2003年 東大国語 第2問(古文)『古本説話集』解答(答案例)と現代語訳(イラスト付)
目次
はじめに
読みやすい、「やや易」レベルの問題です。
多くの現代語訳の設問があるので、現代語訳の練習として取り組みましょう。
ぜひ傍線部を品詞分解して、逐語訳を心掛けましょうね!
解答例(答案例)とプチアドバイス
(一)傍線部ア・イ・エ・オ・キを現代語訳せよ。【各1行】
ア 観音の賜びたるなんめり
答案例:観音様がお与えになった物であるようだ。
プチアドバイス:撥音便化している「なんめり」がポイントです。
断定と伝聞推定の「なり」の識別に迷う方もいると思います。
撥音便化している「なり」は断定、
撥音便化の後の「なり」は伝聞推定です。
識別に迷う時は「であるようだ」の訳を思い出しましょう。
例)ななり←なんなり←「なる(断定) +なり(伝聞・推定)」
例)なめり←なんめり←「なる(断定) +めり(推定)」
イ いかでかこれをにはかに食はん。
答案例:どうしてこの鹿を今さら急に食べようか、いや、食べない。
プチアドバイス:前文との繋がりに注意!
「にはかに」は「すぐに」と訳してしまう受験生もいますが、それだと文脈に合いません。
※答案例の「今さら」の部分は加えるのに勇気がいると思います。無理に加えなくても良いでしょう。わかりやすさを増すために加えました。
エ 参り物もあらじ。
答案例:召し上がる物もないだろう。
プチアドバイス:「参る」は「食ふ」「飲む」の尊敬語「召しあがる」の意味があります。
参考までに、「奉る」も謙譲だけでなく、「衣食乗」の場面では尊敬語になります。
オ いかにしてか日ごろおはしつる
答案例:どのようにしてこの数日間、過ごしていらっしゃったのか。
プチアドバイス:「日ごろ」の訳は「何日も・このところ・この数日間・近頃」などになるでしょう。
「毎日を・日々を」だと、少し意味がずれると気がします。
キ 柱をも割り食ひてんものを。
答案例:柱でも削って食べてしまえばよいのになあ。
プチアドバイス:「てん」は助動詞「て+む」。推量の前の「て」は基本的に強意で、「む」は文脈判断します。
ここでは敬意を持っている相手への提言なので、適当(~のがよい)。
(二)傍線部ウおよびカの「あさましきわざ」は、それぞれどのような内容を指すか、簡潔に記せ。【各1行】
ウ あさましきわざをもしつるかな
答案例:法師なのに、成仏する可能性を断つ肉食をしてしまったこと。
プチアドバイス:解答を「(鹿の)肉を食べたから」だけにしてしまうとと、現代人の感覚ではなぜ?と疑問が残りますね。そこで「理由」を補足しましょう。
「法師の身で(ありながら)、仏法〔仏道・仏の教え・戒律〕に背く」でもOK!
ク いとあさましきわざし給へる聖かな
答案例:木の中でもわざわざ観音菩薩像の木を削って食べてしまったこと。
プチアドバイス:ドン引きしている理由は、クの直前だけではなく、直後にもあります。
(三)傍線部クについて、具体的な内容がわかるように現代語訳せよ。【1.5行】
答案例:観音菩薩像の腿が削り取られているということは、先ほどの鹿は、仏が姿を変えて霊験を現わしてくださったのだなあ。
プチアドバイス:最高の布施とも言われる「捨身(しゃしん)」のことを知っていると理解しやすいです。
仏法を求めたり 悩み苦しむ人たちを救ったりするために、自分の身命を投げ出すことです。
釈迦が飢えた虎の親子のために身を投げ出す絵が有名ですよ。
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