国語 現代文6月2018年第1問
こんにちは、スタッフBです。2018年第1問を解いて、互いの答案を検討しました。 とある生徒の答案、それに対するコメント、問題全体へのコメントをまとめました。
五感では認識できないものの存在を実験によって間接的に保証するのは、理論的に探求された物理学であり、物理学理論のネットワークなしでは保証できない。
「五感では認識できない」は良い。
「ものの存在」は「素粒子」と書くべきではないか
「間接的」の内容を説明すべき
「理論的に探究された〜」と「物理学理論の〜」はどちらかに集約できるのではないか
「物理学理論の〜」は傍線部の数行後ろから持ってきている。必要なのか?
素粒子に限定した方がいい
「物理学理論のネットワーク」は一般的な言葉ではない。
傍線部の「保証」を「担保」と言い換えている答案があった。言い換えとして良い。ただ、本文中の「保証」は一般的な言葉として用いられているため、そのまま使用しても良い。
基本ルールとして、鉤括弧を使って答案を作る、つまり、本文中の特別な意味のある言葉を用いるのは可能な限り避けるべき。
無生物主語はやや読みづらい。
理論的存在は、確かにどこかに存在することが実証されており、知覚的に観察できないからといって理論上にのみ存在するものではない。
理論的存在の説明をもっとすべき
どうやって実証されているのか書くべき。例えば「適切な実験装置と一連の理論的手続き」などで実証されている。
「どこかに」ってどこ?
「実証されており」は実証主義の印象を受けるのでNGではないか。
いや、「実証」は一般語でもあるから良い。
「たしかにどこかに存在する」はふわっとしてるけど、例えば素粒子は“たしかにどこかに存在する”ような存在である。
「理論上にのみ存在するものではない」は「実在しないものではない」などとするのがよい。
「十分な手続きや実験を通して」と表現した答案があった。この「十分」はとても良い。手続きや実験が十分だから良いのだ。言い得て妙だ。
キーワードが「手続き」であることに気づくのが難しい。理論よりも手続きが重要であることを理解して、答案を作成すると良い。
本文で扱う内容には理系の専門的な用語が登場する。文系理系の垣根を超えて、教養を身につけろというメッセージかもしれない。
虚構を表す言葉として、「観念」など良い。
歴史的事実は、生物や無生物のように物質として知覚できる存在ではなく、概念であり、史料や研究のネットワークによって存在が保証されることで、探求や確認を行うことができる。
生物や無生物がわかりにくい。変だ。
「存在が保証されることで、探究や確認を行うことができる」は前後関係が逆である。
文脈としては、歴史的事実の理論の話なので、存在にまで言及するべきではなないのではないか。だから「史料や研究のネットワークによって存在が保証される」と踏み込むべきではない。
生物、無生物ではなく「過去のものだから知覚できない」ということを書くべき。
傍線部前の「関係の糸で結ばれた」の部分を要素として入れるべき。
「概念」ってなに?
歴史的出来事そのものは知覚できない。しかし、当時の物質や史料の集合が探求・調査されることで、物理学における理論的存在のように実在を保証される。実在が確認された歴史的出来事は、虚構ではない事実として、特定の呼称を得て人々に語り継がれる。
最後が、この問題に即していないのではないか。
冒頭の一文はパワフルだなあ。
直接知覚できないものが「物語り」なので、冒頭に「知覚できない」とするのは良いかもしれない。
「特定の呼称を得て人々に語り継がれる」ものが確かに「物語り」かもしれない
最後の部分は主題からずれているのではないか。
冒頭から保証されるまでは、とてもよく書けているが、後半は不要である。後半は一般的な「物語り」の説明に終始している。
「物語り」が意味することは第一段落にある「体験的過去における『想起』に当たるものが、歴史的過去においては『物語り行為』である」から読み取れるのではないか。
歴史学での「物語り」は、物理学での「理論」と同じである。
「物語り」の定義とは何かを考える必要がある。
「物語り」の説明をしなくとも、なぜ「歴史的出来事の存在」が「物語り的存在」であるか理由を言えれば良い。
歴史的な出来事は理論的存在である。
この筆者がその言葉をどのように定義しているのかが重要なので、一般語としての「物語り」の意味を無視して考えなければならない。
この問題は難しいので、差がつかない。初見で難しいと思ったら、時間をかけずにそれなりの答案で終えて、古文や漢文に移行する。そういう判断が速やかにできるように。
大学の研究には3つある。
自然科学 物理、化学、生物
社会科学 経済学、政治学、法学、社会学
人文科学 文学、哲学、言語学、考古学、心理学
なお、社会科学と人文科学はどちらに区分されるか曖昧な学問がある。
敬天塾の授業では、毎回回答比較を行います。
攻めの答案や守りの答案、小学生にもわかるような言葉遣いでの答案を作る試みも良いかもしれないとのことでした。