2018年東大地理(第2問)入試問題の解答(答案例)・解説

世界の交易や人の移動に関する出題でした。
合理的推論がより必要とされたように感じますがいかがでしたか。こういうときこそ問題文やリード文、指定語句を駆使して多角的に考えられるようにしましょう。

設問A

国際運輸に関して、世界各地の経済発展や運河による変化を考えさせる問題でした。リード文や表をしっかり見て意味を推測しましょう。

設問(1)

2000年と2014年のコンテナ取扱量を比べて、シンガポールは高い順位を保っているのに対して香港は世界1位から4位まで順位を落としている理由について答える問題です。
よほど香港の経済について知っていない限り問題文だけ見ていても答えられないので、表を見てみましょう。すると、香港の順位が下がっていることは一目瞭然ですが、1位に上海が躍り出てそれ以外にも深圳や寧波といった中国の都市が順位を上げていることが分かります。
つまり、ここから「香港の順位の低下は他の港のコンテナ取扱量が増えてシェアを奪われたから」と考えられますが、なぜ他港がこうも発展したのでしょうか。指定語句を見てみると経済発展という言葉が中国の様々な港湾が発展する理由に使えそうです。経済特区の設定などによって経済発展が進んだことは有名ですね。これによって工業化が進んで製品輸出が色々な港湾で行われるようになったことは推論できますが、実際に長江デルタの上海や珠江デルタの深圳は工業化が進んで様々な工業製品が輸出されるようになったようです。

一方のシンガポールは、貿易の中継港としての役割を担い、東南アジアの積み換えハブ港として発展をしてきました。シンガポールは地理的に恵まれすぎているので、香港のように他にとってかわられることがないのでしょう。また、東南アジア域内での国際分業体制などは頻出のテーマなので抑えておくと良いでしょう。

指定語句は「製品」の使い方はどちらでも出来そうですが、「中継」はシンガポールで、「経済発展」は香港の説明で使うと良いでしょう。

設問(2)

正答できた人は多かったのではないでしょうか。
鉄鉱石、原料炭、一般炭の到着国がいずれも東アジア地域になってることから素直に鉄鉱石や石炭の輸出が多いオーストラリアと答えましょう。残るイは鉄鉱石の統計データ上位にブラジルがあることを考慮してブラジルと答えられるでしょう。
こうした客観式問題を取りこぼさないようにある程度のデータは目を通しておくと良いです。

設問(3)

指定語句が5つもある珍しい問題でしたね。

まず、内容面に行く前に、言葉の定義をハッキリさせると良いと思います。リード文と設問文を見比べることで、問われているのが穀物やコンテナ船についてであることが分かります。

穀物は良いとして、コンテナ船では何が輸送されているでしょうか。
ここで思い出したいのが(1)の設問。(1)はコンテナ取扱量の世界ランキングの問題でした。パナマ運河の拡張工事の完了が2016年ですから、表2-1のうち、2014年のランキングだけを気にすれば良いでしょう。すると、(1)で見た通りではありますが、(ロッテルダム以外)アジアばかりの港湾が多く並びます。
(1)で答えた通り、アジアの分業が進んだことや、中国経済の発展により工業製品が輸送されているわけですから、この設問(3)においても、コンテナ船の中身は工業製品ということで話を進めて良さそうです。

また、表2-2には主要なばら積み船の品目に関して、輸出国と輸入国の組み合わせが示してあります。(2)でも見ていますが、改めて品目を確認してみると、設問(3)で扱えるものと、扱えないものがあります。

原油や鉄鉱石は非常に大型のばら積み船で運ばれパナマ運河が通れないため、今回の設問では考慮から除外してよいでしょう。問題は、リード文には書いてなかったのに登場している原料炭や一般炭です。これに関して出発国を見てみると、北アメリカから東アジアに輸出される原料炭以外は、除外できそうです。(今回の設問は、アメリカ大陸と東アジアの間の話と捉えて良いからです。)

つまり、ここまでをまとめると、東アジアからの輸出品は工業製品で、輸入品は穀物と原料炭を考えれば良さそうです。

つぎに「陸上輸送」「輸送費」という語句の使い所を考えてみましょう。
東アジアとアメリカ大陸の位置関係を考えると、従来は西海岸に辿り着いた輸出品が「陸上輸送」で東岸のメガロポリス地域に送られていたと考えられます。
しかしパナマ運河拡張工事が完了したことで陸上輸送以外にも、パナマ運河を通る海上輸送の選択肢が生まれます。このような場合、「輸送費」が安い方が優先されるので、陸上輸送から海上輸送に取って代わられてしまうことになります。

答案比較

設問(1)

Aさん
香港では外国企業の進出によって製品を製造、輸出し経済発展を遂げたが、シンガポールは未だに中継貿易が盛んだから。

Bさん
シンガポールは中継貿易で栄えているのに対し、香港は中国の経済発展で製品を輸出する数ある経済特区のひとつに縮小されたため。

Aさんは香港の説明に力を入れていますが、根本的に香港の順位が落ちた理由になっておらず、1点ももらえないでしょう。せめて香港でなく、国内他港の発展であると明示できれば良い答案になっていたでしょう。

Bさんの方が相対的に良い答案と言えます。
文末の「経済特区のひとつに縮小されたため。」という表現は他の港湾が発展したというよりも香港が落ちぶれたという印象が強くなってしまいます。ここは文章構成を変えて「中国の経済発展により工業製品を多く輸出する経済特区が発展したため。」とすると良いでしょう。
また、両名ともシンガポールの記述が少し少ないので、東南アジアでの国際分業体制なども触れられたら良かったかもしれません。

設問(3)

Aさん
パナマックスの大型化によりコンテナ船とばら積み船の商品あたりの輸送費が下がることで、アメリカ大陸とアジアで工業製品や穀物の交易が盛んとなり、陸上輸送のリレー輸送より活発化する。

Bさん
アメリカ大陸間を陸上輸送で運んでいた穀物をばら積み船で輸入できるようになり、大型コンテナ船の利用によって工業製品などの欧米への輸出表が増え、輸送費が低下する。

Aさんはパナマックスやリレー輸送などの用語を知って積極的に使ってみようというチャレンジ精神は素晴らしいと思いますが、こうしたほかの受験生が知らないような難しい用語を使う際には細心の注意が必要です。
東大の教授陣は尋常じゃない知識量を誇る方々なので、少しでも間違いがあれば加点されないばかりか減点される可能性もあります。知識をひけらかすくせに、正しい言葉遣いや考えができないような、バランスの悪い人だという印象を与えかねません。新しい用語を正しい使い方が出来るように学ぶのは大事ですが、こと受験においては無難に教科書に載っているような用語を並べれば十分です。

特にこの答案では、問題の指定である「輸出品と輸入品について例をあげながら」を完全に無視してしまっています。こうなると、非常に印象が悪くなるでしょう。「攻める時には、守りを100点に固めるべし」の原則を忘れないようにしてください。

Bさんはおそらく北アメリカ西岸から東岸のメガロポリス地域への陸上輸送を表現したかったのでしょうが、「アメリカ大陸間を陸上輸送で運ぶ」と表現すると、北アメリカと南アメリカの間で陸上輸送されていたように取れるので、事実誤認と捉えられてしまいます。
また、工業製品などの輸出量が増えれば輸送費が低下すると書いています。書きたいことは分かるのですが、輸出量が上がれば全体の輸送費は上がるのでこれも事実誤認と言えます。Aさんのように「商品あたりの輸送費が下がる」と表現できると良かったでしょう。

設問B

インド洋に面する国々の交易や文化的交流、人の移動に関する問題でした。基礎知識からどう考えられるかが試されていたように筆者は感じましたがいかがでしたか。

設問(1)

イスラーム教と国家の関わりに着目して、東南アジアのムスリム人口が多い国Aと南アジアのムスリム人口が多い国Bの国名を答えたうえで、イスラーム大国であるイランとA国の統治のあり方の違いについて述べる問題です。

まずA国とB国の特定から行いますが、これは簡単です。
東南アジアで人口が2億人を超えている国はインドネシアしかありませんし、南アジアでパキスタン、バングラデシュ以外に人口が1億人を超えている国はインドしかありません。ここはしっかり得点しましょう。

国の統治のあり方に関しては、イランから考えるとわかりやすいでしょう。イランはイスラーム教を国教とし、イスラーム法をもとに政治が行われているイスラーム教国であることは問題文からわかる通りです。

B国に関しては、イスラーム教徒が多く住んでいますが、イランとは事情が違います。「国教」の定義にもよるのでしょうが、インドネシアはイランのようにイスラームだけを国教に定める国ではなく、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー教、仏教など、他宗教も公認宗教としています。憲法上も政教分離をとる世俗主義の国です。

この辺りを対比構造にしてまとめれば良いでしょう。

設問(2)

世界史を選択していればイギリスの植民地同士の繋がりは非常に重要な話題として習うと思いますが、世界史を選択していなくても、過去問をやっていると度々出題されているテーマだと分かるはずです。それぞれの国の旧宗主国は必ず把握しておきましょう。

イギリスの植民地だと分かれば、指定語句からもさとうきびやゴムの農園労働力としてインド人が導入されたことは明白です。問題文に示されてる国以外では、南アメリカ北東部のガイアナや太平洋のフィジーなども対象国でした。マレーシアでは天然ゴムが多く生産されていたことを踏まえて、マレーシアで天然ゴム農園の、南アフリカ共和国でさとうきび農園の労働力としてそれぞれインド人が連れてこられたということをイギリスの支配下にあったことも含めて答案にすると良いでしょう。

設問(3)

東南アジアからアフリカ東南部インド洋沿岸諸国に対して貿易や投資が活発になると予想されていて、現在の経済発展の状況からどのような分野でそれらが活発になるのか考える問題です。こういった形式は頻出ですので、普段の学習から地理的事象が数年後にはどう変化するのか予想することを意識すると良いでしょう。

問題文では、両地域の経済状況を踏まえて理由とともに答えよと指示されています。東南アジアはシンガポールを筆頭として経済成長が目覚しいということは周知の事実ですから、東南アジアが発展を遂げていて、アフリカ諸国が遅れているというような構図になります。工業化や経済水準などをもとに論じても良いですね。

つぎにどの分野での貿易・投資が盛んになるかですが、一般的に発展途上地域は農作物や鉱産資源、労働集約的な製品などを輸出し、工業化が進んでいる先進地域は途上地域に対して繊維産業などの労働集約的な産業や資源開発へ投資する傾向にあります。そのまま東南アジアとアフリカ諸国の関係に当てはめても問題はないでしょう。

また、「その理由」についても論じなければなりませんが、ここは経済発展の理由なのか貿易や投資が増える理由なのか不明瞭なため、問題の作りが雑だなと感じました。一応問題ではどのような貿易や投資が活発になるか聞かれているのでそう考える理由を書けば良いと思います。先程述べたように東南アジアでは発展に伴って経済水準が高くなったり工業化が進んだりしたことでアフリカ諸国の豊富な労働力や資源に目をつけたなどと書けば良いでしょう。

この問題は事実を答えるのではなく「予想」を答える問題なので、ある程度、予想が妥当な範囲内に収まっていて、答案が論理的であれば許容されると思います。

答案比較

設問(1)

Aさん
A-インドネシア B-インド
イスラム教はイランでは国教で、イスラム法が使用されるが、A国では多数の宗教のうちの1つとされ政教分離が行われている。

Bさん
A-インドネシア B-インド
イランはイスラム法によって統治する国家だが、A国は多民族国家なので、宗教による統治を行っていない。

Aさんはイスラム教を主語にして統治の違いを語っていますが、あくまで問題の指示はイランとインドネシアの統治の違いを答えることですので構成としては題意から少しズレてしまいます。
イスラム教を主語にしないのであれば、イランの記述はそのままでいいですが、A国ははっきりと政教分離を掲げてイランのような宗教に基づく統治をしていないと書きましょう。

Bさんは政教分離などの用語があればより良かったですが、シンプルな構成で読みやすかったです。
A国の記述で宗教による統治を行っていない理由として多民族国家であることを挙げていますが、これは事実誤認です。多民族国家であるから政教分離が進むわけではなく、イランも単一民族国家というわけではありません。
安易に因果関係を作り出すよりも政教分離が進んでいることなどの事実を書く方が得策でしょう。

設問(2)

Aさん
イギリスの植民地であった時代に、さとうきびやゴムのプランテーション農業を行うために労働力として連れてこられた。

Bさん
イギリスの植民地支配を背景に、マレーシアでは天然ゴム農園の、南アフリカ共和国ではさとうきび農園の労働力として、移住した。

要素をつかめている答案が多かったように感じます。こういう時こそ一字一句に気を遣って答案を書きましょう。

Aさんはどちらの国でどの作物が育てられたのかを書くべきでしょう。両方の国で両方の作物が育てられていたわけではありません。

Bさんはほぼ正解と言っていいかもしれませんね。細かくて高度な指摘をするならば「背景」という表現を改めると良いでしょう。「背景」や「影響」という単語は便利で使いやすいのですが、意味が抽象的で曖昧です。具体的に「植民地時代に行われていた」と明示する方が良いでしょう。細かい指摘ですが、最後の「移住した 」の前の読点は無い方が読みやすいです。
できれば、両者ともインド人が移住したことを明示できれば丁寧だったと思いますが、字数的に厳しいので余裕があればより丁寧に書く工夫をしてみましょう。

設問(3)

Aさん
東南アジアの経済発展により、世界各国の工場としての機能がインド洋沿岸国に移行し、工業の市場開発への投資が活発化する。

Bさん
東南アジアの経済発展に伴い、工業製品の市場となるほか、資源開発のための投資先にもなるアフリカ東岸との結びつきが強まる。

本問はなかなか全部の要素を捉えられている答案はありませんでしたが、いかがでしたでしょうか。

Aさんは、アフリカ諸国への工場の移動と、工業製品の市場開発への投資について書いていて、投資に関しての記述は充実しています。一方、経済発展の状況や活発になる貿易について不足しています。「世界各国の工場としての機能がインド洋沿岸国に移行し」という部分は回りくどいうえに問われている内容とはズレてしまうので、「東南アジアの企業が進出して市場開発への投資が活発化する」くらいにまとめても良いでしょう。節約できた字数で経済発展の状況や貿易品について書くべきですが、内容的に工業化の進度や、工業製品などの貿易など工業にテーマを絞って書くと答案を作りやすいと思います。

Bさんは、貿易や投資についての予想は書けていますが、両地域の経済発展の状況を比べられていないうえに予想が書かれているだけで理由が伴っていないです。また、文末の「結びつきが強くまる。」という結論では、「どの分野で貿易や投資が活発になるか」という基本の問いに答えられていないことになります。
要素を挙げるだけでなく問いに答えられているかどうかも意識して答案を作成することが大切です。

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