【東大地理】2019年第3問の解答(答案例)と解説

日本の産業と国土に関する出題でしたが、第3問は全体的に必要とされる知識や読解力のレベルが高かったように感じます。それに、指定語句や表などから読み取れる情報の使い所が分からないような問題が多く、問題の作りが雑なようにも思えました。しかし、高得点者は存在しますので、合格まで猛進しましょう!

設問A

日本の産業に関連した出題で、それぞれの都道府県における就業者比率を表に示し、経済的な視点から様々な特徴を考えさせる問題でした。
表には様々な指標が書かれていますが、全ての指標は何らかの形で設問につながっていると考えて表を見ましょう。解答に行き詰まったときは指標を使って色んな角度から思考してみると新しい答えが見つかるかもしれません。

設問(1)

本問は知識経済化・情報社会化の進展が加速しているなかで、全国規模でどのような地域的変化が生じていくかを考えさせる問題でした。

まず、問題文から知識経済化と情報社会化の進展ということから「それに関連する産業を見て答えよ」というメッセージだと受け取って表を見てみましょう。
すると、知識だったり情報を活用しそうな産業は「情報通信業」と「学術研究、専門・技術サービス業」の2つが該当しそうです。
実際に2010年から2015年でどう変わったのか見てみると、全体的に増加傾向にあり、東京だけは比較的大幅に増加しているという状況になっています。

典型問題でしたら、人口が集中し、情報も集中しやすい大都市で情報化が進み、正反対の過疎地域で情報化が遅れていく状況(デジタルデバイド)を述べるところですが、少し変わった結果になってしまいました。

また、大都市である大阪ですらも情報化が進展しているようには見えず、東京だけが増加率が高いという状況なので、答案構成としては、東京の他地域とは違った特徴、すなわち人口が集中しやすいことや高度人材が得やすいということなどを書いて、それが理由で東京と他地域との差が出るということをまとめられたら良いでしょう。

設問(2)

医療、福祉の就業者比率が高い都道府県の共通した特徴を2つ挙げよという問題でした。

表を見てみると、高知県と北海道、沖縄県での比率が高いですね。よって、この3地域に関する特徴を述べれぱ良いでしょう。

さて、こうした医療、福祉の需要が高い地域は過疎化、高齢化が進んで高齢者向けの介護施設が必要となった地方であることが多いので、今回もそのような特徴はかけると思いますが、高知県で33.9%と非常に高いわりに沖縄県では20.8%とそこまで高齢者人口は多くないようです。
こうした事実を知っていれば思いつきやすかったでしょうが、知らなかったとしても、先程述べたように表から使える指標がないか探すことは怠らないようにしてくださいね。

今回は3地域とも製造業が盛んでないことがわかります。
医療、福祉の割合の高い原因に繋げたいので、製造業が盛んではない影響で若者が流出しているというような感じで書けば加点要素に十分なるかと思います。

高齢化製造業の割合の低さが2つの理由であると分かりやすいように書きましょう。

設問(3)

これはわりと簡単な問題だったと思います。

余談ではありますが、東日本大震災の被災地と書かずとも福島県の産業構造と書けばいいのに…と本問を解く時には思っていましたが、被災地は福島県だけではないため、被災地である他県への配慮だったり原発事故に限った話ではないよという東大からのメッセージだったのかもしれないと思うと東大の深謀遠慮が伺い知れて面白いなぁと思いました。

さて、本問では東日本大震災を受けた被災地の産業構造がなぜ、そしてどう変化したのかを述べる問題でしたね。
表の福島県の産業構造の変化を見てみると、宿泊業、飲食サービス業と製造業で低下、他産業では増加となっています。
東日本大震災で工場や宿泊施設、飲食店などが被害を受けてこれらの産業の人口が減ってしまうということはイメージしやすいですし、そのまま答案に書いても良いと思います。

インフラの破壊や物流が寸断されたことなどの影響も明らかに間違った方向でない限りは書いて良いと思いますが、因果関係がわかりやすいように書きましょう。

また、他の産業に関しても復興に関連して増加したと見て間違いないでしょう。
復興事業を推進するなかで住居などの建設は欠かせないですし、被災した方々の医療、福祉支援やそれに関連して医療機器開発や医薬品開発の拠点整備にも力が入れられているため、学術研究、専門・技術サービス業でも書けます。

ただ、2行に納めるのは難しいと思うので震災で減少した産業復興関連で盛んになった産業をそれぞれ書ければ良いと思います。

設問(4)

これはだいぶ難しいように感じました。
(2)でも北海道や沖縄県に共通することは書いたので更に捻り出すとなると他にも知識が必要そうです。

とりあえずはどちらの地域も宿泊業、飲食サービス業が多くなっていて、かつこれまでの設問でもあまり使っていないので、豊かな自然を活かした観光業が盛んであるくらいにまとめて指摘しといた方が良さそうです。

また、人件費が安く済むことなどからコールセンター産業が盛んなようで、情報通信業でも書けますが、知っていればラッキーくらいに思っておきましょう。

他にも、建設業も他に比べて高くなっていますね。
これは公共事業と大いに関係があります。

一般的な家屋を建築する事業も建設業に入りますが、国から委託された道路整備や農村基盤整備、治山治水対策なども建設業に入り、産業が発達しにくい地方圏ではこの公共事業によって建設業が盛んになっているということが多いようです。
そして北海道と沖縄県はまさにその典型例と言って良いでしょう。

しかし、知識がないと正答するのは厳しい問題だったと言わざるを得ないですね…。受験本番の戦略的には、あまり悩みすぎずほかの問題に時間をかけた方が良かったかもしれません。

答案比較

設問(1)

Aさん
学術分野や情報通信業の東京への一極集中が進んでいて、知識経済化や情報社会化の進展に伴い地方との格差が広まっていく。

Bさん
都市部では先端技術を利用しやすい研究機関の周囲に情報技術関連の企業が集まり、地方では集積回路の工場が増加する。

Aさんは知識経済化と情報社会化に対応させてわかりやすい答案になっていますね。

しかし「知識経済化と情報社会化」をそのまま書いてしまうと字数が長いのでカットしてもよかったと思います。その分、なぜ東京に集中するのか、東京と全国で何の格差が広がるのかが書けたらまた加点要素になったかもしれません。

Bさんは面白い視点だったと思います!
しかし、問題文では「変化」と「その変化が生まれる考えた理由」の2つを問われているのに対して、Bさんの答案では「変化」のみ説明しています。せっかくの面白い視点が問いに答えられていないと加点要素にはなりきらないので、構成は大事にしていただきたいです。

設問(2)

Aさん
他の産業の就業者比率が低く、雇用が少ないので、多くの若者が都市に流出しており、過疎化や高齢化が進んでいる。

Bさん
若年層の流出や高齢化で医療福祉サービスが必要な人口割合が高く、過疎化が進み経済規模の縮小で製造業などの他機関産業が弱い。

Aさんは要素はたくさん入っているのですが、どれがメインの理由なのか分からないという、受験生がやりがちなミスをしていますね。2つ答えよと言われれば、2つの理由が何なのか明確になるような文章構成を心がけましょう。一度文を区切って二文で構成しても良いと思います。

加えて、「他の産業の就業者比率が低い」というのは事実誤認です。例えば、沖縄県の建設業は表中で最も高く北海道や高知も高い方に入ります。製造業に絞って書いた方がより説得力はありますね。

Bさんの答案は因果関係が分かりやすくてとてもいい答案だと思いました。
とくに、「医療福祉サービスが必要な人口割合が高い」という書き方は、高齢者に断定して「高齢者が多い」と書くことで年齢層が限定されることを避け、的確に言い表していてこの表現は他の問題でも応用できそうだと思います。
こういった良い表現はどんどんパクっていきましょう!!

設問(3)

Aさん
復興において需要のある建設業の割合は増加したが、原発事故やインフラの破壊などで製造業や観光業の割合が減少した。

Bさん
インフラが破壊され経営出来なくなった製造業は衰退し、街を新規に内陸側に開発する需要から土木や建築といった産業が成長した。

やはりこの問題は正答率が高かったように感じます。

Aさんは、簡潔に何要素か入れられていて良い答案でした。

Bさんは少し断定しすぎているところと、要素が足りないところがありました。
まず「インフラが破壊されて経営できなくなった」は限定しすぎた表現です。インフラの破壊以外にも理由があるでしょうから、わざわざ限定しなくても良いでしょう。例えば「インフラの破壊に伴い経営が苦しくなった製造業は」などとすれば、違和感が緩和できます。言葉遊びみたいな言い換えですが、細かい技術によって改善できることはした方が良いです。

次に、「街を新規に内陸側に開発する需要」とだでは、何のことか伝わらない可能性があります。海岸側の被害が酷いため、内陸部に避難したことなどをイメージしたんだと思いますが、採点者は答案に書かれた文字のみから判断します。

また成長した産業を「土木や建築」と表していますが、わざわざ新しい言葉を加える必要はありませんので、「建築業」で良いでしょう。

設問(4)

Aさん
観光地として人気であり、旅行者が多いため宿泊業などが盛んである。また、高齢者が多いため医療、福祉の比率が高い。

Bさん
日本本土から離れた島国であったことから、本土とは違う独自の文化や気候を活かした観光業が発達している。

Aさんから見ていきます。
前半はよく書けていますが、観光地として人気ならば旅行者が多いことは同義に近いと思うので、カットして観光地として人気な理由などを書けたら良かったでしょう。
後半は(4)の解説で述べた通り、高齢者はそこまで多くはありませんので、事実誤認となってしまいます。やはり製造業などに言及するのが無難なように思えます。

つづいて、Bさんは観光業にフォーカスして詳しく述べていますが、「日本本土から離れた島国」というのは首をかしげる表現です。「島国」とすると日本以外の国をイメージして台湾やフィリピンのことを指すように思われるかもしれません。また、沖縄は離れていますが、北海道は近距離と言ってよいでしょう。
また、「独自の文化を活かした観光業」も、沖縄は琉球王国時代の展示などが充実していますが、北海道のアイヌに関しては旅行先としてはまた未発達のようです。

 

設問B

日本の半島に絡めて人口の移動や産業の変化について問われました。日本に関する知識がだいぶ要求されていて難しいと感じた人は多かったかもしれません。中学受験で日本の地誌をしっかりやった人は、ラッキーだったと思います。

設問(1)

A~C半島が図3-1に表された①~⑦のいずれに該当するかを答える問題です。

A~E半島がどこに位置するのかを説明していきます。ぜひ地図を片手に知識を吸収していってください!

まず、A半島の説明でキーワードとなるのは、「遠洋漁業の拠点」「大根などの畑作物」「大都市の通勤圏」くらいでしょうか。ここから、三浦漁港(三崎のマグロで有名)や三浦大根を連想して、②と確定できたと思います 。

B半島はすぐわかった人も多かったかと思います。
リアス海岸や真珠の養殖(ミキモトの真珠)で有名な⑤の志摩半島がB半島となります。外国の街並みなどを模した志摩スペイン村も有名です。

C半島は少し難しかったかもしれません。
「核燃料廃棄物関連の施設」から六ヶ所村のある①の下北半島がC半島に該当します。
六ヶ所村は原子力施設のほかにも国家石油備蓄基地や、やませを利用した風力発電基地など、エネルギー関連施設が集中しています。

問題として問われているのはここまでですが、残りも特定してしまいましょう。

D半島は「海を挟んだ隣の県の農民が、みかんの出作りをした」ということから愛媛県が海の向こう側にある⑦の国東半島と判断できます。日本史選択であれば、富貴寺大堂が大分にあることからも特定できます。

E半島は「棚田の風景」や「伝統産業として漆器産業が盛ん」ということから輪島塗で有名な⑥の能登半島と判断できますね。水産業も有名で、旅行に行ったときにはお魚がおいしかったですよ。

ちなみに、③と④はそれぞれ伊豆半島と渥美半島になります。

設問(2)

大都市圏に近いA半島のような半島で「高齢化」と「人口減少」が進む理由について答える問題です。典型問題ではありますが、1行で述べるのは字数が厳しいので簡潔な表現を心がけましょう。

高度経済成長期には都心への通勤圏内の周辺部に住宅地がたくさん開発され、そこに若者たち(俗に言う団塊世代)が多数移り住みました。その世代がそのまま時代を経て、現在は高齢者層になっています。その子供世代も都心部に流出していき、若年層が少なくなって人口が減少しているということです。
なお、団塊世代という呼称は作家の堺屋太一さんの本のタイトルが定着したものであり、アカデミックな用語ではありません。しかし、東大の地理の過去問(2015年第3問設問C)では指定語句に登場しています。
俗称を答案中で使用することは、本来、答案では控えるべきなのですが、東大は寛容な側面も見せた瞬間でした。

設問(3)

一般的に半島が条件不利地として典型的な過疎地域と言われることが多いなかで、D半島(国東半島)とE半島(能登半島)の2つの半島は、空港の整備によって地域経済が大きく変わりました。

本問ではその変化について「外国人」「グローバル化」「ハイテク産業」を使って説明するように要求されていますね。正直、「グローバル化」という指定語句は定義が曖昧で、意味が多岐に渡りますから、使い所に困りますね。
空港の整備が前提となるテーマですので、世界規模での物流や人の移動に関して書けということだと思いますが、、、。

「ハイテク産業」という言葉はわりとイメージしやすかったと思います。
国東半島のある九州は空港近くにICなどの拠点が設定されてシリコンアイランドと呼ばれていることは有名なので、D半島で使うのが良さそうです。

つぎに、もう一方のE半島(能登半島)について考えましょう。
ここで説明文をもう一度読んでみると、「従来から水産業、観光業が盛んであったがら最近ではその内容が大きく変わってきている」とあり、これと「外国人」というワードを考慮すると、もともとは日本人向けの観光業がグローバル化が進んで外国人向けにも力を入れてきたと考えられます。

答案構成としては、グローバル化が進むなかで空港の整備によって、D半島ではハイテク産業が発達し、E半島では外国人向けの観光業が盛んになったという流れで書きましょう。

答案比較

設問(2)

Aさん
住宅開発時に移住した人の高齢化と都心への人口回帰のため。

Bさん
都市部の住居が高層化し、半島への移住者が減ったため。

Aさんは、前半の高齢化をわかりやすく書けていますね。

後半の「都心への回帰」という記述は、おそらくA半島などの東京大都市圏に限った話になってしまうのではないでしょうか?問題文では他の大都市圏も含むような表現になっているので、都心に限定する必要は無いかと思います。

また、「人口回帰のため」だけでは、人工が減少した理由としては不十分です。「子供世代が都心への人口回帰の流れに乗って流出したため」などと言葉を補足すべきでしょう。「人口回帰」を使わず「子供世代が都心へ流出したため」で十分かと思いますが。

Bさんは面白い視点ではありますが、まず「都市部の住居が高層化」したから「半島の人口が減った」は、さすがに論理の飛躍です。このままでは「風が吹けば桶屋が儲かる」のようになってしまうので、「都市部の住居が高層化し、そこへ半島の若年層が移り住んだから」などと言葉を足してください。
ただし、半島の若年層の流出原因が、都市部の高層マンションのせいなのかといわれると、因果関係が薄いのではないかと思われます。
また、半島への移住者は、高度成長期には多かったかもしれないですが、それ以降も継続的に移住してくるわけではありません。これも理由としては弱く感じます。

設問(3)

Aさん
グローバル化によるヒトやモノの移動の活発化の下で、D半島では空港の近隣に国際航空輸送を利用するハイテク産業が発達し、E半島では観光業の推進と空港整備で外国人観光客を増やしているため。

Bさん
人、モノ、金の移動がグローバル化によって活発になり伝統産業や歴史的建造物などで外国人観光客を誘致し、軽量効果なハイテク産業が空港の近隣地域に発達してきた。

Aさんは、ハイテク産業と外国人観光客の説明がとてもわかりやすく、良い答案だと思います。

グローバル化を人やモノの移動が活発化するという文脈の中に書けていて、ウマい使い方だと思います。ハイテク産業の説明でも「国際航空輸送」を利用すると書いてグローバル化を意識した文になっていて、とても良かったです。

指摘としては、「ヒト」は「人」と漢字にすることが一つ。そして、文末の「ため」は、問いに答えられていないようになってしまうところでしょう。(理由を聞かれている問題ではない)

Bさんはグローバル化を説明していますが、Aさんに比べて、後半の説明との因果関係が薄いように思えます。
外国人観光客の誘致やハイテク産業の発達をそれぞれ詳しく書けているのは良いのですが、D半島とE半島での地域経済の変化をそれぞれ述べるように指示されているので、どちらがどちらの説明なのかを明記するべきでしょう。

くわえて、少し読みにくさがあるので、「…活発になり伝統産業…」のところは文の内容が変わるので伝統産業の前に読点を入れてあげると読みやすいです。


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