2001年 東大国語 第2問(古文)『栄花物語』現代語訳と古文あるある
はじめに
こちらはぜひ、東大2001年の古文を解いてみた後にご覧ください。
2001年『栄花物語』という貴重な良質の東大過去問での演習で、学びを深める一番オススメの方法は、以下の方法です。
①解く
↓
②「古文あるある」資料を読む ※このページの最後にあります
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③解きなおす
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④現代語訳を読む
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⑤分析する
今回は特に深い古文常識を理解することで、ぐっと読みやすくなる文章です。
文脈の理解ができなかった方は、古文常識を強化することをオススメします。
なるべく本文を読んで、以下の現代語訳を読む「前」に、このページの最後にある「古文あるある」資料を読んでみましょう。
「古文あるあるがわかると、こんなにも読みやすくなるんだ!」と感じる方は、「深い」古文常識を仕入れるための多読をオススメします。
多読について、具体的な参考書等については以下の記事へ。
東大古文の読解を有利にする方法、参考書レビュー一覧&現代語訳多読本の優先順位表付
本文と現代語訳の併記
2001文『栄花物語』現代語訳
現代語訳
このようにして藤原公任殿は、娘の死の後は、全てのことをすっかり疎みなさって、しみじみと御仏道修行にて(日々を)過ごしなさる。法師と同じ状態の御様子であるけれども、「これを思えばつまらないことである。一日であっても出家の功徳は、世の中で優れてめでたいものだというけれども、今からしばらく経てば、孫娘生子が東宮妃となる事などが出てきて、一層俗世を見捨てがたく、(孫娘生子は)どうしようもない出家の御障害でいらっしゃるだろう。そうであるならば、今の時期が(出家するには)良い時期だ」と決意しなさって、人に知られないように(出家前に対応)すべき領地の地券などを見て処置をして、公任の所有する荘園の管理人達を呼び寄せなさって、荘園の処置に関する必要なことを仰るなどして、「やはり今年(中に出家しよう)」とお思いになるけれども、女御〔公任の姉妹で、花山院女御の諟子〕のことが、やはり密かにしみじみと気の毒で心細いと自然とお思いになって、「人の心というものはたいそうどうしようもないものである。どうして女御のことを自然と思い出すのだろうか」と、たいそう自分(の心)ながらも残念にお思いになるにちがいない。「何事があるだろうか。いや、何も気にすることはないだろう」と思いめぐらしつつ、人知れず御心を独りで迷わせなさるのも、たいそう気の毒である。この公任に出家の御意志があるということは、女御殿もご存じであるけれども、「いつ出家するか」ということは、ご存じではない。
このようなときに、シイの木の実を(ある)人が(公任の元に)持ってきて参上したので、(公任は)女御殿の方へ献上(させ)なさった。(シイの木の実が入っていた)御箱の蓋を返却し申し上げなさるといって、女御殿(の歌)、
生きていながら別れるよりは、かえって私は亡くなってしまっている木の実のようなこの身でありたい。
と申し上げなさったところ、大納言の御返歌は、
奥山の椎のもとを訪ねてくるならば、木に残る木の実のように、この世に留まるこの身を知らないだろうか、いや知るだろう(から、会えるよ)。
女御殿、たいそうしみじみと悲しいことだとお思いになる。
もっと深く学びたい方向け
以下の映像授業にございます。よろしければご利用ください。
【東大古文 古文あるある編】(2001年文『栄花物語』・2006年『堤中納言物語』解説付き)
古文あるある(出家編と2001年『栄花物語』関連)
以下、2001年『栄花物語』の問題と解答用紙、
そして4ページの「古文あるある」資料です。
古文あるあるの箇条書きの他、百人一首や『源氏物語』での実例も紹介しています。
特に『源氏物語』は影響力が大きい作品なので、源氏亜流物語と呼ばれる作品もあります。
2022年東大で出題された『浜松中納言物語』もその一つ。
源氏物語での「古文あるある」を理解しておくと、源氏亜流物語を始めとした、源氏物語の影響を受けた多くの作品で、「こういう場面では、こうなりがちだよね」という推測が出来て、文脈を把握しやすくなりますよ☆彡