2015年 東大国語 第2問(古文)『夜の寝覚』解答(答案例)・解説・現代語訳
目次
- はじめに
- 解答例(答案例)とプチアドバイス
- (一)傍線部ア・イ・カを現代語訳せよ。【各1行】
- ア ありしにもあらずうき世にすむ月の
- イ 入道殿の、仏の御前におはしけるに、聞きたまひて、「あはれに、言ふにもあまる御琴の音かな」と、うつくしきに、聞きあまりて、イ行ひさして
- カ 推しはかりごとにさへ止めがたきを、対の君カいと心ぐるしく見たてまつりて、
- (二)「つらけれど思ひやるかな」(傍線部ウ)を、必要な言葉を補って現代語訳せよ。【1行】
- (三)「なかなかいろいろならむよりもをかしく」(傍線部エ)とはどういうことか、説明せよ。【1行】
- (四)「雪ふるさとはなほぞこひしき」(傍線部オ) とあるが、それはなぜか、説明せよ。【1行】
- (五)「よろづ思ひいれず顔にもてなし」(傍線部キ)とは対の君のどのような態度か、説明せよ。【1行】
- 本文と現代語訳の併記(JPEG)
- 本文と現代語訳の併記(PDF)
- 現代語訳
はじめに
和歌の現代語訳が求められています。
和歌の対策として挑戦してみてください!
解答例(答案例)とプチアドバイス
(一)傍線部ア・イ・カを現代語訳せよ。【各1行】
ア ありしにもあらずうき世にすむ月の
答案例:以前の状況とも違って
プチアドバイス:「ありし」は連体形なので、「状況〔境遇〕」などの補足をしたいですね。また、「あらず」の「ず」は連用形なので、「~違う」という風に終止形や連体形の訳にするのはNGです。
イ 入道殿の、仏の御前におはしけるに、聞きたまひて、「あはれに、言ふにもあまる御琴の音かな」と、うつくしきに、聞きあまりて、イ行ひさして
答案例:仏道修行を途中でやめて
プチアドバイス:東大古文では接尾語・補助動詞もしっかり押さえておきましょう!
※映像授業【東大古文 古文単語編】(オリジナル確認テスト付)に「接尾語・補助動詞」のまとめプリントも付けております。よろしければ、どうぞ。
カ 推しはかりごとにさへ止めがたきを、対の君カいと心ぐるしく見たてまつりて、
答案例:とても気の毒に見申し上げて
プチアドバイス:「心ぐるし」の主な訳は<❶つらい ❷気の毒だ>。
自分が不幸であることに目を向ける場合→❶つらい
他者が不幸であることに目を向ける場合→❷気の毒
※現代語のような「申し訳ない・気が咎める」という意味は無いです。
(二)「つらけれど思ひやるかな」(傍線部ウ)を、必要な言葉を補って現代語訳せよ。【1行】
答案例:あなたは私に冷淡だけれども、私はあなたに思いを馳せることだなあ。
プチアドバイス:条件付き現代語訳問題では「誰が」「誰を(誰に)」の補足をまず考えましょう!
(三)「なかなかいろいろならむよりもをかしく」(傍線部エ)とはどういうことか、説明せよ。【1行】
答案例:白い衣の重ね着は、様々な色の重ね着よりもかえって趣深いということ。
プチアドバイス:「なかなか」の訳は東大頻出です!
「A(なら普通はB)だけど、逆にnotB」という論理になる語です。
「普通はB」の部分が省略されがちなので、自分で考えましょうね!
※こういった「論理ワード」を習熟したい方は、映像授業【東大古文 読解法編】をどうぞ。
(四)「雪ふるさとはなほぞこひしき」(傍線部オ) とあるが、それはなぜか、説明せよ。【1行】
答案例:雪山を作らせて姉と見たことを思い出し、都にいる姉を懐かしく感じたから。
プチアドバイス:直前の「ひととせ、かやうなりしに、大納言の上と端ちかくて、雪山つくらせて見しほどなど、思しいづるに、」に注目しましょう。
(五)「よろづ思ひいれず顔にもてなし」(傍線部キ)とは対の君のどのような態度か、説明せよ。【1行】
答案例:女君を元気づけるために、敢えて全く深く思いつめていないふりをする態度。
プチアドバイス:「なぐさめたてまつる」に合うように書きましょう。「女君の悲しみ〔悲嘆〕を深めまいと」などでもOKです。
本文と現代語訳の併記(JPEG)




本文と現代語訳の併記(PDF)
2015年『夜の寝覚』現代語訳_敬天塾現代語訳
そうはいってもやはり、(月の名所)姨捨山(のように風情のある広沢)の月は(私の心を慰めかねるが)、夜が更けるにつれて清らかな明るさが増すのを、(女君は)素晴らしい(とお思いになり)、しみじみと屋内からご覧になって、すっかりもの思いにふけなさる。
以前(の境遇)とも違って、(私は)つらいこの世に住んでいる。(しかし、)澄んでいる月の光は(以前に)見たのと比べて、変わらないなあ。
(女君は)久しくそのままで、手を触れなさらなかった筝の琴を引き寄せなさって、弾き鳴らしなさると、場所柄からしみじみとした情趣がまさり、松風もとても(素晴らしく琴と)合わせて吹いているので、その気にさせられて、自然としみじみと心動くようにお思いになるのにまかせて、「(この演奏を)聞く人もいないだろう」とお思いになると安心して、琴の弾き方(の手法)を出し尽くして弾きなさっていると、(父)入道殿が、仏壇の前にいらっしゃったときに、(女君の演奏を)聞きなさって「しみじみと心を動かされる、言葉では言い尽くせない(ほど美しい)女君の琴の音色だなあ」と、美しさに、(その場で)聞いて(いるだけではいられないほど)度が過ぎて、仏道修行を途中でやめて(女君の元に)お越しになったので、(女君が)演奏を止めてしまいなさったのを、(入道は女君に)「まだ(止めずに)お弾きください。念仏を唱えておりますと、『極楽浄土への迎えが近いのか』と(不安で)胸がどきどきして、捜し求めて参上したのだよ」と言って、少将〔=女君の乳母の娘〕に和琴をお与えになり、琴の合奏などをなさって管絃の遊びをなさるうちに、あっけなくも夜も明けてしまった。このように繰り返し心を慰めて、日々を過ごしなさる。
いつもよりも時雨が降って夜が明けた早朝に、男君から、
(あなたは私に)冷淡だけれども、(私はあなたに)思いを馳せることだなあ。山里の夜中の時雨の音はどのようかと思って。
雪で辺りが暗くなっている日、(良い)思い出がない故郷〔=都〕の空までも、(雪で)閉じている気がして、そうはいってもやはり不安なので、縁側近くに膝行して出てきて、白い御衣をたくさん(重ね着していて)、様々(な色の重ね着)よりもかえって趣深く、ことさら心惹かれる感じにお召しになって、もの思いにふけってお暮しになる。昨年、このように(大雪に)なった時に、(姉である)大納言の上と縁側近くで、雪山を造らせて(一緒に)見た時のことなどを、思い出すと、いつもよりもこぼれる涙を、可愛らしい様子で拭って隠して、
「(都に良い)思い出はないだろうに、嵐山(の近くの広沢)で(も)気持ちは晴れないで、雪が降る故郷の都は、やはり恋しい。
(姉は)私をこのようにも思い出しなされないでしょうよ」と、推測することにまでも(涙を)止めるのが難しい(様子な)のを、(女君の母親代わりの)対の君はとても気の毒に見申し上げて、「つらい(状態で)、今までもの思いにふけっていらっしゃるなあ。女君の前に皆さん、参上なさってください」など、(女君を元気づけるために、)何事につけても深刻に考えない様子に振舞って、慰め申し上げる。
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