2002年 東大国語 第2問(古文)『神道答』解答(答案例)
目次
はじめに
敬天塾で分析している1990年代以降の東大古文で、最も簡単な問題です。
理系の方でも、すらすらと読めるのではないでしょうか。
手始めとして、解いてみましょう☆彡
なお、『神道集』と言いつつ、ほぼ仏教説話です。
本地垂迹(ほんじすいじゃく)といって、神仏習合の思想で書かれています。
神と仏は同一のものであり、日本の神がみは仏が適宜姿を変えて顕現したものだという思想です。
〔平安時代に生じて明治時代の廃仏毀釈まで続いた〕
解答例(答案例)とプチアドバイス
(一)傍線部ア・イを現代語訳せよ。【1行】
ア 果報のほどを相し申せ。
答案例:前世からの因縁による運命の良し悪しを占い申し上げよ。
プチアドバイス:「果報」は仏教用語で、前世の行いによって生じる報いのこと。
【因果応報】前世における行為の結果として現在における幸不幸があり、現世における行為の結果として来世における幸不幸が生じること。
答案には、「前世からの因縁」の旨と、わかりやすくするための具体化(運命の具合など)を添えると良いと思います。
イ いかでか違へたてまつるべき
答案例:どうしてご命令背き申し上げようか、いや、背き申し上げるつもりはない。
プチアドバイス:「違ふ」は古文単語帳に載っていないことが多いですが、現代語からの類推で解けます。
「約束を違(たが)える」=背くようにする から考えましょう。
(二)傍線部ウ「相人を召して聞こしめすべし」について、何を「聞こしめす」というのか、内容がわかるように現代語訳せよ。【1.5行】
答案例:人相見をお呼び寄せになって、菩薩女御が懐妊した子供の性別をお聞きになるのがよろしい。
プチアドバイス:「召す」「聞こしめす」の両方とも、しっかり敬語で訳しましょう。
(三)傍線部工「約束」の内容を簡潔に記せ。【1行】
答案例:生まれる子が鬼となり大王や国を滅ぼすと、嘘の占いを大王に伝えること。
プチアドバイス:約束の概要は、「この王子の御事をば、大王の御前にて我らが言ふままに相し申せ」です。このままだと「我らが言ふまま」がつまりどういうことが不明なので、具体的な后のセリフを抽象化しましょう。
(四)傍線部オ・カ・キを現代語訳せよ。【オ:1.5行】【カ・キ:1行】
オ これほどめでたくおはします君を、あらぬ様に申さんことの心憂さよ
答案例:こんなにも素晴らしくていらっしゃる王子のことを、事実と異なるように大王に申し上げるようなことのつらさよ。
プチアドバイス:一番簡単な設問なので、もし単語の訳などを間違ってしまったら、危機感を持って勉強しましょう。
カ たまたまもありがたし。
答案例:偶然とはいえ滅多に無いことだ。
プチアドバイス:「ありがたし」の訳は、「ありえない(可能性0%のような表現)」や「ありがたい(感謝)」はNGです。
キ 一日も見て後にともかくもならんことは苦しからじ
答案例:一日でも我が子を見て、その後に食い殺されて死んでも、つらくないだろう。
プチアドバイス:「死ぬ」などの婉曲表現を覚えることは東大古文の対策として重要です。覚えましょう。
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