2025年(令和7年) 共通テスト本試 国語第4問 古文『在明の別』・『源氏物語』(若菜下)現代語訳

現代語訳を作成しました。

漢文(『論語』・皆川淇園『論語繹解』・田中履堂『学資談』)現代語訳はこちら

(それにしても『源氏物語』からの出題で、2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」ファンの皆さまは大喜びだったと思います♪)

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【文章Ⅰ】『在明の別』(ありあけのわかれ)

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現代語訳

 比叡山暦寺の座主(=最高位にある僧)が慌てて参上なさった。(座主を大君の)枕元に招き入れ申し上げて、右大臣は両手を擦り合わせ、(まるで)仏に物申すように、「どうか、もう一度、(この娘と)目を合わせ(られるように生き返らせて)下さい。たくさんおります(私の子供の)中でも、どのような前世からの因縁があったのか、幼いころから比類なく愛しく思ってきました、子を思うあまりに分別を失う親心の心の闇が、全く取り除かれません」と、ひどく涙を流しなさると、(座主は)とても静かに数珠を押しもみなさって、「令百由旬内、無諸衰患(周囲から衰え患いをなくす)」と(『法華経』の一節を)読みなさる御声は、遠くまで昇って澄み渡る感じがするなか、(死にそうに)変わっていく(大君の)顔の様子が、少し回復して、目を少し開けなさった。
(周りの者は)全員、かえって慌てふためく様子で、「誦経をせよ、何々をせよ」とうろたえなさるけれども、やはり(大君は)意識がある人のようにも見えず、容貌も変わり果ててしまったようで、本来の大君のようにも見えなさらない。
とても艶があって華やかな感じがするけれども、激しい嫉妬でつらそうな目もとの様子に、左大臣はそのように(大君が憑依しているの)も分かっていらっしゃらず、(父である)右大臣が、とても不思議に(感じて)「意外な人〔=自分の妹、大君〕にも似ていらっしゃるなあ」と理解しがたくお思いになっていると、(大君が)少し身動きをして
  さまざまに明け暮れ胸を痛める嫉妬の恨みを、どの姫君に(ぶつけて)少しの間、晴らした(らよい)ものだろうか
と仰る様子は、少しもその大君の様子ではなく、(妹である女君の様子と)間違うはずもないのを、右大臣だけが、繰り返し「不思議だ」と首を傾げなさる。

 さて、(大君は)正気ではいらっしゃらないので、また亡くなりそうになりながら、全く(この世に)留まりそうでもいらっしゃらないのに、(座主が)「今は(大君の体調は)そんなにお悪くはないだろう」と(周りの者を)静かに落ち着けながら、とてもかれた声(での読経)はやめて、薬師如来の力によって病気を治す呪文を繰り返し読みなさると、もののけは(大君から離されて)現れて、小さな童に乗り移らせられた。(童が)大声を出して叫び続ける声に、(大君は)やっと正気に戻ったのだろうか、(周りの)人々が見守り申し上げるのを「気恥ずかしい」とお思いになって、御衣をかぶって顔を隠しなさる。

【文章Ⅱ】『源氏物語』若菜下

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現代語訳

 光源氏も、「どうか、もう一度、(私と)目を合わせなさってください。ひどくあっけなく臨終になってしまう時をさえ、目を合すことができずに終わってしまうことは、悔しく悲しいので」と途方に暮れなさる様子が、(紫の上に先立たれたら、この世に)留まりなさるはずもない様子であるのを拝見する(周りの者たちの)気持ちは、容易く想像できるだろう。甚だしい(妻への想いに溢れる)心の中を仏も御覧になられるのだろうか、数ヶ月間まったく現れ出なかった物の怪が、小さい童に乗り移って大声を出して叫び続けるうちに、だんだんと(紫の上は)生き返りなさるので、光源氏は嬉しくも不吉にも思って動揺なさる。

 (物の怪である六条御息所は)祈祷によってすっかり(紫の上の身体から)退散されて、(童の身体で)「(光源氏以外の)人は皆去ってしまえ。光源氏お一人の御耳に申し上げよう。私を、この数ヶ月、調伏して苦しめなさるのが、薄情でつらいので、同じことなら(この苦しみを紫の上に)に痛感なさるようにしようと思ったけれども、そうはいっても(光源氏が)命が耐えられそうにないほど身を粉にして途方に暮れていらっしゃるのを拝見すると、今でこそ、このような酷い(もののけの)姿をしているけれども、昔の恋心が残っているからこそ、こうまでして参上したのだから、(あなたの)気の毒そうな様子を見捨てることができないで、とうとう姿を現わしてしまった次第です。『決して(正体を)知られるまい』と思っていたのに」と言って、髪を振り乱して泣く様子は、まさしく、以前にも御覧になった物の怪の様子だと見えた。

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余談①

『在明の月』と同じく姫君が男装する話として、『とりかえばや物語』があります。

この『とりかえばや物語』をモチーフにした『ざ・ちぇんじ!』というマンガが超絶オススメです!!
原作が氷室冴子さん、絵が山内直実さん。
(氷室冴子さんはジブリ映画「海がきこえる」の原作者)

この記事の筆者が古文にドハマりしたキッカケとなった『なんて素敵にジャパネスク』と同じコンビが作っています♡

推し活として、どうしてもご紹介したくて書かせていただきました。

余談②

『源氏物語』をマンガにした『あさきゆめみし』でこの場面を読み返してみたい!という方もいらっしゃるかと思います。

全7巻の文庫本だと、第4巻のP393~でした!

ちなみに死後に六条御息所が出てきてしまうきっかけとなった、光源氏が紫の上にかつての六条御息所の話をしてしまった場面はP356でした。

改めて読み返すと、「源氏の君!それ、言っちゃダメー!」って止めたくなりますw

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