頻繁に偏西風について問うてきています。
さらに、太平洋という大海原がテーマにされているわけですから、「海流」についても一言添えたいところです。
ちなみに、敬天塾の講習授業で配布した論述集では以下のような問題をご紹介しておりました。
これは、的中と言って良いのではないでしょうか(笑)。

最後に、経済産業省のレポートをご案内します。
改めて数値で見てみると、アジア諸国が世界に大きな影響を与えていることに気付かされますね。
取り返しのつかない事態になる前に、人類は協働してマイクロプラスチック問題に取り組まなくてはいけません。

 経済産業省ホームページより https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/reji_yuryo_wg/pdf/002_s02_00.pdf

 

第一問 設問C(2)

引き続き、設問2番に移りたいと思います。
海洋のマイクロプラスチックの給源の代表格が衣類などの合成繊維である理由を「人の日常生活」と関連づけて答えよと設問要求されています。
衣類を着ているだけでは、いきなり海にマイクロプラスチックが大量に飛んで行くはずはありません。
ここで思い出していただきたいのは、2025年2Aの解説記事でも申し上げたように衣類の製造工程で大量の水を使い、しばしば水質汚染を招くという問題です。
ただ、本問のいやらしいところは、東大側がそれは答えではないと否定しているところにあります。
製造工程というのは、私達の「日常生活」とは関係ありません。
日常生活で衣類を使って、それが川やら海やらに影響を与える行為ってなーんだ?とナゾナゾを出してきているわけです。
まだ気付けない方は、以下の図をご覧ください。

武蔵野市ホームページよりり
https://www.city.musashino.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/048/981/leaflet.pdf

はい!ズバリ「お洗濯」です。
洗濯によって生じる生活排水のなかにマイクロプラスチックが大量に含まれ、それが巡り巡って海洋全体に悪影響を及ぼしているというのです。
私達のさりげない行為の積み重ねが、地球環境全体に悪影響を与え、ひいては、私達自身の健康を害することになっているだなんて、なんだか複雑な気持ちになります。

 

第一問 設問C(3)

ラストも繊維関連の問題です。
合成繊維が普及する前の衣類にもマイクロプラスチック問題はあったが、その時には今ほど問題が大きくはなかった理由が問われています。
まあ、これは対比で考えれば即答できそうな気もしますが、正確な理由づけとなりますと化学基礎や生物基礎の知識が必要になります。
則ち、合成の反対ですから天然繊維(綿や生糸)の場合、もともと自然界にあったものですから生分解性が高いわけです。
お洗濯して川や海に流れ込んでも、自然の力で浄化されるというのです。
やはり自然は偉大ですね。

ただ、人類も手をこまねいているばかりではありません。
生分解性プラスチックの開発がすすむほか、細かい網目の洗濯ネットが普及するようになってきています。
東大地理では問題点を知るのみならず、解決策についての考察を求めることもありますから、本問に絡めてしっかりと周辺知識を固めるようにしましょう。

武蔵野市ホームページより
https://www.city.musashino.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/048/981/leaflet.pdf

朝日新聞SDGs Actionホームページより
https://www.asahi.com/sdgs/article/15397203

ちなみに、マイクロプラスチックの恐ろしいところは、DDTと同様に生物濃縮による悪影響が懸念されていることにもあります。
敬天塾の講習教材でも扱いました論述問題をご紹介いたします。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2026年東大地理(第1問C)入試問題の解答(答案例)・解説

 

第二問

設問A

難易度 標準

ここに来て、ようやく見慣れた話題が登場し、一息つくことのできた受験生も多かったことと思います。
中国にスポットライトがあてられた大問ではありますが、重箱の隅をつつくような細かい地誌の知識が問われているわけではありません。
ちなみに、1995〜2025年までに東大地理で出された中国地誌はこちらです。

 敬天塾 東大地誌地域別一覧表より抜粋

わりと似た論点が繰り返し問われていることに気付けるのではないでしょうか。
とはいえ、本問は純粋な中国地誌の問題ではありません。
東大地理で頻出の「経済」や「都市問題」が真正面から問われていますので、安易に単純暗記型の地誌問題だと思い込まないようにすることが大事です。

なお、経済的な視点につきましては、敬天塾の鉄則集大原則3で詳しく説明しておりますので、お役立ていただけると幸いです。

 

さて、それでは個々の設問を見ていくとしましょう。

第二問 設問A(1)

中国からASEANへの輸入金額が2010年から2024年にかけて増大している理由が問われています。
簡単な問題に思えるかもしれませんが、実のところ、奥深い1問でもあります。

貿易を活発化させる要因はいろいろありますが、その一つは自由貿易協定でしょう。
中国もASEANとの間で協定を結んでいます。
話題の一帯一路を思い出した方も多かったことでしょう。
ですが、これだけでは問いに答えたことにはなりません。
なぜ、中国からガンガンにASEAN向けに輸出が行われてるのか問われているわけです。
押し寄せる中国製品を前に、ASEAN諸国の製造業発展に深刻な悪影響を及ぼしているとも言われています。
低コストで大量生産できる中国企業と価格面で競争することができないわけです。
日本企業であれば優れた技術や安全を武器に中国製品と差別化を図ることはできますが、発展途上の段階にある東南アジア諸国にはそうした武器がありませんから、集中豪雨的に押し寄せる中国製品を前に、東南アジア諸国経済は疲弊しています。

朝日新聞2025年12月16日記事より抜粋
https://www.asahi.com/articles/ASTDC55ZYTDCUHBI02SM.html

こうしたチャイナリスクに関して、映像授業【東大地理】実戦編でも説明していたので、ここで授業冊子の一部をご紹介したいと思います。

映像授業【東大地理】実戦編 『チャイナリスク』より抜粋

西欧諸国が、中国依存のリスクを警戒して対中依存度を下げているなか、ASEAN諸国が対中依存度を高めているというのは経済安全保障の見地からも極めてリスキーなことです。

みずほ リサーチ&テクノロジーズ『供給網再編はASEANの福音か』より
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/2023/pdf/insight-as230222.pdf

さらに、2025年2Aでチャイナプラスワンに関する論点が登場したことは記憶に新しいと思います。
チャイナプラスワンとは、要するに中国に進出していた企業が、中国における人件費高騰や環境規制などを敬遠して別の国や地域に工場を移転することを指します。
ちなみに、今年の4月に全国の高校に配られる改訂版地理総合教科書でも取り上げられる予定です(本稿執筆時点では未発売です)。
この話と本問がどのように関係しているのかと言いますと、中国企業も自国の賃金高騰を憂い、賃金の安い東南アジア諸国に労働集約型産業の工場を移転しているのです。
要するに、中国と東南アジアとが縦割りの下請け構造で結ばれるようになっているわけですね。

そのほか、最新の教科書や資料集でも取り上げられている米中貿易摩擦の話を盛り込むこともできたでしょう。内閣府のホームページ(https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa22-02/s2_22_2_1.html)によると、「2018年に本格化した米中貿易摩擦を受けて、中国企業や在中国の外資企業が、ベトナムを始めとしたASEAN諸国に生産移管等を進めた」可能性が指摘されています。
要するに、アメリカのトランプ政権が課した中国企業に対する関税措置をすり抜けようと、ASEAN諸国を迂回しているわけです。

このように書ける内容はいくらでもあるのが本問です。
ただし、2行以内にまとめなくてはいけませんから、上述した論点を取捨選択して端的に書けば合格点をいただけるでしょう。

第二問 設問A(2)

本問は、輸入面において、ASEAN貿易に占める日本の存在感が薄くなってきている理由を「日本企業の行動に関わる」ものに限定して説明させる問題です。
設問文を表面的に読んで、ASEANは日本企業との取引を軽視しているんだなと考えてはいけません。
こちらも、2025年2Aの問題をしっかりと過去問探究できていた受験生にとっては、それほど時間がかからずに主要論点を想起できたのではないでしょうか。
則ち、東南アジア諸国に日本から輸出するのではなく、日本企業が現地に工場を建ててしまえば関税も輸送費も抑えられますし、現地では雇用が生まれますからWINーWINの関係を構築できるわけです。

なお、「日本は長らく不況だから」を理由に挙げた受験生もいらっしゃったようですが、不況だとどうしてASEANへの輸出が減るのか説明できていません。
不況だといっても日本は世界で指折りの経済大国です。
「日本の製造業は衰退しているから」を理由に挙げた方についても、産業の空洞化の話を想定されているのなら、結局のところ東南アジアなどに工場を移転するという話を書けば良いだけです。
その結果として、国内における製造産業が衰退したというのであれば、まだ論理的に理解はできますが本問で問われていることとは関係がありません。
なお、これに関しては、敬天塾の比較編でもご案内している以下の問題は要チェックです。
なお、詳細な解説は比較編をご覧ください。

 

第二問 設問A(3)

ASEAN諸国とオーストラリアの双方が参加する経済的な枠組みを1つ挙げたうえで、オーストラリアからの輸入拡大がASEAN諸国の産業に与える影響について論じさせる問題です。
教科書レベルでは、RCEP協定がメジャーなところではないでしょうか。

教科書では、「アジア通貨危機以降は、日本、中国、韓国を加えたASEAN+3、さらに、オーストラリア、ニュージーランドも加えた地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など、広域的経済連携の枠組みも構築されている。それに先行して、ASEANはそれら域外各国との間に個別にFTAやEPAを締結している。」(旧二宮書店2024地理探究p221)と書かれています。

ちなみに、FTAやEPAあたりの定義はしっかり説明できるようにしましょう。
ご参考までに、敬天塾論述問題集から1問ご紹介をいたします。

さて、設問に戻りますと、オーストラリアからの輸入拡大がASEAN諸国の「産業」に与える「影響」について論じるわけですが、「影響」と言われたらプラスもマイナスもあることに注意しなければなりませんし、「産業」と言っても、工業もあれば鉱業もあれば農林水産業もあるわけです。
どの産業が、どういうプラスマイナスの影響を受けるのか意識して書きませんと高得点奪取は難しいでしょう。

本問のような論点を見たことがないと嘆かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、貿易をするからには、その国の強みを活かすはずなんです。
オーストラリアは先進国ではありますが国内市場が小さいこともあり、鉄鉱石やリチウムなどの鉱物資源や、農産物の輸出に経済依存しています。
当然、ASEANに輸出するものも、これらの品目が中心となるでしょう。
その結果、ASEAN諸国の農業や鉱業は価格競争に敗れ打撃を受けるかもしれません。
それが嫌であれば、輸入規制をかければ良いわけですが(2025年2A(3)を参照)、メリットもあるからこそ貿易協定を締結するわけです。

たとえば、エネルギー資源や鉱物資源を安く大量に輸入できるわけですから、それら資源を用いる製造業には有利に働きそうです。
生産コストを減らせるわけですから、国際競争力が高まるわけです。

本問も、東大地理が好む功罪型の問題だと言えましょう。
詳しくは、映像授業の勉強法編をご覧ください。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2026年東大地理(第2問A)入試問題の解答(答案例)・解説

 

設問B

難易度 標準

先程のASEANに引き続き、今度は中国地誌にフォーカスがあてられています。
先にもご案内したチャイナリスクも含め、中国関連のトピックはしっかりと確認するようにしてください。
キーワードをザッと挙げるだけでも、

これくらいは教科書レベルであります。
また、日本と中国の関係に関してはしっかりと論点整理をしましょう。

 

それでは、設問解説に移りたいと思います。

第二問 設問B(1)

今年度唯一と言って良い客観式問題でしょうか。
ただ、意外に答えられなかった受験生も多そうです。
共通テストになってから、地理では細かな知識が問われなくなり、学校の授業も資料や統計の読み取りにばかり力点を置くようになりました。
その結果、主要国の主たる都市名や産業に関する基礎知識を即答できない東大受験生が以前より増えたような気がします。
東大教授陣はそこを憂慮されたのでしょうか、このようなサービス問題を用意してくれたのでしょう。
地図は地理学習の基本ですので、日頃からしっかりと確認するようにしましょう!
せめて教科書に出てくる都市名くらいは場所を確認してください。

ちなみに、②は天津で、④は重慶です。

第二問 設問B(2)

さて、今度は直轄市①(北京)と③(上海)の都市問題について問われています。
表2ー2で住居支出(要は家賃)が他の都市部より飛び抜けて高いですよね。
両都市とも中国を代表する大都市ですから、地方から多くの出稼ぎ労働者もやってくるわけです。
その結果、住宅の需要と供給のバランスが崩れ、不動産価格の高騰による住宅難が生じるわけです。

ちなみに、昨今、日本の東京においても不動産価格の高騰が続いていますが、これは中国などの不動産投機によるものだとも言われています。
以前なら月額7万円くらいで借りられたお部屋が、2026年2月26日現在、13万円に跳ね上がっていたことには驚きました。
とてもじゃないですが、東京の都心部では暮らせません。
なお、需要の異常な高まりによる家賃高騰については、2025年2Bのオーバーツーリズム関連の大問でも問われましたので、あわせて復習をしましょう。

敬天塾2025年2B解説記事より抜粋
https://exam-strategy.jp/archives/313271

 

第二問 設問B(3)

本問は少し差がつく問題かもしれません。
なぜ④の重慶を直轄市に指定したのかという問題です。
仮に(1)で答えた④の都市名に自信がなかったとしても、本問では、地図上の位置からなんとか答えを紡ぎ出したいものです。
④は、①②③とは異なり、内陸部に位置していますよね。
しかも、設問にあるように、なんらかの目的を実現するための「施策」の一環として、④を直轄市に指定したわけです。
教科書レベルで紹介されている中国の「政策」「施策」といったら、せいぜい一人っ子政策か西部大開発くらいではないでしょうか。
そして、先にもご案内した通り、西部大開発については過去に問われています。
やはり過去問探究の差が、得点力の差になるのだなと思わせられた一問でした。

 

第二問 設問B(4)

少し歯ごたえのある設問です。

まず、問われていることを整理すると、

  • 2000年以降に東北地域において米の生産量が増加した理由を
  • 中国本土全体の動向を踏まえて
  • 国土利用の観点と
  • 技術的観点

から90文字以内で説明せよと要求されています。
ここで表2ー3をご覧いただきますと、やはり目にとまるのは、東北地域にしかない特徴です。
人口変化率が、唯一マイナスに転じていますよね。
人が少なくなっているのに、コメをたくさん作っているという「謎」の状況が生じているのです。
勘の鋭い方であれば、他の地域の人口が激増していること、設問Aで見たように中国の経済発展が著しいこと(もっとも近年は下火傾向ですが)、設問(2)で家賃高騰の話を東大側がわざわざ問うていることなどを元に、従来の稲作地帯であった長江下流や華南における都市化や工業化の急速な進展によって水田の減少や農家の担い手不足が顕著になったのではないかと推測できたのではないでしょうか。

となれば、どこかでコメを増産しなければいけないわけですが、そこで注目されたのが東北地域でしょう。
ここで、「そんな寒いところでお米なんてつくれるの?」と思われた方は、実に有望です。
日本の北海道でもきらら397といった美味しいお米が作られていますが、品種改良をするんです。
耐寒性の品種を開発したわけですね。
このあたり、敬天塾のテキストでご紹介していた問題に触れていた方には、ものすごくイメージしやすかったでしょう。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

 

第3問

設問A by塾長

難易度 やや易

テーマは木材の輸入、林業などについてです。
日本の木材自給率に関しては、地理の問題を解きこんでいる人にとっては「またか」となる話題ですが、私の個人的な印象だと、浅く勉強しているだけだと触れることがないのかなと思います。

木材の輸入に関することを勉強したことがあれば、(1)と(2)は即答の知識問題で、(3)と(4)は考察問題とみなせると思います。さらに、教科書を使って勉強している人にとっては、(3)も知識問題化します。(4)はさすがに考察問題だと思いますが、逆に木材のことを知らなければ全部考察問題になってしまいますので、必然的に不利になります。
東大地理は暗記量が少ないと称されることが多いですが、結局のところ知識量が足りなくて受験に突入する生徒が非常に多いと思います。暗記を舐めたり、疎かにすると、結局自分に返ってきますので、要注意。特に地理は色々な問題に触れることがとても大事なので、いつも同じ教材を使っている人は気を付けましょう。

第三問 設問A(1)

答えはパルプ。一応、林野庁のページを見て確認しましたが、チップ用材とセットになっているのでパルプしかないでしょう。
「チップ」とは何で、用途はどんなものかを知っていれば即答です。知らなかった人は勉強不足認定して良いレベルなので、反省しましょう。

木を製材にするとき、曲がっちゃった部分や端っこの部分など、使えない部分が出ますよね。こういうのを小さく砕いたものがチップです。
そしてチップから繊維を取り出したものがパルプで、最終的に紙になります。つまり紙を作るときの過程がチップでありパルプです。

 

第三問 設問A(2)

またも私からしてみれば、ほぼ知識問題で有名問題です。

グラフを確認すると、1960年代に大きく供給量(時給量)が減っていますが、この減り具合をよく覚えておきましょう。
今年は日本史でも高度成長期がテーマとして出されましたが、地理でも頻出ですね。
高度成長期には、都市部に雇用が大量に発生したことで、農村から都市部へ人が大量に進出しました。このことから、都市部を中心に建築用木材の需要が急拡大したのですが、ここで問題が。日本は山地は多いものの急峻で機械化が難しく、小規模所有者が多くて効率が悪いなど、あまり「商売的」ではなかったのです。そこで、1960年代に木材の輸入自由化が進み、東南味なや北米から大量に輸入されるようになったのです。こうして国内の自給率は低下したのでした。

本問は輸入木材と国産木材の競争力の差異を生み出す要因ということですから、国産木材の切り出しコストが高いこと、外国産木材が効率的に生産できたことや木材の輸入自由化で関税が引き下がったことなどに触れれば良いでしょう。

 

第三問 設問A(3)

燃料材の用との違いについて答える問題です。これは市販の教材などで勉強していると知らないかもしれません。

燃料材ということなので、燃やすための木材ということです。
昔でいうと、家庭用のかまどとか、ストーブなどの暖房用、もしくは製鉄などの産業用が思いつくと思います。恐らくこれは簡単。

では、最近になって燃料材の需要が増した理由ですが、これは発電用です。
2012年に再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(いわゆるFIT制度)が始まり、発電所が増えました。これは再生可能エネルギーが対象なのですが、燃料材を燃やしても再生可能エネルギーであると認定されているのです。
地理を勉強している人であれば、森林を伐採して燃やして発電するなんて、環境に一番良くないことじゃないかと思うでしょうが、違います。
森林を伐採してCO2吸収量が減ることは環境に悪影響でしょうが、これは再植林をすれば良いです。むしろ日本の森林は手入れをする人材が不足して間引きできなくて困っているくらいなので、適度な伐採は奨励されます。
次に燃焼についてですが、木材はカーボンニュートラルです。石炭や石油を掘って燃やすと、地下に埋まっている炭素を空中に放出することになって、CO2濃度が上がりますが、木材は空気中のCO2を吸って、それを燃やすだけなので、プラスマイナス0なのです。
つまり、環境への配慮で木材燃料が注目されているのです。

第三問 設問A(4)

これは、設問文がヒントになっている考察問題でしょう。
森林環境税について、知っている受験生はいないと思いますので、これは「へー、そうなんだ」でOK。
しかし、設問文中に、すでに用途が書かれています。ここに注目できるかがカギです。
曰く、「森林整備に加えて、その担い手の育成、木材利用の促進や普及啓発にも利用される。」と。

森林の整備というのは抽象的なのでよくわからなくても良いですが、木材が利用しやすくなるのかな、で良いでしょう。担い手の育成については森林の整備が継続していくことを狙っていると理解すればOK。
そして超キーワードが次。「木材利用の促進」と書いてあります。問われているのは「国産木材の需給について、どのような変化をもたらすと期待されているか」ですよ。木材利用の促進をすれば、需要が増加するに決まっています。しかもその後には「普及啓発」もするわけです。

ということで、方針としては「需要増に従って、供給量も増える」というもので良いでしょう。
あとは、指定語句の「建築」から、「建築用の木材利用が推進される」のようなことを書けば良いと思います。
考察問題ではありましたが、読解問題ともいえます。分からないときはよく読む。これはどんな試験においても鉄則です。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2026年東大地理(第3問A)入試問題の解答(答案例)・解説

 

設問B by塾長

難易度 標準(実際の受験生が体感する難易度は「難」)

初見での感想は「もう自然堤防とか出ないんだな。」でした。
かつて東大の地形図の問題と言えば、「自然堤防上の微高地に作られた住宅街で、洪水時に被害に遭いにくい」みたいなことを書けばよい問題ばかりでしたが、今年の問題はそれの発展版のような問題です。地形図から読み取れる、氾濫の被害予防や被害減少の対策を読み取れという問題です。レベルがかなり上がっていると感じました。
しかもグリーンインフラです。グリーンインフラは、人工物(グレーインフラ)とは違い、森林や地形、土壌そのものの機能を活用して防災を試みるものです。人工物ではないのがポイントなのですが、設問文には「人工物ではない」とか「自然の機能を活用している」などとは書かれていません。
グリーンインフラを知らない人は、勘違いして解いてしまったことでしょう。

ちなみに敬天塾の最新ワード集では流域治水もグリーンインフラもバッチリとりあげられていました。

なお、本年の4月に流通する地理総合の改訂版教科書では大々的に流域治水がとりあげられます。
やはり東大地理は新しい論点を好んで出します

 

第三問 設問B(1)

水害による犠牲者が減る理由は簡単。技術が進歩しているから。
ダム、堤防などの建造や河川の改修を行えば、被害者は減らせます。かつては洪水になるような雨が降っても、それを防ぐだけの堤防があれば被害がでないのです。

では経済損失はというと、同じようには考えられません。
まず、かつてより経済成長して物価があがっているんだから、同じものを作るのにお金がかかるという背景もあります。でもこれは遠い理由。もう少し近づけると、高額の商品やインフラを使って生活しているから、というのもあるでしょう。例えば今やだれでも数万~数十万円するスマホを持ち歩いている時代。ハンカチをティッシュをポケットに入れていた時代とは違います。自動車の普及、情報通信設備など、便利で安心な暮らしを支えているだけの投資を受けているのが今の社会です。
さらに、模範解答に近づけるとすると、都市化が進んでいるから。都市部にたくさん人が住む世になると、都市部に被害がちょっと出るだけで経済損失が高額になります。このあたりを書けば答案になるでしょう。

 

第三問 設問B(2)

まずはグリーンインフラの定義が大事です。
人工物は該当しません。あくまで自然のものに注目しましょう。例えば河川に「コの字の形の何か」が何個もありますが、明らかに人工物なので今回は考えなくてよいと思います。
すると、北部に見える遊水地か、山地全体に広がる森林が該当すると思います。遊水地は人工物なのか自然のものなのか判断できないので、勇気が要りますね。ここは素直に、山地の森林を答えるのが良いでしょう。

「素直に」というのは、グリーンインフラとして森林は典型例だからです。森林は「緑のダム機能」を持っています。2025年の1B(2)の解説記事でも詳述していた論点なので、ご覧ください。

2025年東大地理(第1問B)入試問題の解答(答案例)・解説

東大地理では災害に関するテーマが頻出ですから、森林が災害対策になることも頻出です。例えば、

Q、日本は、国土面積の約3分の2を森林が占めている。現在の日本において、用材生産以外に森林がはたしている機能について、2行以内で述べよ。 (東京大学2001年2B(3))
A、生物多様性の保全、水源の涵養や水質の浄化、洪水や土砂災害の防止、風害や雪氷害の軽減、人を癒すレクリエーション機能がある。(60文字)

Q、森林が「緑のダム」と呼ばれる理由を3行以内で説明しなさい。(東京大学2010年1A(4)改題)
A、森林土壌は多孔質で高い保水力を有するため河川に一定水量が時間をかけて穏やかに流出する結果、降雨直後に河川水位は急上昇せず緩慢に増水しピーク流量も少なく洪水防止の治水効果があるため。(90文字)
A、森林土壌は高い保水力を有するため、山に降った雨が直ちに河川に流出せず時間差をつけて緩慢に増水し、ピーク流量も大幅に低減できる点、下流域における洪水被害を軽減する治水効果があるため。(90文字)

地図の読み取りがあるからと言って、勝手に難しい問題だと思い込む受験生が多くいますが、今回は地図の読み取りというより、グリーンインフラについてちゃんと勉強しているかどうかが問われています。「うわー地形図だ」みたいに「素直に」反応せず、冷静に問題を分析するクセを付けましょう。

 

第三問 設問B(3)

典型的なグリーンインフラの例です。
図3-4を見ると、真っ先に見えてくる田んぼ。田んぼは洪水時に水を貯めておく効果があります。通常時は米つくりをして、洪水時には広がるダムのような役割をするという一石二鳥。

導入時の社会的問題としては、民間人の田んぼが直接被害を受けるわけですから、その農家さんとの合意形成が難しいでしょう。収穫量の減少への不安や、減少額に対する保証はどうするのか、田んぼの維持管理コストは誰が払うのかなど、いくつも合意が必要な点があります。
また、農家の高齢化に伴う担い手の不足なども難しいところ。田んぼを放棄した場合、その田んぼ分だけ洪水リスクが上がります。地域の洪水リスクをどう管理するのかなど、なかなか難しそうです。

 

第三問 設問B(4)

問題文がややこしいので、整理します。
②氾濫時の被害対象を減らす対策、③被害の軽減や早期回復のための対策が目的で、浸水想定区域と人口分布を重ねた図を作るという設定です。
浸水想定区域と人口分布に、あと何の情報を足せば、②と③が実現できますか?という問いですね。ややこしい。
言い換えると、浸水する区域と人口分布が分かっていても、十分に氾濫の被害軽減や早期回復が出来ません。何の情報が必要ですか?となるでしょう。

追加できる情報は「人口構成に関する」という縛りがありますので、どのような人が住んでいるのか、追加できるとしてください。

私が真っ先に思いついたのは、昼間人口と夜間人口の割合ですね。
工業地帯とかオフィス街など昼間人口が多い場所なのか、住宅街など夜間人口が多い場所なのか。地形図を見れば場所は分かりますが、正確な人口割合が分かれば、被害軽減や復興に役立つでしょう。洪水が起きたときが昼なのか夜なのかで、避難計画もかなり変わると思います。

他には、高齢者や要介護者、障がい者など、自力での避難が困難な人数も欲しいですね。日本語が通じない外国人の人数や国籍もわかると、復興に役立つでしょう。
この辺りを書けば良さそうです。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2026年東大地理(第3問B)入試問題の解答(答案例)・解説

 

 

最後に

他の科目については、こちらのページにリンクがございます。

上記の地理の記事は敬天塾の塾長とおかべぇ先生が執筆しています。
おかべえ先生は、東大地理で60点中59点を取得した先生です!
どなたでも受講可能な、おかべぇ先生の授業はこちら ↓

映像授業【東大地理】

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