2008年 東大国語 第2問(古文)『古本説話集(こほんせつわしふ)』解答(答案例)
目次
はじめに
読みやすい説話なので、古文が苦手な方にも取り組みやすい過去問です。
なお、『古本説話集』は平安末期~鎌倉初期までに成立しています。
前半に四十六の和歌説話、後半に二十四の仏教説話を収録し、合計で七十話。
『今昔物語集』とは四十、『宇治拾遺物語』とは二十三ほど、共通・類似しています。
「今は昔」で始まる説話なので、安心して読み進められそうですね!
解答例(答案例)とプチアドバイス
(一)傍線部ア・ウ・エを現代語訳せよ。
ア つゆばかりその験(しるし)とおぼゆることなく
答案例:少しぐらいもその御利益と思われることが無く、
プチアドバイス:「ばかり」の訳漏れに注意です。「わずかほども」といった表現でも良いです。
ウ これ、さらに賜はらじ。
答案例:これは、決していただかないつもりだ。
プチアドバイス:驚くほど簡単な設問なので、万が一間違えた場合は、かなり危機意識を持って知識の補充に努めましょう。
「さらに」を「全く」と訳してしまった人は、多義語の訳し分けの訓練が必要です。
「全く」だと、「少しももらわない」という、部分的にもらう可能性があるような表現になってしまいます。
エ あやしき事なり
答案例:異様なことである
プチアドバイス:「不思議な」でも減点無しの可能性がありますが、戒めている場面なので、できればネガティブなニュアンスがある語を選んでいただきたいです。
(二)「身のほど思ひ知られて」(傍線部イ)を、「身のほど」の内容がわかるように現代語訳せよ。
答案例:女は我が前世の報いの悪さを自然と思い知って、
プチアドバイス:仏教説話では普通、仏に懇願すれば恵みを得られるけれども、女は自分が満足するような恵みを授かっていないので、不思議に思って考察しましょう!すると、その原因は「いみじき前の世の報い」と述べられていますね。ここがポイントです!
(三)「かかりとも知らざらん僧」(傍線部オ)を、「かかり」の内容がわかるように現代語訳せよ。
答案例:観音が夢のお告げで私に御帳の帷を下さったという事情も知らないような僧
プチアドバイス:「放ちたるとや疑はんずらん」から、泥棒だと誤解されるのを危惧している。よって、取ったのではなく、かかるは観音が与えた事情です。
(四)「かならず成りけり」(傍線部カ)とあるが、何がどうであったというのか、簡潔に説明せよ。
答案例:女にとっての重大な訴訟が、必ず女の希望通りの結果になった。
プチアドバイス:設問の指示は「何が」であって「何で」ではないので、「訴訟で勝った」とは言えません。
(五)「楽しくてぞありける」(傍線部キ)とあるが、「楽しくて」とはどのような状態のことか、簡潔に説明せよ。
答案例1:女が裕福に暮らす状態。
答案例2:女が人から物を贈られ、裕福な男に愛され、経済的に豊かに暮らす状態。(33字)
プチアドバイス:経済的な豊かさを観音に願った結果だることを意識しましょう。「よき男」は美男子ではなく裕福の意です。
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