東大英語 第2問B(和文英訳)制覇の極意(2023年実況中継)

2023年東大英語 2B和文英訳 問題

なぜ歴史を学ぶようになったのか、理由はいろいろあるのだが, いまの自分たちの住む世界について, それがどのように出来上がってきたのか, なぜいまのような形になったのか,ということにぼんやりとした関心があったことは確かだろう。さらにもう少し掘り下げてみると, 日本の近代化がヨーロッパの影響を受けながら辿ってきた道筋を考えるには, そのヨーロッパのことをもっと知らなければならない,といったことも感じていたのだった。 高校時代はアメリカにあこがれていた。 当時流行っていたフォークソングに惹かれていたし, 西部劇や東部の有名大学の学生たちのファッションにも夢中になっていた。 それが大学に入ってからヨーロッパ, 最初はドイツ, やがて英国に関心が移っていったのは自分でもはっきりと説明することは出来ない。
(草光俊雄 『歴史の工房 英国で学んだこと』)

 

2023年東大英語 2B和文英訳 総括

2018年に20年ぶりに復活した和文英訳問題ですが、本年度も2Bで登場しました。
皆さんは、和文英訳と聞いた時に、どのようなスキルが求められるとお考えですか。

基本構文の駆使、正確な文法力、豊富な語彙力、スペルミスや句読点の付け忘れなどへの注意力といったものが、とっさに思い浮かぶでしょう。

また、中学高校で和文英訳の授業は自由英作文に比べれば頻繁に実施されていますから馴染みのある出題形式ですし、並べ替えや穴埋め問題と並んでオーソドックスな問題形式として和文英訳は知られています。

ですが、なぜか東大2B和文英訳では全然点数が取れないと嘆かれる方が毎年多くいらっしゃいます。
学校や塾の和文英訳では、いつも満点を取る子でもです。

なぜに同じ和文英訳なのに、こうも違うのでしょうか。

それは、英訳目的が異なるからです。
学校でやる和文英訳は、基礎構文力を身につけることに重きが置かれ、扱われる題材も学習効果を高める観点から作られた短文ですから非常に取り組みやすいのです。

その一方、東大入試で課される和文は、受験生を選抜することを目的とし、書籍から一部抜粋したもので英訳されることを前提とした文ではありませんから分かりづらく、逐語訳でもしようものなら文意が崩れてしまう特性があります。

東大教授は、受験生に構文力を身につけてもらうために出題しているわけではないということですね。

東大側がどのような点を受験生に問うているかというと、
① 基礎構文力(文法力)
② 語彙力
③ 言い換え力(文意把握力)

の3点だと私は考えます。

多くの受験生は①と②に主眼を置きますが、実のところ、この③が東大英作文で求められる最重要項目だと言っても過言ではありません。

たとえば、「猫の手も借りたい」を英訳する時に、字義通りにI want to borrow a cat’s hand.と訳しても意味不明ですよね。
そうではなく、ここで伝えたいニュアンスは助けが欲しいということですからI need your help.と訳さなくてはいけないわけです。

これに似た問題を東大は2003年2Bで問うています。
以下、問題文を掲載します。

次の文章は、あるアマチュア・スポーツチームの監督の訓話の一部である。この中の、「雨降って地固まる」という表現について、それが字義通りにはどういう意味か、諺としては一般的にどのような意味で用いられるか、さらにこの特定の文脈の中でどのような状況を言い表しているのかの3点を盛り込んだ形で、60語程度の英語で説明しなさい。

昨年は、マネージャーを採用すべきであるとかないとか、補欠にも出場の機会を与えるべきだとか、いやあくまで実力主義で行くべきであるとか、チームの運営の仕方をめぐってずいぶん色々とやり合いましたけれども、「雨降って地固まる」と申しまして、それで逆にチームの結束が固まったと思います。今年もみんなで力を合わせて頑張りましょう。
(東大2003年)

これは自由英作文の問題ではありましたが、言葉を字義通りに捉えても適切に英訳はできないことを示す好例です。

皆さんは、東大2B英文和訳の解答例を参考書などで確認すると思います。
プロの先生方が時間無制限で調べながら書き上げた英文ですから、非常に優れた英文ばかりですよね。
私が受験生だった頃は、こんなの一生書ける気がしないと思ったものです(笑)。
もちろん、こういったプロの解答例がスラスラ書けたら、こんなにも素敵なことはありませんが、大多数の東大受験生は塾講師のようには書き上げることはできません。
ルノワールやピカソの名画を芸術鑑賞したところで、巨匠と同じような絵を描けないのと同様に、模範答案を呆然と眺めるだけで、ある日目覚めたら、突然にすらすらと英文が書けるようになることはないのです。

では、諦めるしかないのかというと、決してそんなことはありません。
本稿では、エレガントな解答例を示すというより、満点でなくとも、泥臭く点数を取る思考プロセスを詳述していきたいと思います。

2Bに苦手意識のある方にこそ、是非熟読していただきたいと思います。
きっと、表現することが楽しくなってくるでしょう。

2023年東大英語 2B和文英訳 思考プロセス

問題文を再掲します。

なぜ歴史を学ぶようになったのか、理由はいろいろあるのだが, いまの自分たちの住む世界について, それがどのように出来上がってきたのか, なぜいまのような形になったのか,ということにぼんやりとした関心があったことは確かだろう。さらにもう少し掘り下げてみると, 日本の近代化がヨーロッパの影響を受けながら辿ってきた道筋を考えるには, そのヨーロッパのことをもっと知らなければならない,といったことも感じていたのだった。 高校時代はアメリカにあこがれていた。 当時流行っていたフォークソングに惹かれていたし, 西部劇や東部の有名大学の学生たちのファッションにも夢中になっていた。 それが大学に入ってからヨーロッパ, 最初はドイツ, やがて英国に関心が移っていったのは自分でもはっきりと説明することは出来ない。
(草光俊雄 『歴史の工房 英国で学んだこと』)

下線部を句読点ごとに区切ってみますと、4つのパートに分かれます。

① さらにもう少し掘り下げてみると

② 日本の近代化がヨーロッパの影響を受けながら辿ってきた道筋を考えるには

③ そのヨーロッパのことをもっと知らなければならない

④ といったことも感じていたのだった。

とあります。

多くの受験生は下線部だけ読んで英訳を試みるわけですが、なぜに東大側が下線部前後の文章を載せているのか考えてみてください

それは、訳しづらい箇所が出てきた時にヒントにして欲しいという思いを込めているからです。

4A正誤でも、4B英文和訳でも、5の物語文でも下線の所だけ拾い読みする受験生が多くいますが、東大教授も作問にあたり、そうした受験生の存在を想定してワナを仕掛けています。

2Bについては、確かに下線部だけ読めば何とかなることも多いのですが、2020年2Bの「まゆつばもの」のように、下線部以外のワードから適切な訳語を類推しなければならない設問も出されますので、臨機応変に問題文を活用しましょう。

なお、東大や京大の2Bでは堅い文体で人生訓などありがたいお話がよく出されますので、文意を正確に把握するためにも日本語の語彙力を磨くことも忘れないようにしましょう。

東大入試では、全教科的に国語力が高度に求められているからです。

また、人生訓の英訳訓練を京大や阪大あたりの過去問も使いながら訓練しましょう。それでは、①〜の順に見て行くとします。

「① さらにもう少し掘り下げてみると」の英訳を泥くさく考察してみた

英語の知識が豊富にある方なら、「掘り下げる」の訳語として、delvedigという訳語が思いつくかもしれません。

ですが、大多数の受験生は、delveなんて聞いたことないだろうし、「掘る」という日本語を逐語訳したdigなんて使えるのだろうかと試験会場で思われるはずです。

では、試験会場で気づける合格者の思考プロセスはなんでしょうか。

まず、課題文における下線部の位置に着目すると、文章の中盤に書かれており、その直前では、「なぜ歴史を学ぶようになったのか」を筆者が色々と考察している様が書かれています。
それを受けて、「さらにもう少し掘り下げてみると」と言っているわけです。
であるなら、「より深く分析してみると」と言い換えてanalyze the reason moreということも出来そうです。

でも、これでは、まだシンプルとは言えなさそうです。
ここで、「さらにもう少し掘り下げてみると」を5歳児にもわかるように言い換えてみましょう。
小さな子供に、「掘り下げる」なんて言葉を使ってもわからないしょうし、掘ると言われても土を掘るくらいしかイメージがわかないはずです。

ここでの「掘る」の目的語は、自分の考えをより深く掘り起こすことを意味しているのでしょうから、「より深く考える」と捉えてthink deeplyとすることも出来そうです。

でも、せっかくですから、ここで満足することなく、もう少し欲張ってみましょう。
「さらにもう少し掘り下げてみると」という一節に深い意味はありますでしょうか。
ハッキリ言って、何の情報価値もありませんし、強いて言うなら、「付け加えて」いるだけですよね。
であるならば、In additionFurthermoreといった高1でも知っているシンプルな表現で表しても十分のように思えます。

以上の考察をまとめてみます。

 

(試験会場で書きやすい超絶シンプルな表現)

In addition,

Furthermore,

Moreover,

といった情報追加の機能を持つ副詞

 

(ちょっと工夫が必要な表現)

think deeply

→実際に答案に書く時には、目的語を明示したいのでthink about the reasonitで受けてもOK) more deeplyにした方が良いでしょうし、後続の文との関係を考えるなら、分詞構文にしてthinking more deeply about the reasonsthinking deeply about itにしたり、If節を繋ぎ役にしてIf I think more deeply about the reason、あるいはもっとシンプルにwhen I think deeply about itなどとすることもできますが、ちょっと処理量が増えてしまうのがネックです。

分詞構文を利用して敢えて目的語を示さずThinking deeplyだけで書くことも出来なくはないと思います。

また、そもそもdeeplyという副詞が思いつかない場合は、シンプルにmoreだけでも良いと思います。

もちろん、deeplyやらdeepが思いつけばコロケーション的にも良いのですが、試験会場でパニックを起こしている時に何も思いつかないのであれば、中学レベルの英単語を組み合わせてみたり、下線部を思いっきり意訳して、もっとも主張したい「核」のところだけ端的かつ明瞭に書いて1点でも多く稼ぐスタンスは重要です。

 

(本番で気づくことは難しいが、こんなの書けたらイイネという表現)

When I delve a little deeper

If I dig into the reasons a little more

Digging a little deeper

when I dug deeper into it

On deeper reflection

 

いかがでしたでしょうか。
模範答案を眺めて「すごいね!こんなの書けたらいいね!」という感想だけで終わっていた方は、ぜひ、頭の中に入っている知識を駆使できるように、与えられた日本語文を英訳しやすいように別の日本語に言い換える和作文を実践してください。

今回の「さらにもう少し掘り下げてみる」であれば、
「もう少し深く考えてみると」
「もっと分析してみると」
「さらには」といった具合に、
どんどんパラフレーズ(言い換え)してみましょう

言い換えに際しては、小難しく考えるのではなく、5歳児に説明するくらいの気持ちで、日本語の語彙レベルを落として言い換えてみると良いでしょう。

我々の脳内にストックされている日本語の語彙数に比べ、英語の語彙数は微々たるものなわけですから、ストレートに英訳できないことは多々あります。

そうした問題を解決するのが、与えられた日本語文を英訳しやすいように加工する技術なのです。
和文英訳というと、日本語→英語にダイレクトに訳されることをイメージされる方が多いと思いますが、日本語→日本語→英語というプロセスを経ることで難易度の高い英文にも怖気つくことなく冷静に英訳を試みる勇気が芽生えてきます。

この手法は、第一線でご活躍されている翻訳家や同時通訳者の方も多用されているようです。ぜひお試しください。

「② 日本の近代化がヨーロッパの影響を受けながら辿ってきた道筋を考えるには」の英訳を泥くさく考察してみた

最も英訳しづらいパートです。
筆者の草光さんは受験生に英訳してもらうことを前提に本文を書いたわけではありませんから、我々で英訳しやすいように加工する必要があります。

まず、「〜考えるには」とありますが、
これは後続の「そのヨーロッパのことをもっと知らなければならない」との関係を考えるに、
目的と手段の関係にありますから、
「考えるためには」と言い換えられ、
目的を示す不定詞toやin order toが使えそうだとわかります。

「考える」の訳語としては、think aboutで十分だと思いますが、
「道筋を理解するには」と言い換えることもできそうですから、
understandを用いることもアリだと思います。

 

次に、「日本の近代化がヨーロッパの影響を受けながら辿ってきた道筋」の文構造ですが、

となっています。

字義通りに訳すなら、道筋をthe paththe processとでも考えて、関係代名詞でつなげる形がパッと思いつくところではありますが、「道筋」の訳語を思い出せなかったり、関係代名詞を何らかの理由から使いたくないといった場合、どうしたら良いでしょうか。

そこで登場するのが和作文です。
要は、ここで言おうとしていることは、
どんな風に日本は近代化してきたのかということですよね。

「どんな風に」という日本語を紡ぎ出せたならhowthe wayが使えそうだとわかります。

日本の近代化に関しては、Japanese modernizationJapan’s modernizationといった具合に、日本語と同様に名詞で表すこともできるでしょうが、howやthe wayを用いるのならSVを作り出さねばなりませんので、how Japan achieved modernizationhow Japan has become a modernized countryhow Japan modernizedthe way Japan came to be modernizedなどと表現する必要があります。

ここで終えても良いのですが、本稿は格闘する和文英訳を謳っていますので、さらに格闘してみます!

試験会場でmodernizationが思いつかなければ、どうしたら良いのでしょうか。

2日間に渡る入試の最後の科目なわけですから、いつも以上に、この英語で合否が決まると意気込みすぎてしまうこともあるでしょう。
その時に、緊張のあまり頭が真っ白になってしまうことも十分に考えられます。

そうした時には、「近代化」ってどういうことなのかを考えて、国が発展することだと思いついたなら、超絶シンプルにdevelopでまとめてみることもできるでしょう。

すると、how Japan has developedと中学レベルの英語で表せることに気づけます。
完了形を利用しているのは、developを動詞として用いるのなら、発展した恩恵が現在にまで影響を及ぼし続けているというニュアンスを示したかったからです。

もっとも、過去形だけで表しても大幅な減点まではなされないと思います。
ただ、過去完了まで使うかについては判断が分かれるところです。
過去完了は入試英作文においては出来れば使用を回避したい文法表現だと考えています。
なぜなら、過去完了を使わずとも先後関係が明確な時は過去形だけで済むのに、敢えて過去完了を使う受験生が多く採点官からすると違和感を覚えるものばかりだからです。
もちろん、使わなければならない時もありますが、文法ミスを誘発しやすい単元でもありますから、使わないに越したことはないでしょう。

加えて、developだけで、果たして「近代化」のニュアンスをピンポイント示しているのかという疑問が湧き上がるかもしれません。

厳密にはNOですが、developmodernizationを包含する上位概念ですから(厳密にはmodernizationdevelopmentは異なるとも言われています。それは、両者とも、その中身が一意的に定められるものではないからです。ですが、そんな厳密性を僅かな試験時間内に求めるのは非現実的であり、modernizationが思いつかずとも何か答えを紡ぎ出さねばならない緊急状態でならdevelopを書く勇気も必要だと私は思います)、modernizationが思いつかなければ減点覚悟で私ならdevelopを使います。

なお、modernizationが思いつかず、なぜか「工業化(industrialization)」や「西洋化(westernization)」が思いついた場合、何も書かないよりは減点覚悟で書いた方が良いです。

ただし、industrializationwesternizationは、ベン図で言えば、modernizationに包含される構成要素に過ぎませんから、
私ならdevelopの方を使うと思います。

 

残るは「ヨーロッパの影響を受けながら」の部分ですが、直訳調で表現するなら、under the influence of Europeとなるでしょう。

ただ、もしも、「日本の近代化」をJapanese modernizationと訳出できているのなら、これを主語にしてinfluenceを動詞化した上で、how Japanese modernization was influenced by Europeと受動態で書き表すこともできるでしょうし、受動態を使いたくなければhow Europe influenced Japanese modernizationと表すこともできます。

一方、「日本の近代化」をhow Japan has developedと緊急プランで訳出したのなら、分詞構文を用いてhow Japan has developed, influenced by Europeとでもなるでしょうか。
あまり見ない形ですし、少し不細工ではありますが。

もしも、試験会場で「influence」のスペルをド忘れしたり、類義語のaffectも思いつけなかった場合にはどうすれば良いでしょうか。

私なら、by the impact of Europeと言い換えるかもしれません。

あるいは、「日本の近代化がヨーロッパの影響を受けながら」を少々強引ですが「どのようにしてヨーロッパが日本の近代化を手助けしてきたのか(how Europe helped Japanese modernization / how Europe helped Japan develop)」としたり、「どのようにしてヨーロッパが日本の発展に寄与したのか(how Europe contributed to Japan’s development/ how Europe encouraged Japan to develop)」としたりすると思います。

多少のニュアンスは変わるかもしれませんが、本筋からはズレていないと思います。

ここで大切なことは、与えられた課題文を読み込み、試験会場で思い出せる英語表現でなんとか答えを紡ぎ出す姿勢です。
パッと見て分からなくても、わかるように下線部分を加工する工夫こそ、東大和文英訳制覇の極意なのです。

「③ そのヨーロッパのことをもっと知らなければならない」の英訳を泥くさく考察してみた

「なければならない」から考えますと、shouldhave toあたりが考えられるでしょうが、時制の一致を受けて過去形にすることを忘れないようにしたいところです。

その上で、「〜のことをもっと知らなければならない」を英訳してみますと、had to learn more about, needed to know moreあたりの中学英語で表現できそうです。

なかには、I should have more knowledge aboutのように書いた答案もありました。

とはいえ、あまり、このパートには難解な表現はありませんから無理に言い換え(和作文)を決行する必要性はないでしょう。

 

少し厄介なところといえば、「そのヨーロッパ」という表現でしょうか。

字義通りに捉えて、that Europethe Europeとすると採点官からすると違和感を感じるはずです。
本文では確かに「その」という指示語が「ヨーロッパ」を修飾していますが、具体的な地名にthatやtheを付けて特別なニュアンスを示すような用法は、ネイティヴにも確認しましたが、あまり聞かないのが正直なところです。

文学的な作品の中でなら、私の知る東京は、もはや「あの」東京ではないといった具合に書き表すこともできるのかもしれませんが、そんなレトリックを入試英作文で用いるのは危険です。

確かに、「日本の近代化に影響を与えたEuropeと限定しているのだから、意味はあるのではないか」という疑念もあるかもしれせんが、やはりEuropeEuropeでしかないので、thethatを付けるだけで特別な意味を持たせるのは困難であり、どうしても何かしらの意味を添えたければ関係代名詞などで細かく説明するべきでしょう。

あるいは、Europeを2回使わずに、代名詞itで受けてしまうのもアリだとは思います。

もっとも、これは、ある意味、知識であり、このような指摘を後付け的に知ったとしても、試験の真っ最中にはそんなことはつゆ知らず、the Europethat Europeと書いてしまった受験生もいたことでしょう。

多少の減点覚悟で書く分には構わないと思います。

東大英語は事務処理能力テストですし、満点を取るゲームではありませんから、ここで1点引かれても構わないと考え、答案を完成させることに注力する切り替えも大事です。

「④ といったことも感じていたのだった」の英訳を泥くさく考察してみた

ここはシンプルにI felt やI also feltで良いと思いますが、「感じているのだった」と評価しているのは現在だと考えるならI realizeと書いたり、もっと簡単にI also thinkと捉えたりすることもできるでしょう。

なぜにrealizethinkを現在形で表しているかというと、「感じていたのだった」は、「ああ、あの当時は、そんな風に思っていたんだろう」と過去のことを現時点で回想しているようにも思えたからです。

なので、realizethinkを用いるなら現在形の方がよいと判断しましたが、合格者に聞く限り、ここまで深く考えずに時制の一致で普通に過去形で表現していた人の方が大多数でしたから、採点において不利になることはさほどないようにも思えます。

その一方、feelを動詞として用いるのなら、「感じた」のは過去の事実ですから、確実にfeltと過去形で表記すべきでしょう。

 

さて、以上のように4つのパートに分けて分析考察してきたわけですが、各パートの表現を組み合わせれば答案骨格は出来上がります。

その上で、英作文における7つの大罪でもお伝えしたように、時制や三単現のsなどに注意して、スペルミスやピリオドつけ忘れといった初歩的なミスを犯さないように最後の仕上げをしていきましょう。

最後まで油断しないことが合格ポイントです!

さて、ここで、いくつかの答案例を示したいと思います。

これなら私にも書けるかもと思わせてくれる答案例

① In addition, I also felt that I had to learn more about Europe in order to think about how Europe helped Japan modernize.

 

② When I thought deeply, I realized I had to know Europe more to understand Japanese modernization which was influenced by Europe.

 

③ Furthermore, I also realized that I needed to know about Europe so that I could understand how Europe had an impact on Japan’s modernization.

 

④ In addition, I felt that I had to have more knowledge about Europe in order to think about the process of modernization in Japan which was influenced by Europe.

 

⑤ Moreover, I also felt that in order to understand the way Japan developed owing to Europe, I had to learn about it more.

 

こんなのを書いてみたいと思わせてくれる答案例

① When I delved a little deeper, I also felt that I should know more about Europe to better understand how Japan had achieved modernization under the influence of Europe.

 

② On deeper reflection, I also realized keenly that in order to understand how Japan modernized under the influence of Europe, I needed to learn more about it.

 

いま話題のchatGTPが考えた答案例

① When I delved a little deeper, I felt that in order to consider the path that Japan’s modernization took under the influence of Europe, I needed to know more about Europe itself.

 

② Furthermore, upon further examination, I felt that in order to consider the path that Japan’s modernization had followed while being influenced by Europe, I needed to know more about Europe.

 

③ Furthermore, when I dug deeper into it, I felt that in order to consider the path that Japan’s modernization had taken under the influence of Europe, I needed to know more about Europe as well.

 

④ Delving a little deeper, I realized that in order to consider the path of Japan’s modernization, which has been influenced by Europe, it is necessary to acquire a better understanding of Europe.

 

なお、chatGTPに関しては、以下の記事もよろしければご覧ください。

いま話題のAI学習システム chatGTPは東大対策に有効!?

解きっぱなしで終わらせない。2023東大英語2Bの復習用重要表現集!

今年度の問題で、日本の近代化が取り上げられたこともあり、せっかくですから有益な表現や背景知識を皆様に吸収していただければと願っております。

日本の近代化(Japan’s modernization / Japanese modernization)というと、真っ先に思い浮かぶのが明治維新(the Meiji Restoration)ではないでしょうか。

東大名誉教授の北岡 伸一先生によると、明治維新の原動力(the driving force behind the Meiji Restoration)は、自由を渇望(a strong desire for freedom)する人々の想いにありました。

この改革を通じて、それまでの厳格な階級制度(the strict class system)は廃止(abolish)され、民主的な制度(the democratic system)が創設(create)されました。

その結果、多くの日本人は、自身の才能を開花することができるようになったのです(allow many Japanese people to unleash their full potential)。

日本は民主的な理念のもと(under democratic ideals)近代化を図りながらも、元来の伝統をも維持する(preserve its own traditions)ことが出来た国であり、その事実は非常に価値ある(valuable)ものです。

日本は非西欧諸国(non-Western countries)の中で、初めて先進国(a developed country)になれた国です。

きっと、世界の途上国(developing countries)にとって、自国を発展(development)させ、近代化(modernization)させるにあたり、最良の模範(the best example)となるでしょう。

世界の途上国には、言うまでもなく、それぞれの文化や伝統(culture and traditions)があります。それらを尊重した上で、途上国の近代化に向けて、教育(education)や公衆衛生(public health)やインフラ(infrastructure)整備における発展を促すことが肝要です。

それでこそ本当の意味での発展に寄与(contribute  to)できるというものです。その上で、日本政府(the government of Japan)が公開している以下の明治維新関連の英語長文を是非ご一読なさってください。

(リンク)

https://www.japan.go.jp/tomodachi/2018/spring2018/the_origin_of_japans_modernization.html

東大和文英訳対策 類題演習題材のご紹介〜入試問題良問選〜

本稿の冒頭でも申し上げた通り、世の中には和文英訳の問題は腐るほどあるも、東大の和文英訳に類似した問題はなかなか入手できません。

そこで、東大受験生の皆様が少しでも和作文の訓練ができるよう、京大や阪大など他大学の過去問をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。

次の文章を英訳しなさい。
人間、損得勘定で動くとろくなことがない。あとで見返りがあるだろうと便宜を図っても、恩恵を受けた方はコロッと忘れているものだ。その一方で、善意で助けた相手がずっと感謝していて、こちらが本当に困ったときに恩に報いてくれることもある。「情けは人のためならず」というが、まさに人の世の真理を突いた言葉である。
(京都大学2023年)

(敬天塾コメント)

いやー、さすが京大です。「損得勘定」や「情けは人のためならず」といった表現は、まさに和作文しなければ英訳できないですね。
京大はリスニングや物語文や正誤問題といった問題がない分、一題一題がとてつもなく歯ごたえのある問題で構成されており、その分、学びも多いと言えます。

次の文章を英訳しなさい。
海外文学の楽しみ方は、大きく分けて二つある。「自分と似ている部分を楽しむ」ことと、「自分と異なる部分を楽しむ」ことだ。知っているから面白いし、知らないから面白い。ぜひ両方の要素を堪能してもらいたい。むろん、知識が増えればそれに比例して視野が広く深まり、目に見える世界が変わっていく。画面が大きくなって、解像度が高くなると言ってもいい。
(大阪大学文学部2023年)

(敬天塾コメント)

いやー、これまた、実に素晴らしい問題です。
「解像度が高くなる」を間違っても直訳してはいけません。
ちなみに、大阪大学文学部が本問に対して、次のような採点講評を発表しましたので、ご紹介いたします。
※赤字化は筆者

海外文学の楽しみ方という文学部志望者に関係の深い素材を扱った随筆文の一節をとりあげ、文章の趣旨を十分に理解した上で、その内容を明確に自然な英語で表すための語彙力、文法能力を総合的に評価する。対比や比喩の表現を適切に用いること、比喩的な表現については、平易な語彙に柔軟に置き換える工夫も求められる

(阪大採点講評リンク)https://www.osaka-u.ac.jp/ja/admissions/faculty/general/pastexam-answer/sxm9h8

次の文章を英訳しなさい。
言うまでもなく、転ばぬ先の杖は大切である。しかし、たまには結果をあれこれ心配する前に一歩踏み出す勇気が必要だ。痛い目を見るかもしれないが、失敗を重ねることで人としての円熟味が増すこともあるだろう。あきらめずに何度も立ち上がった体験が、とんでもない困難に直面した時にそれを乗り越える大きな武器となるにちがいない。
(京都大学2021年)

(敬天塾コメント)

はい。京大の和文英訳にハズレはありません。
受験会場で目にしたら涙が出てくるかもしれません。
「転ばぬ先の杖」や「円熟味」なんていう言葉の訳語を知っている人は、帰国子女にもいないはずです。
つまり、ちゃんと意味を考えて、わかりやすい日本語に言い換えてくださいね、と京都大学は受験生に問うているわけです。

下線部を英訳しなさい。
・・・・。というのも、三十代以後のことを考えないということは、自分が何をしたいと思っているのか、自分のライフワークは何か、をはっきりさせないで宙ぶらりんの状態に自分の身を置くことだからだ。
(東北大学2021年一部抜粋)

こちらは、詳細な採点講評を毎年6月から期間限定で公開していることで有名な東北大学の問題です。
「宙ぶらりん」という言葉をどこまで噛み砕いて平易な英語に訳せるかが勝負の要となっています。

(東北大学の採点講評関連記事リンク)https://exam-strategy.jp/archives/7333

 

いかがでしたでしょうか。
ぜひ、京大や阪大や東北大の過去問も有効活用しながら、東大2B和文英訳を制覇してください!

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映像授業【東大英語 第2問B 和文英訳】

2022年東大英語(第2問B 和文英訳)入試問題の解答(答案例)・解説

2021年東大英語(第2問B 和文英訳)入試問題の研究

 

 

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