教科書や問題集では学べない、背理法の正しい使い方

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この記事は、前回のこちらの記事「背理法と対偶命題の証明法は、どのように使い分けるのか」の続きです。

まだ御覧になっていない方は、リンク先を読んでから、こちらの記事をご覧ください。

前回の記事の復習

前回は、背理法と対偶命題の証明法の使い分けについて書きました。
命題には2種類あって、それが断定型と推論型。
否定をしたい場合、断定型の証明には背理法を使い、推論型の証明には対偶命題を使うという話でした。

これで完結したら簡単なのですが、そうもいきません。
推論型なのに背理法を使う解法が、教科書や問題集にはよく載っています。
しかもその説明が不十分で、誤魔化さず書かれている参考書に出会ったことがありません。

なぜ、推論型なのに対偶命題ではなくて、背理法を使うのか。
推論型の命題に対して、背理法を使う方法はどういうものなのか。
今日は、この疑問を解消していきましょう。

推論型の命題でも、否定が出来る。

まずは、背理法の時に行う、否定の仕方について話すことからです。
教科書では「条件pに対し、pでないことを否定という」と書かれています。
当然ですが、この定義gは断定型の「pである」という命題に対してしか使えません。

しかし、実は推論型の命題にも背理法を使う方法があるのです。
推論型の命題とは「pである ならば qである」という形の命題です。
記号でかくなら「p⇒q」となります。(矢印は“ならば”の意味です)

“ならば”を含む命題に背理法(否定して矛盾を示す)ってどういうこと????
って思うかもしれませんが、背理法の使い方が登場するのです。

今回は難しいことは省いて、使い方だけ簡単にご紹介しますが、
「pならばq」に背理法を使うと、「p かつ qでない となる要素が存在すると仮定し、矛盾を示す」となります。
これさえ覚えていれば、大学受験の背理法の使い方は十分でしょう。

 

これを理解するには、ベン図を描くと分かりやすいでしょう。

こちらをご覧ください。

左が推論型の命題が真の状態です。

「pならばq」が真の場合、pが完全にqの内側にあります。

これに背理法を使うと、どうなるかというと、右側のように

「qの外側にもpの要素が存在する」つまり、「pかつqでない」要素が存在すると仮定するのです。」

つまり推論型の背理法は、
「p かつ qでない」という要素を仮定して、矛盾を示す技術だとまとめることができます。

例題を使って理解しよう

最後に、前回の記事で紹介した問題の解説をして終わりましょう。

まずは、問題のおさらいから。

Q「aとbを有理数とする。
a+b√2=0ならば、a=b=0であることを証明せよ。」

という問題です。(これは、「無理数の相当」の問題です。)

そして、解答の一行目を読むと
「b≠0と仮定する。」
と書かれています。

問題自体は推論型なのですが、背理法を使って証明しています。
ということで、確かに今日の記事のテーマに沿っていますね。

単純に否定しているわけではない

しかしながら、1行目で
「b≠0と仮定する。」
というところが非常に怪しいです。

なぜなら、
元々の命題の示すべき結論が「a=b=0である」ことですから、これを否定したら
「a≠0 または b≠0」となるはずだからです。

ということで、やはり教科書に載っている方法で書かれている解説ではありません。

では、この1行目は、どのような思考プロセスから書かれているものなのでしょうか?

実は、省略されている論理がある

この問題の解説が厄介なのは、省略されている部分があるからです。この省略部分を知らないと、恐らく絶対に読み解けないのではないでしょうか。

こういうのを知ると、教科書や参考書って、受験生に親切に書かれているわけではないって、つくづく感じますよね。

では、省略部分をおぎなっていきましょう。

 

問題文では、「a+b√2=0 ならば a=0かつb=0」を示せとなっていました。

そして、解説の1行目では「b≠0と仮定する」となっていました。

この間に、

「a+b√2=0 ならば b=0」を示せば、自動的にa=0も示せる。よって、

「a+b√2=0 ならば b=0」を示せばよい。

という省略があるのです。

これによって、本来

「a+b√2=0 ならば a=0かつb=0」

を示す問題だったのですが、ゴールを単純にして、

「a+b√2=0 ならば b=0」

と言い換えているのです。

これに、さきほど説明した「推論型に背理法を使う方法」を適用すると

「a+b√2=0 かつ b≠0 となる要素が存在すると仮定する」という1行目が書けるのです。

よく見ると一応書いてある。

先ほどの画像を見ると、実はしれっと書いてありました。ご覧ください。

 

書いてあると言えば書いてありますが、こんなの教科書で習う内容ではないですし、なぜ否定するとそのようになるかの理由や証明が書いていません。

余談ですが、参考書もテキトーだなと思いますね。

あは、参考書通りです。

上の画像の通りに証明してもらえれば良いと思います。

まとめ

これで、背理法と対偶命題の使い分けについての疑問が解消されたのではないでしょうか?

まとめると、

この2枚の画像を使えれば十分でしょう。

皆さんの勉強の参考にしてください。

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教科書や問題集では学べない、背理法の正しい使い方” に対して5件のコメントがあります。

  1. しいな より:

    今まで自分でも色々調べてみて、結局条件付き命題においての背理法と対偶法の違いが具体的に分からず、もやもやしていたのですが、自分の知りたいことがピンポイントで書かれていて、感動しました!!
    本当にありがとうございます!

  2. 敬天塾塾長 より:

    嬉しいコメントありがとうございます。
    細かい話って、載ってないんですよね。どうぞ勉強頑張ってくださいね。

  3. サマータイム吉田 より:

    このサイトに助けられました。ありがとうございます。

  4. 名無しの権兵衛 より:

    めちゃめちゃわかりやすいのですが、ベン図のところがわかりません。

    1. 平井 より:

      コメントありがとうございます!
      ベン図の画像を挿入してみましたが、いかがでしょうか?
      また分からなかったら、お気軽にご質問下さい!

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