2001年 東大国語 文科第2問(古文)『栄花物語』解答(答案例)

はじめに

深い古文常識がわかっていると解きやすい問題です。

以下の記事もご参照ください。

2001年 東大国語 第2問(古文)『栄花物語』現代語訳と古文あるある

解答例(答案例)とプチアドバイス

(一)「これ」(傍線部ア)はどういうことを指しているか、説明せよ。【1行】

答案例:公任が出家をせずに、法師と同じように仏道修行をしているだけの状態。

プチアドバイス:まずは傍線が含まれている一文を訳しましょう。
すると「あいなき」なので、マイナスに捉えていますね。
では「これ」に該当する「御おこなひ~御有様(法師と同じように仏道修行)」はマイナスなことでしょうか?!
古文常識がわかっていれば、通常はプラスのことですよね。
この矛盾に気づくことが重要です。

 

(二)傍線部イ・ウを現代語訳せよ。【各1行】

〈イ〉一日にても出家の功徳、世に勝れめでたかんなるものを

答案例:素晴らしいと聞いているのに、

プチアドバイス:撥音便化した助動詞後の「なり」は断定ではなく伝聞・推定。
「なる+なり→なん+なる→な+なり」の訳「である(断定)+ようだ(伝聞・推定)」を覚えておけば、大丈夫!

 

〈ウ〉御庄の司ども召して、あるべき事どものたまはせなどして

答案例:適切な領地処理の数々をおっしゃるなどして、

プチアドバイス:「のたまはせ」を適切に訳せていない受験生も多くいます。
文脈上、使役ではないですよ!
「おっしゃりなさる」というふうに現代語で二重敬語にするのもNG。
「のたまはす」は「のたまふ」と同じ訳でOK。

 

(三)「いと我ながらもくちをしう」(傍線部工) とあるが、何が「くちをし」いのか、簡潔に説明せよ。【1.5行】

答案例:出家を決意しつつも、肉親のことが気にかかってしまう、公任自身のとても不甲斐いない心。

プチアドバイス:直前の「おぼゆ」は対象が省略されているので補う必要がありますね。
(孫娘生子と姉妹の諟子、片方だけだと不足です)
そして「おぼゆ(思い出す)」だけでは自分が残念になるのは変なので、なぜ自分が残念なのかを考えましょう。

 

(四)傍線部オについて、具体的な内容がよくわかるように現代語訳せよ。【1行】

答案例:公任がいつ出家するのかということは、女御は御存知ではない。

プチアドバイス:「知らせ給はず」の「せ」は直下に敬語「給ふ」なので、使役も尊敬もありえます。
使役の場合は対象が明確で、格助詞「に」は省略されません。
「女御殿も」ではなく「女御殿も」なので女御は主語です。

 

(五)傍線部カの歌について、一首の大意を述べよ。【1.5行】

答案例:あなたが出家して生き別れのつらさを味わうよりは、かえって私が死んでしまって別れてしまいたいなあ。

プチアドバイス:「なかなかに」の「かえって」は、現代の言葉だと「逆に」。
「A(なら普通はB)だけど、逆にnotB。」となる。

ここでのAとBは
A:(公任の出家によって)生き別れること。
B:死に別れるよりも、生き別れの方がまし。
普通は生き別れの方がましだけど、逆に死に別れの方がましだと感じるくらいつらいと女御は嘆いている。

 

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2001年 東大国語 第2問(古文)『栄花物語』現代語訳と古文あるある

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