東大世界史2014年第1問 答案の比較をしてみよう
こんにちは!敬天塾スタッフXです!
今回は弊塾の世界史授業・第二回で取り扱った、2014年世界史第一問の大論述の解き方・考え方についてまとめていきます!
まずは問題文を読んでみましょう。
・2014年世界史 第一問
19世紀のユーラシア大陸の歴史を通じて、ロシアの動向は重要な鍵を握っていた。ロシアは、不凍港の獲得などを目指して、隣接するさまざまな地域に勢力を拡大しようと試みた。こうした動きは、イギリスなど他の列強との間に摩擦を引き起こすこともあった。
以上のことを踏まえて、ウィーン会議から19世期末までの時期、ロシアの対外政策がユーラシア各地の国際情勢にもたらした変化について、西欧列強の対応にも注意しながら、論じなさい。(以下省略)
【指定語句】
アフガニスタン イリ地方 沿海州 クリミア戦争 トルコマンチャーイ条約 ベルリン会議(1878) ポーランド 旅順
問題文を読んでみると、どうやらロシアの南下政策について書けばいいということが分かりますね。
しかし気をつけないといけないのは、「国際情勢にもたらした変化」「西欧列強の対応にも注意しながら」とあるように、ロシア以外の国についてもしっかり記述しなければならない点です。
単純なロシアの一国史だと考えてしまうと痛い目にあいますよ!
次に指定語句。
クリミア戦争やベルリン会議(1878)はなんとなく使い方が分かりやすいですが…
アフガニスタン、イリ地方、沿海州、トルコマンチャーイ条約、ポーランドなどは実に受験生が嫌がりそうな単語ですね…
「トルコマンチャーイ条約」を正しく説明できるという人はかなり少ないのではないでしょうか?
僕も受験生の頃、過去問としてこの問題を解きましたが、「イリ地方」や「ポーランド」の使い方がわからず非常に困惑した記憶があります。
過去問の大論述の語句でわからないものがあれば、解き終わった後にしっかり復習しておくことが重要ですね。
さて、それでは実際に、弊塾の塾生が書いた答案に対し、どのような良かった点や改善すべき点が見られたかを紹介していきます!
①ロシアの南下政策の各地の状況の羅列のようになってしまっている答案
大論述でよく見られるのが、指定語句と問題に関連する語句の説明に終始してしまうという答案です。
今回の授業でも、そのような答案が見られました。
問題文でも問われているように、「国際情勢にもたらした変化」を答える必要があるので、国々の提携の「変化」について触れたいところですね。
そして「国際情勢の変化」を書く上で忘れてはいけないのは、因果関係を正しく書き表すことです。
この答案では、トルコマンチャーイ条約とアフガニスタン侵攻の前後関係が逆になっているミスがありました。
東大世界史では「変化」を問われることが非常に多いので、出来事の因果関係・前後関係を正しく把握することが重要です。
②攻めようとしているが抽象化に失敗している答案
「攻めの答案」という概念があります。これについては別の回でまた詳しくお伝えしますが、簡単に言えば攻めの答案とは、ただ物事について羅列するのではなく重要なポイントをうまくまとめて抽象的に表現する、というものです。
今回の答案では、攻めの答案作成に挑もうとしているものの、少し失敗してしまっているものがありました。
この生徒は、清とオスマン帝国という2つの国を軸に回答を書くことを挑戦していました。もちろん、ロシアの南下政策についての問題で「清とオスマン帝国」というロシア以外の国に着目するのは非常に新鮮で独特な視点ではありますが、当時の国際情勢を考えても、全盛期はとうに過ぎ、国際的な影響力もほとんどなくなったこの2つの国にあえて注目する必要はあるかと言われると微妙なところですね…
他の人とは一味違う回答、というのは大事ですが、問題文が求めている内容からあまりにも逸脱していると減点の対象になりかねません。
今回の授業ではもう1人、攻めの答案作成を頑張っていた人がいました。
それが次の答案です。
③あえてイギリスとロシアの関係に絞って書いた答案
国際情勢について書けという問題で、2国を軸にして書いている「攻めの答案」ですね。
②よりも、さらに的を射た捉え方ができており、点数もある程度期待できそうです。
当時商業においても軍事においても世界中の海を制していたイギリスは、自分の持っている利権である海にロシアが進出してくるのをどうしても防ぎたいという思いがありました。
逆にロシアとしては、フランスから援助を受けて莫大な借金をしてまで極東へシベリア鉄道を敷くほどに不凍港を求めていました。
ロシアが不凍港を求めて進出していくのを阻止したいイギリスは、条約や戦争を通じてロシアを止めようとします。
19世紀、世界最強だったイギリスと、それに追随しようとするロシア。
「海」を一つのテーマとして統一して書くならば、今回の問題においても「イギリスとロシア」の2国に注目して書くのもよいかもしれませんね。
「骨組み」を意識した答案作成を!
さて、今回の問題ですが、授業中に良い質問が出ていました。
それは、「A→B、B→C」のように、「何かが原因で何かが起こる」という連鎖を、どこまで書けばよいのか?という質問です。
確かに、歴史上の出来事は連鎖的に何かと関連して様々な事件が起こり、それをどこまで書けば良いのかわからないことが多々あります。
こんな時はまず、「答案の骨組み」を考えることが重要です。
問題文に示されている課題から、何を軸にして書くかを決めてしまえば、あとは肉付けをしていく作業になります。
その肉付けとしてふさわしいものをじっくりと取捨選択していきましょう。
今回の問題であれば、範囲が19世紀末までとなっているので、1900年代以降の話には触れなくてもよいとわかります。
また、字数にゆとりがありそうであれば、指定範囲より後の時代のことでも、例えば「後の日英同盟につながった」のように、その後どのような影響を与えたのかを書くこともできます。
骨組みに添いながら、字数に合わせて必要な分を書くようにしましょう。
こうした字数調整や、どこまで書けば良いのかを知るためには訓練が必要です。
駿台模試のような冠模試では、限られた時間の中で頭の中の知識を引っ張ってきて書く練習ができます。
模試を受ける時も、骨組みを意識した回答作りをしていきましょう。
今回は以上です!次回の世界史授業もお楽しみに!
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