2021年東大地理(総論)入試問題の研究

(編集部より)地理を担当しているおかべぇ先生が、以下の地理の講評を書いております。
ちなみにおかべえ先生は、東大二次試験の地理で60点満点中59点を取得した先生です!

科目全体

【敬天塾オリジナルレーダーチャート】

【各社の難易度比較】

※敬天塾以外の科目全体の分量、難易度は昨年比です。「同程度」「変化なし」は「昨年並」に表現を揃えております。
※敬天塾の科目全体の難易度は昨年比ではありません
※設問別の難易度は全社、昨年比ではありません。
(以下、他の科目の各社難易度比較も同様です)

【科目全体の講評】

トピック① 話題のテーマが多数登場

第1問設問Aでは「今後、地球温暖化が進んだらどうなるか?」というテーマ。
第2問設問Aは、インターネットの普及と言語の変化や、グルーバリズムと公用語の変化など
第3問ではマルマル全部、女性がテーマの問題。
などなど、ここ最近話題になっているテーマが非常に多く見受けられました。

トピック② でも、東大らしい切り口

しかし、テーマ自体は話題になっているものでも、東大の地理らしい問題はたくさん健在。
たとえば、第1問設問Aの(1)では、「今後、地球温暖化が進んだらどうなりますか?」という面白いテーマを問うている中でも、航路や資源開発など人間の社会生活に関することと同時に、地盤のゆるみや生態系への悪影響など自然環境への視点も盛り込んで解かせる問題が登場しました。

東大の地理では、一つの事象が他分野(多分野)に及ぶ影響を考察させる問題が多いのですが、今年もその傾向はハッキリと見受けられたと言えます。
テーマは新しくても、東大らしさもしっかり残しているという、見事な作問だったと思います。

トピック③ 分量や記述量はやや減!?

解いている時に、記述量がやや減った印象がありましたが、事実として減りました。
東大地歴は、地理選択者の時間制限の厳しさが際立っていたのですが、緩和されたことでしょう。
もちろん、依然としてまだまだ東大全体として処理速度が問われる試験だという側面はかなり強く残っていますが、地理の分量が緩和したことで、少し取り組み易くなったと言えると思います。

一方で、考察力や考察量は例年と変わらず求められている印象です。

【2021年入試で注目したい問題はコレ!】

第3問設問A (2)
イスラエルでは、周辺に位置する国と比較し、女性の労働力率が非常に高くなっている。こうした違いが生じる要因について、2行以内に述べなさい。

面白い問題でした。
イスラエルは中東辺りでも、非常に特徴のある国。
その歴史的な背景や、文化面、さらに周辺国の文化や国際情勢までを踏まえた上で、渾身の2行を書く問題です。

女性の労働力は、一般に先進国化すればするほど高くなり、また女性の労働環境が整備されると高くなります。つまり、経済面での成長と同時に、政治面の配慮も必要なのですが、これだけでは済まされない問題。
私は問題を見た瞬間、イスラエルが高いというより、周りが低いのでは?と考え、周辺のイスラーム国で女性の社会参加が消極的なことも思いつきましたが、予備校の中には触れていないところもあるよう。
このように多岐に渡る知識や考察を踏まえた上で、短い字数にまとめるというのは、非常に東大の地理らしいですね。

さて、大手K社の答案では、
周辺のイスラム圏との緊張状態から国家意識が高く、挙国体制をとり、男女ともに高学歴化や社会参画が進んだため。

S社では、
周辺のイスラーム諸国は女性の社会参加に消極的だが、イスラエルは女性の経済水準や教育水準が高く、社会進出しているから。

T社
周辺のアラブ諸国にみられる宗教的な女性抑圧は小さく、経済発展とともに欧米的価値観が導入され女性の社会的地位が高いから。

Y社
女性の地位が低いイスラム教が優勢でないことや小国で労働力が豊富でないことを背景に女性の教育や社会進出が進んでいるから。

こう見ると、同じこと言ってそうで、やはりばらついていますよね。解答比較をして、どのような答案が良いか、「自分が判断し賢くなる」ことで、見出していただきたいと思います。

【2021年入試の傾向を踏まえると、今後の対策はどうする?】

過去問演習の重要性はいわずもがなです。

今回の入試でも、過去問に類似したテーマや内容が数多く出題されました。
また、東大では模範解答や採点基準が出題されてないので、各社の模範解答の比較検討などを中心に勉強することが重要かと思います。

市販の教材多数仕入れよう。

東大地理では、絶対的な良い教材が市販されておらず、良質な教材を入手することが困難です。
そのため、多数の教材を購入し、比較検討することが非常に重要です。
そういう意味では、教科書や資料集の複数購入と読み込みが、かなりコスパの良い学習になると思います。

添削指導を受けよう

地理は短文が多いので、他の社会科目に比べて添削指導の質がブレづらいです。そこで、自分でも添削がある程度可能ではあると思います。
しかし、できれば、他人に添削してもらった方が、公平でしょう。自分の意見と他人の意見を合わせて、良い答案を作成できるように心がけてください。

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