2019年 東大国語 第3問(漢文)『明夷待訪録』解答(答案例)

目次
答案例とプチアドバイス
(一)傍線部a・d・eの意味を現代語で記せ。
a僅カニ此ノミナラザル
※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点のみ
答案例:(単に)これだけではない
プチアドバイス:累加形(限定形の否定)の応用版。東大漢文の句形は応用されている箇所に傍線が引かれがちなので、原理を理解しておく必要があります。
d 草野ノ間ニ
※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点のみ
答案例:民間
プチアドバイス:「草の根運動」や「草莽崛起(そうもうくっき)」などの語を知っていれば、思いつけたかもしれません。
e 与カルコト無キ
※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点のみ
答案例:関与しない
プチアドバイス:「与」は多義語の代表例ですね。漢文は句形の暗記で終わったら知識不足です。漢文語彙の力も磨きましょう。
(二)「敢ヘテ自ラ非是ヲ為サズ」(傍線部b)を平易な現代語に訳せ。
※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点のみ。
答案例:自分で政策の是非を判断しようとはせず
プチアドバイス:「平易な」などの条件付き現代語訳問題であっても、現代語訳問題の場合は、傍線部に解答を挿入して、無駄な重複が無いかを確認しましょう。
この設問では「天子も」という主語を入れるのは良くないです。
「自ラ」の訳として「天子自ら」とするのは良いでしょう。
(三)「朝廷ノ勢利ヲ以テ其ノ本領ヲ一変ス」(傍線部c) とはどういうことか、わかりやすく説明せよ。
※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点と送り仮名。
答案例:学校が朝廷での権勢や利益を得るための場に、本質を変えたこと。
プチアドバイス:【超重要語「以」の解説(主要なもののみ)】
「以」は動詞(以(もちヰル)=用いる)、
名詞(以(ゆゑ)=理由)の他、
接続助詞(以(もつテ)=それによって・そして・~て)と
前置詞(以(もつテ)レO( ヲ)=~で・~を・~として・~に等)がある。
※Oは手段・理由・対象・立場・時間など(省略されることもある)
※語調を整えるためにあり、訳出しない「以」もある。
(四)「亦之ヲ失ヘリ」(傍線部f) とあるが、 なぜ「亦」と言っているのか、本文の趣旨を踏まえて説明せよ。
※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点のみ
答案例:学校は、社会の是非を判断するという役割に加えて、有能な人材が来なくなり、人材養成の役割までも失ったから。
プチアドバイス:「亦」は「モ亦(また)」とも言われる語。なので、「~だけでなく〔に加えて〕、~も失ったから」という構造の文にすると、伝わりやすくなります。
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