2022年(令和4年)東大世界史を当日解いたので、所感を書いてみた。

敬天塾の塾長と講師が東大の二次試験当日(2022年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。
※世界史の記事は敬天塾のおかべぇ先生が執筆しています。ちなみにおかべえ先生は、東大世界史で満点を取得した先生です!敬天塾のオープン授業【東大世界史】はこちら

【科目全体の所感】

総合難易度 標準

2022年の総合評価としては第2問と第3問の易化を踏まえると、
難易度  標準
と言えるだろう。

第一問大論述

難易度 難化

現役生フレンドリーな古代が問われた2021年度とは打って変わって、多くの受験生が盲点とする中央アジア史がついに出題されました。敬天塾の授業で予想していた通りの展開で、対策を取っていた受験生とそうでない受験生とで大きく点数差が生じる1問になったと思います。

敬天塾の『知恵の館』でも申し上げた通り、近年、東大は変則的な出題をしてきています。そして、ソグド人やトルキスタンなど中央アジア周辺地域の研究が進んだこともあり、ここ数年の難関国立大学で中央アジア史や北方民族史は出題ブームとなっていました。
2020京大第1問(ソグド人の活動と中国文化への影響)、2019京大第1問(4〜17世紀のマンチュリア史)、2018阪大第1問(ソグド人の政治・宗教・文化面での貢献)、2017京大第1問(前3世紀から後4世紀における匈奴史)、2016京大第1問(9〜12世紀のトルコ系の人々のイスラーム化過程)など、取り上げたらキリがありません。

中央アジアに関連する未出のテーマが、アフガニスタン史・ソグド史・トルキスタン史でしたので、東大側としては、研究も進み、高校生が用いる東京書籍の教科書などにもそこそこの情報が載るようになったことから、出題の機が熟したと判断したのでしょう。一応、中論述で、1989年にアフガニスタン史、1995年に東トルキスタン史を出題していますが、受験生の平均点がものすごく低かったと言われています。

なお、東大は、直近の京大の問題をパワーアップして出題することが過去何度かあり、塾生には最低でも5年分の京大過去問にも触れるように指示してきたが、ビンゴ!でした。

話は変わりますが、一昨日より新聞紙上を賑わせているロシアの南下政策について、東大2014第1問で大々的に問われました。この問題を敬天塾の授業でも取り上げましたが、その際、侵略する側だけではなく、侵略された側にも着目して周辺知識を固めることが大切だと説明をしました。
この時の指定語句には「トルコマンチャーイ条約」や「イリ条約」といった現役生が嫌がるワードも入っていましたが、過去問を解く際に、これらを丁寧に資料集用語集などで確認していれば、今年度指定された「ブハラ・ヒヴァ両ハン国」という語句も難なく活かせたはずです。

ここで、過去問一覧をご覧いただきたいと思います。

昨年度の問題は、上記の表のように1995年の大論述をベースに、周辺知識を整理していれば、最速で解くこともできました。過去問研究と事前準備量の「差」が、解答時間の「差」に直結し、それがそのまま日本史や地理に投下できる時間資源の「差」につながったとも言えます。

ですが、本2022年度は、国語でも数学でも世界史でも、過去問の安直な焼き直し問題は出題されず、より高度な思考力や分野を横断する力、部分点を取りに行くガッツが求められているような気がします。

今後も、このような出題傾向が続くと思われ、赤本の答えを丸覚えするだけで東大世界史はなんとかなると思っている受験生は根本的な戦略転換を強いられることになるでしょう。東大過去問が最高かつ最強のテキストであることに変わりはありませんが、それをどのように工夫して活かせるかが勝負の鍵となりましょう。

そうした観点に照らせば、実のところ、このトルキスタン大論述もなんら特異なものではなく、東大の伝統に従った良問だと言えます。東京大学は1989年入試以来の「人と物と文化(宗教)」の交流を強調するようになりました。
例えば81年には9〜10世紀のビザンツ・西欧・イスラム圏の政治・経済・文化の比較史が出題され、86年には西欧とイスラム世界の交渉と勢力関係、95年には地中海世界における文明の交流といった広域に及ぶ人の交流と移動をテーマにした問題が繰り返し出されてきています。
ですので、本問で問われている「周辺の地域に興った勢力がたびたび進出してきたが, その一方で,トルキスタンに勃興した勢力が周辺の地域に影響を及ぼすこともあった。」というお題は、十分に出題が予見されたものであり、むしろ、今まで出題されないのがおかしな分野だったとも言えます。

学習効果の非常に高い1題ですので、非受験学年の方は、ぜひ本問を通じて合格力を上げていっていただけたらと思います。

ちなみに、以下は授業中に扱った敬天塾予想問題プリントの解説の一部です。
あくまで概略ですが、ご参考までに。

第二問小論述

第二問総合難易度 やや易〜標準

難易度 問1 (a) 標準 (b)易 (c) 標準
           問2 (a) 標準 (b)標準
           問3 (a) 標準 (b)標準

東京大学は、ここ数年、

2017東大 1965年に独立国家シンガポールが成立した。その経緯について、シンガポールの多数派住民がどのような人々だったかについて触れながら、2行以内で説明しなさい。

2019東大 ニュージーランドが1920~30年代に経験した、政治的な地位の変化について2行以内で説明しなさい。

2019東大 太平洋諸地域は近代に入ると世界の一体化に組み込まれ、植民地支配の境界線がひかれた。地図中(※地図は省略、グアムを除く赤道以北のミクロネシアが図示されている)の太線で囲まれた諸島が、19世紀末から1920年代までにたどった経緯を2行以内で説明しなさい。

2020東大 オーストラリアは、 ヨーロッパから最も遠く離れた植民地の一つであった。 現在では多民族主義・多文化主義の国ではあるが、1970年代までは白人中心主義がとられてきた。ヨーロッパ人の入植の経緯と白人中心主義が形成された過程とを、2行以内で記しなさい。

2021東大 16世紀後半以降、植民地となっていたフィリピンでは、19世紀後半、植民地支配に対する批判 が高まっていた。1896年に起きたフィリピン革命によって、フィリピンの統治体制はどのように変化していくか。その歴史的過程を4行以内で説明しなさい。

2021東大 1990年代,南アフリカ共和国において、それまで継続していた人種差別的な政策が撤廃された。この政策の内容、および、この政策が撤廃された背景について、3行以内で説明しなさい。

このように、従来出題されてこなかったオセアニアやアフリカからも出題をしてきました。これは、羽田正東京大学名誉教授が10年ほど前から提唱されているアジアから見るグローバルヒストリー研究の流れにも合致しており、本年度の出題されたトルキスタン大論述に同じく、アジア地域から世界史を俯瞰する姿勢を受験生に強く求めたことによるものだと推察されます。

これら地域については、市販の論述本にはあまり掲載されていません。だからこそ、「差」がつくのです。

そうした流れから、2022年度も急所を突いてくるのかと警戒していましたが、第1問で中央アジア史を大々的に出題してきた手前、平均点が落ちることを危惧してか、この第2問では至ってシンプルな問題セットとなりました。

受験生としては、1問たりとも落としてはいけないセットになっていると思われます。

問1(a) ハンムラビ法典の制定時期と特徴

→ 高校の中間期末テストレベルの問題であった。制定された「時期」については、案外、ど忘れした受験生も多かったかもしれない。

(b)『世界史序説』を著した学者の名前

→ 共通テストレベルであり、絶対に落としてはいけない問題である。

(c)イラン革命で批判された従前の政策

→イラン史については出題可能性が高まっていると警鐘を鳴らしてきたが、パフレヴィー2世の政策について問われたのが本問である。
用語自体は共通テストレベルではあるものの、イラン革命や白色革命といった単語だけ単純暗記している受験生には難しく感じられたかもしれない。
日頃、教科書や資料集で見かける用語をこまめに用語集などで調べる訓練が東大中論述制覇の鍵と言えるだろう。

問2 (a) 大憲章(マグナカルタ)が作成された経緯を、課税をめぐる事柄を中心に論ぜよ

→ あまりに簡単な問題ではあるが、4行120字という字数に、何を書いて良いかわからないと焦った受験生はいたかもしれない。指定字数が多いと、深読みして、変な答えを書いてしまう人は、2021年の第2問フィリピン史でも散見された。

(b) マキャヴェリの『君主論』で問われた主張内容

→ 『君主論』を聞いたことがあっても、その中身までは確認してない受験生が多いのではと踏んで出題されたのだろう。東大は、しばしば文化史を政治と絡めて出題してきている。大論述でも2009年に宗教と国家、2007年には農業史などは好例であろう。倫理政治経済を学んだ受験生であれば、授業で取り上げられることが多い作品であるので、多少なりとも有利だったかもしれない。

問3  日清戦争敗北後に行われた変法運動(戊戌の変法)の概略と中心人物

(a) 変法運動の中心人物2名の名前

→ 人物名自体は、共通テストレベルではあるが、「2名」答えよと問われた時に、一瞬戸惑う受験生はいたかもしれない。

(b)変法運動の主張骨子と経緯

→ これも基礎標準問題であり、絶対に落としてはいけない問題だったと思われる。

第三問小問集合 戦争や軍事的な衝突が、人々の生活や意識に与えた影響

難易度  やや易〜標準

→ 問10の「インティファーダ」は地理選択者に有利な設問だったが、例年通り、基礎標準な問題であり、1問たりとも落とせないセットだったと思われる。

最後に(宣伝)

上記の世界史の記事は敬天塾のおかべぇ先生が執筆しています。おかべえ先生は、東大世界史で満点を取得した先生です!敬天塾のオープン授業【東大世界史】はこちら

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