地理を巡る入試制度改革について

共通テストの新設や、地理総合・地理探究という科目の創設など、地理という科目を巡る環境がここ数年で大きく変わりました。
教科書や資料集においても、日本国内における諸問題や国土の開発にスポットライトをあてた特集記事が大幅に増えています。

以下の文部科学省の資料p35〜p122では、地理総合と地理探究の創設趣旨や、どのような思考問題に力点を置くかについて詳述されています。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/11/22/1407073_03_2_2.pdf

たとえば、

  • 日本では,水田はほぼ全国に分布する一般的共通性を有する土地利用と言える が,世界では水田は東,東南アジアなどに集中して分布する地方的特殊性を有する土地利用であり,一般的共通性をもつ土地利用とは言えない(p41)

  • 我が国にとって,海洋の存在が人々の往来や文物の流通において障壁として機能するという側面とともに,他方では,海洋の存在が沿岸地域と海を隔てた他地域とをつなぐ交通・交易路として機能するという側面がある(p50)

  • 農耕文化は,作物の起源 地や栽培地の自然環境の影響を受けるとともに,農耕技術の革新や食の嗜好性の変化,さ らには,棚田の保全活動のように,本来有しているコメの生産機能よりも文化景観として の価値が評価されて維持されるといった社会環境の影響も強く受けていることなど,事象 を様々な側面から捉える必要性がある(p55)

  • 地方公共団体の作成した既存のハザードマップや,新旧地形図や土地の状態を示す様々な 地理情報から,どのような自然災害がどのような場所で発生しやすいのかを,地形や土地 利用の変化に留意してその特色を見いだすことや,洪水や土砂災害などの危険がある場所 や避難場所や避難経路の立地と安全性を評価する(p62)

  • 地域によっ て対応を優先するべき災害が異なることや,同じような災害に対しても,地域によって対 策が異なることについて留意する必要がある。例えば,一般に山間部では土砂災害への備 えが優先されるが,河川の下流部では洪水への備えが優先され,さらに海岸地域では高潮 や津波への備えが優先される。また,同じく地震が発生した場合にも平野の都市では地震 に伴う建物の倒壊や火災に対する備えが優先されるが,山間の村落では,地震に伴う土砂 災害に対する備えが優先されるといった,地域的な視点から防災の在り方について考察す ることが大切である(p62)

  • 酪農について取り上げる場合,酪農が行われている地域間での,気候や地形などの自然条件 やその国の経済の状況などの社会的条件における共通点や相違点,酪農地域と生産される酪製品の消費地との結び付き,酪農地域の変容などに留意することが大切である(p90)

  • 石油輸出国において石油を生産で きるのに生産量を調整していることを踏まえて,「なぜ,石油の輸出に依存している国が, 石油の生産量を調整するのだろうか」といった問いを立てて,生産国の状況だけでなく, 国際的な石油価格の変化や,エネルギー消費量の変化,また,再生可能エネルギーや新た なエネルギーの開発などとの関係を考察する(p90)

  • 農業就業人口割合と農産物の貿易に注目して先 進国と発展途上国の農業を比較し,「発展途上国で農業就業人口割合が高く農業を中心産 業としているのに食料を輸入している国がある一方で,先進国で農業就業人口割合が低い のに食料を自給している国があるのはなぜだろうか」といった問いを立てて,農産物の種 類やその生産方法,経済構造などと関連付けて考察する(p90)

  • 付加価値の高い工業や先端技術産業などが発展途上国にも立地していることを基に,「なぜ,付加 価値の高い工業が先進国だけでなく発展途上国に立地しているのだろうか」といった問いを立てて,工業生産における国際分業や,先進国における重工業が現在どのように変化しているかを考察する(p92)

  • 交通・通信網の 粗密は人口密度や産業の集積度などによって,観光地の盛衰は地域の観光資源とともに物価や安全性などによって影響を受ける(p92〜93)

  • 中山間地域の集落においてバス 路線が,人々の住む離島において定期航路が,減便,廃止されるといった公共交通の存廃 を巡る問題について,現状と要因,改善や解決に向けた取組などを取り上げる(p93)

  • 先進国の中でも世代によって,発展 途上国の中でもさらに電力供給などの社会資本整備の地域差によってインターネットの利 活用に差があることなど,現代世界には国家間,地域間,さらには世代間でも情報格差が あるという地球的課題を把握した上で,このような課題を改善するにはどうしたらよいか(p93)

  • 近年,訪日外国人観光客数が増加したのはなぜなのだろうか」といった問いを立て て,格安航空会社などの競合により移動コストが安くなったのではないか,情報通信事情 が飛躍的に改善し,スマートフォンを使ったナビゲーション機能や,翻訳機能を利用でき るようになったことで海外旅行がしやすくなったのではないか,あるいは,世界遺産やジ オパークなどの日本でしか見られない文化景観,自然景観を見に来ているのではないかと いった仮説を立てて,その原因や理由を考察する(p94)

  • 「自動車」を取り上げた場合,国内の高速道路網の整備が物流におけるトラック輸送の比重を高めるとともに,トラック輸送を基盤とした宅配便の整 備が商業活動における通信販売やインターネット販売の比重を高めていったことや,「船 舶」を取り上げた場合,人々の余暇活動の多様化がクルーズ船などの観光手段としての利 用を促すとともに,船舶利用をはじめとする海洋観光が,臨海地域の地域振興や再開発を 促していったことなどの,交通と社会の変化の相互の関わり合いといった側面についても 留意が必要である(p94)

   ↑

まさしく、2022年東大第3問A(2)の話ですね。

  • 「なぜカナダの道路標識には複数の言語が使われているのだろうか」といっ た問いを立てて,カナダの自然環境とヨーロッパ人入植者の動向や建国に至る歴史的背景 などを踏まえて,各州の言語別人口構成の違いをもたらした要因や今後の動向について考察する(p100)

  • 「我が国の海洋国家としての特色」については,例えば,海洋国家ならではの地形や気候などの自然 条件に加えて,我が国の国土が離島を含む大小多数の島々から構成されることで,領土面 積以上に領海や排他的経済水域を含めた面積が相対的に広く,豊富な水産資源や海底地下資源を擁し,海上交通や海洋開発が進んだ地域であるといった特色を取り上げることなど が考えられる。また,「海洋の果たす役割」については,例えば,我が国にとって,海洋 の存在が人々の往来や文物の流通において障壁として機能するという側面とともに,他方では,海洋の存在が沿岸地域と海を隔てた他地域とをつなぐ交通・交易路として機能するという側面があるといった役割を取り上げる(p100〜p101)

  • 経済成長著しいインドを取り上げ,「なぜ, インドは急激な経済成長を遂げているのだろうか」といった問いを立てて,その経済成 長を巨大な人口や積極的な経済政策,他地域との結び付き,都市や農村の変容などの事 象と有機的に関連付けて考察するといった学習活動が考えられる。また,それらの学習 を通して,電力供給などのエネルギーに関わる問題,経済格差などの貧困に関わる問題, 上下水道などの水や衛生に関わる問題など,国際社会において,人類全体で取り組まな ければならない経済成長に伴う課題と持続可能な開発に向けた取組などについて理解する(p109)

  • ムスリムの多い国としてサウジアラビアとトルコを 取り上げ,「イスラームの国々には,いったいどのような共通点や相違点があるのだろうか」といった問いを立てて,サウジアラビアとトルコという二つの国を比較して政治や生活文化などの側面からその特色について考察するといった学習活動が考えられる。ま た,それらの学習を通して,女性の社会進出や生活文化の多様性など,国際社会において,人類全体で取り組まなければならない国際理解に関する課題と持続可能な開発に向 けた取組などについて理解する(p109)

・日本の森林面積と森林の活用の様子

・森林のもつ土砂災害防止,土壌保全などの様々な機能

・国産材の生産量や価格,外国産材の輸入量や価格の推移

・林業従事者数や年齢構成の現状

・経営,管理が放棄された森林の実態

などの問題に対し、

・かつては森林で生計を立て,森林を守り,共に生きようとする生活や文化が根付いていたが,エネルギー革命や木材価格の長期低迷の影響で全国的に林業従事 者が減少し,その生活や文化の継承が困難になり,林業従事者の確保や伐採搬 出コストの削減が大きな課題になっていること

・海外の先進的地域では,計画的な森林経営と徹底した森林管理を行っており,日 本でも経済的に活用できる森林では,意欲や能力のある林業経営体に森林の経 営,管理を集約化するとともに,林道などの整備と機械導入の支援を進めていること

・木材需要の拡大のため,木質バイオマス発電など燃料材としての利用拡大に取り組むとともに,海外への販路拡大や中高層建築の木造化の推進などを行っていること

などを確認し

・林業振興は経済的に取り組むことが必要だが,さらなる林業振興の充実のため,森林保全に関する理解をより広く促すことが重要ではないか。

 ・そのためには,森林を守り,共に生きようとする生活や文化の再評価や,山から川や海までの自然環境を一体的に保全する総合的な取組が必要ではないか。

・森林のうち木材生産を行う人工林に注目して,都道府県別の人工林面積に占める木材活用適齢期を迎える人工林の割合から階級 区分図を作成し,それを改良して全国の森林保全の広報必要度マップを完成し

・ 山の自然環境に触れながら,森林の様々な機能や水の循環,森林と海洋の関係,それをつなぐ河川の重要性を学ぶとともに,そこでの生活や文化を再評価し,持続可能な社会づくりのための取組を構想する森林保全ツアーを考えた。

(以上p114〜115)

という考察を行うような学習姿勢を推奨しています。

 

このような頭の使い方をしてください、と大学の教授陣は受験生に求めれいるのです。
共通テスト地理の作問委員会が発表した評価報告書や、令和7年度の地理探究試案にも、そうした想いが色濃く反映されていますので、東大入試に臨まれる方は是非チェックをしましょう。

なぜなら、教科書編集者も共通テスト作成者も東大入試の作問者も「実質的に」同一だからです。
その細かな理由はここでは申し上げられませんが、ぜひ考察を深めましょう。

(共通テスト過去問リンク)https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kakomondai/

(共通テスト評価報告書リンク)https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r4_hyouka/r4_hyoukahoukokusyo_honshiken.html

(令和7年度共通テスト試案)https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou/r7mondai.html

 

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