日本語文章能力向上のための12の極意
極解するなら、東京大学二次試験はほぼ全科目で、
要約のチカラを問うていると言っても過言ではありません。
思い出してみてください。
東大国語で問われる「どういうことか」、
東大地理における用語定義や因果関係の説明問題、
東大日本史や東大生物で試される資料読解問題、
東大世界史で受験生を悩ます600字前後の大論述問題など、
いずれの科目でも端的かつ明瞭にエッセンスを纏め上げる要約力が高度に求められています。
つまり、要約力を上げることで、
英語1Aは当然のことながら、全教科的に点数を底上げすることが可能になるのです。
私大全滅でも東大だけ受かる人が現役生を中心にそこそこいます。
その子たちにヒアリングしてみると、日本語文章作成能力や要約力が優れている子がほとんどだとわかります。
全教科的に点数の伸び悩みに直面している方は、
東大入試が全教科的に求めている国語力(読解力・文章作成力・語彙力・要約力などで構成)を磨くことから始めてみましょう。
東大入試における英語の重要性は年々高まっています。
合格者と不合格者平均を比較してみると、年によっては英語で20点近くの差がうまれることもあります。
このように合否の分水嶺と化している英語ですが、その対策方法についてはあまり真剣に議論されていません。
がむしゃらに英単語を覚えれば点数が上がるのでしょうか。
英文法をしっかり固めれば成果が目に見えてくるのでしょうか。
SNS上では様々な方法論が飛び交っていますが、誰かの成功例を真似ても上手くいくことは少ないのが実情です。
同じくらい勉強しても、同じ参考書を使っていても、東大英語の開示成績には大きな差が生まれます。
なぜなのでしょうか。
その答えの1つが「国語力」なのです。
全教科的に記述問題主体の東大入試においては、問いに対する答えを端的かつ明瞭に相手に伝えられる記述力が求められます。
東大英語で言えば、1A英文要約、2A自由英作文、2B和文英訳、4B英文和訳、5物語文において記述解答が求められています。
ここまでは誰でも知っている事実ですが、記述力を上げるためにはどうしたら良いのでしょうか。
たくさん書けば自然と伸びるものなのでしょうか。
その謎を解き明かすためには、まず記述力の正体を明らかにせねばなりません。
記述力の正体は、文章構成力・論理力・語彙力・要約力・注意力の5点に集約されると私は考えています。
ここでいう「語彙力」には、日本語も含まれます。
「注意力」とは、誤字脱字の有無に対する確認精度を意味するほか、問われていることに正確に答えられているかの吟味検討を解答作成途中に意識し続けられるかも含まれます。
こうした記述力の醸成は、単に英語の問題を解いたり英単語を覚えたりするだけでは身につきません。
英語の点数で伸び悩んでいる方は、記述力(国語力)を養うことにも目を向けなければならないのです。
合否を決する記述力の正体とは? ↓タブをクリックすると切り替わります。
主語と述語の関係が不明瞭であったり、修飾被修飾関係が判然としない場合、どんなに素晴らしいことを答案に書いても採点官にうまく伝わらず点数に結びつかない恐れがあります。
思っていたより開示成績が低かった方は、文章構成力を上げる訓練をしてみるのがオススメです。
【対策案一例】
・各教科の添削指導(複数名に)
・「うまい!」と思った文の模写
・自分の答案を音読して聞き返す
アタマの中で如何に壮大なことを思い描いていても、それが相手に伝わらなければ0点です。
東大受験生の答案を1万枚以上みてきましたが、凝ったことを書こうとして論理が支離滅裂になった答案を数多く目にしてきました。
おそらく、あれもこれも盛り込まなきゃという思いが先行するあまり、文構造に目が行き届かなくなったのでしょう。
答案を小声で読んでみたり、時間を空けていったんフラットな状態で答案を読み返してみたりすると不自然な論理を発見しやすくなります。
【対策案一例】
・他人の答案を論評してみる
・自分の答案を論評してもらう
・子供に理解できるかを試金石に
・文章構造をなるべくシンプルに
英語で言えば語法です。
たとえば、prolongとpostponeを共に「延長する」だと思って覚えていると英作文で失点します。
日本語で言えば、「推敲」「文才」「時系列」といった言葉を知らないと端的に答案を書き上げることができず、字数ばっかり食ってしまい、詰め込みたい要素を詰め込めなくなるのです。
【対策案一例】
・例文ベースで語法を確認する
・語法に自信のある語のみ用いる
・中高生向けの言葉ドリルを活用
・多読をするなかで仕入れていく
本文の趣旨を端的にまとめる、あるいは考察した結果を明瞭に伝えられるチカラを指します。
英文要約や東大現代文、東大地理において答案づくりに苦戦される方は、概して要約トレーニングを必要とされています。
優れた要約を書き上げるコツは、「骨」と「肉」の峻別です。
要するにどういうことかと自問自答する習慣をつくりましょう。
【対策案一例】
・厳しい字数制約を日頃から課す
・小・中学生向けの要約本を解く
・世界史中論述や東大地理の活用
問いにストレートに答えきれていない、誤字脱字だらけ、設問条件のド忘れや無視、解答欄の取り違えといった学力以外の要素でかなり多くの受験生が不合格の憂き目をみています。
ポカミスだけで30〜40点も落とす人がザラにいます。
1点足りずに落ちる人が100人いる東大入試では致命的な問題なのです。
【対策案一例】
・ポカミスデータベースをつくる
・本番に近い環境で問題を解く
・厳しめの時間制約を課して解く
「英語力を上げるなら、まずは国語力を上げろ」、
この言葉を皆様にお送りします。
(参考)映像授業コース【東大現代文】
それでは、能書きはこれくらいにして文章作成に資する12の技を伝授したいと思います。
目次
極意① 助詞の使い方に注意せよ。
まずは、こちらの動画をご覧ください。
https://m.youtube.com/watch?v=tzLGA1-QWfU&feature=share
いかがでしたでしょうか。
ダンゴムシ「にも」と、ダンゴムシ「も」では、意味が大きく変わることを実感していただけたのではないでしょうか。
会話の中でなら、「それ、どういうこと?」と聞き返すこともできますから、相手の真意を掴むことも容易です。
ですが、入試においては、提出された答案用紙だけが唯一の判断材料ですから、答案に書かれた言葉だけがすべてであり、採点官は答案で述べられた言葉だけを評価の対象にします。
さて、ここで4つの例文をご紹介したいと思います。採点官になったつもりで、添削をしてみてください。
(1)先輩が敬天塾で東大合格を果たしたので、私は敬天塾に興味を持った。
(2)先輩は敬天塾で東大合格を果たしたが、私は敬天塾に興味を持った。
(3)先輩は敬天塾で東大合格を果たし、私が敬天塾に興味を持った。
(4)先輩は敬天塾で東大合格を果たすと、私は敬天塾に興味を持った。
いかがでしたでしょうか。
違和感のない文は(1)だと思います。
その他も似たような文ではあるのですが、助詞の使い方で違和感を覚える表現があったと思います。
その他は、下線部に意識を巡らし、どのように変えれば良いか考えてみてください。
他の人の答案を採点してみることで、自分の答案の問題点にも気付きやすくなります。
敬天塾の授業で、答案比較検討会を毎回取り入れている理由でもあります。
なお、受験生答案で全教科的に散見されるのが(2)のように不必要な「が」です。
ここで、いくつか例文を挙げます。
A. 東大の文化祭に行きたかったのだが、風邪を引いてしまったため行けなかった。
B. 東大の文化祭に行ったのだが、そこで旧友と出会いすごく楽しかった。
なんの変哲も無い二つの文章のように思えるかもしれませんが、
Bの「が」は論述答案で極力避けねばなりません。
まず、文法的な説明からしますと、
Aの「が」は逆接を意味し、
Bの「が」は単純な接続を意味します。
AもBも日本語としては意味が通じるかもしれませんが、接続助詞の「が」は逆接を意味することが多いので、一読した時に、誤解を生む可能性があるのです。
たとえば、Bを逆接と捉えると、東大の文化祭に旧友がいるなどありえない、それにもかかわらず旧友がいたから驚いたというニュアンスを見出すことも出来なくはありません。
このような「が」は、世界史や地理の大論述でもよく見られます。
たとえば、
ウェストファリア条約で西欧に確立された主権国家体制は、アメリカ独立革命やフランス革命を経てラテンアメリカなど非西欧圏にも拡大したが、多民族帝国たる独墺の敗戦や露の革命による解体により東欧を中心として多くの主権国家が第一次世界大戦期に誕生した。
この世界史答案における「が」の前のゾーンと、後のゾーンには何らの関係性もありません。
ラテンアメリカ諸国が独立を果たしてから、第一次大戦までは100年近く離れており、無関係な二つの事柄を一文でまとめる意義も見出せません。
さらには、この「が」は単純な接続で用いているのか逆接で用いているのか不明瞭であり、読み手からするとスムーズに読み進めることができません。
東大教授ともなれば、因果関係の嘘偽りを見落とすことはなく、事実誤認には厳しい態度で臨むことはよく知られているところです。
仮に、この「が」を逆接の意味で解釈された場合、
意味不明な論理関係だとして低評価されることもありえます。
引き続き、こちらの地理答案をご覧いただくとしましょう。
官民の中枢管理機能や金融機能が集積する恩恵、並びに雇用吸収力の高い第三次産業の急速な発展や高賃金が人々を魅了したのだが、その結果として多くの人が東京圏に流入した。
単純接続の「が」を使いたい人の心理は、
「が」で接続することで、うまく文章が繋がったように錯覚するからなのでしょう。
これは一種のクセのようなものです。
会話では、話を途切れさせないために、しばしば「が」を用いる気持ちも分からなくは無いですが、論述答案では避けるに越したことはありません。
さて、この地理答案に話を戻しますと、「その結果として」という因果性を示すワードがあるにもかかわらず、
この「が」の存在が前半部と後半部の繋がりを不明瞭にしてしまっています。
なんのために、どういう意味で、「が」を用いる必要があったのか全くわかりません。
ちなみに、この文は、二文に分けて書いた方が読みやすい文章になるでしょう。
官民の中枢管理機能や金融機能が集積する恩恵、並びに雇用吸収力の高い第三次産業の急速な発展や高賃金が人々を魅了した。
その結果として、多くの人が東京圏に流入した。
極意② 修飾・被修飾の関係に注意せよ
修飾・被修飾の関係が不明瞭な答案は実に多くみられます。幾つか具体的な例をご紹介したいと思います。