2022年東大地理(第一問A)入試問題の解答(答案例)と解説

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この問題を見たときに、多くの受験生は動揺したと思います。

「人獣共通感染症って何だ?聞いたことがないぞ」
「コロナのことかな? でも、コロナウイルスのことを専門的に聞いてきているのだろうか」
「暗記してきたプリントに載っていない。どうしよう、解けない・・捨て問にしようかな」など、様々なことを思い巡らしたことでしょう。

ですが、ここで大切なことをお伝えします。

見たことがない問題が出されたらチャンスと思え!

です。

これが何を意味するのかについては、下記の実況中継シートをご一読ください。

東京大学地理 2022年 第1問A 実況中継 解説資料

 

いかがでしたでしょうか。
専門の研究者でもない限り、知らないことや聞いたことのない問題など星の数ほどあります。

しかしながら、それらは無味乾燥に存在している事象ではなく、根本的な原理に基づき論理的な思考を踏むことで必ず方針が定まるようになっています。
見たことがないテーマが出されたときこそ、リード文を丁寧に読み込み、過去問探究から学んだエッセンスを駆使し、大切な要素を答案をしっかり詰め込むことを心がけましょう。

さて、この第1問Aの問題に対し、合格者は実際にどのような答案を書いたのでしょうか。見ていくとしましょう。

設問別 合格者の答案と解説

設問(1)

Aさん グローバル化による通商等で人や商品移動の増加。

Bさん ペットを飼う家庭の増加。

いかがでしょうか。
(1)は取らねばならない問題です。
様々な解答例が考えられますが、オーソドックスな解答はAさんでしょう。

Bさんの視点は、社会をよく観察しているなと感心しました。

ちなみに「1つ」答えよと要求されているのに、いくつも書いて加点してもらおうと考えた受験生がいたそうです。
加点はあり得ませんし、下手したら設問条件を満たしていないということで0点にもなり得ますのでご注意ください。
問われていることに正確に答えることを是としてください。

 

設問(2)

Aさん 地球温暖化により急激な気温上昇や干ばつといった気象災害が多発し、蚊などの媒介生物の活動が活発になる。

Bさん 気温の上昇により熱帯の感染症媒介生物の生育域が拡大し、気象災害の多発による衛生環境悪化で感染症が拡大する。

まずAさんですが、予備校採点ならそこそこの点数がくるでしょうが、東大入試では評価は低いでしょう。
まず、「蚊などの媒介生物」とありますが、何を媒介するのかが不明瞭です。
次に、「活動が活発になる」のはそうだと思いますが、少し曖昧さが残ります。
字数との関係もあるとは思いますが、願わくば、その結果、どうなるのかまで記述が欲しいところです。
生息域拡大で人との接触機会が増えることまで書けたら良かったです。

また、「気象災害」を媒介生物増加にしか繋げていませんが、2行問題なら要素を2つ以上は盛り込みたいところですから、少し物足りない気がします。

次にBさん。これは良い答案だと思います。
採点官だとして、Aさんの答案と比べたとき、同じ点数になることはありえないと一目瞭然でしょう。
何を媒介するのかも明示されており、気象災害と衛生環境悪化を繋げ、媒介生物の生息域拡大の話と別立てで指摘できています。

 

設問(3)

Aさん 高温多雨のため稲作が安価で豊富な労働力を背景に河川周辺で行われ、密集により感染症や風土病の発生、蔓延リスクが高まり、インフラや医療があまり整備されておらず更に拡大するため。

Bさん 比較的温暖湿潤で気中感染のリスクが高い。インドでは荷物運搬用の水牛、中国では犬や家畜などとの生活を生業としており、人間居住地での人間と動物の共生が多くなっている。

まずBさん。うーん、よろしくない点が多いです。
まず、「比較的温暖湿潤で気中感染のリスクが高い」とありますが、一読したとき、「なんで?」と思いました。
そこを採点官に察してくれとBさんは考えたようですが、書かれたものからしか教授は判断しません。
ですので、ここは因果性不明瞭で減点です。

次に、「人間居住地での人間と動物の共生が多くなっている。」ですが、これも理由づけがないので減点です。
共生が多くなっているから何なの?ちゃんと言語化して説明してください、というのが採点官の気持ちでしょう。

「インドでは荷物運搬用の水牛、中国では犬や家畜などとの生活」という具体例も盛り込んでいますが、なんの説明にもなっていませんし、ただ羅列しただけになっています。

次にAさんのご答案ですが、まず「安価で豊富な労働力を背景に河川周辺で行われ」の部分は安価で豊富かはこの問題とは関係がありません。
労働集約的とでも書けば、その後の「密集」という良い表現に繋げやすくなります。

それから日本語が変です。
なぜ、そうした豊富な労働力を背景にすると河川周辺で行われるのか。

構想段階で「稲作が河川周辺で行われ」という軸があり、そこに強引に「安価で豊富な労働力を背景に」を盛り込んだ結果、因果関係が不明瞭な文が出来てしまいました。
修飾被修飾の関係には細心の注意を払わねばなりません。

次に「密集により感染症や風土病の発生、蔓延リスクが高まり」とありますが、なぜ密集すると風土病などが発生するのでしょうか。
その前に書かれていた河川での農作業と、どのように繋がってくるのでしょうか。
「インフラや医療があまり整備されておらず」という視点は良いと思いますが、その前部分の因果の説明がなっていないので、厳しく採点すれば点数は来ないと行って良いと思います。
もっとも、東大の採点はかなり甘いので、ある程度の点数は来るかもしれません。

 

設問(4)

Aさん 用地の不足により山地にも開発や住宅地を拡大することで、森林に生息する野生動物との接触機会が増加するから。

Bさん 森林の荒廃や農地放棄で動物のすみかがへり、一方で住宅街や市街地が拡大したため、人間と動物の接触が増加したため。

これはよくニュースにも取り上げられる問題ですから、サービス問題でした。
両名ともうまく書けていると思います。

 

さて、以上の答案分析を踏まえ、予備校の解答速報や青本や赤本の解答例を批評してみてください。
参考書に書かれているから正解とは限りません。
常に批評するマインドをもって、赤本の解答例や過去問と格闘してください。

なお、本問について、東大教授が以下のようなメッセージを受験生に発信していますのでご案内いたします。

(東大教授のメッセージ)

新型コロナウイルス感染症により人間社会は世界規模で大きな影響を受けています。こうした野生動物由来の人獣共通感染症の発生は、人間の自然利用と密接にかかわっています。地球、アジア、日本、それぞれのスケールで、発生リスクを高める自然環境・社会文化的な要因について説明を求めました。

いかがでしたでしょうか。

人獣共通感染症は、山内 一也 東京大学名誉教授を筆頭に、多くの教授陣がコロナ禍が始まる前から熱心に研究をしていました。
東大の公開講座でも取り上げられている程です。

https://todai.tv/contents-list/2006-2009FY/2007spring/12

未曾有の危機を前にして、世界がどのように対処していくべきなのか。
経済活動や途上国支援のあり方、災害対策、国境の役割、動物との共生などなど、非常に考えさせられる一問だったと思います。

受験会場で本問を目にした受験生は動揺したでしょうが、落ち着いて読み解いてみると、こんなにも面白い問題はありません。
難しいものと敬遠すれば難しくなりますし、考えるのが楽しいなと思えれば試験時間中も苦ではなくなります。

願わくば、このページをご覧になられた皆様が東大地理を好きになってくれたら、こんなにも嬉しいことはありません。

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