2022年東大英語(第2問B 和文英訳)入試問題の解答(答案例)・解説
第2問B 和文英訳の傾向
2018年に20年ぶりの復活を遂げた和文英訳ですが、2022年度も変わらず出題されました。
ただ、80〜90年代とは異なり、大阪大学や京都大学のような「ありがたい教え系」の内容が多く出題されるようになっています。
漢文あるあるだと思いますが、若い人に教え諭すような内容を教授は好んで出したがります。
これは年齢的なものもあるでしょうし、全国の人に見られた時に恥ずかしくない問題を作らねばならないという重圧が東京大学の教員には強く課されることにも一因があるかもしれません。
2021年度の東大入試では
「だが、語学の習得は自転車に乗る練習のようなもので、練習しているあいだは大変でも、一度乗れるようになってしまえばなんでもない。 あとはいつも乗ってさえいればいいのだ。」
が出題されましたが、これは英語の名言(Life is like riding a bicycle. To keep your balance, you must keep moving.) を真似たような文章ですし、言語関連のテーマは東大英語で頻出ですから(作問者の研究分野でもあるため)、事前に関連トピック(テーマ)をネタストックしていた受験生にとってはサービス問題でした。
2022年度入試では、
「外部に立っているからこそ見えるものがあるのだから、それはそれでいいのだが、わたしなどは、もし自分が旅人ではなく現地人だったらこの町はどんな風に見えるのだろう、と考えることも多い。」
を英訳させる問題が出されました。
東大や京大で出される和文英訳は、人生観や旅や言語関連の話題が取り上げられることが比較的多い印象です。
実際、2022年度の京都大学でも、驚くことに旅に関するテーマで出題されました。
「数ある旅の楽しみのなかで, 車窓からの眺めというのもまた捨てがたい。 そこに美しい自然が広がっていれば, ただただ目の保養になる。でも,ありふれた田舎や街並みを眺めているのも悪くない。そこに見かける, きっとこの先出会うこともなさそうな人々は, みなそれぞれにその人なりの喜びや悲しみとともに暮らしている。そう思うと,自分の悩み事もどこか遠くに感じられて, 心がふっと軽くなる気がするのだ。」
2022年東大英語(第2問B 和文英訳)
さて、東大2022に話を戻しますと、和文英訳の極意は、一字一句バカ正直に訳そうとしないことにあります。
今回であれば、「それはそれでいいのだが」を辞書的に訳出しようとしても時間がかかるだけです。
結局、この文では何を言いたいのかを考え、英語に訳しやすいように日本語文を加工する「和作文」をすることが求められます。
たとえば、「換気中」を英訳しようとする時に、ventilationやventilateという単語が思いつけば勿論良いでしょうが、こんな単語をネタストックしている受験生は少ないと思います。
そんな時は、「換気中」の意味を考え、「We air our house now. 」や「We open the window to let some fresh air in.」や「Now we change the air.」などと訳出できると表現の幅は応用可能性が格段に広がります。
また、京都大学で問われた「モノがないからこそ大切にする」なら、
- モノを手に入れることに苦労する経験をしたときに初めて、モノを大切にする
- モノをたくさん持ちすぎると、モノの価値がわからなくなる
- モノを少ししか持てないときにのみ、我々は自分の持っているモノを大切にする
などと、自分の持っている表現を活かせるように、日本語文を言い換えます。
すると、
only when we have difficulty getting things we want, we put a high value on what we get.
You take good care of things only when it is difficult for you to get them because of poverty.
You can’t realize the value of things as long as your life is filled with more things than you need
You cherish what you have only when you experience scarcity and poverty
after You notice how miserable you can’t buy what you want for any reasons, you cherish things you have
といったように表現できることでしょう。
「白身魚」と書かれていてもfishで十分です。
このように捉えると、どんな工夫や言い換えができるのだろうかと、考えることが楽しくなります。
表現することを楽しんでいただきたいと切に願っています。
英語と日本語は異なる言語である以上、英単語と日本語の意味は完全に1対1対応しているわけではありません。
ニュアンスの違いもありますし、語法面でのミスにも注意しなければなりません。
たとえば、prolongという単語を覚えたとしましょう。
単語帳には「延長する」とありますが、put offやpostponeとの違いはわかりますか?
わからずに、「せっかく覚えたから、使ってみよう」と英作文で使ってみると減点を喰らいます。
同じ「延長する」でも、put offやpostpone(こちらの方がフォーマル)は、日時自体を変更するというニュアンスの「延長」なのです。
たとえば、雨天により試合を9月10日にするような場合です。
それに対して、prolongは、「風邪が長引く」「寿命を延ばす」といったように連続性を断ち切らずに延ばすという「線」をイメージした単語なのです。
ですので、無駄な失点を防ぐため、安全確実な基本単語を用いることが合格ポイントだと敬天塾の授業では述べています。
答案例
さて、ここでいくつか答案例を示すとしましょう。
Aさん
Since there is something you can see when you are an outsider, it is OK. However, I often wonder how this town would look like if I were a resident, not a traveller.
Bさん
Since there is something that can only be seen from the outside, it’s fine. However, I wonder if I were not a local but a traveler, how would this town look?
いかがでしたでしょうか。特別に難しい単語を使っているわけでもなく、シンプルに仕上げていますね。
時間制約の厳しい東大英語においては、シンプルかつスピーディーに表現する力が求められます。
そのための訓練を行っている受験生は残念ながら多くはありません。
ただ、逆に言えば、ここに勝機があるとも言えます。
(2Bを含めた)英作文は東大英語制覇の要です。
正しい戦略に基づき、正しい訓練をすれば、必ず上達します。
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敬天塾の授業で東大英作文制覇の極意を学び、さらなる点数の上積みをしていただますと幸いです。
英作文を高速で処理できれば、その分、他の大問により多くの時間資源を投下でき、総合点アップにも繋げられます。
時間制約が厳しい東大英語だからこそ、準備の差が合否の差に繋がります。
皆様の東京大学合格を心からお祈りしております。
映像授業【東大英語 第2問B 和文英訳】
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