2022年(令和4年)東大数学を当日解いたので、所感を書いてみた。

敬天塾の塾長が東京大学の二次試験当日(2022年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。
現時点での考察結果なので、後日、分析内容が更新される可能性があります。

【科目全体の所感】

総合難易度 やや難(昨年並み)
相対評価としては昨年並みだが、2020年、2021年と難しかったので、絶対評価としてはやや難。

トピック① 昨年と比べ、低得点者が増えそう
昨年は、第2問(2)、第3問(1)、第4問(1)が簡単で、取り組めば点数が取りやすい問題でしたが、今年はそのような問題が消滅したと思います。。
今年の第1問(1)、第2問(2)もパッと見は簡単そうではあるのですが、どちらもひとヒネリあり、見た目ほどは簡単じゃないです。非常に取りやすい問題は第4問(1)だけで、1桁台などの低得点者が増加するのではないかと予想します。

トピック② 高得点者も存在する。

一方、昨年の第2問や第4問の後半のように高難度の問題がなくなったため、非常に数学が得意な受験生は高得点が可能になりました。とは言っても、そんな受験生はほんの一部だと思うので、ほとんどの受験生にとっては各大問の後半はどれも取りづらくて、事実上は50点満点くらいの試験になっていると思います。

以上を踏まえ、昨年より得点がバラつきやすい問題の並びであるけれど、平均点は低くて10~20点くらいがボリュームゾーンになりそうだと思います。

トピック③ 通過領域が出なかった。

毎年出題されていた通過領域の問題が亡くなりました。通過領域を対策してきた受験生にとっては、肩透かしにあったような気分になったことでしょう。

トピック④ 確率が復活した
しばらくでなかった確率が復活しました。
しかし、独立試行(反復試行)の問題だったので、結局は場合の数の問題の延長でした。

トピック⑤ 漸化式の問題も復活
整数と漸化式の問題も復活。かつてよく登場していたタイプの問題ですが、漸化式に2乗が含まれていることでパターンが見えづらくなってしまいました。

文系第1問 放物線と接線、放物線と円

難易度 やや難

(1)は一見よくある問題です。bをaで表す条件は、今年の問題で最も簡単な問題の一つでしょう。「aをすべての実数を取ることを示せ」という問題が付されていますが、これを示すのに戸惑う人もいるかもしれません。これのせいで配点が分散され、平均点を押し下げる原因になると思われます。

(2)は、「ああ接線ね」と簡単そうに見えるが、実は条件の選び方が難しい問題です。様々な別解が考えられるが、計算量が多くなるものが多いため、結局最後まで解ききれずに終わった人が多いだろうと思います。

昨年の第1問(円と3次関数の問題)の問題を思い出させる問題でもあり、対策が生きたという人もいるかもしれません。
昨年は円と3次関数が絡む問題でしたが、今回は円と放物線です。しかし、よく読むと放物線に対して、接する円が二つ登場する問題です。
円と放物線の問題というと、普通は円と放物線が1つずつ登場し、接する条件として連立して判別式、などが多いと思いますが、今回は円が2つ登場するため、これをどうするかが難しい問題です。

連立して方程式の理論に持ち込むか、図形的に処理するかなど、悩みどころが多く、最後まで解ききるには難しいと思われます。

文系第2問 三次関数の法線と交点の座標の関係

難易度 標準

第1問から連続して関数の問題。しかも3次関数や法線などの、馴染みのある単語が羅列され、これも手を付けやすい問題。
と思いきや、(2)と(3)に見えるβとγの式が気持ち悪いです。

(1)は方針が見えやすい問題。法線の式を作って、Cと連立させて、解が3個あればよいです。

しかし、法線が出てくるので式に分母が発生し、これが面倒。分母を払うと次数が上がるし、分母のままだと気持ち悪いし。これをどうするかは、計算の慣れ次第でしょう。

3次方程式が出ますが、解の1つはx=αなので、これを利用して因数分解をしますが、因数分解後に「x≠αの解を持つ」という条件が必要なことが忘れやすいかもしれません。(これのせいで、また低得点者が増えるのでしょう)

(2)は、分母の処理に気を付けて計算する問題。解答の方針は、さっき作った因数分解の式の解をβとγとおいて、解と係数の関係を使えば解けます。
ただし、これも「≠0」を示す」というのが、やや不慣れかもしれません。

(3)は、(1)のαの範囲を使い、(2)の変形を使えば、関数がαに統一されます。

文系第3問 漸化式と3で割ったあまり、最大公約数

難易度 やや難 

(1)はちょっと昔見られたパターンによく似ている問題。
1993年や、2000年代前半、2016年にも出題されています(見逃しあるかも)

余りは周期性と絡めることが多いので、いくつか試せば解けると思います。

ただし、(2)の最大公約数の問題は、現行過程になってからの範囲ということもあり、2017年の問題が近いと言えば近いでしょうか。

最大公約数の処理をどうするかが難しいところ。
漸化式に2乗があって単純な互除法に持ち込めないし、3つの数字の最大公約数の処理はあまり見たことないし、ということで難しい問題だったと言えます。

文系第4問 座標平面上のベクトルで定まる確率

難易度 やや難 

複雑な設定の問題。
裏が出たら停止、表が出たらそれまでに出た裏の回数分だけ120度回転させてから直進させ、最終的に原点に落ち着かせる問題です。

基本的には独立試行(反復試行)の問題なので、順列を考えればよいと思いますが、その順列が何通りあるか考えるのが難しい問題でした。
なぜなら、裏が何回出るか、だけでなくて、どのタイミングで出るかまで調整しなければならないから。

(1)は簡単。今回の4問のうち、最も簡単な問題ですので必ず取りたい問題ですね。

(2)は98回のうち8回裏が出るという設定。その裏がどこに出るのか。裏が何連続出るのかを正確に数えなければならない問題です。しかしその計算方法が難しく、重複を許す組み合わせが登場します。重複を許す組み合わせは、たいていが別の設定かなと思ったら、実は重複を許す組み合わせに持ち込めた、となるため、気づきづらかったと思います。

なお、このように面倒な場合分けを正確に行う問題は、ここ最近出題されている問題傾向だったので、過去問や類題を解いている人は解けたかもしれません。

【個人的なつぶやき】

東大の作問能力は、毎年すごいなと思うし、感服します。
円と放物線の問題は何度も見たことあるけど、去年は3次関数と絡め、今年は円が2つ登場する、取った感じに、新しい設定で、かつ絶妙な問題の難易度で出題してくるところが、本当にすごいし、面白いなと思います。

第3問の、3数の最大公約数に絡めるところや、2022とうまく絡めるところも、面白い。

手を変え品を変え、色々なパターンの問題に着手して、受験生全体のレベルを上げていくところが、公益に寄与しているなと思います。

また、共通テストは難しくなってあれだけ騒いだのに、東大ではあそこまで極端な難化はしないし、問題の分量もちゃんと調整されているし。
指導者として、センターや共通テストには腹を立てたくなることがあるのに、東大の問題にはそうならず、逆に反省するばかり。

こういう学び舎に、志を持った生徒を一人でも多く送り込みたいなと思います。

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