2026年東大地理(第3問B)入試問題の解答(答案例)・解説

(編集部注1)難易度の評価など、当日解いた所感はこちらをご覧ください。

(編集部注2)実際の入試問題入手先
本解説記事を読むにあたって、事前に入試問題を入手なさることを推奨します。
※入試直後は新聞社のページから入手できます。
 しばらくすると、新聞社からは入手できず、東大HPからは入手できるようになります。

・産経新聞解答速報 https://www.sankei.com/article/20260226-7GXVJBPYIBC6TDSA7ZNXH27TQQ/?outputType=theme_nyushi
・東京大学HP https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_04.html

はじめに

遂に来ました!
「出るぞ、出るぞ」と警鐘を鳴らし続けてきた流域治水グリーンインフラが遂に出題されました!
やはり東大地理は教科書改訂に合わせて最新のトピックを出す傾向があります。

過去にはスマートシティや永久凍土内のメタンガスに関して、教科書や資料集の改訂版が流通する直前に入試で問われました。
本年度の3Cで問われた流域治水に関しましても、2026年4月に全国の高校で配布される地理総合の教科書で大々的に掲載される内容でした。

ちなみに、2027年には地理探究の教科書が大改訂されますので、敬天塾ではいち早く改訂情報をつかんで教材づくりに反映していきたいと思います。

さて、本年の4月に地理総合の教科書が大改訂された上で頒布されるわけですが、「災害」分野に関しては以下のキーワードが大々的に取り上げられる予定です。

いきなりですが、災害とはなんでしょうか。

そりゃ、地震とか台風とかだろ?と思われたかかもしれません。
ですが、同じ地震があっても、被災状況は地域によって大きく異なります。

なぜ、このような違いが生じるのでしょうか。

地震や台風そのものをこの世の中から消し去ることはできませんが、それらの危険から人々の暮らしや安全を守ることはできるのではないでしょうか。
そうした視点から考えられるようになったのが、危機(=ハザード)とは別の、脆弱性と呼ばれるものです。

台風や地震そのものを減らせなくても、防災体制を高めた都市づくりを心がければ、被災リスクを大幅に低減することができるはずです。
さらに、新たな軸も考えられるようになりました。
それが「曝露(ばくろ)」という視点です。
曝露とは、ハザードの被害に曝される(さらされる)人や建物などに着目したものです。

要は、被害に遭わないようにするために、高台や地盤の強いところにお引越しすることが挙げられます。

その一方、脆弱性を低減するためには、ダム建設や防災林設置といったインフラの強化がよく挙げられます。

少しわかりづらいですか?では、日常生活の話をあげて、もう少し詳しくみていくとしましょう。

地球温暖化の進展もあって、今年の夏も猛暑でしたよね。
この猛暑そのものがハザードになります。
曝露とは暑さにさらされることを意味し、脆弱性は暑さに対する弱さを表します。
ベン図が重なっている部分は熱中症リスクを指します。
高齢化が進んだり、暑さになれていない外国人観光客が増えたりすれば、脆弱性の範囲は拡大することとなり、ベン図が重なる範囲も増します。則ち、熱中症リスクが大きくなってしまうわけです。
ハザードそのものを小さくできれば最高ですが、簡単な話ではありません。
そこで、日傘を使ったり、エアコンを適切に使用したり、不要な外出を控えたり、緑のカーテンを設置したりすることで、曝露の回避に努める方法が考えられます。
また、脆弱性を低減するために、熱中症リスクの高い高齢者を避難所に誘導したり、こまめに水分補給を行ったりすることが功を奏します。

以上のように、「災害」と私たちが何気なく使っている言葉を、「ハザード」「脆弱性」「曝露」の3つの軸から捉え直し、防災ないし減災に繋げようとしているのです。

この話を山間部や農村部に当てはめて考えてみるとどうなるでしょうか。
図とともに少し詳しくみていくとしましょう。

ハザードの軽減
洪水や土砂災害を例に挙げると、ハザードそのものを減らすには、森林や緑地の保全、温室効果ガスの排出削減や吸収源の確保、田んぼダムや堤防の設置などが考えられます。

曝露の回避
災害が発生することを前提に、いかにして災害被害に遭わないようにすべきかも考えなくてはいけません。
活断層の上に住宅を建てない、高台や地盤が硬い場所に引っ越しをすることが考えられます。

環境省防災・減災の手引きより
https://www.env.go.jp/content/000124434.pdf

脆弱性の低減
お気付きだと思いますが、脆弱性の低減や曝露の回避、ハザードの軽減は、相互に連関しあっていますので、縦割りの関係にはありません。
防災対策のインフラ整備は脆弱性の低減にも繋がりますし、災害の種類によってはハザードの低減にもなります。
だから、ベン図で描かれているわけです。

以上の流れが理解できれば、地理総合の教科書で新たに紹介されることになった「災害レジリエンス」「防災型土地利用規制」という言葉を丸覚えする必要はなくなるはずです。

せっかくですから、敬天塾論述問題集より幾つか学習効果の高い問題をご紹介するとしましょう。

たとえば、道路幅が狭く消防車も入れないような地域だと、火災が発生した時に消火活動を円滑に進められないことになります。
これは、火災という危険(=ハザード)に対して脆弱性が高いわけです。
災害に脆弱だということは、火災の被害を受ける(=曝露される)リスクも高いわけです。
このように、脆弱性と曝露は相互に連関しています。

その他にも、海抜0m地帯や旧河道、盛土造成地、V字状の湾奥など、災害発生リスクが高い場所はいくらでもあります。
リスクを回避すべくインフラ整備などで脆弱性の低減を図るには大規模な工事を伴いますから、危険地域から引っ越しをするなど危険から逃れる策(=曝露の回避)も併せて考えることが実効性に富みます。

さらには、このような防災や減災に加え、災害が起きてもスムーズに復興できる力(災害レジリエンス)の増強も喫緊の課題となっています。

東大地理では、災害に関連した問題を好んで出してきますので、地震や津波といった災害に対して、どのような解決策が考えられるのか、今回学んだ「ハザード」「脆弱性」「曝露」の3つの観点から考察を深める習慣を身につけましょう。

このように、防災や減災のほか、災害が起きてもスムーズに復興できるような体制を整えることが重要です。
典型論述編でご紹介した「事前復興」という概念も、災害レジリエンスの強化に奏功すると言えましょう。

役場や集落の高台への移転は、ハザードに対する「曝露の回避」策とも言えますし、災害に弱い立地や建物を改善する意味で「脆弱性の軽減」策にもなっています。

こうした例は、防災型土地利用規制や、土石流を誘導する導流堤など、令和8年の地理総合教科書で新たに紹介されたものにもあらわれています。
仮設住宅の建設予定地決めは、被災することを前提に、いかに早く復興を進められるようにするかという意味で「災害レジリエンスの強化」に他なりません。

さて、災害関連で他に注目すべきワードは、やはり本問の主題でもある流域治水でしょう。
今回の教科書改訂では、霞堤や導流堤、田んぼダムといった流域治水を考えるうえではお馴染みの語句が数多く基本語句として太文字扱いになっていました。
市販の参考書では拾えきれていない論点ですので、後掲する参考資料などをもとに周辺知識を固めるように心がけてください。
過去の東大地理を分析しますと、地形図を読み取って砂防ダムの存在を考えさせたこともありました(2023年東大地理(第3問A)入試問題の解答(答案例)・解説)。
霞堤や導流堤という言葉を覚えるだけではなく、地図上でどのように表現されるかも併せて確認するようにしてください。

白地図に苦手意識がある方は、資料集に付属している白地図冊子や、帝国書院のGIS関連のホームページも貪欲に活用しましょう。
地理総合や地理探究の科目が創設されて以来、全国の高校では地形図読み取り探究の授業が大幅に拡充していると聞きます。
東大側も、こうした潮流を意識して図表を読み取らせる問題を増やしています。

資料読解が不得手な方は、共通テストの問題も活用しながら、重要な目の付け所(着眼点)を早いうちに情報整理しましょう。

敬天塾 最新ワード集より

話を戻します。流域治水とはいったい何なのでしょうか。
ここで上の敬天塾の最新ワード集をご覧ください。

要するに、上流にダムを建設して洪水を食い止めるだけではなく、敢えて田んぼなどに水をあふれさせて川の流量を減らし、下流域における水害を減らそうとする試みです。
上流の人も協力して水災害対策に寄与しようというものです。

ただ、そうなりますと上流の人からすれば、「なんで下流の人のためにわざわざ上流の人が犠牲にならないといけないんだ!」と不満を抱くこともあるでしょう。
それが設問3番で問われている「実際に導入する際に考慮すべき社会的な課題」の話とも関係してきます。

ちなみに、こうした流域治水の考えは、古くは武田信玄公が建設を指示したとされる霞堤(かすみてい)の考え方そのものでもあります。

いかがですか。流域治水の話は、なにも東京大学が初めて問うたわけではなく、2022年には東京の女子御三家として知られる女子学院中学校でも出題されています。

やはり出題ブームと申しますか、問題作成者の先生方が着眼するポイントは似通っているのだなあと感心した次第です。
こうした流域治水に関する切り口を頭に入れておけば、防災・減災に絡む問題に対する解答アプローチに厚みが生まれます。

たとえば、台風による災害被害を減らすためにどうしたら良いかという問題が2018年の東京都立大学で問われましたが、皆さんならどう答えますか。
流域治水の話も含め考えてみましょう。

さて、ここで、流域治水についてもう少し詳しい図をご紹介したいと思います。

長野県ホームページより
https://www.pref.nagano.lg.jp/kasen/infra/kasen/keikaku/ryuiki-softtaisaku/documents/ryuikichisui_pamphlet.pdf

かなり見やすい図ですよね。
長野県のホームページよりダウンロードできますので、ぜひ印刷してみましょう。

この図と先に「ハザードの低減」「曝露の回避」「脆弱性の低減」に絡めてご案内した環境省の防災・減災の手引きの抜粋図をセットで眺めてみますと、本問で大々的に取り上げられたグリーンインフラの話が見えてきます。

https://www.pref.nagano.lg.jp/kasen/infra/kasen/keikaku/ryuiki-softtaisaku/documents/ryuikichisui_pamphlet.pdf

さて、ここまで流域治水の概略について、いよいよ本丸のグリーンインフラについてみていくとしましょう。
グリーンインフラというカタカナ語句を目にしますと、何か特別なものをイメージされてしまうかもしれませんが、身近にある自然そのものを指しています。

東大地理では過去に「緑のダム」が問われました。
2025年度入試でも植林による洪水被害防止が取り上げられています。

このように森林には土砂災害を防ぐ機能があります。
森林ばかりではなく、川岸の植生が河岸侵食を防いだり、本年度の1Aでもご紹介したサンゴ礁が高潮被害を軽減したり、湿原や田んぼが洪水被害の軽減に役立ったりと、自然環境には防災や減災に活かせるチカラがたくさんあるのです。

国土交通省『グリーンインフラ推進戦略2030』では自然環境の利活用法が多く紹介されています。

国土交通省グリーンインフラ推進戦略2030より
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000020.html

なぜ、いま、グリーンインフラに注目が集まっているのでしょう。
日本を例に考えてみましょう。

まずは、こちらの東大過去問をご覧ください。

いかがでしょうか。少子高齢化に伴う過疎化は東大地理の頻出トピックですよね。

最近の教科書では、「縮退都市」という言葉も登場しています。
縮退都市は、「基幹産業の衰退や少子化などによって人口が減少し、市街地が衰退・縮小した都市。」と定義されています(東京書籍2024地理探究p181)。

敬天塾 東大対策問題集 比較編より抜粋

こうした縮退都市にまつわる諸論点を考えるうえで盲点となりがちなのは、人口が多かった時期に建設された道路や水道などの社会インフラの維持・整備問題です。

水道を例に挙げますと、人口が減ればそのぶん料金収入が減るわけですが、それによって上下水道網の点検・改修に十分な資金が投じられなければ、老朽化による破損や災害による損壊などの危険性が極めて高くなります。

2025年1月に埼玉県八潮市で、下水道が破損したことに伴い道路が陥没し、トラック運転手が行方不明になる悲惨な事故が起きたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

国土交通省の資料によると、今後10年以内に、日本国内の道路橋の約63%、水門など河川管理施設の約62%、港湾岸壁の約58%、トンネルの約42%、下水道管渠の約21%が建築後50年以上経過する社会インフラとなるそうです。
人口減少で歳入が減っていくなか、社会資本の維持管理・更新費用が増していく事態を迎えようとしているわけです。

さらには、学校や病院、商業施設といった生活に欠かせないインフラも地方都市では維持することが困難となっています。

こうした危機的な状況を受け、東京の男子御三家として有名な麻布中学では2023年に以下のような問題を出しました。

人口減少が進むと、管理者のいない家や土地が増えていきます。
国土交通政策研究所紀要や総務省人口統計によると、2008年には空き地率の全国平均が6.5%であったのに対し、2018年には12.4%と急増しています。
管理者のいない土地が増えますと、景観や治安の悪化、獣害の発生などが深刻化していきます。
里山の荒廃に関しては、2022年1Aの人獣共通感染症の設問4番でも問われています。

里山は、山と里の境界にありますから、人の生活圏と動物の生息域を分ける緩衝地帯の役割を果たしています。
高齢化などで耕作地の管理放棄が増えてしまいますと、山からクマなどの野生動物がどんどん人里におりてきてしまいます。
生物の多様性を維持するためにも、里山を保全し、管理することが必要です。
この問題は今年度の3Aで問われた林業の担い手減少の論点にも通じています。

私の森ホームページより
https://watashinomori.jp/study/basic_02-2.html

さて、日本では、これまでコンクリートなどの人工構造物によって社会資本の整備が行われてきました。
しかしながら、こうしたインフラには然るべきメンテナンスが必要であるところ、上述したように人口減少がすすむなか十分な予算を捻出できずにいます。

さらに、追い討ちをかけるかのように、近年の異常気象によって災害の激甚化に見舞われています。
森林を伐採してつくられた都市には緑が少なく、透水性の悪いアスファルトなどで街中を舗装されていることもあり、ゲリラ豪雨で浸水や冠水被害が拡大しやすい状況にあります。

お金はないし、災害レベルは高まるし、という泣きっ面に蜂のような状態に見舞われているなか、日本には豊かな自然があるじゃないか、この自然を活かした防災・減災対策を考えるべきではないかという声が大きくなってきました。
そうして、グリーンインフラという考えが急速に広まっていったのです。

国土交通省グリーンインフラ概略図
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_fr_000143.html

グリーンインフラと言いますと、森林や田んぼが広がる中山間部や農村地域に限定した話のように思えるかもしれませんが、先にご紹介した国土交通省グリーンインフラ推進戦略2030でも示されているように、農山漁村部に限らず、都心部でもでも考えなければいけない問題です。

都心部であれば、ビルの屋上緑化や壁面緑化、街路樹の育成、高度経済成長期に埋設した暗渠(あんきょ)の再生、緑陰形成に資する大木の植樹、親水空間の設置、雨水の貯留・浸透機能を持つ雨庭やバイオスウェルの設置などが考えられます。
都市型水害やヒートアイランド現象による被害緩和につながることが期待されています。
街の中に緑があるというだけではなく、緑のなかに街が広がることを目指そうとしているのです。

もちろん、だからと言って、すべてのインフラをグリーンインフラに変えるわけにはいきません。
規格統一できる人工物とは異なり、植物は管理も大変ですから相応のコストもかかります。

それゆえに、人工物(グレーインフラとも呼ばれます)と自然(グリーンインフラ)をうまく組み合わせることが実効性を伴う都市計画だと言えましょう。

ここで、学習効果の高い過去問などをいくつかご覧いただくとしましょう。

一方、農山漁村部あれば、田んぼダムによる洪水被害の軽減(まさしく流域治水ですね)、干潟や藻場の再生(まさしく本年度の1Bで取り上げられたブルーカーボンの話ですね)、防潮林の植樹、里山林の保全管理などが考えられます。

いかがでしょうか。だんだんと様々な論点が結びついてきましたね。
教科書のバラバラのページに書かれている内容が、このように連関している様を実感していただくことが過去問探究の本質だと言えます。

せっかくですから、森林に関する重要問題も併せてチェックしましょう。

さて、だいぶ長くなりましたが、学び多きものとなりましたでしょうか。
本問は、グリーンインフラや流域治水の話を単にしているだけではなく、その背景にある都市化や少子高齢化の弊害にまで目を向けさせようとしているのです。

単に解答例を丸覚えするだけではなく、このような様々な論点が有機的に結びついていることを実感できるような学習を心がけますと、東大地理の出題形式や出題傾向が変わろうとも即応することができるのです。
ぜひ、東京大学が求める地理的思考を醸成し、東大地理を得点源にしてください。
敬天塾は喜んで応援いたします。

 

さて、それでは個別の設問について見ていくとしましょう。

設問(1)

問題文

下線部の理由を2行以内で説明せよ。日本においては、しばしば水害が発生してきた。図3ー2をみると、戦後最大級の被害をもたらした伊勢湾台風(1959年)以降、水害による犠牲者数は減少傾向にあるものの、経済的損失は減少していない

本問は一見するとグリーンインフラとは無関係に思えるかもしれません。
ですが、先程も申し上げた通り、グリーンインフラや流域治水の話は結局のところ、都市化に伴う弊害に絡んでくるテーマなのです。
ここで国土交通省の資料をご覧いただくとしましょう。

国土交通省中部地方整備局
https://www.cbr.mlit.go.jp/shinmaru/101_hitsuyou/3.pdf

確かに、被害額は減少していませんね。
それもそのはず、皆さんの身の回りに目を向けてください。
スマホやパソコン、テレビなど高級な家電がたくさんあるはずです。

それらがすべての水没してしまったら、買い直すのにいったいどれくらいのお金がかかるのでしょうか。
これが、藁葺き屋根の下でお布団を敷いて寝ていた時代の家とは比べものにならないくらい被害額は大きくなるはずです。
平野の少ない日本には、どうしても沖積平野という水害リスクの高い場所に都市を作らざるを得ない切実な事情がありました。

さらに、特定の都市に人口が集中する傾向にありますから、そのような地域で水害が発生すれば、被害額が大きくなることは容易に予想できます。

その他にも、電気、ガス、水道、通信といったインフラが都市には集中していますから、洪水などでそれらが機能停止に至れば、あらゆる経済活動が止まってしまいます。
事業所も多く、事業資産の毀損や営業停止による不利益を勘案しますと被害額は膨大なものとなるでしょう。
このあたりを端的にまとめれば答えを紡ぎ出せると思います。
このように東大地理では、経済の視点をあの手この手と形を変えて問うてきています。
敬天塾の東大地理 鉄則集などで、しっかりと経済的な視点を身につけるようにしましょう。

せっかくですから、敬天塾の塾生に配布しておりました論述問題集より学習効果の高い問題をいくつかご紹介したいと思います。

いかがでしょうか。
過去問探究をしっかり行なっていた方にとっては、本問がサービス問題だったとお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

それでは、解答例です。

解答例

防災体制などの推進で人的被害は減ったが、急速な都市化で災害に脆弱な低湿地などに住宅や事業所、経済インフラが密集したから。(60文字)

気象予報の精度向上や防災体制拡充等で人的被害は減ったが、都市化の進展で災害に脆弱な軟弱地盤区域に居住域が拡大したから。(59文字)

気象予報技術や防災体制の向上で人的被害は減るも、都市化で災害リスクの高い地域に居住域や事業所が密集するようになったから。(60文字)

 

設問(2)

問題文

図3ー3の地域で、グリーンインフラに活用する土地被覆とその役割を1行で説明せよ。

いよいよ、ここからがグリーンインフラに直接関連した問題です。
図3ー3をご覧いただきますと、まず目に留まるのは大きな山々です。
地図を読み取る際には、まずは細かなところよりも、目立つところに着目することが重要です。
この図のなかではやはりギュウギュウに詰めて描かれた等高線が目に止まりますから、「山」をグリーンインフラとして活用することが思い浮かびそうです。

ちなみに地図中に国道13号や高速道路が書かれていることをヒントに調べたところ、山形県山形市の愛宕山付近だとわかりました。
衛星画像を載せますと、確かに広大な山が広がっていることがわかりますね。

あとは、山の活かし方についてですが、これは先程ご案内した参照問題16番の「緑のダム」機能の話をさらっと書けば十分でしょう。
30文字で書かなければいけませんから、要点だけ書けば十分だと言えます。
リード文にも、「地域の特性に応じ,①氾濫をできるだけ防ぐ,減らす対策」としてグリーンインフラの取り組みが「注目されている」とありますから、森林の持つ洪水防止機能や土壌流出防止機能について書くことが求められていると言って間違いないでしょう。

この際、森林がなぜそれらの機能を持っているのかについても触れられるとベストでしょう。

 

解答例

森林の持つ保水力を活かして河川の急な増水や土砂災害を防ぐ。(29文字)

森林の雨水貯留能を活かして河川の氾濫や土砂災害を緩和する。(30文字)

 

設問(3)

問題文

図3ー4の地域で、グリーンインフラに活用する土地被覆とその役割を1行で説明し、実際に導入する際に考慮すべき社会的な課題とあわせて2行以内で述べよ。

本問は2025年2B(オーバーツーリズム)設問4番と類似しているとも言えます。
誰かの利益を追求しようとすれば、必ずと言っていいほど、他の誰かの利益を侵害するものです。
そうした時に、「お前は、我慢しろ」と言ってしまうと争いになってしまいますから、しばしば金銭補償などの懐柔策(代替案)が示されます。
本問でもまさにそのことが問われているわけです。

2025年東大地理(第2問B)入試問題の解答(答案例)・解説

先程の図3ー3とは打って変わって、図3ー4では、あたり一面を水田やら果樹園やらが覆っています。
左下には川が流れていることも確認できます。
もうお分かりですね。
田んぼダム/遊水地について考えさせようとしているわけです。

ただ、下流域の氾濫リスクは減る一方、田んぼや果樹園の所有者からすれば、河川から泥水が大量に自分の田んぼや果樹園を満たしてしまうわけですから、収穫時期と重なろうものなら丹精込めて育てた作物が壊滅してしまうこともあり得ます。

仮に収穫時期でなかったとしても、大量の泥水や洪水で運ばれたゴミを誰が片付けるのか、水田や果樹園として当該土地を利用再開できるまでの経済的損失を誰が補償してくれるのか、水田の畔(あぜ)が壊れてしまったら誰が直してくれるのか、水田所有者からすれば気が気ではないはずです。
自分たちの生活が関わっているわけですから。

このあたりを端的にまとめれば良いでしょう。

なお、田んぼの役割については、以下の問題や農林水産省のホームページ(https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/index.html)もご参照ください。

農林水産省 農業・農村の有する多面的機能 https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/index.html

このように概観してみますと、少子高齢化により耕作放棄地が増えていることが如何に大きな問題なのかがよくわかりますね。
2025年の春先には米不足が話題になりましたが、食物自給率との絡みでも改めて農業についてしっかりと考えるべき時が来ています。

なお、本問では「社会的な課題」の考察が求められていますが、これはまさしく東大地理で好む功罪型の問題ですね。
日頃から、「功(メリット)」と「罪(デメリット)」を常に考える思考習慣を確立しましょう。

 

それでは、解答例です。

解答例

雨水貯留機能を有する水田を田んぼダムに利用して下流の氾濫被害を低減できるが、作物の収量減や管理負担に対する補償を要する。(60文字)

水田が持つ水を貯留する機能を活かし排水路や河川の急激な水位上昇を抑え洪水被害を軽減できるが、畔崩壊等に金銭補償を要する。(60文字)

⚠︎畔(=あぜ)とは、田んぼの水が外に漏れないよう、田んぼのまわりを囲うようにつくった盛り土の部分のことです。
水田に大量の水が入り込みますと、この畔が崩壊して、水田が使い物にならなくなってしまいます。

 

設問(4)

問題文

冒頭文の②(被害対象を減少させるための方策)と③(被害の軽減、早期修復・復興のための対策)に関して、GISを利用して、浸水想定区域と現在の人口分布をレイヤとして重ねるとする。その際、人口構成に関するどのような情報を用いると防災対策の検討に有効か、その理由も含めて3行以内で説明せよ。

いよいよ、2026年東大地理の最終問題です。
ここまで本当に長かったです(笑)。
本問はGIS関連の問題と言えますが、2025年3B(4)でも出題されていました。

2025年東大地理(第3問B)入試問題の解答(答案例)・解説

今年の4月には地理総合の教科書の大改訂版が流通しますので、GIS絡みの記述も要チェックです。
GISやGNSS、リモートセンシングなど、このあたりの言葉を聞いたことはあるんだけれども、定義を言えない方が非常に多い印象です。
敬天塾オリジナル問題も活用して、定義や使用場面をしっかりと自分の言葉で説明できるようにしましょう。

さて、本問についてみていくとしましょう。
皆さんは、お住まいの地域のハザードマップをご覧になられたことはありますか。
インターネットでも確認できますし、インターネットを使えない高齢者の方向けに紙の地図が配布されることもあります。
津波や高潮、洪水、地震、火山など、様々なハザードマップがあります。

国土交通省わがまちハザードマップ https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmapportal/hazardmap/pamphlet/pamphlet.pdf

注目すべきは、インターネット版であれば、これらのハザードマップを重ね合わせてみることができる点にあります。

たとえば、皆さんが東京大学の合格を果たされ、本郷キャンパス周辺に一人暮らしするとしましょう。
物件を探すわけですが、不動産業者の図面や地図には、どのエリアが軟弱地盤で浸水リスクが高く、どのエリアで土砂災害が起きやすいかはわかりません(最近は賃貸借契約時にハザードマップを提示するよう行政から指導されているようですが、不動産会社によって説明はまちまちなようです)。
都市化に伴う災害の問題点については先にも詳述した通りです。

そこで、国土地理院の重ねるハザードマップの出番となります。

https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/maps/index.html?ll=35.699303,139.762166&z=16&base=pale&vs=c1j0l0u0t0h0z0

ですが、ここに浸水被害エリアと土砂災害エリア(図の赤い斑点箇所)のレイヤを重ねると、途端に危険地域が可視化されました。
皆さんの家から避難所までの移動ルートを考えるうえでも参考になります。
避難所に行こうと思って土砂崩れの被害に遭ったら、たまったもんじゃないですよね。

さらに、国土地理院の地図が最強なところは、断面図を表示できるところにもあります。
今度は国土地理院の地図を開いてみましょう。
ツールのボタンを押して、行きたい経路を指定すると、経路上の標高をビジュアルにみることができます。

お年寄りが避難する時に急な坂道を通るのは現実的ではありません。
直線距離が一番楽なわけではなく、それこそ急がば回れと言えるケースもありそうです。

せっかくですから東京大学から東京ドームまでの経路で試してみるとしましょう。

https://maps.gsi.go.jp/#16/35.710211/139.756823/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

東京ドーム付近で急な下り坂となっていますね。
こうした情報は災害時の避難計画を事前に立てる時にも大いに役立つことでしょう。

いかがでしたか。数年前、神奈川県の武蔵小杉という高層マンションが立ち並び街で深刻な洪水被害が発生しました。
Web版のGISで調べていたなら、地図から消えてしまった旧河道を見つけることも容易だったはずです。
災害大国に住んでいるからこそ。
しっかりと防災対策を日頃から講じるべきなのです。

それでは、本問についてみていくとしましょう。
本問では、浸水想定区域と「現在の人口分布」のレイヤを重ねるケースが考えられています。
その際、人口構成に関する「どのような情報」を用いると防災対策の検討に有効なのかを考えるよう指示されています。

まず、人の属性について考えなくてはいけません。
人間を分類する尺度は様々ですが、基本的なところは、年齢・性別・国籍あたりでしょうか。
年齢にフォーカスをあてるなら、高齢者は人にもよりますが若者ほどスムーズに移動することが困難です。
乳幼児なら間違いなく自力移動ができません。

また、年齢が若くとも、重度の障害や病気を抱えていれば自力避難は困難です。

このあたりの情報がわかると、防災計画を練るのも、だいぶ楽だと言えそうですね。
試験時間も限られていますから、
自力避難が困難な高齢者や障害者の居住地分布のデータを用いることで、災害発生時の迅速な避難誘導や救援活動計画を事前に策定することができるから。(70文字)

程度の答案をサクッと書ければ合格者平均くらいは取れると思います。
ただ、突き詰めて考えるなら、もう少し改善の余地はありそうです。

高齢者と言っても、日本昔話の中に出てくるヨボヨボな方(志村けんさんが演じられた「ひとみばあさん」のような方も、お見かけしません笑)は今の時代だいぶ少なくなりました。
仮に自力移動が困難だったとしても、頼れる家族が同居していたり近所に住んでいたりすれば、話は変わってきます。

また、浸水被害について考えなければならないところ、高級マンションの10階に住んでいるのであれば、そこまで浸水することは通常はありません。
そこまで浸水するレベルの洪水なら地球は消えてなくなっています。
障害を抱える方であっても、寝たきりのレベルなのか、車椅子に乗っているのか、住まいにエレベーターはあるのか、介助者はいるのか、何か特別な医療機器を常時取り付けているのかなど、一概には言えません。

警察や消防、役所の人員には限りがあります。
支援物資も無限にあるわけではありません。

となれば、支援の必要性が高い人に優先して人的資源や物資を投下するのが合理的だと言えます。
本問では、そこまで設問要求しているように私は思いました。
障害の有無は障害者手帳の交付状況でわかりますし、高齢者の要介護度は介護保険絡みで役所が情報を持っています。

それらを活かして、要支援者の個別避難計画を作成していくわけです。

布目ゆきお元長野市議ブログより
https://www.nunomeyukio.jp/archives/18297

このように考えますと、核家族化の論点、買い物難民の論点、交通弱者の論点などが浮かび上がってきます。
昨今、教科書でも取り上げられるようになったコンパクトシティの話も出てきます。
どんどん話が有機的に連関していきますね。

なお、高齢者の分布と浸水被害地域のレイヤを重ね合わせられるサイトは、open-hinata3です。
非常に有益ですので、ぜひパソコンやスマホなどでいじってみてください。

https://oh3lab.jp/oh3/

高齢者者数や高齢化率まで表示することができます。

なお、外国人に着眼された方もいたことでしょう。
日本語をあまりうまく話せない外国人もいますから、避難所に通訳機器を設置したり、イスラム教徒であればハラール食品を用意したりすることも一案です。
避難誘導に資するピクトグラムの看板を用意する自治体もあるそうです。

そのほか、妊婦さんや出産し終えたばかりのママさんが休めるスペースや授乳スペースも用意しておきたいですね。
腹立たしいことに、実際の避難所ではママさんが赤ちゃんに授乳するとき、数多くの男どもが覗き見をしてくるのだそうです。
中には触ってきたり写真を撮ったりする者もいるそうです。
ここまで日本は落ちぶれたのかと悲しくなりましたが、そうした事態を防ぐためにも、周囲からは見えないような囲いをつくることは重要です。

身寄りのない妊産婦さんの場合、災害時に孤立化してしまいますから、公的支援の必要性が高まります。
特定の地域にこうした妊産婦さんが集中しているのであれば、当該区域の避難所を事前にリフォームする措置も講じられるでしょう。
こうしたフォローを図るうえでも、やはり人口分布データを活用する必要があるのです。

考えれば考えるほどに奥深い1問でした。

 

それでは、解答例です。

解答例

要支援度の高い高齢者や障害者の住居形態や同居家族の情報をも反映した人口分布データを利用することで、災害に備えた個別避難計画を事前に策定でき、救護体制の充実化も図れるから。(85文字)

車椅子移動が必要な自力避難困難者の居住域や同居家族の有無等のデータを用いて、安全な避難経路の策定や避難所のバリアフリー工事などを事前に行え、災害発生時の救助体制を充実化できるから。(90文字)

要支援度の高い高齢者や障害者の住居形態や同居家族の情報をも反映した人口分布データを利用することで、災害に備えた個別避難計画を事前に策定でき、避難体制の充実化も図れるから。(85文字)

日本語が不得手な外国人や身寄りのない妊産婦の住むエリアデータを活かし、避難誘導のためのピクトグラムの設置や通訳機器の準備ができるほか、避難所に授乳スペースや離乳食を用意できるから。(90文字)

高度な医療ケアが必要な児童や車椅子移動が必須な障害者の分布データを活用することで、医療用の電源や車椅子ごと移動が可能な車などを事前に行政が避難所などに用意することができるから。(88文字)

身寄りや頼れる人がおらず、浸水リスクの高い家屋に住む自力避難が困難な高齢者や障害者の人口分布を用いることで、限られた物資や人員を災害弱者に優先して割り当てる計画を立てられるから。(89文字)

 

編集後記

かなり気合いを入れてつくりましたが学びはございましたでしょうか。
敬天塾での授業と同じ熱量で紙上講義をいたしました。

解説記事内でも申し上げたように、一見して無関係に見えるトピック同士でも実は深いところで繋がっているものです。
そうした事実に気づけたとき、地理の面白さに私は目覚めました。

地理なんてたかが受験科目の一つだと仰る方もいますが、せっかく学ばれるわけですから生徒の皆さんには楽しんでいただきたいと切に願っております。

皆さんが地理を学ぶ悦びに目覚め、東大地理を堪能できるキッカケに本稿がなりましたら望外の喜びです。

 

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上記の地理の記事は敬天塾の塾長とおかべぇ先生が執筆しています。
おかべえ先生は、東大地理で60点中59点を取得した先生です!
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