2025年(令和7年)東大英語を当日解いたので、所感を書いてみた。

 
敬天塾の塾長と講師が東京大学の二次試験当日(2025年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、速報で所感を記した記事です。他の科目については、上記のリンクにございます。
 
※当日の所感なので、今後の研究によって難易度などを変更する可能性もございます。
 

【東大英語総論】

【東大英語総論】をひらく

東大英語は8種類の大問によって構成されれいます。
これほどバラエティ豊かな問題を出す大学は東京大学くらいです。
ご参考まで、2023年度の主たる難関国公立大学の出題内容をご覧いただくとしましょう。

いかがでしょうか。かなり重たい内容になっていることをうかがいしれます。
東大英語部会の教授陣は、これらの大問を通じて、受験生の如何なるチカラを試そうとしているのでしょうか。
以下の表をご覧ください。

単に英語だけ漫然と勉強しているだけでは、東大英語をなかなか制覇することができない理由がここにあります。
各大問で問われているチカラが異なる以上、採るべき戦略も大問ごとに変わってくるのです。

また、大問ごとの難易度も年によって変わります
ですので、2023年度の1Aが10分で解けたからといって、2025年度の1Aも10分で解けるとは限りません。

加えて、2018年度入試のように急な傾向変化が東大英語ではしばしば見られます
こうした事態を想定した実戦演習を日頃から心がけたか否かで、得点率も大きく変わることでしょう。

さらには、東大英語は2月26日の最終試験科目として実施されます。
1日目の国語・数学や、2日目午前の地歴や理科が満点だった人なら憂いなく英語に臨めるでしょうが、そんな人は滅多にいません。
たいていは、この英語の成績如何で合否が決まってしまうという極度の緊張感のなかで問題を解くことになります。
それゆえに、普段なら絶対に犯さないようなミスを連発することもあり得るわけです。
このあたりの駆け引きが東大英語制覇の要の一つでもあります。

さて、東大英語に関する総論はこのあたりにして、2025年度の東大英語が実際にどのようなものだったのか、難易度も含めて所感を述べたいと思います。

【科目全体の所感】

総合難易度 昨年並み

2025年度入試では、リスニングのC問題でマイナーチェンジがあり、第5問から並べ替え問題が消えたことくらいが目新しいところでした。

中身に目を向けると、昨年度入試で難化した第1問がかなりマイルドになりましたので、拍子抜けした受験生も多かったのではないでしょうか。

マーク式の設問数も昨年より1問少ない32問でした。

2022〜2024の過去問探究をしっかりやってきた受験生にとっては、報われる問題セットだったと思われます。

英作文については、TOEFLの過去問で起案訓練をした受験生にとっては圧倒的に有利だったことでしょう。

そのほか、リスニングについては、明瞭なアメリカ英語ばかり聞くのではなく、イギリス英語など他地域の発音にも触れるようにしましょう。
そのほか、戦略的なところは敬天塾東大英語2023〜2024実況中継解説シリーズも熟読されると学びが大きいと思われます。

第1問A 英文要約

難易度 標準(昨年と比べると大幅に易化)

2021年以降、東大1A英文要約の傾向が明らかに変化しています。
各段落の内容を繋ぎ合わせて字数を削れば「はい、出来上がり!」といった紋切り型の解法だとうまくまとめられなくなっているのです。
文章が読めても、結局何を言いたいのかよくわからない歯応えのある問題をつくれてしまう東大英語部会の作問能力の高さにここ数年驚かされ続けてきました。

では、2025年度の1Aはどうでしょうか。

結論から述べると、文章も読みやすく、要点を掴みやすかったです。
昨年比で言えば、大幅な易化と言えましょう。
ただ、過去50年分の要約問題と見比べると、標準レベルだったとも言えます。

扱われているテーマは、科学技術の発達に伴い生死の定義が曖昧になっている問題です。
少し前の日本でも「脳死は人の死か」と頻繁に問題提起されていました。
生命倫理は、医学部に留まらず法学部や文学部などでも授業で取り上げられ、解なき問題として終わりなき議論が続けられています。
入試問題でも頻繁に取り上げられており、多彩なジャンルの英文を多読してこられた受験生にとって既視感のあるテーマだったのではないでしょうか。

「脳死は人の死か」を論じる以前に、そもそも「脳死」の定義ですら明瞭ではない状況が本文では述べられています。
科学技術の発展の恩恵を人類は受けている一方で、これまで考えもしなかった論点が次々に浮かび上がってきている状況を筆者は憂いているのかもしれません。

「生」と「死」の境界線、あるいは我々の死生観の変化といった哲学的なトピックを前にして、教養学部の授業を受けているかのように思えた受験生もいたかもしれません。
単なる選抜試験としての意味合い以上に、東大英語は受験生に考えさせる機会を与えてくれているように思えます。

 

さて、このように今年度の1Aはだいぶマイルドになったわけですが、その反面、激ムズになった大問が他にあるとも言えます。
どの大問に救われるかわからないのが東大英語の特徴ですから、最初から捨て問をつくることなく、広く大問別対策を早いうちから進めるように心がけましょう。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2025年東大英語(第1問A 英文要約)入試問題の解答(答案例)・解説

 

第1問B 文挿入(段落整序)

難易度 標準(昨年と比べると易化)

第1問B 文挿入(段落整序)総論をひらく

まずはこちらをご覧ください。

上図は2021年の合格者分析データです。ここから、いくつかの事実が浮かび上がってきます。

まず見落としてはいけないポイントは、高得点合格者は客観式問題をほとんど落としていないということです。

客観式の配点がどれくらいかは予測の域が出ませんが、ここで大切なのは客観式で落としてはいけない以上、この1B文挿入でも高得点奪取を目指すべきだということです。

そして、東大入試と東大模試とでは、問題のつくりも選択肢のつくりもかなり違うことにも留意せねばなりません。
実際、過去の合格者の方も、過去問では得点できても、模試では失点しがちでした。
この逆のケースは最悪ですが、それだけ似て非なるものなのです。

なぜに、このような違いが生じるのか、そこを意識して過去問探究をしてみると良いでしょう。

その上で、2025年度1Bに話をうつします。

昨年は、非常に読み取りづらい文章がお題に出され、1Bをスムーズに解けずに冷静さを失った受験生が続出しました。
この点、本年度の文章は昨年よりは読み取りやすかったとは思いますが、決して簡単に読めるわけという意味ではありません。
言語の役割についての文章にあまり触れたことのない受験生には、本文の内容をうまくつかめなかったかもしれません。

ですが、仮に長文全体の内容を隈なく理解できずとも、答えを出すことはできます。
本年度に関しては、1問を除いてシンプルに答えを定めることができました。悩ましい空所にあたったら、いったん飛ばして他の空所から攻め落とすことが1B制覇の極意なのだと、本年の問題でも改めて痛感しました。

空所の数は昨年と変わらず5つ、そして並べ替え問題が1つあり、ダミーの選択肢も1つでした。
なお、ダミーの選択肢については、2024年が1つ、2023年が2つ、2022年が1つ、2021年が3つでしたので、2025年は昨年と同様にマイルドだったと言えます。

なお、長文が少し長くなっただけで拒否反応を示す方は、読解スタミナをつけるべく多読訓練を行うとともに、z会の名著『ディスコースマーカー英文読解』を読み込むなどして、要所要所で英文を深く読むかさらっと読むかのリズムを掴めるようにしましょう。

加えて、復習するに際して、一文一文を精読しようとしている受験生も一定数いるようですが、本問は構文解釈の題材ではありません
そこを勘違いして、一文一文を完璧に理解しようと試みると泥沼にハマることになります。
東京大学がなぜに文挿入の問題を第4問ではなく第1問に配しているのかを考えてみると糸口が見えてくるでしょう、

この1B文挿入(段落整序)ほど戦略が有効な大問はありません。

宣伝にはなりますが、過去問分析の方法や着眼点などを効率的に学ばれたい方は、ぜひ敬天塾の映像授業や過去問実況中継もご活用ください。
その上で、この2025年の1Bに再挑戦したとき、きっと、これまでとは比べものにならない視野の広がりを実感できることでしょう。

第2問A 自由英作文

難易度 標準

本年度は、次のような設問が出題されました。

「意見を言わないということは同意することを意味する」という主張について,あなたはどう考えるか,理由を添えて, 60〜80語の英語で述べよ。

東大は近年、2018年(抽象的テーマ)→2019年(日常的テーマ)→2020年(抽象的テーマ)→2021年(日常的テーマ)→2022年(抽象的テーマ)→2023年(日常的テーマ)といった具合に、偶数年に抽象的なテーマを取り上げる傾向にありましたが、昨年2024年は抽象的とも具体的とも言える設問を出し、しかも2問のうちから1つを選べという一橋大学のような選択式にしたのです。

ただ、本年度は従来の出題形式に回帰しましたので安堵した受験生も多かったかもしれません。

テーマとしては、「少し抽象的」といったところでしょうか。

とはいえ、2020や2022のような恐ろしく書きづらい内容ではなかった点、ホッとした受験生も多かったことでしょう。
敬天塾の授業内演習では、

「沈黙は金なり」という諺にみられるように、自分の意見や本心を言わずに済ませてしまうことが日本ではよく見られます。このような態度をどう思いますか。賛成、反対、どちらとも言えないなど、あなたの意見を、その理由を含め100語程度の英語で書きなさい。
(広島大学2011年)

という類似テーマの問題を扱いました。

さらには、Do you agree or disagree with the following statement? It is always best to state your honest opinion.というTOEFLの問題や、「嘘をつくことは悪いことなのか」という高校入試あるあるの問題など、意外に類似の問題は多くあります。

それゆえに、敬天塾流の起案訓練をきちんと毎日やっていた生徒は4分で書き終わったと嬉しいお知らせをくださりました。

頻出テーマのネタストックを地道にやってきた受験生が報われる問題を東京大学はよく出してきます。

つまり、事前準備の「差」が、得点の「差」になるのです。
また、合わせて、凝った内容を書こうとしないことも、時間制約が厳しい東大英語においては大切な合格ポイントとなります。

せっかくですから、ここで、東大英作文の出題内容を概観してみましょう。

2025東大英語 自由英作文トピックリスト

いかがでしょうか。2005や2011や2012あたりの周辺知識をしっかり整理できていたならば、2025にも使えるフレーズはたくさんあったと思います。

仮に、それらの過去問をやっていなかったとしても、
「意見を言わない」のは1つのコミュニケーションスタイルでしかないとか、
「意見を言わない」のは相手を傷つけまいとする優しさ(配慮)であって同意の有無とは別次元の話だとか、
黙示の合意はその時々の状況によって変わってくるだとかと提起した上で、何か身近な具体例をあげながら、語数を稼ぐこともできたでしょう。

抽象度の高い問題を解く上での鉄則です。

時間制約の厳しい東大英語にあって、英作文だけが唯一、事前準備によって大幅に時間短縮を図ることのできる大問なので、敬天塾の過去問解説実況中継や映像授業を通じてノウハウを貪欲に学んでいただけると幸いです。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2025年東大英語(第2問A 自由英作文)入試問題の解答(答案例)・解説

 

第2問B 和文英訳

難易度 標準

2018年に20年ぶりの復活を遂げた和文英訳ですが、2025年度も変わらず出題されました。
一昔前の出題パターンもしっかりと確認することが東大英語制覇の極意だと言えます。
まずは問題文をご覧いただくとしましょう。

以下の下線部を英訳せよ。

  この世は,土地を持っている人間と, 持っていない人間に分かれており, 土地を持っていない人間は, 馬鹿高い金額を払って土地を手に入れ, ブラックボックスと化し,商品の値段など分からなくなってしまっている家という商品を購入しない限りは, 自分のための家を手に入れることはできないのである。
だから大抵の人は家を所有者から借りることになるのだが, 家賃を払うお金すらない人は, 路上生活者になるしか道はない。
  これはどう考えても憲法違反のような気がするのであるが, お金という権力を持っている人間だけが支配している現状について, 誰も疑問に思っていないようだ。たとえ疑問に思っていたとしても, 権力を持つ者が動かしている政治を変えることは難しいと捉えており, だからこそ, 土地や家を持っていない人々は, がむしゃらに働き, 支払いに何十年とかかっても手にしようと試みる。
   僕はこの家の在り方をおかしいと思う。
(坂口恭平 『モバイルハウス 三万円で家をつくる』 を一部改変)

上記の下線部分を英訳させる問題です。
去年に引き続き、社会風刺と申しますかメッセージ性の強い内容になっています。

「がむしゃら」「何十年とかかっても」あたりを英訳するには、若干の工夫が必要そうですが、大阪大学や京都大学ほどではありません。

たとえば、2025年の大阪大学であれば、下記のような味わい深い問題を出しています。
「着地点」や「美しい終わり方「持ち帰ってくれる」を直訳しようものなら、ペンが止まってしまうでしょう。

英訳しやすいように日本語文を加工する和作文の技術が東大以上に強く求められています。

 次の下線部を訳せ。

   言い忘れた話のことは「言わない」 に限ります。言い忘れるくらいですので, たいしたことない話なのです。 それにもかかわらず言ってしまうと, 今までの話が全て台無しになってしまいます。 着地点をあらかじめ決めておき, 美しい終わり方をするようにしてください。 そうすることで相手はあなたのお話全体をよい思い出として持ち帰ってくれることでしょう。
(竹林正樹.2023. 『心のゾウを動かす方法』扶桑社より一部改変)

では、

2024の京都大学はどうでしょうか。

次の文章を英訳しなさい。

   人間の心と顔の表情の関係は, 一般的なイメージ以上に込み入っている。顔は心を映す鏡だと言われるが, 「ポーカーフェイス」 という言葉もあるように, いつもそうであるとは限らない。 実際、顔の表情を変えることが心を動かすこともあると示唆する研究もある。 もしそうならば, 口角を少し上げるだけで, 前向きな気持ちになれるかもしれない。

いやあなんとも凄まじいです。
「込み入っている」「心を映す鏡」「ポーカーフェイス」「口角」あたりは、かなり訳しづらいのではないでしょうか。
文脈上の意味を考えて、英語に訳しやすい日本語に言い換える和作文を入念に行いませんと、何を言っているのかわからない英文となってしまうはずです。

なお、京都大学はリスニングがない分、英作文や英文和訳をじっくり時間をかけて考察させるタイプの問題構成となっています。

その一方、東京大学は、要約・文挿入・自由英作文・和文英訳・リスニング・正誤・英文和訳・物語文といった具合に、多種多様な問題を短時間で処理させる事務処理能力テストとなっています。
毛色が全く異なる以上、立てる受験戦略も自ずと変わってきます。

 

さて、東大2025に話を戻しますと、和文英訳の極意は、一字一句バカ正直に訳そうとしないことにあります。

傍線部を強引に直訳するのではなく、英訳しやすいように言い換えたり、敢えて訳出をしなかったりすることで、なるべく無理のないシンプルな英文づくりを心がけるべきです。
とはいえ、本年に限って言えば、さほど和作文を試みずともストレートに英訳できたでしょうから、スペルミスや語法ミスなどを犯しさえしなければ容易に高得点を奪取できる問題だったと言えます。

 

なお、世間の解答例を読んでみると、なんとも美しい文で、こんなの一生書ける気がしないと思うようなものもありますが、限られた試験時間の中で、そんな答案は書けやしませんし、書く必要はありません。

高得点合格者の方の答案例をご覧いただければ一目瞭然ですが、ものすごくシンプルにまとめているのです。

ミスのない文をスピーディに書き上げる。
これが、時間制約の厳しい東大英語を制覇する極意だと言えましょう。

第3問 リスニング

難易度 標準

まず、東大リスニングの出題形式について見ていくとしましょう。

(放送時間)30分程度
(放送開始)2月26日午後2時45分〜(変更可能性あり。必ず受験要項や問題冊子の注意事項で確認を!)
(設問総数)15問←A・B・Cの3つのパートに分かれており、各パートに5問ずつ割り当てられています。
(予想配点)2点×15問=30点
(選択肢数)5つ ←2018年入試より各設問の選択肢数が5つに増量した。
(解答方式)マークシート

このようになっています。

出題内容としては、

このようなテーマと語数で出されています。

その上でですが、2025年度のリスニングでは2024年度入試と変わらず、(A)(B)(C)の3つのパートに分かれており、それぞれが独立した内容となりました。

設問数は例年通り15問となっており、選択肢の数も5つで変わりはありませんでした。

音声の中身については、
(A)蝶の長距離移動
(B)蝶をテーマにした対話
(C)都市の植生
となっています。

NOT問題は昨年に引き続き1問でしたが、設問Cの傾向が変わりTRUE or FALSE問題が3問も出されました。
設問AとBは、わりと聞き取りやすく、選択肢も読みやすかったとの生徒の報告がありました。
設問Cだけが鬼門だったとのこと。
下読みにもっと時間をかけていればとの声も聞かれました。

流れてくる音声自体は確認できておりませんが、2021年度入試のようなインド訛りの音声ほどではなくとも、アメリカ英語とは違った訛りの音声が聞かれたとのこと。
そのほか、相変わらず、試験教室によっては音量が小さいスピーカーの音割れが激しいといった感想も聞かれており、気になる方は昼休みの試験放送の際に挙手をするなどすべきだったように思われます。

もっとも、大きい教室ならハズレかというと必ずしもそうではなく、小さい教室だからといって当たりというわけでもなさそうです。
雑音のある教室でも高得点を取っている人もいる以上、クリアーな音声ばかりではなく、音割れのような状況下でも聴き取れる訓練を早い段階から行うべきでしょう。

東進さんの東大レベル別模試では雑音入りリスニングが話題になったことがありましたが、それとはまた違った種類の雑音が東大入試では起こりえます。
音の反響対策ということでは、お風呂場で音声を流してみたり、音声にノイズを入れるアプリを使ってみたり、スピーカーの上にタオルをかぶせてみたりする訓練も有効かもしれません。

スピードについては、それほど早いと感じた人はいなかったようで、東大模試や過去問CDくらいのスピードだとお考えいただければ良さそうです。

難易度としては、Cに手こずって受験生が多かったとはいえ、ABがマイルドだったことからトータルで見て「標準」としました。
東大側が意図的に設問間で難易度バランスを変えてきていることが今年の問題でもよくわかりました。

第4問A 英文法正誤

難易度 標準

東大4A正誤問題というと、多くの東大受験生が「捨て問」にされています。
年々文章量が増え、予備校講師でも間違えるような難解な設問を1問程度盛り込んでくることもあります。
ですが、高得点合格者の多くは、この4Aに割り当てられている10点をきっちり取りに行っています。

満点を取れる受験生がいる一方で、いくら時間をかけても点数が取れない受験生もいます。
両者の分水嶺はどこにあるのでしょうか。

それは、目の付け所の差異にあります。
その詳細については、敬天塾の映像授業過去問解説記事でも詳述しておりますので是非読み込んでみてください。
年々合否の分水嶺となりつつある東大英語を制覇するためにも、安易に捨て問にしないことが合格ポイントです。

さて、今年度の4Aですが、比較的取り組みやすいセットだったといえます。
英文そのものはそれほど簡単ではないものの、設問自体は東大が好むパターン(動詞の語法や代名詞など)が多かったので、しっかりと対策をしてきた受験生なら3問は取れたはずです。
詳しい解説は後日改めてアップしますが、簡易解説を載せます。

(21) (a) account forに修正 (動詞の語法は東大4Aで頻出)

(22) (b) whereに修正(関係詞絡みは2017や2012も参照)

(23) (b) demanding/interestingに修正(分詞絡みも頻出)

(24) (c) available toに修正(makeの構文解釈問題とも捉えられますがavailable  peopleで違和感を感じないのは形容詞の語法知識不足)

(25) (c) pick them upに修正(代名詞の位置関係は英作文でも間違える受験生が多いです。細かな説明は端折りますが、put it down /check it out / put it on / put them off / turn it offあたりも入試頻出です)

いかがでしたでしょうか。最後に、直近12年分の4A分析表をご紹介するとしましょう。

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。

2025年東大英語(第4問A 英文法正誤)入試問題の解答(答案例)・解説

第4問B 英文和訳

難易度 標準

第4問B 英文和訳総論をひらく

多くの学校や塾では、この4B英文和訳の授業を得意としています。

理由は教えやすいからです。

低学年のうちから学んできた英文法の授業との接続が容易で、学生にとっても構文の取り違えなどのミスを把握するのが容易で、かつ、指導するのにも労力がかからず莫大な時間もかからないので50分授業にはちょうど良い量だからというのが理由として挙げられます。

それゆえ、4Bには自信のある東大受験生はかなり多い印象です。

ただ、ここ数年、4Bに手こずる東大受験生が増えてきています

下線部だけ読んでも何を言っているのかわからなくなった、文章量が増えた、言いたいことはわかるけれども以前にも増して自然な日本語にするのが難しくなったなど、人それぞれ、様々な理由を挙げています。
今まで大した対策をとらずとも4Bを得点源としていた受験生も、大幅な戦略修正が迫られるようになってきています。

本年度の設問に関しても、下線部だけ読めば即答できるような設問は少なく、4Bをサクッと終わらせるつもりだったのに思いのほか苦戦してしまい、時間配分戦略が大きく崩れてしまったと嘆く受験生も多くいました。

それゆえ、4Bについてもしっかりとした大問別対策を実施する必要性を感じる受験生や、4Bの難化を前に時間不足に苛むなか、今まで以上に文章を速読速解するチカラの重要性を痛感する受験生が増えてきています。

とはいえ、他の重量級の大問に比べれば、鬼門という程ではありませんので、この4Bを死守することが高得点奪取の要とも言えましょう。

さて、東大の英文和訳は、第4問のBに位置付けられており、第4問のAには正誤問題が配されています。
なぜに、両者は同じ第4問に位置しているのでしょうか。
あるいは、なぜに英文要約と文挿入の問題は第1問に配されているのでしょうか。
テキトーに東大教授が振り分けたのでしょうか。

いいえ、明確な理由があります。
実は、その理由をしっかり考えることができたなら、時間内に解ききることができるようになります。
その理由を知りたい方は、ぜひ、敬天塾の映像授業大問別実況中継シリーズを熟読していただければと思います。

このような性質の英文和訳ではありますが、大学教授の出題意図はどこにあるのでしょうか。
英文和訳の問題を作成するにあたって、出題者は主に4つの切り口を考えます。

1つ目は、受験生の構文解析能力(文法力)。

2つ目に、語彙力(多義語力・熟語力)。

3つ目は、前後の文脈把握能力(傍線前後の文章をしっかり読み解いた上で、複雑な下線部で言わんとすることを合理的に推定する力)。

そして、4つ目は、日本語能力です。

この4つの要素のいずれに力点を置くかを問題作成者は吟味検討します。
そうして、問題がつくられていくわけですが、大学ごとに比重を置く項目が異なり、それに合わせて問題のクオリティも変わってきます。

この点、東大の問題は基本的には読みやすく、特段難しい構文解釈を求められる設問はここ20年出題されてはいません。

ただし、平易な単語を使っているからといって、容易に訳せるわけではありません
ここが東大4Bの難しさであり、文法や単語を機械的に覚えているだけでは突破できない壁でもあります。

また、処理量の多い東大英語にあって、ゆったりと解いている時間はありません。
スピーディーに4Bを仕上げることは必須であり、できれば10分以内に、可能であれば7分程度で解き終わりたいところです。
15分以上かけている受験生がそこそこいますが、他の大問に影響が出ますので、なるべく早くに解けるよう、過去問を用いて訓練をしていきましょう。

構文が弱いのであれば、構文解釈系の本をサクッと仕上げるのも良いでしょう。
ただし、あまり難解なものを投じる必要はないと思います。

なお、演習に際しては、できましたら模試の問題ではなく、過去問をお使いください
東大模試が役立つのは、3と(4A)と5くらいだと思います。
もちろん、どんな問題でもすらすら解ける真の実力が身につけば良いでしょうが、限られた時間で他科目もやらねばならないなか、あれもこれもと手を出すのはリスキーです。
東大に受かりたいわけですから、まずは東大の先生がご作成された過去問を重視しましょう!

さて、2025年度は以下のような問題が出されました。

下線部(ア) 

“You can’t say that!” I imagine someone sitting around an evening fire suddenly shouting to the community’s favorite storyteller.

下線部(イ) 

They silently “get it” and a bond is now formed between them. These few “insiders” have done what alert audiences would do throughout all succeeding generations.

下線部(ウ)

The exciting tale of how the dangerous beast was skillfully trapped and killed is really ー as some listeners figure out ー a story about ridding themselves of their vicious leader.

いかがでしょうか。
近年の4Bでは、下線部だけ読んでも「よくわからない」文を、東大側が意図的に選んできていましたが、本年度に関しては下線部だけでも読み取りやすくなった気はします。

とはいえ、訳せたとしても下線部分だけで何を言っているのか完璧に理解できた人は、正直「いろんな意味で」すごいです(笑)。少なくとも、私には無理でした。

やはり前後の文章を読まないと何を言っているのか上手く意図をつかめませんでした。
意図をつかめないまま訳そうものなら、訳のわからない日本語が出来上がってしまいます。
日本語として体(てい)をなさない文では、そもそも英文を和訳したことにはならないはずです。
敬天塾では、2022〜2024の4B過去問について、このあたりを詳しく解説していますので、ホームページのトップより過去問データベースをぜひチェックしてみてください。さて、4B過去問分析表をご覧ください。

東大2025年4B分析チャート

いかがでしたでしょうか。他年度と比較してみると、長文語数もそれほど多くはなく、下線部の単語数もマイルドに思えます。

ただ、単語の意味はわかっても、漫然と直訳すると日本語としておかしな文章が出来上がってしまうので、国語力も問われているという点では、東大4Bらしさも垣間見えました。
単語レベルでは、下線部(ウ)のridは難しかったと思いますが、文脈理解で推測することは不可能ではなかったはずです。

なお、下線部を先読みしてから本文を熟読するのか、
本文を熟読してから下線部和訳に挑戦するのか、
下線部を含んだ段落ごとに区分けして分析検討するのか、
下線部だけ読んで不明瞭な時には本文を拾い読みしていくのかは、
残された時間や読解速度や設問文章との相性によっても変わってくると思いますので、一概にこれをやれとは言いづらいところがあります。

この4Bをリスニングの前と後のいずれでやるのか、何分で解くつもりなのか。その時の精神状態などによっても変わってきます。
敬天塾の教材を活用しながら大問別対策が終わった段階で、年度別にフルセット演習を実施し、時間に追われるなかで頭をうまく切り替えられるかを分析してみるのも学びが大きいと思います。
一度解いたことのある問題でもです。

以下の記事もぜひご参照ください。

過去問はいつやるべきか?

(編集部より)以下のリンク先にある解説記事もご参照ください。
 

2025年東大英語(第4問B 英文和訳)入試問題の解答(答案例)・解説

第5問 エッセイ(物語読解)

難易度 標準(昨年よりやや難しい)

第5問 エッセイ(物語読解)総論をひらく

東大第5問は、物語文を主体とした長文による総合問題と言われます。

なぜに「総合問題」と称されるのかというと、多義語や熟語知識を問うた空所補充問題、文法や文脈理解が求められる並べ替え問題、物語文の論理展開を把握せねば解けない内容一致問題など、バラエティ豊かな設問形式で様々な力が問われているからです。

この第5問でガッツリ点数を取りたいと願う受験生は多くいますが、苦戦している人も一定数います。

その理由として、

・物語文を題材とした問題を解き慣れていない。

他大学の過去問や受験参考書では、物語文があまり取り上げられていませんから、東大過去問で初めて物語文を題材とする問題を解いたという方もざらにいます。

入試まで時間のある受験生は、oxfordのbookwormシリーズなどで多読をしていただきたいところですが、時間のない受験生は東大過去問や神戸大過去問、旧センター試験の第5問〜第6問あたりの物語文問題を読み解いてみるのも良いと思います。

・全体を俯瞰する視点の欠如。

東大第5問では、冒頭部分の抽象度が高く、中盤以降でようやく伏線回収がなされる文章が多く出題されます。

このことを過去問探究から学び取った受験生であれば落ち着いて読み進められるのですが、多くの受験生は冒頭部分の意味を掴みとれず試験会場で頭が真っ白になって冷静さを見失ってしまいます。

同じ問題が出るわけないのだから過去問探究なんて意味がないという受験生が時々いらっしゃいますが、同じ「傾向」の問題は繰り返し出題されていますので、「敵」を知るという意味でも先ずはしっかりと過去問探究をしましょう。

・趣味で好きな小説を読むのと、物語文の問題を「読」み「解」くのは意味が違うことを理解していない。

これは、共通テストの日本語の小説問題に苦手意識を持たれている方にも言えることですが、設問が配されている以上、「論理的」に解くことが求められます。
趣味で読む小説は本文の解釈が読者に委ねられていますので自由に作品を味わうことができますが、入試問題として問われている物語文は答えが一つに定まるよう作られていますから正しい思考手順を踏まねばなりません。
それゆえ、漫然と小説を多読するだけでは自然と点数が上がるわけではありません。
意外に誤解している受験生が多くいます。

・多義語や熟語といった語法知識のインプットを怠っている。

東大英語第1問〜第3問(近年は4Bも)は、文法力や語彙力があまりない受験生でも、論理や大意把握能力が優れていれば「そこそこ」の点数を取ることもできます。

ですが、4Aや5の空所補充となると、語法知識が正面から問われてきますから、ふわっとした読解だけでは得点できません。
物語文だからといって、単に作品を味わえば良いというわけではなく、作品を十分に味わうためにも語法知識を日頃から拡充していく姿勢が強く求められています。

 以上、第5問に苦手意識を持つ受験生に足りないものを幾つか列挙いたしました。
これら諸課題を解決するつもりで、東大過去問を1題1題丁寧に考察していくことが第5問制覇の鍵だと言えます。

さて、東大第5問の総論はこれくらいにして今年度の問題について見ていくとしましょう。

出題形式は記述式2問、空所補充1問、並びに内容一致などの択一式7問の計10問構成でした。
昨年まで出題されていた並べ替え問題が消えたことは大きな変化でした。

2022年度はジェンダーをテーマにした物語文が出題され、
2023年度では刑務所の必要性について子供たちとの対話に関する文章が出され、
2024年度にはアメリカの人種差別を主題とする長文が取り上げられました。

いずれもメッセージの強い内容ばかりでした。

その流れを受けた2025年度の第5問では、
脳性麻痺を患う筆者がイスラム教徒としてラマダーンと向き合う話が取り上げられました。

世界史や地理選択の受験生には馴染みのある話題でしたが、文章自体読みやすく注釈やリード文も多かったですから、理系受験生にも読み取ることはできたでしょう。

昨今、世界各地でイスラーム教に対する偏見や差別が蔓延していることを東大教授陣が憂慮したのでしょうか。
文化人類学に絡んだ文章も東大は多く出していますので、関連した文章を読んだことのある受験生にとってはストーリー展開が非常に見えやすかったように思えます。

そうした意味で、幅広いジャンルの文章を多読して、教養力を高めることは東大英語対策に有益だと言えましょう。

英語で「多読」をやる意義とは?6つの意義を詳細に解説

設問については、これまで多くの東大受験生が捨て問にしていた並べ替え問題が廃止されました。
説明問題は例年通りの難易度だったように思えますが、選択肢問題は昨年よりは歯応えがあったように思えます。

難易度は、昨年より少し難しいくらいな気はしますが、東大第5問としては標準的な難易度だったと思います。

東大第5問あるあるですが、冒頭で何言っているのかわからずとも、中盤以降で論旨が見えて来ることが多いですから、細部にこだわらず全体像を早くに掴み取ることを意識するようにしましょう。

取れるところをきっちり取りに行くことが東大英語制覇の極意です。
もし本番でパニックが起きて全然文章内容が頭に入ってこなければ、いったん捨てて他の大問に移る勇気も大事です。
120分で120点、すなわち1分で1点稼がなければならない東大英語にあって、一つの問題に執着するあまり冷静さを失うのは極めて危険です。
事務処理能力テストと揶揄されることの多い東大英語にあっては、取れる問題を取りに行くスタンスが重要です。

 

 

最後に

上記の記事は、敬天塾の講師が執筆しています。
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