東大英語2018年第1問 一見「簡単」だからこそ気をつけろ!
こんにちは!敬天塾スタッフXです!
今回の記事では、弊塾の英語第二回授業において取り扱った、東大英語2018年第一問の解説やポイントについてまとめていきます。
2018年の英語といえば、東大の歴史上かなりトリッキーな年度でした。
それまでは4つまでだったリスニングの選択肢が突然5つに増えたり。
1-Bで何年も出されていなかった和文英訳が突如出題されたり。
英語でかなり混乱してしまった受験生が多かった年です。
そんな年度の英語第一問。
ざっと読んだ印象としては、なんとなく文意は理解しやすいので、「あれ?簡単かも?」と感じませんか?
ですが油断は禁物。
第一回でも紹介した通り、2018年の問題は一般的に予備校などで紹介されている「要約のコツ」を覚えている人ほど解きにくい問題です。
いわゆる「要約のコツ」が文章中にちりばめられすぎていて、「結局どこが重要なポイントなの!?」とわからなくなってしまうのです。
今回は、そんな2018年の第一問を解くポイントを、弊塾の生徒の答案をもとに紹介していきます!
噂?デマ?誤謬?なんと訳す?
この文章のテーマの1つは”False rumours”。
直訳すると「間違った噂」ですよね。
ですが、生徒の答案には、複数の訳し方が見られました。
「噂」
「デマ」
「誤謬」
「根拠のない噂」
などです。
果たしてどの訳し方が文意に沿っているでしょうか?
Rumourの訳としては、「噂」は正しく、また一段落目が”Rumours spread by…”と始まっているので、単に「噂」と書くのは誤りとは言い切れません。
ただ、「噂」だけだと”false”の要素が強調されておらず、その点では「デマ」という訳し方の方がより”false rumours”というキーワードをよりピンポイントに訳せていると言えます。
「根拠のない噂」など直接的に訳したものも使えますが、「デマ」と表した方が文字数的にもかなり節約できます。
どうしても「デマ」というワードが思いつかなかった場合に「噂」を修飾する語をつけて表す、というのが妥当なところでしょう。
生徒の中には、「デマ」という単語は元々”demagogy”という単語の略語なので、”demagogy”という単語が出てきていない以上「デマ」を使うのはどうなのか?という意見をくれた生徒もいました。
語源を辿ればそうかもしれませんが、一般的な日本語として「デマ」が利用され、また”demagogy”は少し専門的な単語であることからも、ここで「デマ」という言葉をあえて使わないでおくほどではないと思われます。
では、「誤謬」という単語はどうでしょうか。
「デマ」と「誤謬」との大きな違い、それは「情報の拡散があるかどうか」です。
「誤謬」だけだと単に誤った情報を指すため、”rumour”の意味合いが薄いので、それだけで使うのは今回の場合は文意に合わなそうですね。
ただ、前半に「噂」という訳を使った上で、後半に「その誤謬」というように、誤っているのが前に述べた「噂」のことであると分かるような書き方であれば、その単語を用いること自体は問題なさそうですね。
とはいえ、「誤謬」という漢字を本番で自信を持って書けるか?というところも問題になります。使えたらかっこいい漢字ではありますがリスクも大きいことを押さえておきましょう。
一見よく書けているように見えるけど…?
今回の授業の中で、生徒が書いた答案を見比べてディスカッションをしたときに、特に人気があったのが、Dさんが書いた答案でした。
「噂は他論に傾倒したり、持論が激化して広まる。誤謬を避けるには情報に満遍なく接したり、有識者から訂正を受けるとよいが、感情が絡むと人の考えは変え難くなりうる。」
このDさんの答案は、かなりかっこいい単語を活用していて、さっと目を通した感じだとかなりよく書けている答案に見えます。
ですが、よく見てみると、かっこいい単語の使い方が少しおかしい部分が散見されました。
例えば、デマの広まり方について、
「噂は他論に傾倒したり、持論が激化して広まる」
と表現してくれました。
とてもシンプルに表現できているように見えます。
ですが、元の文章の内容と比較してみると、少し誤った言葉の使い方をしています。
「他論」とは他の人の意見のことで、「傾倒」とはそうした意見だけを熱中して聞く、といったニュアンスがあります。
ですが、文章中では、単に「他論」というよりは多数の人の意見に同調してデマを信じ込んでいく、というような表現がなされているので、他論に傾倒、という言い方では不十分です。
また、「持論が激化」という表現について。
まず、持論を持っているのが誰か、という主語が抜けているため分かりにくいです。
さらに持論は「自らの意見」なので、「特定の集団内の意見が激化していく」というようなところまでは言及できていません。
文章中での表現を見ると「意見が激化していく」というよりは、似たような意見によっていく、無意識に信じ込んでしまう、といった訳の方がより文章に合っているように思われます。
他にも、
「公平に接する」というべき部分で「満遍なく接する」という言葉を使っていたり、”who knows the truth”という「真実を知っている人」の訳語として「有識者」という語を使っていたりと、文中の意図と少しズレた訳語が散見されました。
難しい言葉やかっこいい言葉を使うと、一見ものすごくシンプルで力強い文章が書けているように思えます。
実際に生徒の多くはこの答案が一番いい!と答えてくれました。
ですが、意外とじっくり考察してみるとズレていることも多い。
簡単でも良いので、より文意に沿った適切な訳語を心がけましょう。
要約問題、逐語訳すべき?
さて、今回の授業で1人の生徒から質問がありました。
「要約問題では、逐語訳をすべきでしょうか?」
基本的には、逐語訳そのままではいけません。
逐語訳した上で、より濃縮してまとめることが重要です。
ただ、2018年第一問は、その「要約のコツ」がうまく使えない年。
文章中にエッセンスが散らばりまくっているので、まとめた時の回答がばらつきやすいのです。
そのため、この問題の場合は、多少は逐語訳のようになってでも、キーワードとなる単語をより正確に表現することを重視した方が、より文意に沿った訳ができます。
まとめ
いかがでしたか?
この問題では、塾生が作成してくれた答案の多くは文末が同じような感じになっていました。
割と文章自体は簡単な文章なので、解き終わった後は「出来た気」になります。
ですが、微妙な修飾語や主語によって点数は大きく変わります。
こうした一見簡単な問題ほど、点数の差は大きくなるので十分注意して臨みましょう!