2023年(令和5年)東大文系数学を当日解いたので、所感を書いてみた。

敬天塾の塾長が東京大学の二次試験当日(2023年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。
現時点での考察結果なので、後日、分析内容が更新される可能性があります。

注)2023年3月1日追記
本稿作成後、解説記事作成などを通して問題の考察を深めました。それにより、当日受けた印象から変化した部分があるため、このように黄色背景で追記しています。読む際にはご注意下さい。

【科目全体の所感】

総合難易度 やや易(易化)
相対評価としては超易化。絶対評価としては、やや易~標準程度だと思います。

トピック① 易化。圧倒的、易化。
昨年までの難化傾向は何だったんだろうと思うほど易化しています。
数学が得意な受験生であれば、(細かい計算は別として)解答の方針だけ立てるなら、10分や20分あれば4問ともできてしまうかもしれません。

問題集でよく見るような典型問題はここ2年間はせいぜい1~2問ずつだったのに、今年はほとんどが典型問題です。

さて、問題が簡単になるほど、差がつくと言われていますから、今年の合否は数学に左右されるかもしれません。数学が苦手な人や、計算ミスをしてしまった人は、不利な戦いになったことでしょう。

トピック② 整数問題が出なかった!

東大で超頻出の整数問題が出ませんでした。
※ほぼ毎年出るので、出ないときにニュースになるのが整数と場合の数・確率です。

整数の問題が出題されなかったのは、2019年以来です。

トピック③ 代わりに空間図形が出た!

そして、個人的に最大トピックなのが、空間図形が出たこと。
空間図形がメインテーマの問題は、2001年を最後に出題されていませんでしたが、22年の時を超えて復活しました。
但し、内容は2001年の問題と酷似しており、立体を切断して、体積を求める問題。解法も似ていたため、過去問をしっかり解いていた方にとっては簡単だったかもしれません。

トピック④ 定積分がメインテーマの問題が復活
第2問の(1)が積分をメインテーマにした問題でしたが、このように積分がメインの問題は2011年を最後に出題されていませんでした。(12年ぶり)

トピック⑤ 第1問は、2022年の第2問をイメージ?
解と係数の関係を使って、与式の最大値や最小値を求める問題は、去年の第2問と似ていました。

文系第1問 解と係数の関係

難易度 易

解と係数の関係を使って、αとβの基本対称式を立式し、与式に代入。すると、kの分数式が出てきます。(2次/1次)

分子を分母で割ると、(ちょっと工夫すれば)相加相乗が使える式が登場して、終わり。

問題としては非常に素直で、基本を積み重ねるだけのあっさりした問題でした。

この問題の解説記事はこちらです。

 

文系第2問 絶対値の定積分、3次関数の微分

難易度 やや易~標準

まずは、点と直線の距離を使って、f(t)を求めましょう。
そして、g(a)の定積分に代入すると、教科書の例題で見たことがあるような、絶対値の定積分が登場します。

そこで、定石通り絶対値の中身を調べて、正負を特定するためにaで場合分け。あとは計算で終わりです。

(2)はaの範囲が0以上と決められているので、ちょっとラッキー♪g(a)が特定されます。
f(a)も、絶対値が外れてラッキー♪。要するに、場合分けする手間が省けて、積分が1発で決まります。

すると3次関数が出るので、微分して増減表を書いて、最大最小を求めるという、いつもの流れ。

基本の考え方に従えば、最後までスムーズに進む問題ですが、計算量はやや多いです。

この問題の解説記事はこちらです。

 

文系第3問 隣り合わない確率

難易度 標準~やや難 

(1)は教科書例題レベル。
「赤が隣り合わない」の場合の数は、赤以外を先に並べて、隙間に赤を入れます。

(2)もその応用。
条件付き確率なので、「赤が隣り合わないし、黒も隣り合わない」÷「赤が隣り合わない」を計算します。
但し、分子の「赤も黒も隣り合わない」の計算がやや煩雑。場合分けが必要なんですが、気づいたでしょうか?
今回の4問のうち、この(2)が一番難しかったと思いますが、例年と比べて難しいかと言われるとそうではないため、難易度は「標準~やや難程度」としておきます。

階乗や、nPr、nCrの使い分けや、区別の有無に気を付けて立式しましょう!

この問題の解説記事はこちらです。

追記
後日、解説記事作成などを通じて考察を重ねた結果、難易度は「やや難」の評価に格上げしました。
nPrとnCrのどちらを使うか、玉を区別するかどうかなど、地味ではありますが、受験生を悩ませるポイントがあるため、見かけ以上に難しく感じ、混乱を誘ったことだろうと判断しました。この辺りは、上記の解説記事のリンク先にて詳しく書いてありますので、ご興味のある方はどうぞご覧ください。

 

文系第4問 空間図形の体積

難易度 標準

2001年ぶりの立体の問題。
立体図形の体積を求める問題は、
対称性を利用して、高さや球の中心がある場所を特定して切断し、そのあとは、正弦、余弦、三平方などを使って処理、というのがアルアルのパターンですが、この問題もご多分に漏れず同じ。

問題の仮定を見ると、対称性がバリバリ使えるように設定されています。
(1)は余弦定理と面積公式でおしまい。
(2)も三角形ABCに対する高さを求めて、体積の公式にツッコむだけ。

ということで、基本パターンに乗った問題。
但し、球に内接している条件を使うところで、つまづく人がいるだろうなぁという印象。先ほど書いたように、球の中心の場所を特定して、ソコを含む平面で切断すれば良いのですが、慣れていない人が多そうだなぁと思います。

やや易でも良いかもしれないですが、久しぶりの立体図形ということで、ワンランク上げて、「標準」としておきました。

この問題の解説記事はこちらです。

追記
後日、解説記事作成などを通じて考察を重ねた結果、難易度は「標準~やや難」の評価に格上げしました。
空間図形の問題としては、典型パターンの積み重ねで全て解けるのですが、その典型パターンを学ぶ機会を逸している受験生が多かっただろうという点を考慮して難度を高く評価しました。
この典型パターンについては、上記の解説記事にて詳しく書いてありますので、ご興味のある方はどうぞご覧ください。

【個人的なつぶやき】

ずっと難化していた東大数学。
一生懸命数学の勉強をしても、難化すると全然努力の成果が発揮できずに不合格になってしまう生徒がどうしても出てしまうので、もう少し簡単になってほしいなと思っていたら、「もう少し」どころか劇的に易化。まあ、これならこれで良いのですが、もう少し歯ごたえがあっても良かったかも。

と言っても、やっぱり最後まで数字をピタッとそろえて答えるっていうのは結構難しくて、ちょっと条件を忘れたり、計算をミスしたりと、ポロポロ落としてしまうもの。やはり数学で完答するっていうのは、いくら問題が簡単とはいっても難しいと思います。

易化したので、数学が弱い人にとっては不利で、数学が得意な人にとっては有利に働く入試になったでしょう。

また、現時点で国語と数学が易化したので、2日目の地歴か英語は難化する可能性が高いのかなぁなんて思ったり。

東大の先生方、今年も良問を作問してくださり、ありがとうございました!

最後に

上記の記事は敬天塾の塾長が執筆しています。
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2023年(令和5年)東大文系数学を当日解いたので、所感を書いてみた。” に対して8件のコメントがあります。

  1. まる より:

    ちょっと驚く程に易化していますね。おっしゃる通り、全ての問題で解法がすぐ立てれました。これが東大の数学とは衝撃的ですらあります。

  2. チョッパー より:

    大門3について、なぜ場合分けが必要なのですか?白を並べた後、間に黒、その後間に赤、とやってしまったのですが、、、、

    1. 平井 より:

      そのように考えてしまうと、黒と黒の間に必ず白がはいってしまいますよね。
      すると、例えば「黒赤黒」と並ぶ場合が計算できなくなってしまうからです!

  3. 匿名 より:

    おっしゃる様に、この程度のレベルだとものすごく差がつくでしょうね。
    数学は一日目の午後にあるので、出来が悪いと二日目の社会、英語にひきずるかもしれません。

    数学弱者は、このセットでも4割以下しか取れないものです。その借金を他科目で返すのは大変だと思います。

    1. 平井 より:

      おっしゃる通りで、今年は、数学ができた人は、その分の貯金でかなり余裕を作れたように気がします!
      問題が簡単になったとはいえ、数学ができない受験生は非常に多くいるので、10点台や20点台もゴッソリでてくると思われます。

  4. 家電バカ より:

    基礎ができてれば問題ないのでしょうか。基礎ができないで応用問題をやろうとしてる自分が恥ずかしいです。かつて5月に母校のOB訪問で悔しかたら大学大学に合格してみろ待っるよなんて憎たらしいこと言うOBもいるんですね。意地で合格できるなら苦労はないです。東大に行けとか言うけどそういうのは東大合格者が言う言葉ですね。

  5. 匿名 より:

    今年この問題を駒場で解きました。
    結果は5点で不合格に終わりました。
    浪人して数学を基礎から勉強し始めてからしばらく経った今見ると何故これが解けなかったんだろうという気に襲われますが、今年は易化しても確実に取れるよう本番まで数学の勉強を続けていきます。
    わかりやすい解説ありがとうございました。

    1. 平井 より:

      コメントありがとうございます!
      「試験には魔物が住んでいる」なんてたまに言いますけど、難しいですよね。
      当日にちょっとパニックになったくらいではビクともしない盤石な力を付けられるよう頑張ってくださいね!

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