2018年東大世界史(第二問)入試問題の解答(答案例)と解説
目次
設問別の答案例や解説
問1(a) 仏教とジャイナ教の共通点
解答例
解答例①
祭式至上主義を批判、ヴェーダ文献の権威を認めず、カースト制度も批判して身分に関係なく救済されると説いた。また、現世の苦悩や輪廻からの解脱を修行で目指し、王侯や商人の支持を得た。
解答例②
バラモン教の祭式やヴェーダ聖典の権威を否定する他、バラモンを最高位とするヴァルナ制を否定し身分に関係なく救済されると説き、現世の苦悩や輪廻からの解脱を修行で目指した点が共通する。
解答例③
バラモン教の祭式やヴェーダ聖典の権威を否定する他、バラモンを最高位とするヴァルナ制を否定し身分に関係なく修行で現世の苦悩や輪廻から解脱でき救済されると説いて新興階層に支持された点。
問題の要求
この問題では、「仏教とジャイナ教に共通する特徴」について述べることが求められている。
まず、問題を見た瞬間にどう思うだろうか?「よしっ、宗教について出てきたぞ」と喜ぶ人もいれば、「うわ、宗教の詳しい中身までは知らないよ」と落ち込む人もいるだろう。どちらかと言えば、後者の方が多いような気がする。宗教の内容に関しては、一問一答で問われるような用語については知っていても、それを論述で使えるレベルまで昇華できていない人も多いはずだ。まして、それを比較することなど至難の業だろう。この問題に関しては、宗教について詳しく説明できる人は最初に解き、この問題を解くための知識が不十分な人は最後に時間があったら一言でも答案に書いておくというのが基本的な戦略になるのではないか。
解説
まずは、仏教とジャイナ教の内容についてそれぞれ見たうえで、両者を比較して共通点を取り出していきたい。
仏教は、紀元前5世紀に、ガウタマ=シッダールタが業、輪廻、解脱の考えを深めて成立したもので、生老病死という人生の苦から離脱する正しい認識の方法(四諦)と正しい実践の方法(八正道)を説いた。祭式至上主義を批判し、ヴェーダ文献の権威を認めず、極端な苦行を否定して中道を説き、王侯や商人に支持された。また、カースト制度を批判し、身分に関係なく救済されるとして、現世の苦悩や輪廻からの解脱を修行で目指した。
ジャイナ教は、仏教成立とほぼ同時期にヴァルダマーナが創始し、禁欲と苦行、徹底的な不殺生により解脱を得られるとした。こちらも祭式至上主義やヴェーダの権威を否定し、王侯や商人の支持を得た。仏教に同じく、カースト制度を批判し、身分に関係なく救済されるとして、現世の苦悩や輪廻からの解脱を修行で目指した。
これら2つの宗教の共通点としては、祭式至上主義を批判し、ヴェーダ文献の権威を認めなかったこと、カースト制度も批判し、身分に関係なく救済されるとしたこと、現世の苦悩や輪廻からの解脱を修行で目指したこと、王侯や商人の支持を得たことなどが挙げられる。これらをまとめればよい。
まとめ
はっきり言って、この問題で高得点を取るのは至難の業ではないかと感じた。まず、仏教とジャイナ教についてその背景も含めて正確に理解しておく必要があり、なおかつ2つの宗教を比較して頭に入れておく必要がある。なかなかこの2つの宗教を対比して頭に入れているという人もいないだろう。2つの宗教の正確な知識さえ頭に入れておけば、試験会場でその場で比較くらいできるだろうという人もいるかもしれない。しかし、入試というのはそれほど甘くない。試験会場では普段以上に時間の足りなさや緊張感に襲われることになる。たとえその場で比較することができたとしても、時間を大量に消費してしまい、第一問の大論述や第二問の他の中論述に割く時間がなくなってしまい、戦略的に失敗してしまうのがオチだろう。この失敗は、その後の科目(英語)にもしっかりと響いてくる。
世界史に関して言えば、事前準備によって、試験会場で使う思考プロセスをできる限り減らしておくことが重要になる(たとえば、今回の話で言えば、知識を習得している段階で仏教とジャイナ教を対比して頭に入れておくなど)。試験で問われそうな比較などは事前に自分で対策プリントを作るなどして、比較した後の状態で頭に入れておいた方がよい。本番で平常時のように冷静に考えることは、長考を要するものほどほぼ不可能である。本番での頭の使い方は、知識を引き出すことのみに留めておけるようにした方が普段通りの実力を試験で発揮できる可能性が高くなるだろう。
話は戻るが、この問題は、予想問題などで事前に出会ったことがない限り、試験時間内で高得点を狙えるような答案を作るのは困難であるため、最初に短い時間で1点でも稼げるような答案を作っておくか、それとも後回しにして残った時間を使ってできる限り完成度の高い答案を作り上げるのが最善策になるだろう。
問1(b) インドの従来の宗教における改革から生まれた哲学
解答
ウパニシャッド哲学
問題の要求
この問題では、「仏教やジャイナ教などの新宗教が出現する一方で、従来の宗教で出てきた改革の動きから生まれた哲学」が何かについて答えることが求められている。
この問題は一問一答である。確実に正解して、点を稼いでおきたい問題である。教科書はもちろん、山川の一問一答など市販の問題集や参考書にも載っているため、東大受験生ならば誰もが聞いたことのある用語であろう。この問題を落としているようでは、東大合格は遠のいてしまう。定義が曖昧な語句を教科書の索引も活用して、早い段階から炙り出そう。さらには、日頃から書き間違えそうな用語は書く練習をしておくことが重要である。見てわかるのと、答案に書くのは別の話だからである。
解説
従来の宗教が腐敗するなどして人々の不満が高まってくると、新たな宗教が生まれてくる。そうすると、従来の宗教も存続のために改革せざるを得なくなり、新たな考え方や教義が生まれてくる。世界史上での主な事例としては、16世紀におけるヨーロッパでの宗教改革が挙げられよう。今回の場合、この「新たな考え方」はウパニシャッド哲学にあたる。ウパニシャッド哲学とは、バラモン教が祭式至上主義をとり、形式主義的になったことに対する批判をし、内面的な思索を重視したものである。宇宙の根源であるブラフマンと人間の本質であるアートマンが同一であると認識することで、解脱に達することができると説いた。
まとめ
上でも述べたが、基本的な用語の理解が問われているだけの問題である。確かに、「ウパニシャッド哲学」という用語は、数ある世界史の用語の中でも意味の理解がしにくいものではある。しかし、そういう用語だからこそ問われるというのもある。自分で説明できそうにないと感じるような用語の理解をしっかりと深めておくことが短答問題の対策になるといえるだろう。もちろん、この問題がすんなりと解けるに越したことはないが、現時点で解けなかった人も悲観することなく、自分がこの問題を解けなかった原因(おそらく、勉強法か勉強量の少なさ)を細かく突き止めて、努力を続けてほしい。
問1(c) 大乗仏教の特徴
解答例
ブッダを信仰の対象とした。衆生の救済を重視し、在家・出家を問わず、みずからを犠牲にして他人につくすこと、諸仏・諸菩薩を拝することによって人は救済されると説いた。
問題の要求
この問題では、「大乗仏教の特徴」について述べることが求められている。
非常に単純な問題である。極端な話、教科書の該当箇所の記述を指定字数でまとめあげれば、合格答案になるだろう。東大に合格するだけの実力を持った受験生ならば、確実に満点近くとってくるはずだ。相手に伝わりやすい日本語で、しっかりと要素を詰め込んで、完成度の高い答案に短時間で仕上げたい問題である。
解説
大乗仏教は、ブッダを信仰の対象とし、衆生の救済を重視して、出家していても在家のままであっても信者が救済されると説いた。ここで、教科書ごとの記述を見比べてみたい。
東京書籍 世界史B
衆生の救済を重視し、悟りや知恵を求める修行者を広く菩薩として信仰する大乗仏教がおこった。2世紀ごろ、ナーガールジュナ(竜樹)がその教理を体系化した。
帝国書院 世界史B
これに対して大乗仏教は在家・出家を問わず、すべての者がブッダと同じ悟りを得られると説いた。
山川 新世界史B
紀元前後になると、それまでの修行者に対する仏教を革新する運動として、大乗仏教がおこった。この運動をおこした人々は、みずからを犠牲にして他人につくすこと、諸仏・諸菩薩を拝することによって人は聖俗に関係なく救われると説いた。
このように、教科書ごとに記述内容の差がある。ただの用語の内容説明でもこれほどの差があるのだ。指定字数が90字以内であることから、これらの教科書の内容を全て使ってまとめ上げなければ、十分な字数を稼ぐことはできないだろう。複数の教科書を用いて、横断的に学習することが求められる。
ポイントとしては、「在家・出家を問わず、信者が救済されること」「みずからを犠牲にして他人につくすこと、諸仏・諸菩薩を拝することによって人は聖俗に関係なく救われること」「衆生の救済を重視したこと」「ブッダを信仰の対象としたこと」が挙げられる。ここから字数に合わせてうまく組み合わせていけばよい。
まとめ
上にて東大に合格するレベルの受験生なら満点近くとってくるだろうと述べたが、そうは言うものの、問われている内容が基本的なことであるだけであって、満点近い点数を取ることが容易なわけではない。この問題から複数の出版社の教科書を使って勉強することの大切さを感じ取ってほしい。
問2(a) 北魏の都と石窟の名前と地図上の場所
解答例
平城、雲崗石窟、B
問題の要求
この問題では、「北魏の孝文帝が遷都する前の北魏の都とその近くの石窟の名前と地図上の場所」を答えることが求められている。
一見単純な問題に見えるが、その時代に関連するいくつかの石窟の中から適切なものを選び、さらにその場所についても正しく選ぶ必要がある。完答するのが難しい問題と言える。石窟の場所はともかく、都の場所をわかっていないと完答は厳しい。地図を用いた世界史学習の重要性がはっきりとわかる。
解説
世界史を勉強していて、北魏が存在していた時代に出てくる石窟といえば、3つほど思い浮かぶだろう。敦煌・雲崗・竜門の3つである。敦煌では、4〜14世紀にかけて多くの石窟寺院が建設され、たくさんの仏画や仏像が残っている。場所としては、西域に位置する。雲崗は、5世紀後半に平城の近くに作られた石窟寺院である。北魏の太武帝の廃仏の後に、次の皇帝が仏教を再興させ、孝文帝の洛陽遷都までの間、建設が続けられた。インドの影響を強く受けている。竜門は、北魏の孝文帝が洛陽に遷都した頃に建設が始まり、唐代まで建設が続けられた。中国独自の様式が見られた。これらの情報をもとに、「北魏の太武帝がおこなった仏教に対する弾圧の後に、都の近くに造られた石窟」という問題文が与えてくれているヒントから、答えは雲崗であることがわかる。もちろん、都は平城であり、地図上での場所はBが該当する。ちなみに、Aは敦煌、Cは竜門である。
まとめ
この問題は、中国の有名な3つの石窟の違いとその場所を知らなければ、解くのが非常に困難になる問題である。文化史の範囲であることもあり、理解が深まっていない人もいたかもしれない。また、苦手な人の多い文化史や地図を扱った問題であることから、解けなくても差がつかないと考える人もいるかもしれない。しかし、記述問題ではどのように採点されるかわからない以上、確実に点数を確保できる客観式問題はとても重要な得点源になる。また、東大に合格するようなレベルの受験生たちは、満遍なく知識を身につけ、どのようなタイプの問題でも基本的なレベルの問題であれば、確実に点を取ってくる。妥協することなく、世界史の知識を習得していってほしい。
なお、文化史について東大がどのような切り口で問うてくるのかについては早いうちに知っておくべきである(https://exam-strategy.jp/archives/10874)。
問2(b) 清朝でのキリスト教布教制限の過程
解答例
イエズス会の中国での慣習や伝統を尊重した布教方法を教皇が否定したことによる典礼問題を受けて、康熙帝はイエズス会のみキリスト教の布教を認めたが、雍正帝はキリスト教の布教を禁止した。
問題の要求
この問題では、「清朝でキリスト教の布教が制限されていく過程」について述べることが求められている。
全く難しい問題ではない。問題集を使って演習していると、誰もが一度は解いたことのある典型問題と言えるだろう。要素の漏れがないように、丁寧にわかりやすい日本語で答案を書き上げることがポイントになる。
解説
清は、ヨーロッパの文化に寛容な姿勢を見せ、16世紀半ば頃からはイエズス会が中国でキリスト教を布教したが、中国の慣習や文化、伝統などを尊重する姿勢のもとで布教していた。しかし、孔子崇拝や祖先祭祀をイエズス会が容認しているとして、カトリック内部で論争に発展し、この布教方法を教皇が否定した(典礼問題)。これを受けて、康熙帝はイエズス会以外のキリスト教布教を禁止し、次の雍正帝はキリスト教の布教を全面的に禁止した。
ポイントとしては、「康熙帝がイエズス会以外のキリスト教布教を禁止したこと」「雍正帝がキリスト教の布教を全面的に禁止したこと」の2つが必要不可欠になる。さらに、それらのきっかけとして、典礼問題についても触れられるとよいだろう。
ちなみに、山川出版の世界史用語集では、典礼問題について、
中国布教におけるカトリック会派間の論争。イエズス会は中国人信者に対し,祖先の祭祀や孔子の崇拝などといった伝統儀礼である「典礼」への参加を容認したが,おくれて参入したドミニコ会やフランチェスコ会はこれに反発し,教皇庁に提訴した。1704年に教皇が典礼に妥協することを禁書すると,康熙帝はイエズス会以外の宣教師を国外退去させた。
と書かれている。
まとめ
上でも述べたが、これは典型問題である。きちっと書き上げられなければ、実力不足である。このような問題を確実に解ける実力を身につけていこう。
問3(a) フランチェスコ会やドミニコ会の特徴
解答例
解答例①
街頭で説教してまわり、清貧を重んじて、無所有を理想とした。また、異端と敵対し、カタリ派の弾圧や魔女狩りに協力した。
解答例②
清貧を重んじ財産所有を否定し、主に都市で説教を行う他、異端審問や学問研究や異教徒への宣教活動にも積極的に取り組んだ。
問題の要求
この問題では、「フランチェスコ会やドミニコ会といった托鉢修道会の特徴」について述べることが求められている。
極端な話、ただの用語説明の問題である。世界史を雰囲気や上辺だけでとらえず、しっかりと理解を深めて学習してきたかどうかが問われる問題である。問題文中のフランチェスコ会やドミニコ会といったキーワードから托鉢修道会の話であることがつかめれば、特に難しくないだろう。1つ1つの用語に対する理解が深まっているのならば、この年の問題の中では比較的解きやすい問題であるため、問2(b)の問題とともに最初に片付けてよい。
解説
3世紀、西欧のキリスト教の修道院は土地の寄進などを受けて、次第に封建領主となって世俗化しつつあった。このような修道院の腐敗を是正するために、托鉢修道会が現れた。具体的には、ドミニコ会とフランチェスコ会である。これらの修道会は、清貧を重んじ、民衆の施しを受けながら街頭で説教をしてまわり、無所有を理想とした。また、彼らは異端に対して強く敵対し、カタリ派の弾圧や異端審問、魔女狩りに協力した。従来の修道院とは異なり、街頭で説教してまわったことは大きな違いと言える。
ちなみに、教科書では、
東京書籍2023世界史探究p130
民衆のほどこしを受けながら都市を中心に説教してまわり,異端審問や大学での学問研究,異教徒への宣教活動にも積極的に取り組んだ。
実教出版2023世界史探究p122
清貧をかかげて財産所有を否定する彼らは,都市に修道院を建設して主として都市民に対して説教をおこない,大学で教鞭をとり,モンゴル帝国にも使節として派遣された。
山川出版社2022新世界史p152
托鉢修道士たちは,都市の広場や辻々で説教をおこなって市民に信仰教育をほどこす一方,教皇の配下として異端への審問を指揮した。さらに,ヨーロッパの脅威であるモンゴル人のもとには,教皇・国王によって托鉢修道士のルブルクやプラノ=カルピニらが派遣された。このように,托鉢修道士が学問・信仰・外交に活躍した13世紀は,まさに托鉢修道士の時代であった。
と書かれている。
これらの内容を指定字数内でまとめればよい。ポイントとしては、「清貧を重んじて、無所有を理想としたこと」「異端に対して強く敵対して、カタリ派の弾圧や異端審問、魔女狩りに協力したこと」「街頭で説教してまわったこと」の3つである。
まとめ
上では単純な問題であると述べたが、答案として書き上げるのが難しいという受験生も多々いるだろう。合格答案を書けなかったとしても、悲観的になる必要はない。知識の補充の仕方や頭の中の情報整理の方法を改善すればよい。この問題では、「従来の修道会とは異なる」托鉢修道会について述べることが求められていた。この「従来の修道会とは異なる」というのがポイントである。このように、特殊なものや変化のあったものなどは問題として問われやすい。多くの問題演習を積んできた東大受験生なら身をもって実感してきたはずだ。東大の出題切り口を踏まえて、日々知識の習得に励んでいくことが重要になる。ただ、漫然と暗記をし続ければいいというわけではない。世界史に割ける時間に限りがある以上、戦略がモノを言うのである。
問3(b) イギリス国教会の成立の経緯とカルヴァン派の批判点
解答例
ヘンリ8世は教皇に離婚を認められず、国内の教会を教皇から独立させ、国王至上法によってイギリス国教会を成立させた。それに対し、カルヴァン派は、国教会が教会組織や宗教儀式の面ではカトリック的な要素を残していたことを改革が不徹底だと批判した。
問題の要求
この問題では、「イギリス国教会成立の経緯と国教会に対するカルヴァン派(ピューリタン)の批判点」について述べることが求められている。
比較的シンプルな問題であり、教科書にもしっかりと記載されている話であるため、誰もが少しは書けそうな問題である。しかし、要求されている字数が4行とかなり多い。当然、字数が多いと、答案を書き上げるのに時間がかかる。先に解くべき問題かと言えば、答えはNOである。問2(b)や問3(a)といった字数も短く、書きやすい問題を解き終えたうえで、この問題に取り掛かるのがよいだろう。
解説
イギリス国王ヘンリ8世は、ルターの教説を批判してローマ教皇に称賛されるなどカトリックを信仰し続けていた。しかし、ヘンリ8世は後継の息子を強く欲しがっていたことから、新しい妻を迎えようとしたが、王妃との離婚が教皇庁に認められなかった。それを受けて、ヘンリ8世は国内の教会を教皇から独立させたうえで、国王至上法(首長法)によって自らその首長となった(国教会の成立)。国教会は、プロテスタントの教義を採用し、教皇の管轄する修道院を廃止して、土地財産を没収した。しかし、司教制といった教会組織や宗教儀式の面ではカトリック的な要素を残していた。このことは、改革が不徹底だとして、カルヴァン派に批判された。
ポイントとしては、「イギリス国教会成立の経緯」に関しては、「ヘンリ8世が教皇に離婚を認められなかったこと」「国内の教会を教皇から独立させたこと」「国王至上法(首長法)によってイギリス国教会を成立させたこと」の3つが挙げられる。また、「国教会に対するカルヴァン派(ピューリタン)の批判点」に関しては、「カルヴァン派は、国教会が司教制といった教会組織や宗教儀式の面ではカトリック的な要素を残していたことを改革が不徹底だと批判したこと」がポイントとなる。
なお、エリザベス1世が1559年に定めた統一法について触れるべきか悩んだ受験生もいたことだろう。この点、イギリス国教会を「確立」したのは、間違いなく統一法である。ただ、イギリス国教会を「成立」させたのはヘンリ8世で間違いはない。設問ではイギリス国教会「成立」の経緯について問われているので、エリザベス1世のことに言及する必要はないと判断した。エドワード6世の一般祈祷書についても言及していないのも同様の理由である。
まとめ
書く内容が多くある問題ではあったが、必要な知識のレベルとしてはそれほど難しくないだろう。書きにくい内容と言っても、カルヴァン派の批判点ぐらいだろうか。イギリス国教会について少し詳しく知っていないと書けない内容かもしれない。国教会成立の経緯とカルヴァン派の批判点の両方を書けるに越したことはないが、最悪の場合、国教会成立の経緯についてのみ書いても、周りの受験生と大きな差をつけられることはないのではないかと思う。
2018年第2問を振り返って
比較的解きやすい問題も多かった一方で、苦手な人の多い宗教に関する問題や地図を用いた短答問題など、教科書や資料集などを満遍なく活用して知識に穴がないように学習することの重要さを実感するセットになっていた。資料集を用いて地図を確認することを億劫に思わず、妥協せずに世界史の学習を進めていくことが非常に重要である。
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(東大世界史における文化史の切り口) https://exam-strategy.jp/archives/10874
(大論述指定語句にみる東大世界史) https://exam-strategy.jp/archives/10872