東大英語 第5問(物語読解)制覇の極意(2023年実況中継)

東大英語 第5問(物語読解)の概略

東大第5問は、物語文を主体とした総合問題と言われます。

なぜに「総合問題」と称されるのかというと、多義語や熟語知識を問うた空所補充問題、文法や文脈理解が求められる並べ替え問題、物語文の論理展開を把握せねば解けない内容一致問題など、バラエティ豊かな設問形式で様々な力が問われているからです。

この第5問でガッツリ点数を取りたいと願う受験生は多くいますが、苦戦している人も一定数います。

その理由として、

  • 物語文を題材とした問題を解き慣れていない。
    他大学の過去問や受験参考書では、物語文があまり取り上げられていませんから、東大過去問で初めて物語文を題材とする問題を解いたという方もざらにいます。
    入試まで時間のある受験生は、oxfordのbookwormシリーズなどで多読をしていただきたいところですが、時間のない受験生は東大過去問や神戸大過去問、旧センター試験の第5問〜第6問あたりの物語文問題を読み解いてみるのも良いと思います。
  • 全体を俯瞰する視点の欠如。
    東大第5問では、冒頭部分の抽象度が高く、中盤以降でようやく伏線回収がなされる文章が多く出題されます。
    このことを過去問探究から学び取った受験生であれば落ち着いて読み進められるのですが、多くの受験生は冒頭部分の意味を掴みとれず試験会場で頭が真っ白になって冷静さを見失ってしまいます。
    同じ問題が出るわけないのだから過去問探究なんて意味がないという受験生が時々いらっしゃいますが、同じ「傾向」の問題は繰り返し出題されていますので、「敵」を知るという意味でも先ずはしっかりと過去問探究をしましょう。
  • 趣味で好きな小説を読むのと、物語文の問題を「読」み「解」くのは意味が違うことを理解していない。
    これは、共通テストの日本語の小説問題に苦手意識を持たれている方にも言えることですが、設問が配されている以上、「論理的」に解くことが求められます。
    趣味で読む小説は本文の解釈が読者に委ねられていますので自由に作品を味わうことができますが、入試問題として問われている物語文は答えが一つに定まるよう作られていますから正しい思考手順を踏まねばなりません。
    それゆえ、漫然と小説を多読するだけでは自然と点数が上がるわけではありません。
    意外に誤解している受験生が多くいます。
  • 多義語や熟語といった語法知識のインプットを怠っている。
    東大英語第1問〜第3問(近年は4Bも)は、文法力や語彙力があまりない受験生でも、論理や大意把握能力が優れていれば「そこそこ」の点数を取ることもできます。
    ですが、4Aや5の空所補充となると、語法知識が正面から問われてきますから、ふわっとした読解だけでは得点できません。
    物語文だからといって、単に作品を味わえば良いというわけではなく、作品を十分に味わうためにも語法知識を日頃から拡充していく姿勢が強く求められています。

  以上、第5問に苦手意識を持つ受験生に足りないものを幾つか列挙いたしました。

これら諸課題を解決するつもりで、東大過去問を1題1題丁寧に考察していくことが第5問制覇の鍵だと言えます。
この解説記事では、世にある参考書のように設問順の解説ではなく、筆者が本文を読み進める中で、どの順番で設問を解き、どのような思考を巡らしたのかを実況中継風に解説していけたらと思います。

第1段落の構造と解答順序

まず第1段落です。

文章の初っ端を飾る段落ですから注意深く読みたいところですが、2021〜2022の東大第5問では冒頭に抽象度の高い内容が書かれていて理解に苦しんだこともあり、かなり警戒はしました。

ですが、本文はもともとオンライン版の記事だったこともあり内容理解が例年に比べればそれほど苦しくはなかったように思えました。
注釈も例年になく詳しかったことも文章理解が進んだ一因のように思えます。

さて、2021年と同様に第1段落に空所補充問題が2つ配されていることがわかります。
文章全体を俯瞰してから個別の設問に行く戦略、文章を読み進める中で空所や下線に出会うたびにその場で解く戦略、空所補充を最初OR最後にまとめて解く戦略など、人それぞれですが、ここでは実況中継という性質から文章に出てくる順で設問の解説をしていきたいと思います。

 

東大第5問の空所補充は、文章後半を読まないと解けないようなものは基本的に出題されません。

それゆえ、基本的に空所が出てくる度に選択肢の吟味検討を行うのが良いと思いますが、悩ましい選択肢があった場合は即断せず、いったん飛ばす勇気も大切です。
これは1B文挿入にも当てはまる王者のマインドです。

設問D(ア)空所補充(26)

さて、早速ですが、設問(D)の(ア)ー(26)を考えてみるとしましょう。

まず、考えるべきは(26)を含む一文の中での(26)の位置関係です。

serious environmental hazards という名詞の直後のtheir communitesという名詞が続いていますが、talk aboutは目的語を1つしか取れないはずですから、名詞 名詞と連続で続くのは文法的におかしいはずです。

このことから、おそらく関係代名詞が省略されていると推測されます。
となれば、空所(26)にはtheir communitesを主語としてthe serious environmental hazardsを目的語に取る動詞が入ることがわかります。
その上で、選択肢を吟味検討してみます。

設問(D)の(ア)では空所が6つあり、選択肢も6つあります。
つまり、ダミーはありません。

選択肢を絞り込むに際しては、品詞・意味から絞り込むのが一般的です。

ただ、焦っていると思い込みから品詞の「可能性」についての吟味が足らなくなってしまい、落とし穴にハマることがありますので、意味が通じるかの確認も怠ってはなりません。

たとえば、選択肢e) thoughtを目にした時、thinkの過去形thoughtだなと性急に判断してしまうと痛い目に遭います。
なぜなら、thoughtは思考という意味の名詞形でも使われるからです。

さて、全選択肢を当てはめて確認してみるとします。上述した通り、空所(26)にはtheir communitesを主語としてthe serious environmental hazardsを目的語に取る動詞が入りますから、their communites (26) the serious environmental hazardsと読み換えることもできます。

では、一つ一つの選択肢を当てはめてみましょう。

their communites ( crosssed ) the serious environmental hazards

→ crossは「横切る」を基本とする語句ですから、自分たちのコミュニティが深刻な環境危機を「横切る」では意味が通じませんのでアウトですね。

 

their communites ( defeated ) the serious environmental hazards

→ defeatは「〜を打ち負かす」という意味で用いられますので、自分たちのコミュニティが環境危機を打ち負かしたと、一見して通じるようにも思えますね。
ですが、空所を含む一文を見てみると、conditions that still have not changedとありますから、この問題は未だに続いているはずだとわかります。
それゆえに、defeated(打ち負かした)を空所に入れるのは、文脈的に不適となります。

空所前後を読むにせよ、ある程度の幅をもたせて読まないと引っかかる恐れがある良い例だと言えます。

 

their communites (   doubt   ) the serious environmental hazards

→ doubtは「疑う」を意味しますが、suspectとの違いはわかりますか。たとえば、

I doubt that our team will win the game. ≒  I don’t think that our team will win the game.

I suspect that Mary stole my wallet. ≒ I think that Mary stole my wallet.

のように、doubtは「〜は(本当なのだろうかと)疑う」という意味合いを持ちます。

ちなみに、他動詞でもであり名詞でもあります。
ここでdoubtを選択してしまうと、the serious environmental hazardsなんてものは存在するんだろうかと疑う話になってしまい、その後のcondions that still have not changedの記述内容と矛盾することになってしまいます。

もし、空所(26)の時点で真偽を判断できなければいったん保留して他の選択肢を先に当てはめる切り替えも大切です。

 

their communites (   faced   ) the serious environmental hazards

→ faceは名詞で「顔」ですが、動詞で「直面する」を意味します。
意味を丸暗記するというよりは、「顔」という原義を考えれば、we face this problem=この問題と顔を向かい合わせた=直面した、と考えれば納得がいきやすくなります。

多義語と呼ばれるものも大半は核となる意味をつかんでいれば、日本語訳を何個も丸暗記しなくて済みます。
そもそも、ネイティヴは日本語訳をいくつも覚えているわけではありませんよね。
多義語の学習法を根本から見誤っている受験生があまりに多いのが実情です。

さて、本問に戻りますが、facedを入れると、我々のコミュニティは深刻な環境危機に直面しているとなり、前後の文脈的にも意味が通じます。
この時点で、空所(26)の正解は選択肢d) facedと確定しても良さそうですが、念のため残る選択肢の吟味もしてみたいと思います。

 

their communites ( thought ) the serious environmental hazards

→ thoughtを動詞と考えた場合、基本的に目的語にはthat節が来るはずです。
名詞を持ってきたければ、think aboutやthink ofといったように前置詞のチカラを借りねばなりません。
つまり、文法的にthoughtを入れるのではおかしいということになります。

 

their communites ( worries ) the serious environmental hazards

→ worryは名詞だけでなく自動詞や他動詞の機能も持っています。
自分が心配するという意味ではworry aboutと前置詞のチカラが必要です。
前置詞不要の他動詞で使われる時には、誰かを心配させるという意味になってしまいます。
このあたりの知識がなく、「心配」という意味だけで食いつくと、空所(26)は間違えてしまいます。

また、worryを動詞と捉えた場合、主語がtheir communitesと複数形で示されているのに動詞がworriesで三単現のsが付いているのはおかしいと判断しなければなりません。
三単現のsに注意を払うチカラは4A正誤問題や2A自由英作文でも求められているチカラですから、意識してみると良いでしょう。

以上より、空所(26)にはd) facedを入れるのが無難だと思います。

設問D(ア)空所補充(27)

それでは、引き続き、空所(27)を見ていくとしましょう。

まず注目すべきは空所(27)の直前にあるtalk about theirでしょう。
ここから(27)には名詞(または動名詞)が来ることがわかります。
この点、空所(26)で確定した選択肢dを除いた選択肢をみてみると、名詞候補はdoubtとthoughtとworriesの3つになります。

次に文脈からかんがえてみるとします。
ここで、それぞれ空所に入れて吟味検討してみたいと思います。

talk about their ( doubt ) 自分たちの疑念について話し合う

talk about their ( thought ) 自分たちの考えについて話し合う

talk about their ( worries ) 自分たちの不安な点について話し合う

となります。
会議では討論することからすると、doubtかworriesあたりが良い気はしました。
thoughtの線も完全には捨てきれませんが、environmental justiceの補注で「環境問題が経済的格差や人種・民族差別などの社会問題と密接に結びついていると捉え、両者をともに是正する必要があると考えるべき立場」と書かれており、空所(27)の直後にはenvironmental justiceの名の下に何を為すべきか決めるといっていることから、thoughtだとちょっと具体性に欠けるようにも思えました。

また、theirに続くのなら複数人の考えを表すわけですから複数形にしてもいいのではないかと思いましたが、一旦空所(27)は保留にしました。

設問D(ア)空所補充(28)

さあ、こうして第一段落が終わり、第2段落以降に進んでいきます。

すると、早速、空所(28)にぶちあたりますが、これは一瞬で答えを出さねばなりませんね。

本問は、附帯状況のwithが問われた単純な知識問題です。
4Bの英文和訳でも出されうる知識ですから、しっかりとお手持ちの問題集などで確認したいところです。

with your mouth full.

with her legs crossed

with your eyes closed

with his arms folded

あたりが典型ですが、本問の選択肢にfoldedはないので、a) crossedを一発で決めたいところです。

さて、空所(28)以降は、しばらくギルモア氏と子供達との会話が続きます。
下線も空所もないゾーンですが、だからと言って情報価値が乏しいかというと、そうも言い切れませんので要注意です。

設問D(イ) 空所補充問題

そうして、空所(イ)が現れます。

さて、上記の一節の直前で、子供たちがギルモアに対して刑務所廃止を訴えるとは何事かと問い詰めている場面があります。

そして、空所(28)の直後には、she understood that they were against herとありますから、刑務所廃止論が子供達に受け入れてもらえないことをギルモア自身が理解していたことが明示されています。
これは、空所(イ)の直後にあるThey were not going to be easily parsuadedの話にも通じます。

その上でですが、空所(イ)を含む一文では、子供達の素性にフォーカスがあてられています。
似たような一節が第2段落でもThe children were primarily Latinx, many of then the sons and daughters of farmworkers or other people in the agriculture industry.でも記されています。

さらには、空所(イ)の直前にあるpublic housingの訳注として、東大は「(低所得者層向けの)公共住宅、公営住宅」とわざわざ記しています。
地理を選択している受験生であれば、ラテンアメリカ系の移民が貧しい生活を強いられていることなどを事前知識として知っているでしょうが、そのことを知らずとも第1段落でenvironmental justiceについてのフォーラムが行われていることは示されており、その訳注として経済的格差や人種・民族差別などの社会問題の話も挙げられていることから、ラテンアメリカ系の子供たちがそうした「不正義」に直面していることは推測出来たとも言えます。

仮に、そこまで意識がまわらなかったとしても、刑務所廃止を巡り、”What about if someone kills someone?” などと重たい質問をしている中で現れた空所(イ)に入る単語は何なのかと考えれば、自ずと方向性は見えて来るはずです。

選択肢の語群には色々な単語が示されていますが、まずは、空所(イ)に入る単語が➕イメージのものなのか、➖イメージの単語なのかをざっくり考えてみましょう。

刑務所廃止論への異議の流れを受けて、these chiledren…understood the (   イ   ) of the world from their own experienceときて、その直後には、They were not going to be easily persuadedと来ているわけですから、全体的に暗い内容が続いていることに気付かされます。そこから、➖系の単語が入るのではないかと推測はできるでしょう。

ともなれば、選択肢のaとbとeは直ちに外せそうです。
残るは、c, d, fとなります。

c) harshness
d) mysteriousness 
f) tiredness

意味から考えると、

子供たちは世界の( c 厳しさ  )を自分たちの経験から理解していた

子供たちは世界の( d 不思議さ )を自分たちの経験から理解していた

子供たちは世界の( f 退屈さ )を自分たちの経験から理解していた

となるわけですが、fは文脈上おかしいですね。

すると、cかdに絞れるわけですが、mysteriousnessを理解していているのであれば、ギルモアの刑務所廃止論に異議を唱えるというのは矛盾した行動になります。
刑務所廃止論ということに理解できていないからこそ、ギルモアに詰め寄ったわけですから。
雰囲気だけでふわっとdを選ぶと痛い目に遭うわけです。

となると、cが正解に思えますが、なんともスッキリはしませんよね。
これが、1Bの解説記事でも申し上げた「正解の選択肢は光らない」の意味するところです。
間違ってはいないけれども、一目瞭然だとも言えないものが正解になることが多くあります。

ただ、一応補足するなら、空所(イ)の直前でわざわざpublic housingやらtiny farm townやら、子供達の出自を言及し、さらには環境正義(environmental justice)について東大側が補注で詳説していることから、ギルモアに詰め寄った子供達が様々な差別や経済的格差で苦しんでいることがうかがいしれ、そのことを世界の厳しさ、あるいは自分の身の回りの世界で起きている日々の苦しさと端的に表そうとしたのがthe harshness of the worldである考えれば腑に落ちると思います。

 

では、次の段落に進めます。
すると、設問(A)の並べ替え問題が出て来ます。
1B文挿入と5物語文で、ここ最近よく出される並べ替え問題ですが、かなり難易度の高い年もあり、この設問(A)もかなり悩みました。
正直、2023東大英語で一番頭を使った設問です(笑)。

ということで、実際解いているときには、いったん飛ばしたので、他の設問解説を終えた後、最後にレクチャーできたらと思います。

さて、このまま読み進めると、スペインでは殺人を犯しても7年程度の服役で済むという記述に子供達が驚いているということが述べられ、そうして設問(B)の下線が現れてきます。

設問B 下線部説明問題

まず問われていることは

①なぜ子供たちの態度が変わったのか

②どのように変化したのか

の2点です。
採点にあたっても、この2点にしっかり答えられているのか教授は精査します。

なお、変化については、●から▲へといったようにbefore & afterがハッキリわかるように書くべきでしょう。

 

それでは、下線部を分析します。
they relaxed a little bitとあるわけですが、なぜ力がぬけてしまったのかというと、それは殺人を犯しても7年で出所できるというスペインの判決に驚いたからですね。

その結果、下線部(B)の直後にあるように、怒りの対象がギルモアから判決に変化したわけです。

なお、sentenceが「判決」を意味することがわからなくても、「殺人を犯してもたった7年しか服役しないという事実」といったように誤魔化して書くこともできると思います。

 

ここで、私の解答例を示します。

(解答例)

子どもたちは、スペインでは殺人罪の平均刑期がたった7年であるということを聞き、その事実に対して強い憤りを覚えたため、刑務所を廃止すべきだというギルモアの考えに対して当初抱いていた怒りがほんの少し和らいだ。

 

ちなみに、第5問の記述問題の解答用紙をみると、かなり多くのスペースが設けられており、どこまで書いていいか不安になる受験生が多くいるようです。
詳しく書く分には良いですが、勝手に話をつくったり本文に矛盾することを書いたりすることのないようにしましょう。

合格者たちの再現答案を見る限り、大量に書いていなくても高得点合格を果たしている人はいますので、解答欄を全て埋めなきゃダメと思い込まないようにしてください。

設問D(ウ) 内容一致問題 その1

では、本文を読み進めます。

すると、設問(D)の下線部(ウ)が現れますが、この設問は内容一致問題ですから、本文全体を読み終えてから解くのが王道だと思います。

もちろん、下線部(ウ)のあたりまで読んだ時点で正誤を判別できるものを先に処理する解き方もありますから、各自、自分の肌に合うやり方を過去問探究の中で模索していきましょう。

なお、時間が足りず、下線前後だけ読んで本文全体の大意をつかみ取ろうとする受験生ワナにはめようとする意図がこの段落からは感じ取れました。

2022年の第5問ではLGBTが出題されましたが、男は●●、女は▲▲といった「常識」に囚われて読解すると痛い目に遭う問題が東大ではよく出されます。
2023年の第5問も同じで、犯罪を犯したものは重罪に処すべきだ、刑期が短すぎる、被害者が報われない・・といった良く聞く考えが「常識」となって本文を速読しようとすると、大混乱に陥ります。

たとえば、この段落の末尾に書かれているthey are not going to behave in a violent and life-destroying way toward people who hurt peopleは最たるもので、「人を傷つけた人に暴力的な方法を取っちゃいけない、ってどういうこと?」と思った受験生はそこそこいたようです。

東大英語部会は2022年9月に駒場の英語教科書を大改訂し、多様性を重んじる内容に刷新しましたが、多様な価値観を尊重するということは、「常識を疑う」姿勢を身につけることをも意味します。

我々は、日本語でも英語でも、文章を読み進めるにあたり、自身の知識や経験を元に予測しながら読む習慣があります。
小さい頃、新聞を読んでも、ちんぷんかんぷんだったのは知らないことばかりだったからです。
大人になると、一字一句を熟読せずとも、「ああ、またこの話か」といった具合に既視感のあるものが増え、初めて知るようなことも減り、サクッと読み進めることができるようになります。

ですが、既視感のあるものばかりに囲まれた日々に新たな成長は見込めませんから、東京大学は学部生に対して己の常識を疑い、視野を広める真摯な努力を怠るなというメッセージを頻繁に送っています。
そうしたスタンスが入試問題にも現れているように思えてなりません。

 

さて、それでは、本文を読み進めます。
次の段落では、なんと設問(D)(ア)の空所が3つも登場します。それでは分析検討を試みていくとしましょう。

設問D(ア)空所補充(29)~(31)

まずはじめに、選択肢aは空所(28)で、選択肢dは空所(26)で確定させましたから、ここでは検討対象外とします。

この段落の直前では、ギルモアの刑務所廃止論の根拠が示されており、そこでは下線(ウ)が引かれたwhere life is precious, life is preciousという文言も書かれています。

さて、ここでおさらいですが、本文は、ギルモアと子供達の刑務所廃止論をめぐる議論がメインテーマとなっています。

そして、子供達はギルモアの刑務所廃止論に対して当初から疑義を抱いていたわけです。
子供達は納得できたのでしょうか。
少なくとも、この段落を見る限り、it was difficult to persuade the kidsとありますから、この時点では、ギルモアの思想に拒絶反応を示していることがわかります。

それを元に空所(29)を考察してみます。
(29)以外の感情をギルモアに示さなかったといっているわけですから、話の流れからネガテイブなものが入ることは理解しやすいと思います。

となると、選択肢c)doubtか、f)worriesとなります。
おや、確か、空所(27)の時にも、この2つの選択肢で迷いましたよね。

では、この二つを並べてみましょう。

さて、いかがでしょうか。
空所(29)はemotionにかかっていますから、感情を表す語句が入りそうです。
その点、worriesもdoubtも感情ではありますが、ギルモアがなかなか子供達をpersuadeできなかったと言っていることや、空所(28)のすぐ後に、” But what about the people who do something seriously wrong? ” や”What about if someone kills someone?”と質問攻めをしていることから、ギルモアに対して食ってかかっている姿勢がうかがいしれますから、不安よりは疑念という少し強いニュアンスの語句を入れるのが適しているように思えます。

また、仮に空所(27)にdoubtを入れた場合、もともと彼らが抱いていた疑念の中身がなんなのか本文では示されていませんから(不安について話し合うのであれば、会議で話し合うことや、その解決策を模索するという文脈にも沿うように思われます)、これを考えてもやはり、空所(27)にworriesを、そして空所(29)にdoubtを入れるのが妥当に思えました。では、空所(30)(31)に進みます。残る選択肢はb)defeatedとe) thoughtなわけですが、空所(30)は正直少しわかりづらかったです。

ただ、give them many years of (30)という文構造から、(30)には名詞が入る可能性が高いですから、thoughtが名詞をも意味することに気づけば早かったと思います。

品詞の理解がこうしたところで差のつくポイントになります。

なお、品詞がらみの訓練ドリルとして、慶應商学部の空所補充問題は脳トレとして悪くありませんので、よろしければご活用ください。

さて、仮に(30)でつまづいた場合、いったん横に置いて別の選択肢に視点を移す切り替えも大切です。
そこで、空所(31)に目を向けますと、she felt totally (  31  )とありますから、feltの語法を知っていれば形容詞が来ることがわかりますし、たとえ知らなくても感情に絡む語句が来ることは推測できるはずです。

となれば、defeated(打ち負かされた)が空所(31)で決まりということになります。

厄介なのは、残るthoughtを空所(30)に入れようとするときに、thoughtが名詞の機能を果たすことを知らなかったり、知っていたとしても、自分の「thought(考え)」を子供達にgive(与える)ってどういうこと?と思ったりした場合、途端に不安に駆られ、他の空所の選択肢が全て不安になってしまうことでしょう。

このような駆け引きや心理戦は、1Bの文挿入でもよく見られるものですから、悩ましいところではあるのですが、この解説シートでも詳述して参りましたように、根拠をもって一つ一つの空所に入る適語を考えてきたのであれば、自信をもっていただきたいです。

ちなみに、この空所に入る内容がまったくわからない、つまりギルモアの心境が全くわからない場合は、後続の段落に目を向けることになります。
すると、

このような文構造になっていることに気付かされます。

空所(31)の次の段落でto Gilmore’s surpriseと示されているわけですが、驚いたということは、何か予想に反したことが起きたことを意味します。

空所(31)のところで感じたことと違った事態が生じたのでしょう。
その中身は、最終段落で示されています。

なんと子供達が下線(ウ)でも示されたギルモアの考えであるwhere life is precious, life is preciousという考えに賛同したのです。

つまり、この会議のメインテーマである環境正義の観点から、刑務所というものを「悪」だと子供達は結論づけたわけです。
ギルモアの意見に反対を述べていた子供達が、議論を通して、賛成したのですから、ギルモアとしては驚いたことでしょうね。

このことからも、空所(31)には、論理的にマイナスの語句が来るはずですから、defeated一択だと言って良いと思いました。

設問C 下線部説明問題

さて、それでは、いよいよ最終段落に歩を進めるとしましょう。

この実況中継解説シートをここまで読んでいただけた方なら、解答の方向性はわかりますね!

まず、段落相互は密接に連関していますから、空所(31)のときに考察したように、最終段落の一つ前でto Gilmore’s surpriseの理由をしっかり考えいていた人にはサービス問題だと言えます。

解答の方向性として、子供達はギルモアの意見に反対することを予想していたことはすぐわかると思いますが、解答欄がかなり大きいので、もう少し言葉を添えたいところです。

たとえば、

(解答例その1)

子供達は他の場所で起こったことは自分たちの生活には関係ないと判断し、ギルモアが伝えようとしたことを気にも留めないだろうと予想していたから。

(解答例その2)

子供達は、自分たちの生活に悪影響を及ぼす環境災害として、ギルモアが悪だと唱えた刑務所を挙げることはないだろうと予想していたからである。なぜなら、子供達にとって、自分たちのコミュニティの外で起きたスペインなどの例は自分たちの生活とは無関係なこととして捉えるだろうとギルモアは考えていたからだ。

このあたりが解答例になると思います。

設問D(ウ) 内容一致問題 その2

さて、本文全体を読了しましたので、横に置いていた設問(D)-(ウ)の内容一致問題と、設問(A)の並べ替え問題に取り掛かるとしましょう。

内容一致の問題を解くに際して大切なことは、選択肢を読む前に解答の方向性を自分なりにざっくりとでも決めておくことにあります。

本問の下線部で問われているwhere life is precious, life is preciousは本文をまともに読んでいない人が読んでも、何言っているのかわからないと思います。

ちゃんと本文を読んだ人に得点させたいという東大側の意図が垣間見れます。

本文のテーマは刑務所廃止の是非であり、ギルモアは刑務所廃止論者として、囚人を罰するのは囚人の命や人生が尊重されていないと言っているわけです。
多くの日本人の感覚とはズレていますから、この部分だけを読むと「え?どういうこと?」となってしまいますよね。

下線前後だけ読めば答えを出せるといった類のテクニックを封じ込めようと東大側も工夫を凝らしているわけです。

さて、解答の方向性が定まったところで、各選択肢を吟味検討してみましょう。

a) A society that understands the value of life would protect not only the well-being of humans but also the lives of animals and plants.

(訳)命の価値を理解している社会では、人の幸福だけでなく動植物の命も大切に守ろうとするだろう。

→ 動植物の話なんてしていませんよね。おそらく、本文をまともに読まずに、選択肢だけ読んで、もっともらしいものを選ぼうとする(つまり、「常識的に」解こうとする)受験生を落としにかかっている選択肢です。

 

b) In a society where life is very precious, murderers would be made to spend their lives making up for their crimes.

(訳)命がとても大切にされる社会では、殺人犯は犯した罪を償うために人生という名の時間を過ごすよう強制されるだろう。

→ これは、我々の「常識的な」感覚にマッチした文ですが、ギルモアの意見はこの逆のはずですね。また、本文では、figure out how to live when released(出所した後にどうやって生活するのか考える)とも書かれており、スペインでは囚人が罪を償うこと以外にも目が向けられています。

 

c) People who are truly aware of the preciousness of life would not allow any violent or life-destroying system in their society.

(訳)命の尊さを本当に気づいている人々は、自分たちの社会では、暴力的あるいは命を奪うようなシステムを許さないだろう。

→ これは、ドンピシャで正解ですね!一応、念のため、他の選択肢も吟味してみます。

 

d) The policies of the United States and Spain regarding the prison system are similar in that they both take into consideration the preciousness of life.

(訳)アメリカとスペインの刑務所制度は似通っている。それは、両国とも命の尊さを考慮しているという点においてだ。

→これは、本文の内容に矛盾しますね。アメリカとは全く異なるスペインの刑務所のあり方に、子供達は驚いたのですから。

 

e) Those who really appreciate the meaning of life would claim that their own lives are more precious than those of prisoners.

(訳)命の意味を本当に理解している人は、囚人たちの命より、自分たちの命の方が尊いのだと主張するだろう。

→これも、我々の「常識的な感覚」にマッチした内容かもしれませんが、ギルモアの主張には矛盾します。

以上より、設問(D)の(ウ)の答えは、cとなります。

設問A 並べ替え問題

さて、それでは、ラストの設問(A)並べ替え問題に参ります。

上述した通り、設問(A)はこの2023年の東大英語で最難関と言って良い設問だと私は思いました。

なんとか解くことはできましたが、どのような思考プロセスを踏んだのかご説明できたらと思います。

並べ替え問題を考えるにあたって重要な視点は、並べ替え語句のグループ化動詞に着目、文の一部を並べ替えるのであれば空所前後の品詞分析、そして前後の意味となります。

では、この順番で吟味検討してみましょう。

 

【並べ替え語句のグループ化】

わかりやすい例で言えば、熟語です。今回で言えば、the kindをみた時に、a kind of~という中学レベルの熟語を連想できれば、the kind ofというカタマリを見つけられるでしょう。

 

【動詞に注目】

英文の主役は何と言っても動詞です。語群の中では、broughtとrepeatingが動詞にあたりますが、broughtであれば単なる過去形なのか、名詞を修飾する過去分詞形なのか可能性は2つ考えられます。repeatingはing形になっていますから動名詞か現在分詞かのいずれかです。
動名詞であれば、別の動詞の目的語となっているのか、はたまた前置詞の目的語になっている可能性もあります。
現在分詞であれば、修飾先の名詞を探さなくてはなりません。

 

【空所前後の品詞分析】

本問は、語群だけ並べ替えても文としては完結しません。
we solve ( A ) the problemという構造に着目しなくてはいけないのです。
solveは他動詞ですから目的語の名詞が欲しいところです。
となれば、behaviorやproblemsが来ます。
solveとの親和性を考えるとproblemsがベターだと思いますが、この名詞を修飾する語句の存在にも気を配らねばなりません。

つまり形容詞や現在分詞の存在を疑わねばなりません。
となると、the kind ofやrepeatingが来ますが、the kind of problems(問題の種類?)、repeating problems(繰り返される問題?)というのが何を意味するのかよくわかりませんね。

次に、空所(A)の直後にあるthe problemという名詞です。
文の最後に不意に名詞が現れるというのは直前に動詞の存在を疑わねばなりません。
文の途中にまた新たな動詞が来るということは、関係代名詞ゾーンやto不定詞あたりの存在が疑われます。

ですが、toは語群にありませんから関係代名詞を疑い始めます。
関係代名詞があるということは、先行詞になりうる名詞があるはずです。
名詞候補はbehaviorかproblemsでしたね。
そして、動詞候補はbroughtかrepeatingでしたが、関係代名詞内でrepeatingがメインの動詞になることはないはずです。
せめてbe動詞が欲しいですが語群にはありません。
なお、thatが関係代名詞っぽいですが、関係代名詞の省略可能性も考えねばなりませんから、このthatはまだ確定しないでおくのが良さそうです。

よって、broughtあたりがあやしいと踏めます。
なお、solveがSVOOを取る動詞なら話はまた変わりますが、solveは目的語を1つしか持ってこれない動詞のはずです。

 

さて、ここまでにわかったことを整理してみましょう。

We solve (problems) _____________________ 関係代名詞 (brought? )  the problem

残る語群は、

behavior , by , the kind of  , repeating ,   that,  us

となります。
the kind ofの後ろには名詞が来ますから、the kind of behaviorが怪しそうです。

となると、関係代名詞の先行詞としてbehaviorが来るようにも思えます。
problemsを先行詞と考えると、the kind of behaviorのカタマリをどこに置けば良いのか悩んでしまいます。

ここから、

We solve problems_______ the kind of behavior that__ brought  the problem

という形が思い浮かびます。ただし、解いている時に、以下のような可能性も一瞬芽生えました。

the kind of behavior brought by us

ただ、この場合、thatの使いどころが不明瞭になります。
behaviorを修飾する代名詞のように捉える可能性も考えましたが、the kind of that behavior brought by usとしてしまうと、theとthatの関係が不明瞭になりますし、そもそも私たちによってもたらされるthat behaviorの中身が正直よくわからないなと思いました。

ここで残った選択肢は、byとrepeatingとusとなりました。
まず、usはなんの目的語になっているか考えました。
repeating usでは意味不明ですから、基本動詞broughtがSVOO構造を取ることに着目し、

We solve problems_______ the kind of behavior that__ brought us the problemとしました。

関係代名詞にはいくつか用法がありますが、broughtの主語となるような名詞は語群にこの時点で残されていませんから、

We solve problems_______ the kind of behavior that brought us the problem

と当たりをつけました。残るbyとrepeatingを繋げて、by repeatingとして一先ず本文全体の意味が通じるか確認をしてみます。

 

We solve problems by repeating the kind of behavior that brought us the problem.

訳: その問題を私達にもたらした行動を繰り返すことで問題を解決しようとしている

→うーん、なんだかよくわかりませんから、前後の文脈から是非を考えてみるとしましょう。

 

【前後の意味】

        ” I can understand what you want to ask those questions,” she said. ” But how about this: instead of asking  whether anyone should be locked up or go free, why don’t we think about why we solve

(A) problems by repeating the kind of behavior that brought us the problem in the first place?” She was asking them to consider why, as a society, we would choose to allow cruelty and punishment.

訳:「なぜ貴方たちがそうした質問をしたいのか、私にはわかるわ」と彼女は述べた。「でも、こう言ったらどうかな。収監されるべきか放免されるべきかを尋ねるのではなく、そもそもどうして私たちはその問題を(私達にもたらした行動を繰り返すことで問題を解決しようとしている)のかを考えようとしないのかしら。」彼女は、社会として、私たちが残酷さや刑罰を許容するようなことをどうしてしてしまうのかを考えるよう彼らに尋ねていたのであった。

うーん、正直、スッキリはしませんでした。solve problemsの後にいきなりby repeatingなんて来ていいのだろうかと思いましたし、むしろ後半のthe problemに繋げてby repeating the problemにした方がいいのかなともふと思いました。ですが、そうすると、the kind of behavior that brought us が文構造的に行き場を失ってしまうのです。文としての体をなさないといけませんから、やはり、problems by repeating the kind of behavior that brought usが正解の選択肢となるでしょう。

 

並べ替え問題は、一定の解法パターンもありますから、問題集などでしっかり対策を取りましょう。
年々、難化傾向にある並べ替え問題ですが、確実に取れる問題もありますから、最初から捨て問にせずチャレンジすることが大事です。
これは4A正誤問題にも言えます。

 

以上、長くなりましたが、2023年第5問の実況中継風解説を終えたいと思います。
ぜひ、本稿で申し上げた思考プロセスを他年度の過去問でも応用していただければ幸いです。

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2022年東大英語(第5問 エッセイ(物語読解))入試問題の解答(答案例)・解説

2021年東大英語(第5問 エッセイ(物語読解))入試問題の研究


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