2022年(令和4年)東大英語を当日解いたので、所感を書いてみた。
敬天塾の講師が東京大学の二次試験当日(2022年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。
目次
【科目全体の所感】
総合難易度 難易度は標準程度だが、処理量などの増加に伴いやや難化したと考えられる。
今年度の英語は、どの大問も大きな形式の変更がなく、比較的オーソドックスな形式でした。
全体的にどの大問においても文章に使われている単語や文法は難しいものがさほど多くなく、一通り読んで内容を理解するのも容易なものが多かった印象です。
第1問B(イ)や第5問(B)の並び替え問題も、活用させるなどのギミックがなかった上に難易度もそれほど高くなかったので、ほとんどの人かここで得点することができたのではないでしょうか。
英作文や英文和訳に比べ、正誤がはっきりしてしまう並び替えはしっかりと押さえておきたいところですね。
また、第2問の英作文についてですが、抽象的で少し難しかったとはいえ、問題自体はTOEFLのライティングでも出題されるようなオーソドックスなものでした。
2018年の「ジュリアス・シーザー」のような問題は別として、近年はある程度英作文の王道から外れていないものが出題される傾向にあるので、オーソドックスな問題を使っての英作文の練習を地道に進めておくことが有効なのではないかと思います。
全体を通して、2A自由英作文で凝った内容を考えようとした人は深みにはまってしまい時間が足りなくなってしまったのではないかと思います。
取れるところを取りに行くスタンスが東大入試全体で求められるスキルだと感じさせるセットでした。
第1問A 英文要約
難易度 標準
第一問の要約は、「食」と人間の特殊性について述べた文章でした。
使われている単語自体はそれほど難しくなく、平易な文章ではあるので、文章の内容自体を一通り理解することは比較的すぐにできそうです。
ただ、文章を一通り理解しても結局何が言いたいかわかりにくく、要約しようと思うとどの部分を引っ張って来れば良いのかの判断が難しいという印象を受けました。
総合的には、標準的な難易度だったのではないかと思います。
第1問B 文挿入問題
難易度 標準
今年の1Bの形式は、文章の穴埋めと並び替えでした。形式としては昨年2021年の問題から引き続き変わっていません。
文章の内容としては、「会話」についてのMastroianni氏の研究を紹介するもので、論理がしっかりとした文章でした。
読みにくさもなく、選択肢も紛らわしくないので解けた方が多いのではないでしょうか。
第2問A 自由英作文
難易度 難
「芸術は社会の役に立つべきだ」という主張についての考えを述べさせる、というお題でした。
東大は近年、2018年(抽象的テーマ)→2019年(日常的テーマ)→2020年(抽象的テーマ)→2021年(日常的テーマ)といった具合に偶数年に抽象的なお題を取り上げる傾向にありますが、そうしたセオリー通りの出題となりました。
こうした抽象度の高い問題を前にした時に、抽象的に論じてしまうと字数や語彙の面で袋小路にはまってしまいます。ですので、いったん飛ばすか、自分が得意とするフィールドに持ち込んで答案づくりをすることが戦略的に有効です。
また、芸術の意義を問う問題は過去にTOEFLのライティング試験においても出題されています。東大は2019に祝日ネタを、2021年に住み良い街の条件を出題していますが、これもTOEFLで出題済みです。
このことから、近年はTOEFLで出題されるような比較的オーソドックスな英作文が増えていると考察できるので、英語の勉強を進めていく上でTOEFLの本にも触れることが重要だと考えられます。
第2問B 和文英訳
難易度 標準
2018年に20年ぶりの復活を遂げた和文英訳ですが、2022年度も変わらず出題されました。
「外部に立っているからこそ見えるものがあるのだから、それはそれでいいのだが、わたしなどは、もし自分が旅人ではなく現地人だったらこの町はどんな風に見えるのだろう、と考えることも多い。」
を英訳させる問題です。東大や京大で出される和文英訳は、人生観や旅や言語関連の話題が取り上げられることが比較的多い印象です。
ちなみに2022年度の京都大学でも、驚くことに旅に関するテーマで出題されました。
数ある旅の楽しみのなかで, 車窓からの眺めというのもまた捨てがたい。 そこに美しい自然が広がっていれば, ただただ目の保養になる。でも,ありふれた田舎や街並みを眺めているのも悪くない。そこに見かける, きっとこの先出会うこともなさそうな人々は, みなそれぞれにその人なりの喜びや悲しみとともに暮らしている。そう思うと,自分の悩み事もどこか遠くに感じられて, 心がふっと軽くなる気がするのだ。
さて、東大2021に話を戻しますと、和文英訳の極意は、一字一句バカ正直に訳そうとしないことにあります。今回であれば、「それはそれでいいのだが」を辞書的に訳出しようとしても時間がかかるだけです。
結局、この文では何を言いたいのかを考え、「和作文」することが求められます。
第3問 リスニング
難易度 標準
リスニングは、選択肢は5つで、問題文も2度読まれるという形だったようで、昨年から大きな形式の変化はありませんでした。
受験直後に受験者に感想を聞いてみたところ、以下のような感想をいただきました。
「全体的にほとんど訛りはなく、文のスピードも早くなく、雑音もほとんどなかったです。
(A)のオウム貝について語っていた女性の方の声はアナウンサーのように綺麗な発音で、クリアでした。
(B)は低い声の男性が読んでおり、滑舌が若干悪かったように感じました。ですが、(A)の女性の方の声がはっきりしすぎていたので、その後に聞いたからそう感じただけかもしれません。
(C)は再び女性の方で、破裂音をはっきり発音していたのが少し気になりました。ですが、スピードはそれほど早くなく、聞き取りづらいということはなかったです。」
このように比較的聞き取りやすい音源であったことから、それほど難易度が高いというわけではなかったようです。
難易度は例年からさほど変化していないと言えるでしょう。
第4問A 英文法正誤
難易度 標準(例年比)
近年の4Aは長文化傾向にあり、以前ほど易しくはありません。しかも、2021年度には、一部いやらしい設問も含まれていました。解くにしても例年以上に選別眼が求められました。
本2022年も、文法的な知識のみならず、相応の英文読解力が求められます。
3桁得点の受験者は総じて4Aでもしっかり点数を取っていますが、多くの受験生は、一番最後に当て勘でマークシートを埋めることも多いです。
速読速解がますます求められるようになってきているのが、この東大英語の特徴です。
第4問B 英文和訳
難易度 標準
構文的にも語彙的にも例年通りの印象です。
2019年以来のエッセイ調の文章でした。
受験生は是が非でも取りたい問題です。
東大模試の問題はいたずらに知識勝負や複雑な構文で受験生を動揺させにくることが多いがですが、東大がそのような問題は出題することはまずありません。この2022年度も従来の東大に同じくシンプルな問題でした。
4B英文和訳オープン授業リンク
第5問 エッセイ(物語読解)
難易度 標準(昨年比でやや易化)
出題形式は昨年度と同様、記述式2問、並べ替え1問、空所補充、そして内容一致問題の計11問構成でした。
出題テーマは、ジェンダーに関するものです。自分の家族と自分の性の認識のギャップに苦しむ筆者の思い出について書かれていました。
東大は世界史でも2018年に女性史を大論述で書かせています。2021年には地理でも女性の社会進出をテーマとした問題を出しており、東大側のメッセージを感じ取りました。
この長文の文章ですが、お決まりのように、冒頭は掴み取りづらかったです。
ですが、中盤以降は格段に読みやすく、2021年のような読みづらさはなかったものと思われます。
この第5問はきっちり取っておきたいところです。
ですので、細部にこだわらず全体像を早くに掴み取ることを意識したならば、前半で時間を浪費し、焦りで冷静さまで失ってしまった状態で文章後半に臨んでしまうというミスは回避できたでしょう。
やはり、ここでも過去問探究の重要性が見えてきます。
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