2025年(令和7年) 共通テスト本試 国語第5問 漢文『論語』・皆川淇園『論語繹解』・田中履堂『学資談』現代語訳と一部解説
古文(『在明の別』・『源氏物語』(若菜下))の現代語訳はこちら
現代語訳を作成しました。なるべく共通テストの設問の選択肢の表現に合わせつつ、わかりやすいように(括弧)で補足した訳にしています。
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目次
【文章Ⅰ】『論語』・皆川淇園『論語繹解』
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R7(2025)年本試 漢文『論語』『論語繹解』_現代語訳現代語訳
(孔子)先生が言うことには、「子貢よ。あなたは私について、多くのことを学んで知識が多い者だと思っているか。」
(子貢が)答えることには、「そうです。ちがうのですか。」
孔子先生が言うことには、「ちがいます。私は一つのことで貫いているのです」。
孔子はおそらく、日頃、子貢が孔子を褒め称える言葉を聞くにあたって、多くの(儒教の)古典を学び、その上また、その内容をよく覚え、それによって人格を完成させることができた者だと考えているふしが見受けられたのだろう。
それで、孔子は子貢の考えを推し量って言おうとして、このようなことを尋ねたのだ。
「(孔子が)『ちがいます。私は一つのことで貫いているのです』と言ったのは、趣旨としては、学問の習得方法は、多くの知識を貪って博識となる努力をして、雑然とまとまりのない状態になり、(知識に惑わされて)叡智を暗愚にするべきではない。
ただ一つの基軸となる要点を把握してそれを重視して貫くだけにするべきだ。
【文章Ⅱ】田中履堂『学資談』
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R7(2025)年本試 漢文『学資談』_現代語訳現代語訳
故(皆川)淇園先生がつねづね、書物を読むうえ(で大切だと)仰っていたのは、「日々数ページの文章をただ読み通すよりも、日々数文字の漢字の意味や用法を理解していくほうがよい。これは遠回りのようで、かえって非常に早道である」と。
私がそれにもとづいて、さらに加えて言うのは「多くの書物に大ざっぱに目を通す乱読よりも、一冊の書物を隅々まで深く理解する(読み方の)ほうがよい。
これ〔=一冊の精読〕は(一見、視野が)狭くなりそうで、これもまた、実は博識になれる」と。
世の中で多くの書物を読む者を博学とみなして、見かける度にいつも敬いあこがれる(風潮がある)。
(しかし)これ〔=多読する人〕は多くの知識があるだけで、博学だとは言えない。
博学とは、精通・熟達していないことが無いという意味であって、一冊の本を詳しく知り尽くす者もまた、博学だと称えることができる。
問4・5の解説
生徒から質問があった設問について、解説を載せておきます。
問4 傍線部Cの白文「博者莫所不通達之謂」の書き下し
白文の書き下し問題は「重要句形」「重要語彙」を探して消去していくことが多いのですが、今回は文脈判断で消去する問題した!
・「通達」は文脈から、現代日本語でよく使われる「通知・伝達」の意味ではなく、「精通・熟達(ある物事に深く通じていること)」の意味です。
・「謂」の解釈が①②は「意味」という名詞、③④「言う」という動詞でした。
・「謂」は複合語「何(なんノ)謂也(いヒゾヤ)」(どういう意味か。)のように、「意味」という意味で使われることもよくある語です。
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・それぞれを訳すと以下の通り。
①博は通達せざる所の謂(いひ)莫く
直訳:博は通達しないことという意味は無く
②博は通達せざる所莫きの謂にして
直訳:博は通達しないことが無いという意味で
③博は通達の謂はざる所莫く
直訳:博は通達の言わないことは無く
④博は通達を之れ謂はざる所莫くして
直訳:博は通達を言わないことを無いようにして
・これらの訳を読んでもらうとわかるように、③④の「言う」は意味不明ですね。
「意味」で訳している①と②については、②の方が文脈に合いますよね。
直前:これ〔=多読〕は多くの知識があるだけで、博(学)ということはできない。
直後:一冊の本を詳しく知り尽くす者もまた、博(学)だと称えることができる。
問5 「また」の用法
①これはまたとない絶好のチャンスだ。
→再び、二度目(反復の「復」)
②校長または教頭が説明に来るはずだ。
→or(あるいは)
③勝負では、運もまた実力のうちである。
→also(~も同様に)
④友であり、そのうえまたライバルである。
→添加(その上)
・二重傍線部a「又」は子貢が孔子を褒めている内容で、「多くの儒教の古典を学び、その上また、その内容をよく覚えることができ、」と言ってるので「その上」の意味の④。
・二重傍線部b「亦」は「これ〔=一冊の精読〕は(一見、視野が)狭くなりそうで、これもまた、実は博識になれる」なので、③。
なお、「亦」は通称「モまた」。
漢文では「~モ亦」という形で出ることが多いです。
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【龐雑冗乱にして、反つて其の智を闇くすべからず。】の現代語訳が間違っていると思います。ご確認お願いいたします。
ご指摘ありがとうございます。赤字のテキストボックスをコピー&ペーストしたままで、内容を書き換えそびれていました。修正しました。
訳の文章としてはまだまだ拙いかと存じますが、どうぞご容赦ください。