2023年(令和5年)東大日本史を当日解いたので、所感を書いてみた。

敬天塾の塾長と講師が東京大学の二次試験当日(2023年の2月25日・26日)に入試問題を解いて、所感を記した記事です。他の科目については、こちらのページにリンクがございます。

【科目全体の所感】

総合難易度 標準

特に極端な難問や奇問はなく、標準的なセット。
4問とも、例年の解法が通用するも、記述や読解に困る仕掛けもあり、従来の東大日本史を踏襲した内容だと思います。

第一問・第二問は文章資料と知識を柔軟に用いる問題、第3問は受験生の知識も一部求めつつ、資料文の読解に重きを置いた問題、第四問は近年頻出である図やグラフの読み取りをも求める問題でした。

毎年思いますが、東大の入試本番に出題される問題は良い問題だなぁと心から思います。

第一問

難易度 標準

テーマは国家的造営工事についてです。具体的には京の工事などのこと。
京の造営ともなれば大規模になるので、ヒトもモノもカネも必要。ということで、古代国家がどのようにヒト・モノ・カネを工面したか、という問題です。
(問題文には、国家財政とそれを支える地方支配との関係とあります。)

問題の指定で「律令制期、摂関期、院政期の違いにふれながら」とありますが、4つの資料が明確にすみ分けられています。すなわち、資料1と2は律令制期に使い、3は摂関期、4は院政期に使えばOK

もちろん、東大の問題アルアルということで、資料文にはストレートに書いてないので、書いてないことを読み取らなければいけません。

律令制期は仕丁と雇夫の動員、摂関期には中央官司と受領、院政期は臨時増役や一国平均役が明記されています。この情報から、どのような変化のポイントを読み取りストーリーを組み立てるかがポイントとなることでしょう。

知識レベル:2
読解レベル:4
記述レベル:3

※答案を作成する前に評価したものです。今後の考察によって変化する可能性があります。第2問以降も同様です。

第二問

難易度 やや難

テーマは家督継承と応仁の乱。実は、応仁の乱の発生と拡大には、武士の家督相続が密接に関わっているのだという問題でした。

なんと資料文は4つとも武士の家督継承について。もちろん、事実のみ書かれていて、そこから法則や特徴を読み取らなければなりません。
そして、問われているのは家督継承についてではなく、「家督継承決定のあり方の変化」です。要するに、家督を決定する方法が変化したことが応仁の乱に関わっているということです。ということで、変化を探るために資料を読むことになります。

人物がたくさん登場しているので、正確に関係性を読み取らなければならないこと、6代将軍足利義教や斯波氏が複数資料に登場することなど、ややこしい情報が多いため、読解にも時間がかかります
また、与えられた資料文の全てが、応仁の乱より前の時代だというのも気になるところです。

知識レベル:3
読解レベル:5
記述レベル:4

第三問

難易度 やや易

「寄席」をテーマにしているという、珍しい問題。
受験生の中で、江戸時代の寄席についてメチャクチャ詳しい人なんていないでしょうから、ほとんど知恵比べみたいな問題だと言えるでしょう。

設問Aは、該当する資料が1のみと指定されているので、考察範囲が狭い問題。本年度で最も答案の方向性が定まりやすい問題だと思います。

設問Bは、資料2と5が指定されていますが、残った3と4の使い方も簡単。町奉行が低所得者の暴動を懸念して、ガス抜きのために寄席を残そうとしたことが、容易に読み取れると思います。
但し、問われているのはそこだけではなくて、「幕府の政策や、幕府が直面したできごとにふれながら」とあります。この部分に関する資料は明確には存在しないので、自身の知識から引っ張り出して年代から推測することが必要です。

余談ですが、第3問ではこのように、年代から背景の幕府政策などを思い出させる問題が最近多いような気がします。

知識レベル:3
読解レベル:3
記述レベル:3

第四問

難易度 やや難

2010年台から頻出になった戦後の問題。今年はバリバリの戦後が出ましたね。

まず目につくのが、資料文1です。なんと、日本国憲法の第96条がそのまま掲載されています
96条と言えば、憲法改正についてです。先に言っておくと、この資料をどのように設問に生かすかが最も難しいと思いました。(いまだにハッキリとした答えが出ていません。)

資料2~4は戦後の歴史的事実の説明と選挙結果の円グラフのセット。これも珍しい印象を受けました。
例年、第4問は文章だけではなく図やグラフを用いた設問が頻出になっていると思いますが、その流れをキレイに踏襲しています。また、資料や図、グラフの読み取りもちょっとこだわっていて、ちょっとした記述にヒントが与えられていたりします。今回も、読み取らなければならない資料の量が多いですから、丁寧に読み込みましょう。

設問Aは対外関係の変化と国際政治の動向についてということですが、資料のちょっとしたところに窺い知れるような単語が見え隠れしています。ここから類推してストーリーを組み立てる問題なのでしょう。

設問Bは、Aよりヒントが少ない印象。使えるのは資料4だけでしょうか?資料3もギリギリ使えそうな年号な気もしますが。問われているのは政党間の対立の変化ですから、完全に国内事情についてです。当時の政党についての知識が正確にないと解けないでしょう。

知識レベル:4
読解レベル:4
記述レベル:3

最後に

上記の記事は、敬天塾の塾長が執筆しています。
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映像授業コース(旧オープン授業)【東大日本史】

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