2025年東大英語(第4問A 英文法正誤)入試問題の解答(答案例)・解説

(編集部注1)難易度の評価など、当日解いた所感はこちらをご覧ください。

(編集部注2)実際の入試問題入手先
本解説記事を読むにあたって、事前に入試問題を入手なさることを推奨します。
・産経新聞解答速報 https://www.sankei.com/article/20250225-SS6KISNKS5BRTKNOCIBINS4GHI/?outputType=theme_nyushi
・東京大学HP https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_04.html

 

 

東京大学英語4A正誤問題というと、多くの東大受験生が「捨て問」にされています。
ですが、高得点合格者の多くは、この4Aに割り当てられている10点をきっちり取りに行っています。
苦手意識を持たれる方が多いのは、きちんとした対策を取っていないからです。

4Aは文法問題だと称されることが多いと思いますが、私は英作文+読解問題だと考えています。

英作文の解説記事でも申し上げるつもりですが、短時間で「正確な」英文を書くためには、英文の「点検項目」を明確化し、日頃から自分が書いた英文をチェックしているかが合格ポイントになります。
実のところ、4A正誤問題は、そうした英作文における「点検項目」の延長線上に位置しています。

また、1B文挿入で大意をスピーディーに把握する訓練を積んでいる方にとって、4Aの長文量は3〜4分で処理できるものであり、さほど労することなく得点できるサービス問題になっています。
4Aに極度の苦手意識を持たれている方は、1Bや2といった他の設問でも苦戦されている可能性もあるのです。

とはいえ、ただ単に「分布力を上げてくださいね、総合力を上げてくださいね」というアドバイスでは、ただでさえ時間が足りない受験生には酷でしょうから、本解説では、高得点合格者の目の付け所について詳述したいと思います。

【東大正誤の鉄則】4Aを捨て問にしようか悩んでいる、そこのあなた!実はコツがありますよ!

【東大正誤の鉄則】3つを読む
  • 3つ取れ!
    3問はスピーディーに取れる問題があります。
    難易度順に並んでいるわけではありませんから、過去問分析から目の付け所をテンプレ化してください。
    人間が解ける問題なら、あなたにも解けます。
  • 修正箇所は意外にシンプルだから過度に怯えるな!
    正しい英語長文が元々あって、それを東大教授がちょこっといじっているだけですから、私大のように正誤問題のためだけに無理して作られた短文とは異なり、シンプルに解けることが圧倒的に多いのです。
  • 文章自体は面白い
    正誤問題として解くだけではなく、ぜひ多読用にも活用してみてください。
    言語学のスペシャリストが作成されている東大英語は、全大問余すとこなく活用しましょう。
    言語関連の文章も多く、長文からエッセンスを吸収した受験生には、2020年に話題となった「言語が人を操るのか、人が言語を操るのか」という英作文問題の書くネタも思い付きやすかったかもしれません。

【2025-4A所感】2024より読みづらい文章ですが、間違い箇所は例年になく見つけやすくここ数年で最易

2022年度入試は、多くの大問で東大側が本気を出した年でありました。
共通テスト数学の超難化にはじまり、二次試験でも全教科えげつない問題が出題されましたので合格最低点が数十点落ちた伝説の年だとも言われています。

☆ブクマ推奨☆東大足切りライン考察に役立つデータ集【2025版】

4Aも例外ではありません。
2022年以降、抽象度の高い長文が出され設問レベルも年々増していた4Aでしたが(2024年を除く)、今年はここ5年で最易と言ってよいくらい誤った選択肢を容易に見つけられた当たり年でした。
1A・1B・4Aでこれ程までに易化したのは、おそらく3Cや5の設問形式変更や4Bの難易度を上げてきたこととのバランスを図ったものと推察しています。

どの大問がサービス問題になるのか明確に定まらない東大英語にあって、どの設問形式も最初から捨て問にしようとはせず、しっかりと対策を講じなければならないことを改めて痛感しました。

その中でも客観式(マーク式)の問題でキッチリ点数を取ることは極めて重要だと言われています。試験会場の音質や過度の緊張の有無で得点率が左右されやすいリスニングと異なり、4Aはコツさえ掴めば安定的に正解を導ける得点源ですから、早いうちから過去問探究をせねばなりません。

ですが、4Aでコンスタントに高得点を取れる受験生がいる一方で、いくら対策しても4Aで全く点数を取れない受験生がいるのはなぜでしょうか。
それは、目の付け所が違うからです。
本稿を通じて、ぜひ、その極意をマスターしてください。
併せて、2017年度〜2024年度4A実況中継解説も参照すると学びが大きいことでしょう。

(2024-4A解説) (2023-4A解説) (2022-4A解説) (2021-4A解説) (2020-4A解説) (2019-4A解説) (2017-4A解説)

(編集部注)詳細な実況中継解説は映像授業【東大英語 第4問A 英文法正誤】に含まれています。

その上で、以下の過去問分析チャートを分析してみましょう。
なお、当日の所感では設問(24)を形容詞の知識問題に分類しましたが、文構造(文型)の面からも解答が可能なため分類を修正いたしました。

【東大4A分析チャート】12年分(2011年~2025年)

いかがでしょうか。このように一覧にしてみると、東大英語部会が受験生の如何なる力を試そうと設問をつくっているのか、意図が見えやすくなるのではないでしょうか。

際立つのは語法関連の知識が高頻度に問われている傾向です。
東大受験生は概して意識の高い方が多いですから、鉄壁やら英検準1級単語帳やらで高級な単語をたくさん覚えようとはするのですが、東大側としては「中学生や高校1年生でも知っているような単語はちゃんと使いこなせていますか?」と問うてきています。

東大入試は早慶と違って難単語をほとんど問うてきません。
もちろん貪欲に語彙力の増強に努めてはいただきたいですが、
自動詞なのか他動詞なのか
関連した熟語はきちんと整理できているか
ニュアンスの違いを理解しているかといった英語学習の基本姿勢が身についているのかが積極的に問われている印象です。

そうした意味では、お使いの高級単語帳をやる前に使っていた基礎単語帳の語法を総復習したり、基本単語が実際にどのように使われるのかを例文でチェックしたりすることは極めて重要です。
学校で配布されることの多いネクストステージやビンテージといった文法問題集の後半に掲載されている語法関連のページも早いうちから読み込んでみましょう。

そのほか、塾生にオススメしている、桐原の『WORD SENSE』や青灯社の『英単語イメージハンドブック』といった基本語彙の運用能力を格段に高めてくれる良書も、英作文対策になりますので早いうちから読み込んでみましょう。

 

それでは、設問(21)〜(25)の5つの問題を前にして、高得点合格者達はどのような思考プロセスで解いていったのか実況中継風に解説していきたいと思います!

【設問別実況中継】設問の解説だけに終わらない! しっかり学んで4Aを得意にしよう!

設問(21)今年は初っ端にサービス問題が登場しました!東大頻出の相関接続詞です!<語法/熟語>

誤った選択肢は(a)

A practical way of conceiving rules in general is (a) to account to for them as the mechanisms that create consensus among players.       

英文の主役は動詞です。
動詞を制する者、英語を制すると言っても過言ではありません。

東大4Aにおいても、様々な切り口から、動詞に絡めて出題されています。
特に直近5年間は、動詞の語法に関する出題頻度が急激に高まっています。
もしかすると、熟語力やフレーズ知識が乏しい東大生が増えて来ていることを教授陣が憂慮されているのかもしれません。

小難しい英単語ばかり大量に覚えても、足元の基礎が覚束なければ英語はマスターできないのです。

さて、動詞の出題切り口について、皆さんはどこまで情報整理をしているでしょうか。ここで幾つかの視点をご紹介いたします。

動詞の出題切り口について読む

●動詞が来たら時制に注意しましょう。(過去形や完了形など)

●動詞が来たら三単現のsに問題がないかチェックです。
特に主語が関係代名詞や長ったらしい語句で修飾されている時ほど、下線を引かれた動詞に対応する真の主語が見えづらくなります。
東大教授だったら、どこに下線を引くのか意識してみると良いでしょう。
この意識の差が、英作文におけるポカミス発見率の差につながります。

また、many a 単数形や、a lot of 不可算名詞や、one of 複数形の名詞や、Both A and B / Either A or B、the number of/the amount of、主語が動名詞やto不定詞といったものなどが絡む場合には、三単現のsの要否判断で戸惑うことが多いです。
関係代名詞に下線が引っ張られていた場合、先行詞と関係詞節の中の動詞内の関係にも目を向けましょう。

ここが問われたのが今年度の設問(22)でした。

●下線の引かれた動詞は他動詞か自動詞かチェックです。
自動詞なら、前置詞のサポートが必要なはずですから、laugh atなど熟語表現を形作ることが多いです。
この場合、受験生が熟語の存在を忘れやすいように本文を受動態にして受験生を撹乱しようとすることが多いです。
他動詞であれば、目的語の存在に注意
目的語が主語である場合、本来受動態にせねばならないところ、be動詞を省略して混乱させてきます。
be動詞はサブキャラのように捉える人が多く、多くの受験生にとっての盲点となりますが、正誤問題ではメインキャラになることが多いので注意です。
また、Vpp(過去分詞形)を見たら、その動詞が自動詞か他動詞かを反射的に確認しましょう。
なお、受動態関連では、後続の設問(23)でもお伝えする4つの鉄則をしっかり頭に叩き込みましょう。

Ving(動名詞や現在分詞)やVp/Vpp(過去形や過去分詞)の直前にあるbe動詞は本当に必要なのか吟味しましょう

●動詞 to〜(want todecide toなど) / 動詞〜ing(enjoy~ingpractice~ingavoid~ing)の語法は英作文でも正誤問題でも頻出。
丸暗記せずとも、toが元来未来志向でプラスイメージの前置詞であることを元に整理すると丸暗記量はググッと減ります。

たとえば、want todecide toexpect toであれば、いずれもこれからしたいことを表しています。
だからtoなんです。
反面、マイナスイメージのことなど未来とは無関係な場合~ingが主に用いられます。

●正誤問題では、普段の英文読解の時以上に、SVOやSVCやSVOOやSVOCを意識しましょう。

●文章の中盤以降に動詞がto不定詞も伴わずに不意に来た場合、関係代名詞の存在を疑いましょう。

●時や条件の副詞節が出てきたら「反射的に」動詞の時制を確認しましょう。

●分詞構文を見かけたら、意味上の主語をチェックしましょう。

以上、ざっと書いてみましたが、普段からこのような点検項目を脳内でテンプレ化していれば、英作文におけるポカミスも大幅に少なくできるでしょうし、4Aの正答率も上がることでしょう。

さらには、本問がaccount forの熟語知識を問うているところ、前置詞を意識した学習も極めて重要です。
直近では2023年設問(25)や2022年設問(22)でも前置詞に特化した設問が出されているので敬天塾の実況中継解説も参考に理解を深めていただきたいです。

せっかくですから、前置詞絡みの重要視点も確認しましょう。

前置詞絡みの重要視点を読む

前置詞は実に奥が深く、2000ページ級の前置詞辞典も存在している程です。

ですが、そのような本を読まずとも、東大4Aは制覇できます。
前置詞が入試で問われる切り口は

・前置詞は動詞に付随した熟語の一部としての働くケース
・単独で機能するケース
・to不定詞における意味上の主語を導くために機能するケース

あたりが代表的なところです。

その中でも、以下の2つは特に押さえておきたい切り口です。

●動詞や形容詞とセットで使われる熟語知識としての前置詞

たとえば、lookという基本動詞は、look atlook forlook intoなど、様々な前置詞とコラボして熟語を形作っています。
これらを丸暗記せずとも、前置詞の原義と組み合わせれば暗記量はググッと減ります。
atなのかforなのかで意味が変わるケースでは、文章をちゃんと読んでいないと正誤判断はできません。
動詞関連では、他動詞か自動詞かの区別が重要であると2023年度設問(21)の解説でも述べましたが、そうした知識を前置詞を使って確かめさせる問題もよく出ます。

たとえば、discuss about environmental problemsといった文を見かけた時に、直ちにdiscussは前置詞のチカラを借りずとも目的語を持ってこれる一人前の動詞(=他動詞)だから、aboutが不要と判断できることが大事なのです。
その一方、be interested inbe satisfied withのように熟語(連語)として丸暗記しないと正解できない前置詞知識もあります。
なお、差がつきやすい英熟語については、敬天塾の公式LINEに登録した方にもれなくプレゼントしているので、そちらもぜひご活用いただけると幸いです。

●前置詞単独の原義

最近では、前置詞を漫画で学べる書籍が多く刊行されるようになりました。
一昔前までは、前置詞の原義をテキトーに説明いた学校や塾が多かったので良い変化です。

原義とは何かというと、たとえば、Our family lived through the civil war.という文があったとします。
live throughなどという熟語は市販参考書には載っていません。
ここで登場するのがthroughの原義(核となる意味)なのです。
throughはトンネルを貫通するイメージが強い前置詞です。
なので、内戦(the civil war)という名のトンネルを突っ切ったというイメージが生まれ、「私達の家族は内戦を生き延びた」と訳されることになるわけです。

なお、前置詞の用法が単独で問われるものの代表格に附帯状況のwithがあります。
4Aに限らず、4Bや5(2023年度の第5問空所(28)でも問われました)でも頻出なので用例をしっかりと押さえておきましょう。

いかがでしたでしょうか。高得点合格者はこうした切り口をきちんと整理しています。
着眼点を整理できた人は必ず4Aを得点源にできます。
諦めることなく1問でも多くもぎ取ってください。

その上で本問を見ていくと、accountaccount for(説明する/〜割合を占める)の形くらいでしか使われませんから、きちんと熟語帳で勉強してきた受験生にはいきなりのサービス問題でした。

もしかするとあまりに簡単で何か「罠」でも隠されているのではないかと勘繰った方もいたかもしれません。
則ち、to themを「to 人(人にとって)」のような挿入句と考えた方もいたかもしれませんが、そもそも下線(a)の直前に人間に絡む単語はなく、複数形になっているのは唯一rulesですから、themはこれを受けていると考えるのが自然です。
仮にto themが動詞のaccountと切り離された挿入句だと考えたとしても、その後ろのas the mechanisms that以下がaccountの目的語になるというのは意味的にも構文的にも不明瞭です。

もっとも、仮に本問で落としたとしても、設問(22)(23)(25)といったサービス問題が今年度は控えていますので、本稿の冒頭でも述べた通り3問は絶対に取れますし、取りにいかなくてはなりませんでした。

設問(22)超サービス問題です。関係代名詞の意味を本当にわかっている?と問われています。<文構造(関係詞)>

誤った選択肢は(b)

In the field of operational gaming, (b)which  where games are utilized for goal-oriented purposes such as forecasting,testing, and training, gaming is divided into two categories.       

関係代名詞が絡む問題は、過去にも2017年(23)で出題されていますが、本問ほど単純な問題は見かけたことがありません。
正直いって、中間期末テストレベルの問題であり、4Aを最初から捨て問にすると決め込んでいた受験生はさぞ悔しがったのではないでしょうか。
英作文の添削をしていても、関係代名詞がらみの凡ミスはかなり多くみられますので、受験直前期には口を酸っぱくして注意喚起をしています。

せっかくですから関係詞がらみで出題可能性の高い切り口を4つご紹介するとしましょう。

関係詞がらみの切り口4つを読む

①関係代名詞の成立条件不存在

関係代名詞とは、名詞(先行詞)や前の文章を説明したい時に用いる文法技術なわけですが、意外に使い方がわかっていない受験生が多くいます。
たとえば、「私がとても可愛がっているワンちゃんは、ポチです。」を英訳しようとした時、

The dog which I love so much is called Pochi.→⭕️
The dog I love so much is called Pochi.→⭕️(目的格用法のwhichthatは省略可能だから)
The dog which I love him so much is Pochi.→✖︎

となることは当たり前に理解できますでしょうか。

The dogを説明しようとしているのに、which節の中が文として完結してしまっていますよね。
I love ■ so muchの■の部分がwhichの前に書かれているから■は省略するというのが関係代名詞の基本だったはずです。
Gorie is my friend who likes Hanako.という主格用法も同じです。
who以下の文にはlikesの主語がなく文として「不完全」ですよね。

なぜなら、主語の部分が関係代名詞の外に先行詞として飛び出しているからです。
これが、Gorie is my friend who he likes Hanako.では関係代名詞は成立しないわけです。

英語が得意な方にとっては、何を当たり前のことを言っているんだと思われたと思います。
本問が、まさにこのパターンなのです。
whichの後ろが文として完結しており、operational gamingを入れ込むための前置詞もありませんから、このままでは関係代名詞は成立しません。
それゆえに文章骨格を維持したくば、関係副詞を用いざるを得ないのです。

関係代名詞の後ろは「不完全」な文でなければならないことを改めて、お手持ちの文法書などで復習をしましょう。
どの科目でも、「基礎に戻る勇気=合格力」なのです。

 

② 「関係代名詞のthat」と「同格のthat」との混同

前項の①でも述べた通り、関係代名詞は「不完全」な文が後ろに来なければなりません。
それに対して、同格のthatは関係代名詞ではありませんから、that節の中は文として「完全」でなければなりません。
ですが、意外に多くの受験生が間違えるんです。。

たとえば、同格のthatの代表格はThe fact that SV〜ですよね。
熟語のように丸暗記している受験生がほとんどですから、4Aで出されても「あ!同格のthatが来た!ラッキー」と思い込んでしまうのではないでしょうか。

そうした受験生の思い込みを教授陣は突いてくるのです。

The fact (that you pass the entrance exam) makes me happy.という文は、同格のthatで間違いありません。
「貴方が入試で合格したという事実は、私を幸せな気持ちにする(貴方が入試で合格したという事実のおかげで、私は幸せな気持ちになる。)」という、なんとも縁起の良い文章です。

では、次の文はどうでしょうか。

The fact (that you are talking about) makes me happy.も正解です。

なぜなら、このthatは関係代名詞であり、talking aboutの目的語がThe factなので、that以下の文は完結していなくても問題ないのです。
The fact that SVは同格のthatで確定だと思い込んでしまうと、間違えてしまいそうですよね。

 なお、同格のthatを多用する受験生が多いですが、どんな名詞にでも使えるわけではありません。
situationchanceやimageなどは同格のthatが使えません。
ミスのない無難な英文でサクッと答案を仕上げることが東大英作文制覇のコツです。
詳しくは2A自由英作文2B和文英訳の解説記事もご参照ください。
なお、映像授業では同格のthatが使える名詞一覧をご紹介しておりますので、併せてお役立てください。

 

③前置詞の見落としによる関係代名詞と関係副詞の混同

動詞の語法ともリンクする話ですが、前置詞の存在を見落とす受験生が非常に多いです。

たとえば、次の文を見比べてみてください。

This is the house which I lived last year. →✖︎ これはよくある間違いです。
live in the houseが本来あるべき形であり、目的語のthe houseが先行詞としてwhich節の外に飛び出しているわけですから、inがなくてはいけません。

要は、先行詞のthe housewhich以下の文に戻した時、違和感なく文章が繋がるのかということです。
今のままだと、I lived the house last yearとなってしまいます。

自動詞・他動詞の論点にもつながります。
ここは、きちんと
This is the house which I lived in last year.
This is the house in which I lived last year.
に修正しなければなりません。

では、次の文はどうでしょうか。

This is the house which I lived with my parents last year.
→✖︎ これも間違いです。
前置詞withはありますが、これは、my parentsにつなげるためのものであり、the houselivedを繋げる前置詞がありません。

This is the house which I lived in my twenties.
→✖︎ これも間違いです。
inは確かに書かれていますが、これはmy twentiesとセットをなすものであり(in my twentiesで「20代の時に」)、やはり本文でもthe houselivedを繋げる前置詞inがありません。

以上のように、関係代名詞が来たら前置詞の存在を疑う癖を習慣化していただきたいところですが、これが関係副詞とどのように関係するのでしょうか。

関係副詞とは、ざっくり言えば、前置詞コミコミプランのようなものです。
先程の例文で言えば、
This is the house in which I lived last year.
This is the house where I lived last year.
のように、「前置詞+関係代名詞」という2単語をスッキリ1単語で表現できる優れものが関係副詞です。

あくまで前置詞コミコミですから、主語や目的語の省略には対応できません。

たとえば、
This is the house where lived last year.
→✖︎ livedの主語が抜けていますね。
whereがカバーできるのは、あくまで前置詞のみです。
主語が抜けていては文として成り立ちません。

I went to Hongo, where I met.
→✖︎ metの目的語がありません。
これでは、誰と本郷であったのかがわかりません。

さらには、前置詞を省略するために関係副詞を用いたのに、
This is the house where I lived in last year.
→✖︎ これでは、inが浮いてしまいますね。
inを省略したいがために関係副詞のwhereを用いた意味がなくなってしまいますから、inを削除するか、wherewhichに変えるかしかありません。

いかがですか。中3〜高1で学んだ内容のはずですが、意外にド忘れしていた方も多いのではないでしょうか。

東大教授は東大受験生のことを誰よりも知り尽くしています。
ミスの傾向もデータベース化されている教授もいらっしゃいます。
しっかりと戦略を立てて、4Aを攻略しましょう。

 

④ 知識系

たとえば「〜, that」(カンマの後ろの関係代名詞that)は禁止であるとか、
先行詞にthe lastthe firstallなどが付いている時にはthatを用いなければならないとか、
whowhomwhoseの使い分けはどのようにすればよいのか、
関係代名詞の省略を見抜くにはどうしたらいいのか(the book I wantのように、モノ+人が不自然に並んでいる時には関係代名詞の省略を疑うなどの視点)といった知識系については、改めて総復習しましょう。

なお、時々、単元別に勉強しているとわからないものはないのだけれども、分野がシャッフルされると途端にわからなくなるという方がいます。

その場合、桐原の『英文法ファイナル問題集標準編』あたりで弱点を炙り出したのち、薄手の問題集で弱点分野を集中的に潰していくのがよいでしょう。薄手の問題集から始めたい方は、以下の記事もご参照ください。

知る人ぞ知る 薄くて学びのある参考書の良書(英語編)

いかがでしたでしょうか。知っていることばかりだったと思いますが、それをスムーズにいつでも引っ張り出せるように解法整理することが重要なのです。

本問はまさに上記の類型でいうところの①「関係代名詞の成立条件不存在」が狙われました。
ここで間違えてしまった方は、いま一度、基礎の徹底をしましょう。
英作文の向上にもつながります。

 

設問(23)分詞に関する基本中の基本問題です。本問もしっかり奪取したいところです。<動詞/分詞>

誤った選択肢は(b)

Sometimes players come up with their own additional rules to make playing (b)more demanded  demanding or interested interesting .

引き続き、動詞の語法を分詞という視点から問うてきています。
中学の頃、excitingexcitedの使い分けや、interestinginterestedの使い分けについては学ばれたと思います。
excitingを例に挙げると、ワクワクビームを発射する側にexcitingを、ワクワクビームの受け手にexcitedを使います。
受け手は基本的に人間がくるはずです。
サッカーの試合を例にとると、試合そのものが生き物のようにドキドキ・ワクワクするのではなく、試合を観ている人間がワクワクさせられるわけです。

まあ、うまく理解できなければ、the exciting gameというカタマリで覚えておけば良いでしょう。
本問でいえば、playingを興味深いものに(make)するわけです。
playingは人間ではありませんから、これに対してinterestingやらdemandingを使うのはおかしいと判断できなければなりません。
他の選択肢と比較するというより、一発で違和感を覚えないといけない設問が今年の4Aには多かった印象です。

 

さて、分詞がらみでは受動態が頻出です。
2020年設問(23)や、2017年設問(24)も併せてチェックしましょう。
せっかくですから、重要な鉄則をいくつかご紹介したいと思います。

東京大学は受動態に絡めて動詞の語法知識を何度か問うてきています。
実は、受動態というのは正誤問題を作る側からすると非常にありがたい文法分野なのです。

なぜなら、教授が仕掛けた罠に受験生が次々とかかってくれるからです。
逆に言えば、受動態に絡めて大学教授陣がどのような切り口で問題を作っているのか事前に知っておけば、スピーディーに誤答を見つけられるようにもなりましょう。

ここで、正誤問題における受動態関連の鉄則を4つご案内いたします。

受動態関連の鉄則4つを読む

(鉄則その1)受動態をみたら、直ちに他動詞か自動詞かを疑え。その際、能動態に戻して考えると気付きやすい。

(鉄則その2)過去形と過去分詞形が同形の動詞が来たら受動態を疑え。関係代名詞と絡めて出されることもある。

(鉄則その3)不必要な受動態に注意せよ。能動受動態やneed~ing/be worth~ingの可能性を常に頭に入れよ。

(鉄則その4)日本語では能動態のように訳すのに、英語では受動態として表現される動詞には注意せよ。

それでは、1つ1つ丁寧にみていくとしましょう。

 

(鉄則その1)受動態をみたら、直ちに他動詞か自動詞かを疑え。その際、能動態に戻して考えると気付きやすい。

作問者がなぜ受動態を好むかというと、日本人が受動態好きなのを知っているからです。
自動詞か他動詞かを意識せず、なんでもかんでも受動態にしている答案は英作文でも散見されます。
東大教授は4Aを通じて、そうした受験生に戒めを与えようとしているのかもしれません。

不安に思ったら、必ず能動態に直してみてください。
なお、allow 人 to Vという熟語がありますね。
でも、これをわざと受動態にして、本来なら、He was allowed to go there.にすべきところ、He was allowed going there.などのように熟語の形を崩してくることもあります。
ついつい受動態の方に目がいってしまい、allowの語法に目が行かなくなってしまっているわけです。

その他、laugh atのようなセットで使われる熟語にも要注意です。
受動態にするときにも前置詞を随伴させることは英作文でも意外に忘れがちです。
たとえば、He was laughed at by Tom.のようにatも必ずセットでついてくることは焦って解いていると忘れがちです。

 

(鉄則その2)過去形と過去分詞形が同形の動詞が来たら受動態を疑え。関係代名詞と絡めて出されることもある。

過去形と過去分詞形が同形の他動詞が来たら、私は常に受動態の存在を巧妙に隠そうとしているのではないかと疑います。
まず、どこをみるかというと、当該動詞の直後に目的語があるかを見定めます。
たとえば、He allowed to go there.という例文があったとしましょう。
この文は正しいですか?間違っていますか? もちろん、間違っていますね?

allowは基本的に誰々に許しを与えるという意味の他動詞ですから、上の文ではallowedの後ろに人が来ておらず、語法が崩れてしまっています。
本文をHe was allowed to go there.とすれば通じますね。

このように、本来、受動態にしなくてはいけないのに、受動態になっていないケースを正誤判定でよく見かけます。

さらには、関係代名詞に絡められると、途端にわからなくなる生徒もいます。
たとえば、I want the permission that needed to enter the room.という文があったとしましょう。
関係代名詞のthatに目がいくあまり、needの語法に目が行かなくなってしまう受験生が多くいます。
関係代名詞のthatがなければ過去分詞によるpermissionの修飾構造が文法的に成立しますので正解の文となりますが、関係代名詞thatを残すならare neededと受動態にしなくては、「permission(許可)というものが、部屋に入ることを必要としている」という文になってしまうので、訳がわからなくなってしまいます。

 

(鉄則その3)不必要な受動態に注意せよ。能動受動態やneed~ing/be worth~ingの可能性を常に頭に入れよ。

鉄則その2とは打って変わって、不必要な受動態を改めさせる正誤判定も大学入試では頻出です。
語法と関係すると言えば、それまでではありますが、せっかくなので、周辺知識をここで整理してみます。

まずは、能動受動態と呼ばれるものに注意を払いましょう。

①Her latest book has sold over a million. (彼女の最新作は100万部以上売れている)
②This razor cuts well.(このカミソリは切れ味が抜群だ)
③The article reads well.(この記事はよく書けている)

のように、無生物主語であれば必ず受動態にするわけではないのです。
こうした思い込みを受験生が持っていることを大学教授陣は予測して、他大学ではしばしば能動受動態の問題を出して来ます。
ちなみにしばしば程度の副詞を伴います。wellsteadilyなどです。

その他、need〜ingbe worth〜ingという熟語にも気をつけなければなりません。
まずは、例文から確認しましょう。

My iPad needs repairing. (私のipadは修理される必要がある)
This game is worth watching. (この試合は見る価値がある/ 見られる価値がある)

いかがでしょうか。このように、受動態を使わずとも、受動態の意味を醸し出すことができるということを意外に盲点とされている受験生がいらっしゃいます。
こうしたところを東大教授は狙ってくるわけです。プロ中のプロですので。

なお、④⑤においては、repairやwatchの目的語が主語の部分に来ていますので、間違っても、This game is worth watching it. などとしてはいけません。
これは、英作文に際しても注意を払わねばならないポイントです。
使い慣れていないフレーズをぶっつけ本番で使おうとするなと塾生には日頃申しておりますが、こうした語法のミスを犯すリスクが高いからなのです。
なお、2020年設問(24)で問われたタフ構文についても必ずチェックしておきましょう。

 

(鉄則その4)日本語では能動態のように訳すのに、英語では受動態として表現される動詞には注意せよ。

これは熟語知識といえばそれまでですが、意外に英作文でも間違える受験生が後を絶ちません。
たとえば、「2006年に生まれた」を英訳したくば、I was born in 2006.なわけですが、日本語の「生まれる」という語感につられて、I bore in 2006.としてしまう受験生がいます。
その他にも、「座る」はsitですが、seatを使うとbe seatedと受け身にしなくてはいけません。
日本語では能動態で表現される「怪我をする」は、英語なら誰かに怪我させられるというニュアンスを醸し出すためにbe injuredと受動態で表します。
「驚く」ならbe surprised at、「がっかりする」なら、be disappointed といった具合に、日本語と考え方が異なる語法を狙われると罠にはまりやすいわけです。

いかがでしたでしょうか。以上の4つの鉄則は是非頭に叩き込んでください。

設問(24)文構造からも形容詞の語法知識からも正解を導けるサービス問題です!<文構造/形容詞>

誤った選択肢は(c)

(c) They make available to※挿入 people the wisdom of accumulated experience, and they secure people (d) against the totally unexpected in social encounters.  

まずは、下線部を含む一文をチェックです。
ひとまず、カンマの前と後ろでそれぞれSVOが完結していますので、選択肢(c)の正誤を判定するにはカンマの前のゾーンだけを読めばよさそうです。

さて、本問は2つの解き方があると思います。
1つ目は、availableの語法です。
availableは「利用可能な」「入手可能な」という意味で使われるはずです。

たとえば、
Further information is available on the Internet.

さらなる情報はインターネットで入手可能です(ご覧いただけます)。

Are there any Wi-Fi services available here? (⚠︎availableの名詞との語順はよく狙われます)

ここには利用可能なWiFiサービスはありますか?
のように使います。

これらの用例からもわかるように、人を直接に修飾はしないのです(スラングでは、そうした用法もありますが、入試ではスラングの用法は登場しません)。

それゆえに、available peopleって何?と直感的に違和感を覚えて欲しいところではあります。

仮に、availableの用法を知らなかったとしても、文構造から攻め落とすこともできました。則ち、仮にavailable peopleという表現があったとして、後続のthe wisdom of accumulated experienceとの関係はどうなるのでしょうか。make [available people] [the wisdom of accumulated experience]を、make O Cという第5文型だと考えると、

「人々をwisdom(知恵)にする」という意味になるわけですが、ワケがわからないですよね。本来は、make [the wisdom of accumulated experience] available to peopleだったのを目的語が長いので後ろに置いたのでしょう。

 

ただ、時間制約の厳しい東大入試ですから、本問に関しては、available peopleの段階で違和感を覚えて誤りだと判定して欲しかったところです。

 

なお、形容詞/副詞に絡んでは、2023年設問(23)も併せてチェックするとともに、以下の鉄則も頭に叩き込みましょう。

形容詞・副詞関連の注意すべき鉄則を読む

●否定の副詞には細心の注意を払え。
hardly, scarcely, seldom, rarely, barelyといった否定の副詞は文章の流れを大きく転換するチカラがあるから見落としてはならない。
なお、その他にも、littlefew, anything but, far from, fail to, too~to, beyond~, above, free from(of), be yet to, remain to be done, the last 名詞 to Vといったように、notneverを用いてなくても否定の意味を生み出す語句にも細心の注意を払わねばならない。

●部分否定・全否定の差異に注意せよ。
not〜all…と、All〜not…では意味が違うことは4B英文和訳で注意を払わねばならない知識である。
allに限らず、necessarilyalwayseveryなど頻出表現もいくつもあるので、お手持ちの文法書や問題集などで復習をされたい。

●副詞は名詞以外を修飾できる。
この知識がよく問われるのは語順問題で、so/to/asが登場した時である。so tall a womantoo bad a storyのように、so/as/too+形容詞+冠詞+名詞の語順となる。
その他、However hard you workno matter how hard you workのようにhowhoweverが絡む時の語順にも注意を巡らしましょう。

exciting/excited型の形容詞に注意せよ。
もともとは、動詞の現在分詞と過去分詞に過ぎなかったものが、よく使われるという理由で正式に形容詞としての市民権を獲得した語句もあります。
今年の設問(23)がこのパターンでしたね。
interesting/interested, surprising/surprisedのようにいくつもありますが、意外に英作文や正誤問題でも両者の違いがわからず誤りを見逃してしまうことが多くあります。
たとえば、I was very exciting about the concert.と言われて、すぐに、excitedが正解だと言えますか。
また、I feel relaxing and happyも見た瞬間にrelaxedにしなきゃおかしいと気づけましたか?

基礎力の拡充が東大英語制覇の要だと、改めて痛感させられます。

 

設問(25) (21)(23)に引き続き、またまた動詞の語法問題!確実に正解したいところ!<動詞(代名詞)>

誤った選択肢は(c)

The insecure pile of sticks and the shaking human hands (c) trying to pick up them are both〜   

    ※ pick them upに語順変更

設問(21)(23)に引き続き、またまた動詞の語法です。
今回は、並べ替え問題では頻出の代名詞と句動詞の位置関係について問われています。
参考書によっては、「動詞+前置詞」型か「動詞+副詞」型なのかで代名詞の位置関係が変わるなどと小難しいことが書かれていますが、学校配布の問題集に載っている代表例くらいを押さえておけば十分です。

則ち、pick me up / put it on / put it off / turn it on / turn it off /check it outくらいが、一般的な問題集に載っているものだと思います。
この程度の知識があれば、本問は余裕で解けたはずです。

なお、英作文の際に、句動詞と代名詞の位置関係に自信がなくて困っているというご相談をよく受けます。
それに対して、3つのアドバイスをしていますので、ご紹介しましょう。

①敢えて代名詞を使わない。
 itやthemといった代名詞を使わず固有名詞を使えばお悩み解決です。
②句動詞を用いず、別の表現を模索する。
③用法用例に自信のある句動詞だけを使う。

以上、ご参考になれば幸いです。

 

いかがでしたでしょうか。東大4Aは、コツをつかめば、ほんのちょっとの労力で3問は確実に正解できる「おいしい」問題です。
今年度の問題で言えば、(21)(22)(23)(25)あたりは瞬時に気づいて欲しかった設問でした。
正直、しっかりと過去問分析を行っていた方であれば、満点を取ってもおかしくはないセットだったと思います。
ぜひ、敬天塾の映像授業などを通じて、ノウハウを学び取っていただき、東大英語で高得点を奪取していただければ、この上ない幸せです。

(編集後記)

なお、蛇足ではあるが、東京大学が4A正誤問題を出題し続ける理由について私見を述べたい。
昨今、センター試験が廃止され共通テストに移行したことに伴い、共通テストでは語法や文法問題が出されなくなった。
それに伴い、東大側としては、受験生の語法知識や文法知識を二次試験で問う必要性を以前にもまして強く感じているのかもしれない。

東大教養学部の内部資料で、正確な訳読の重要性や正確な構文解釈力の必要性について教授陣が寄稿していたが、これは、英語は不正確な文法知識でも堂々と話せればOKという風潮が広がっていることへの警戒感の表れのようにも思えてならない。
会話においては、こちらの表情やジェスチャーから、相手がこちらの意図を汲み取ってくれることもあるだろうが、ペーパーテストや研究論文においては、書かれているものが全てである。
稚拙な文法ミスやスペルミスを犯そうものなら、内容以前に、本文すら読まれないこともありうる。
そうした危険性を排するためにも、ちゃんと文法のお勉強もしてくださいねと東大側は入試問題を通じて受験生に訴え続けているのかもしれない。

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