【東大地理】2019年第1問の解答(答案例)と解説

自然環境と人間活動に関する出題でした。
「出題の切り口は変化球、でも問われていることはストレート」という東大地理らしさがあふれた問題だったと思いますが、いかがでしたか?

設問A

わりと正答率は高かったのではないでしょうか。
気候や高床式家屋やため池の用途は有名ですし、マングローブ林の伐採などの環境問題関連は頻出ですから最新の教科書・資料集で確認しておきましょう。

設問(1)

まず、a~dの河川名は解答にあたって直接必要な知識ではありませんが、一応説明しておくと、
a:長江
b:ホン川
c:メコン川
d:エーヤワディー川
となります。

問題では、ア~ウの地点が図1-2で月平均降水量が表されてるP~Rのどれに当てはまるかを聞かれていますね。ア~ウの気候区分を覚えていれば簡単に解ける問題だったと思います。覚えていなくても、系統地理(気候の形成要因など)を理解しておけば判断できるでしょう。しかし、ア~ウの場所は有名な気候区分の場所なので、ぜひ覚えておきたいところ。

これも結論から言うと、アは上海で温帯湿潤気候(Cfa)、イはプノンペンでサバナ気候(Aw)、ウシンガポールは熱帯雨林気候(Af)になります。
アの上海は日本と同じCfaと覚えればよく、イのプノンペン付近は典型的な雨季と乾季が見られるサバナ気候。ウのシンガポールはほぼ赤道直下のAfです。ところで、今回はAm気候が登場しないのでAmとAwの区別は必要ありませんが、この2つの区別が難しいという声が多いような気がします。特に注意して気候区分を見ておきましょう。

さて、図1-2を見てみると、年間を通して降水量が一定以上に保たれているPがウ(Af)となることはわかりやすいですね。
残ったアとイは同じようなグラフですが、仕方ないので比較して判断するしかありません。CfaとAwの区別なので、雨季と乾季があるかどうかで判断すると良いでしょう。すると、1~2月と9~10月の降水量の差が激しいことからRがイ(Aw)で、そして残ったQがア(Cfa)と決められます。

設問(2)

本問は(1)でイ地域にAwが分布していることが分かっていれば解きやすかったと思います。
逆に、「巨大なため池」と「川沿いの家屋は高床式」という表現から降水量が少なくなる時期と降水量が多くなって川が増水する時期、つまり乾季と雨季 があるのではないかと連想出来たら、(1)も逆算して解けたかもしれません。
このように東大地理では、後の問題が前の問題のヒントになっていることが良くあります。そのため、設問を1つ1つ解くのではなく、大問内の問題は全部読んでから、解きやすいところから解くのを徹底しましょう。

巨大なため池はダムと同じような用途を持っています。(簡易的なダムだと思えば良いでしょう)
そして、ダムの用途は治水と利水です。
治水とは、大雨が降っても洪水しないように、ダムで水を大量にとどめておくこと。利水とは乾季など水が不足するときに、ためておいた水を流して利用することです。

高床式家屋の利点は、湿気と動物の被害を避けられること、そして洪水が起きても家が浸水しないようにすることです。

よって、答案骨子としては「乾季には降水量が減るため、ため池を利用して水を使おうとし、雨季には降水量が増えて河川が増水して洪水が起きやすくなるため、浸水被害を軽減しようとする」というようなことを雨季と乾季に分けて分かりやすく書ければ良いと思います。

設問(3)

マングローブ林が、日本市場を中心とした外国への輸出用エビの養殖池造成のために伐採されていることは非常に有名です。ここは知識で処理して即解答してほしいところ。すぐに思いつかなくても、ヒントを拾ってみましょう。

まず、問題文に「(植生が)急速に失われている」とあります。「急速」と言われているから、人為的な原因を思いつきましょう。例えば、地球温暖化で極地の氷が溶けると言われていますが、人間が自然に及ぼす影響とはスピードが違います。熱帯雨林を伐採して牧場を建築するという話がありますが、このように人間が本気で自然に手を加えるスピードはすさまじいものがあります。

次に、問題文の「河口付近」が決定的なヒント。東南アジアの海岸域の植物について問われたら、マングローブ林のことだと考えて良いでしょう。なお、マングローブとは職種ではなく、淡水と海水の混ざり合う場所に生育している植物の総称です。

つまり、人為的にマングローブを切り開いているのは何故なのかを考えるのですが、これ以上は知識の問題になります。
輸出用エビの養殖池造成だけだと1行くらいで終わってしまうので、薪炭材やパルプ材に利用されたりすることも書けると充実した答案になります。

答案比較

設問(2)

Aさん
乾季の水不足に対応するため池がある一方、雨季には川の流量が大きく変化するため、床上浸水を防ぐために高床式となっている。

Bさん
季節風の影響により雨季と乾季が存在し、雨季には乾季と比べ河川が大きく増水するため、住居の浸水被害を減らすように高床になっている。

Aさんから見ていきます。
乾季と雨季をそれぞれため池と高床式家屋に対応させているのは分かりやすくて良かったと思います。
前半は簡潔で良いと思いますが、後半の「川の流量が大きく変化する」だけでは少し曖昧なので、端的に「増水」と書いた方が良いでしょう。
また、「変化するため、床上浸水を防ぐため」と「ため」が2度続いて少し違和感がありますので「防ぐ目的で」と言い換えると良いでしょう。

Bさんは、ため池に関する記述が抜けています。せっかく乾季について言及できてるのにもったいないな…と思いました。

また、「季節風の影響により雨季と乾季が存在する」とありますが、季節風は一因ではあるものの他にも様々な要素が絡んでその地の気候は形成されますし、雨季と乾季の原因を季節風と書くには強引なように思います。

加えて、「大きく増水する」という表現も増水することだけ書いていればニュアンスは伝わると思うので「大きく」と強調しなくても良いと思いますし、増水の強調表現としては「激しく」のほうが適切かと思います。

設問(3)

Aさん
マングローブ林。工業排水などの水質汚濁とエビの養殖池のために伐採が進んだから。

Bさん
マングローブ林が広がり、輸出用のエビの養殖で生け簀を作るために伐採され、減少している。

Aさんは、シンプルでわかりやすくはありますが、エビは日本などへの輸出用であるということを加えて書けると加点要素になりやすいと思います。字数を削減して薪炭材などの用途について触れると、さらに充実した答案になります。
また、工業排水などの水質汚濁という視点は悪くないと思いますが、日本語を直して「工業廃水による水質汚濁」とした方が良いですし、「水質汚濁のせいで伐採が進む」という論理になってしまっています。内容というより、日本語の面で不備が目立ちます。

Bさんはエビの養殖池に関する記述が豊富に書かれていますね。
間違ってはないのである程度の点数は貰えると思いますが、やはり理由が1つだけだと他の理由が書けている答案よりは見劣りしてしまいますよね。できるなら他の理由も書いて欲しいところでした。
また、文末の「減少している」という記述は無くても伝わるとは思います、

 

設問B

メッシュマップである地域Xの標高と人口を表して、地形や人口分布などについて答えさせる問題でした。
メッシュマップを使った出題はあまり見ないので面食らいましたが数値の意味をしっかり考えられたら解きやすくはあったと思います。

しかし、1マスの範囲が広くて大雑把ですし、どの地形をどのように定義するかも曖昧ですので正確な答えを出すのはとても難しい問題でした。

設問(1)

地域Xには、海面、沖積低地、台地、山地、比較的大きな河川があり、メッシュマップからこれらの地形がどこにどう存在するかを説明させる問題でした。地形のだいたいの特徴から最低限のことは書けると思うので、得点率は高かったのではないでしょうか。

まず、海面と言えば標高は0mですから、左下(南西部)に海面があることは明白ですね。
そして山地は標高が周りよりも標高が高くなっているところを探せばいいので、左上(北西部)と右下(南東部)の200m前後の範囲は山地と言っていいと思います。
残るは沖積低地と台地、比較的大きな河川ですが、山地の間に極端に標高が低くなっている場所があることに気づきましたか?こうした谷は河川の侵食力によって作られたと考えるのが自然ですから、大きな河川が流れていてもおかしくはありませんね。
また、沖積低地とは河川の堆積によって作られるものなので、河川沿いや河口付近の標高が1桁あたりになってる場所は沖積低地となります。
台地の判別は難しいですが、残った部分を見てみると100m台の場所が多くあります。ここが台地に相当すると思われます。しかし、台地の定義があいまいなため、標高がもう少し低い100m以下の部分を台地とみなして答案を書いた人もいるでしょう。
これを答案内でどう表現すれば良いかというと、「山地と沖積低地の間に台地がある」くらいの曖昧な書き方しかないかなと思います。

答案構成としては、例文として「地域の中央に湖があり、北東部には扇状地がある。また、北西部から南西部にかけて深い渓谷があり、その底を河川が南に向かって流れている。」とあるので、山地、河川、海面、沖積低地、台地の順に例文の文章構成で答案作成すればわかりやすいと思います。

設問(2)

これもまた珍しい問題でしたね。
実際は簡単な計算でしたが、数値がどのように表されているのかに注意して解きましょう。

メッシュマップは1マスがタテヨコそれぞれ500mで表されていて、人口のメッシュマップでは100人単位で表されていることに注意しましょう。

まず面積を考えると、タテヨコともに500m×6=3kmとなっているので面積は9k㎡となります。

つぎに人口を割り出しますが、これは慎重に足し算するだけです。和は65なので100倍するのを忘れずに6500人であることを確認したら、人口を面積で割ります。
6500(人)÷9(km)=722.2222…≒722(人/k㎡)となります。
有効数字にも気をつけてくださいね。

設問(3)

人口の分布が地形にどのように影響されているのかを答える問題でしたが、いかがでしたか?これは(1)で考えた地形を人口分布に当てはめて考えよという東大の誘導が効いていますね。

まず、人口が少ないところは選びやすかったと思いますので、数値が0~2くらいになっているところについて書きましょう。
南東部と北西部に0となっている地域が多く、ここは(1)で申し上げた通り山地であると考えられ、傾斜が厳しく商業施設などの立地も難しくなるため、人口が少ない地域になりますね。

人口が多く分布しているのは河川沿いだと思われますが、ここは沖積低地や自然堤防上に家屋が建設されているからでしょう。
自然堤防は高燥な微高地となっていて水害を避けやすく、村落ができやすいことは有名だと思います。しかし、自然堤防が存在していることは、メッシュマップから読み取れないと思いますので、書くとしたら沖積低地までではないでしょうか。

次に、人口が多い地域についてですが、数値が5~10ところを中心に書いていきましょう。
まず目を引くのは10の地域ですね。東隣の標高が32mの場所を台地と考えるのなら、人口が10の地域は台地の崖下の湧水帯となるため、伝統的な家屋が立ち並んでいると考えられます。
東隣が台地でないとしたならば、中央の河川に堤防が建設されて、河川付近の沖積低地でも新興住宅地が建設されたのではないかとも考えられます。
左の方の人口が6の地域も同じような理由と考えて良いでしょう。
このように、色々な方針が考えられますが、データが曖昧なため、断定することは難しい問題だと思います。同時に画一的な答えを求めるのではなく思考力を問うてくる東大らしい問題とも言えますが、曖昧でスッキリしない問題ともいえます。

このような問題の場合、読み取りの正確さはもちろんですが、どれだけ明確な論理展開で書けたかが勝負の鍵となったのではないでしょうか。

答案比較

設問(1)

Aさん
地域の北西部に山地があり、西部から東部にかけて台地が分布する。北東部から南西部にある海面に比較的大きな河川が流入し、南西部には沖積低地が形成されている。

Bさん
北西部と南東部に山地があり、南西部に海面がある。北東部から南西部へ山間部を河川が南西に向かって流れている。河川沿いと河口付近には沖積低地が広がり、山地との間には台地が見られる。

やはり内容でそこまで差はつかない問題だったと思いますので、なおさら日本語に気をつけて書きましょう。

Aさんは少し読みにくさがあったと思います。
まず、冒頭の「地域」は書かなくても問われている地域は1つしか無いですから不要です。字数節約のためにカットしましょう。また、山地は南東部の部分も書いて欲しかったところではありますが、問題は台地の記述だと思います。
「西部から東部」と言われても、南北どこの位置なのか不明瞭で分かりません。答案は具体的に、ハッキリ読み取れるように書くのが基本です。

また、河川の流れる方向を書きたいのだろうと思いますが、「北東部から南西部にある海面」と書かれてしまうと、どこに海面があるのか判断できません。海が中央部を横断しているかのようにも読み取れますので、よくありません。
「南西部に位置する海面へ北東部から比較的大きな河川が流入」と位置を変えるだけでも読みやすくなるでしょう。

Bさんの答案は分かりやすくて良かったと思います。
気になったところは、2点です。どちらも細かい指摘なので、ほぼパーフェクトな答案と言ってよいと思われます。

まず1点目。河川の流れている方向に関して、「北東部から南西部へ」と「南西に向かってい」が重複しているので不要であること。
2点目は、最後の「山地との間には」に関して、直前で沖積低地の説明をしているとはいえ、少し分かりづらいので、「沖積低地と山地の間」であることを書き加えると、より正確に読み取れます。

設問(3)

Aさん
山地には人は住んでおらず、河川沿いや河口付近は人口が少ない。沖積低地や台地は人口が多く、特に低地に人口が集中している。

Bさん
山地や河川沿い、河口部で人口が少ない一方で、水害を防げる自然堤防上に人口が多くなっている。

まず、両名とも河口部で人口が少ないと書かれています。事実、南西部にはメッシュマップで人口が「1」や「2」が見受けられます。しかし、読み取り方によっては、南西部は海面と捉えられます。また、「河口部」をどこまで広く捉えるかにもよりますが、メッシュマップの1マスは500mもあります。解釈の違いによって、書き方に幅があるので、明らかな減点はしづらいと感じました。

一方、河川沿いに関しては「人口が少ない」と指摘しない方が良いのではないかと思います。これも、河川の幅をどのくらいに見積もったかによるので何とも言えないところではありますが、河川沿いには人口が「6」や「10」の場所もありますので、「多い」と指摘するのが自然かなと思います。

Aさんは更に、山地には人が住んでいないとありますが、メッシュマップは四捨五入をした数値が表記されているため、メッシュマップ上では「0」であっても、全く人が住んでないとまでは言えません。「少ない」とした方が無難でしょう。
最後の沖積低地に関する記述にしても、沖積低地は主に河川沿いで見られるので、矛盾しているように感じます。
人口が多い少ないと断定するよりはどのような影響があって人口の分布がどうなっているかを書くと充実します。

Bさんは、前半部は上で指摘した通りです。後半は、書いている内容はシンプルでわかりやすいのですが、「水害を防げる」と書くより「洪水時に被災しづらい」とした方が良いと思います。


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