参考書レビュー『文系数学の良問プラチカ』

塾長の平井です。
ガチで参考書のレビューをします。
取り上げるのは、あの『プラチカ』。東大文系受験生にも人気で、かなり多くの人が使っていますが、実際どうなのか。

遠慮なしに本音を書きます!!!!

1、東大対策には向かない

もうこれだけ言っておけばよいというのを、一発目に持ってきてしまいました。
これで満足する方は、このあとを読まなくても良いです(笑)

でも、これでは記事にならなくて編集長に起こられるので、いくつか理由を書いておきます。

2、東大対策になる問題が少ない。

プラチカは、文系の難関大受験者向けの問題集です。つまり東大対策ではありません。
東大対策として一部の問題が利用できるかもしれませんが、全てが対策になるわけではない、と言う意味です。

「そんなの、どんな問題集だってそうじゃないか!」と思うかもしれませんが、その通り。
しかし、文系プラチカは、あまりに東大対策に向かない問題が多すぎます。

すごく悪い言い方をすると、日本のどこかにある文系学部のうち、2次試験で難しい数学の問題を出題する、どこかの大学の対策として作られているので、
ピンポイントで東大対策にはなりません。
東大の入試問題を何度も解きなおして見直すと、明らかな意図や傾向が見て取れます。
それを十分に反映しているとは言えません。

3、一部の問題が難しすぎる

改訂ごとに掲載している問題が更新されているようなので、一概には言えませんが、中にはかなり難しい問題も載っています。
東大対策としては難しすぎる問題もチラホラ。
もちろん、数学で満点を狙うような人には必要なのかもしれませんが、多くの文系受験生が30点とか40点取れなくて困っているわけですから、
ちょっとオーバーワークかなと思います。

自分で難易度がある程度判断できる人なら良いですが、「むずかしい問題は、全てメチャクチャ難しい!」みたいに思ってしまう人は、あまり手を出すべきではないでしょう。

3、強引に単元別に編集されている

また、文系プラチカは分野別の編集になっています。
過去の出題された入試問題について、著者が(なかば強引に)数ⅠAⅡBの様々ある単元のどの分野に属するかを決定し、
数Ⅰ ⇒ 数A ⇒ 数Ⅱ ⇒ 数B の順で並び替えてあります。

しかし、数学の分野は明確にどの分野に属するかなんか分けられません。
例えば、この問題はどの分野に属するでしょうか。

一般的には、数Ⅰの「2次関数」の最後の方に登場する「2次不等式」の部分の問題だと答えるでしょう。
しかし、実はこの問題は数Ⅱの「複素数と方程式」の中の「解と係数の関係」の部分にも登場します。

証拠に、2次関数を利用した解法と、解と係数の関係を利用した解法の両方をご覧ください。

まずは2次関数

 

つぎに、解と係数の関係

 

さて、プラチカは難関大入試の対策問題集ですが、どういう大学では一見するとどの単元か分からない問題が出ますし、色々な単元を融合させて解く問題が出ます。

そういう意味で、本来であれば、数ⅠAⅡBのような分野別に分割しない方が良い気がしますので、マイナス評価となります。

4、体系化されてないし、体系化できない

そして、単元別に編集されているからこそ、使用者の頭の中で体系化しづらいです。
そもそも数学の理論に基づいて編集されているわけではなく、文科省の単元別に編集されているため、体系化されているとは言えないのですが、
受験生は頭の中で体系化する必要があります。

しかし、どうやって頭の中で数学の理論や解法を体系化すればよいかは書かれていません。
あくまで1問ずつ丁寧に解説を書いてある問題集です。
例えば、プラチカに載っている31番の問題と32番の問題が同じテーマの問題になっている、とかでもなく、良問を隣に載せてあるだけです。

数学は、別の問題でも通用するような抽象的な解法や考え方を学ばなければならないのですが、プラチカで抽象化を目指すにはかなり難しいでしょう。

5、解法メモが良いが、物足りない

なんか悪口ばかりになってしまいましたが、意外と私の中での文系プラチカの評価は高いです(笑)
それは、最大のウリである「解法メモ」があるからです。

ほとんどの数学の問題集は、答案例は載っているものの、その答案例を思いつくための考え方や、大きな方針の立て方なんかは載っていません。
数学の先生の共通認識というか、クセなのですが「そんなの書いてなくてもわかるだろ」とか「そんなの書くのは美しくない」というのがあります。
そのため、実は数学の勉強においては「行間を読む」ことが非常に重要になります。

この「行間を読む」作業を手助けしてくれるのが、文系プラチカの「解法メモ」です。
そういう意味で、文系プラチカは良い問題集だと評価できます。

一方で、その解法メモが少なすぎるというのも言えます。正直言って、これだけでは足りないと思います。
なんなら、答案例の倍か3倍くらいの分量がほしいくらい。
そういう意味で、ちょっと物足りないとも思います。

6、文系プラチカの効果的な使い方

ここまでの話を踏まえて、最後に文系プラチカの使い方で終わりましょう。

問題集の中身を変えることはできないので、使い方を工夫するしかありません。
そこで、使うタイミングを変更することをおススメします。

プラチカくらい有名になると、単元学習が終わった後の1冊目か2冊目くらいに使う人が多いと思いますが、これだと早すぎます。
単元学習が一通り終わったら、まず取り組むべきは、やはり東大っぽい問題や東大で出題されやすい分野からです。

場合の数・確率とか、関数と方程式の分野とか、整数なんかの出やすい分野を固めていく方が東大対策になります。
ちなみに、あまり出ない分野は、複素数と方程式や、三角関数、指数対数関数、(純粋な)平面図形などです。

こうして出やすい分野を固めつつ、東大の過去問を教学社の27か年か何かを使って、全て解き終えましょう。すると東大入試の難易度やよく出るパターンが、ある程度分かってきます。
ここまでやれば、文系東大対策としては、まあまあな対策をした人になると思います。

ここからさらに進み、「どんな問題が出ても点数が取れる」というくらいに対策をしたい人が、初めてプラチカに手を出すと良いでしょう。
東大っぽくない問題が多いからこそ、それを逆手にとって、東大が新傾向を出してきたときの対策にするのです。
これなら最大限に利用価値を高められるのではないかと思います。

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