算数で読み解く合格実績

算数で読み解く合格実績

はじめまして、スタッフiです。今回から、不定期ですが「受験生のためのデータの読み方」というテーマでいくつか記事を投稿していこうと思います。

1. 統計は嘘つきの大好物

世の中には 3 つのウソがある。ウソと大ウソ、そして統計だ

19世紀のイギリスの首相、ベンジャミン・ディズレーリの言葉です。統計とは、多くの情報の中から役立つものを抽出する方法です。300年ほどの歴史の中で、統計は医学、経済学、薬学、それからスポーツまで幅広く人類の役に立っ真てきました。他方で、ディズレーリが言ったように、統計は往々にして「人を騙すため」に使われてきました。料理をするための包丁で人を刺せるように、統計というのは薬にも毒にもなり得るのです。

東大現役合格者の2.8人に1人が東進生。

これは、東進ハイスクールのパンフレットに載っているフレーズです。これだけでなく、他の予備校や塾のパンフレットを覗くと、〇〇大学に何人入学しましたという合格実績を必ず目にします。そして、合格実績を参考に予備校選びをする方もたくさんいるはずです。ただ、本当にその情報を真に受けてもよいのでしょうか。

2. 予備校の合格実積を足し合わせると?

2020年度の大手予備校の東京大学の合格実績をまとめてみました。

  •  駿台予備校 1373名
  •  河合塾 1313名
  •  東進ハイスクール 802名
  •  鉄緑会 439 名

ここまでの合計が、3927名です。ただ、2020年度入試の東京大学の合格者は3083名で、 実際の合格者数より大きく出ています。ここに、Z会、早稲田アカデミー、北九州予備校、SEG、平岡塾なども加えると、実際の合格者の人数との差はより広がっていきます。どうしてこのようなことになるのでしょうか。小学校の算数で使う知識を使って考えていきましょう。

3. 「集合」で読み解く合格実績 〜その1 まずはベン図を理解しよう〜

小学校の算数では、データを整理する手法としてグラフや表のほかに、ベン図というものをあつかいます。ベン図というと、高校の数学のイメージが強いですが、小学校の教科書で同じような内容は扱っています。例えば、35人のクラスで、国語が好きな人が20人、算数が好きな人が15人、どちらも好きでない人が5人いたとします。このとき、ベン図を使うと以下のように書けます。

二つの丸全体の人数(これは、算数・国語の少なくともどちらかを好む人の人数です)は、クラス全体からどちらも好きでない人を引けば良いため!35-5=30人です。ここで、算数が好きな人と国語が好きな人の合計が20+15=35人ですので、先程の数字よりも5人多くなります。これはどういうことでしょうか。

ここで、二つの丸が重なる部分がありますね。これが、「国語も算数もどちらも好きな人」になるわけで、今回の例の場合は35-30=5人になるわけです。この考え方を合格実績に応用してみましょう

4. 「集合」で読み解く合格実績 〜その2 「東大合格」潜む数字のトリック〜

東大合格者をベン図に書き出してみましょう。まず、東京大学の合格者の人数3083人のうち、
・そもそも塾・予備校に通っていない人
・合格実績を公表していない塾・予備校に通っている人
は丸の外になりますよね。この人数がどれくらいであるかはよくわかりませんが、50人としておきましょう。そうすると、丸全体の合計人数は3033人になります。にもかかわらず、上記の合格実績に出てきた人数の合計は3927 人ですから、その差の894人が、「少なくとも二つ以上の予備校の合格実績にカウントされている」ということになります。この時点で、「○○予備校は△△人合格しているから、○○に通えば東大に合格できる」ということは考えづらくなるでしょう。

5. 合格実績の作り方

ここからは、算数だけの話ではありませんが、少し踏み込んで考えてみましょう。なぜこのように大きな数字がでるのか、以下のようなことが考えられます。
1. 短期間の講習のみを受講している
2. 映像授業だけを受講している
3. 単純に数を水増ししている
1番は、例えば高校2年生の春に講習に参加してその人が東京大学に合格したとして、それを合格者に数えているようなことです。2番は、とくにここ数年は映像授業を中心に展開している予備校についていえることでしょう。3番目に関して、実際に合格していない人を合格しているわけではなさそうです。しかし、予備校には特待生という制度があります。模試や入塾時のテストで成績の良かった人や有名進学校の生徒は、無料で予備校の講義が受けられるという制度です。この制度に関しては、スタディサプリの関正生先生や元東進講師の森田鉄也先生も問題視していました。そのような、顧客とは言い難い生徒が東大に合格すれば、その人数も合格実績としてカウントできるわけです。

6. グラフの見た目でもごまかしてくる東進ハイスクール

これは、東進ハイスクールのパンフレットの一部分(https://www.toshin.com/jisseki/)です。3つのグラフを前後に並べることで、まるで大きく伸びているかのような印象を与えてきますしかし、この棒グラフを横一列に並べると以下のようになってしまいます。

この2つグラフを見比べてみると、どのような印象を得るでしょうか。すくなくとも東進が出しているパンフレットのような急な増加は感じられないでしょう。とくに立体グラフは、遠近法などをもちいているため、私達に錯覚をおこさせてしまいます。

このような「グラフの見た目のトリック」は他の塾や予備校も使っています。見た目の印象ではなく、数字をみるようにしましょう。

7. 割合で比較してみる

絶対的な数だけで比較しても、なかなかその予備校の実力を判断することはできません。合格実績1000人と言っても、その年の生徒数が10万人だとしたら、割合としては1%程度となってしまいます。例えば、東進は生徒数12万人とされています。この12万人には高校1・2年生を含まれているので、受験生が1/3より多いとして、5万人だとしましょう。この場合、東進ハイスクールの東大合格者数は802名(2020年度)なので、合格者の高3生における割合は、
802 / 50000 = 約1.6 %
になります。もし、受験生が5万人より多いとしたら分母が大きくなるため、合格者の割合はもう少し小さくなるでしょうね。
鉄緑会の場合は4939人が通塾していて、そのうち1800人ほどが受験生だとすれば、鉄緑会の東大合格者数は439名なので、
439/1800 = 24.3%
が東大に合格していることになります。東進に比べるとだいぶ高い合格率です。他の予備校も合格者の割合を調べてみたいところです。ただ、スタッフi 調べでは、代ゼミ・駿台・河合などの塾はインターネットで生徒数を公表していません。

8. 書いてある情報より書いていない情報

ここで、数字を読むときのルールとして、「書いてある情報より書いていない情報」というキーワードを覚えておきましょう。

例えば、読者さんのお友達が100万円借金をして困っているという話をもちかけてきたとします。こころ優しい読者さんは、お金を工面してあげようと考えますが、もし、そのお友達が1億円をすでに銀行に貯金していたらどう思いますか。また、その100万円が親から借りたものだったらどう思いますか。借金100万円という、「書いてある情報」だけに反応してしまうと、判断を見誤ってしまうことがあります。予備校が生徒数をわざと出してないというのは、なんらかの目的があると考えてしかるべきでしょう。合格者の割合を計算されては、不都合なのかという勘ぐりをしてしまいますね。

9. 進学校の数字と比較してみる

例えば、有名進学校の合格者数(浪人生込)は以下の通りです。

  •  開成高校  144名
  •  灘高校  97名
  •  麻布高校  85名

ちなみに、現役合格率はそれぞれ

  • 開成高校 27.18%
  •  筑駒 高校34.72%

ですから、合格実績としては非常に優秀であることがわかるでしょう。もちろん、学校に行きながら予備校に通うというのはよくあるため、全てが学校の指導力のおかげとは言えませんが。それは予備校に関しても同じことを言えるでしょう。

他のデータとの相対評価をするということは非常に大切です。薬の例でたとえてみましょうか。たとえばある感染症にかかって発症してしまった人100人に薬Aを処方したところ、90人が回復したとします。しかし、飲まなかった100人も同じように90人が回復したとしたら、果たしてその薬は効果があると言えるのでしょうか。薬剤の世界では、このような症例を何個もテストすることで本当に効果があるかを見分けています。しかし、予備校の世界ではそのような検証はされてきてないため、ゆえに大手予備校に通っておけば・・・などと思ってしまうのかもしれません。

10. まとめ 塾や予備校の実力をどうやって測るか

まとめとして、塾や予備校の実力をどうやって比較するかということを考えてみましょう。塾に通えば必ず合格するというわけではありませんが、受験に関して戦略や情報無しで合格することは非常に難しいため、塾・予備校は必要になるでしょう。東大受験の具体的な戦略についてはここでは述べないとして、一般に数字を読み解く上で意識しておいてほしいことが、

  1.  絶対数だけでは比較しない。他との比較や割合も算出してみる
  2. 数字を見るときは、どのような過程を経て出されているかを調べてみる
  3. 書かれている数字だけでなく、書かれていない数字は何かを考えてみる

まずはこの3つが統計データをみるうえで、とても大切な考え方です。「疑いの目を持ちながら数字と接する」ということが騙されないための第一歩です。

参考にした予備校や進学校のデータは以下のサイトから参照させていただきました。

  1. https://www2.sundai.ac.jp/yobi/sv/sundai/scontents/others1_D/1337358167095.html
  2.  https://www.toshin.com/jisseki/
  3.  https://www.kawai-juku.ac.jp/result/numbers/
  4.  https://www.tetsuryokukai.co.jp/results.html

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