2018年 東大国語 第3問(漢文)『新刻臨川王介甫先生文集(しんこくりんせんおう かいほせんせい ぶんしゅう)』解答(答案例)

かなり難易度の高い問題です。
この20年ほどで最も難しい問題かもしれません。

「対」の理解を深める良い題材ですし、リード文にもあります「人材登用」というのは漢文の主要テーマの一つなので、ぜひ取り組んでいただきたいです。

答案例とプチアドバイス

(一)傍線部a・b・cの意味を現代語で記せ。【各0.5行】

(傍線部の前後:人ノ能ハザルヲ患ヘズシテ、己ノ勉メザルヲ患フ

a 患

答案例:思い悩む

プチアドバイス:「愚痴を言う・嘆く」などは、声に出すとは限らないので避けたいですね。

 

b 尊爵

(傍線部の前後:善行・美名・尊爵・厚利也。)

答案例:高い地位

プチアドバイス:尊爵以外の3つはすべて、形容詞+名詞の関係です。
よって、「爵を尊ぶ」や「尊と爵」ではなく、「尊い爵」。

 

c 已ム

(傍線部の前後:士能ハザレバ則チ已ム。)

答案例:与えるのをやめる

プチアドバイス:前文と「対」になっています。「対」は省略を見つけるヒントでもあるので、ぜひ注目しましょう。

 

(二)「執(たれ)カヘテルヲ(す)テテメテサザランヤ。」(傍線部d)とは、誰がどうするはずだということか、わかりやすく説明せよ。【1.5行】

※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点と送り仮名。

答案例:世の人士が自分の望みを叶えるために自ら努力して有能な人材になろうとするはずだということ。

プチアドバイス:「才ト為ル」の部分は「才能を発揮」でも良いけれど、「才能を磨く」だと減点かもしれません。地位や名声を得るには、認められる必要があるので。

 

(三)「人所以クセリ」(傍線部e) を平易な現代語に訳せ。【1行】

※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点のみ。

答案例:人材を待遇する手段がすべて行使されていた。

プチアドバイス:難問。せめて「所以」が手段であることの部分点だけは取りたい設問です。
東大漢文2022年でも「所以」を「理由」以外の語に訳さなければなりませんでした。
過去問にしっかり取り組んでおくと、スムーズに解けることがあります。

 

(四)「之ルニ至誠側怛(そくだつ)ノ力行シテンゼザレバ、未至誠側怛力行シテズル者有ラザルナリ」は、誰がどうすべきだということか、わかりやすく説明せよ。【1.5行】

※実際は書き下し文ではなく、白文に返り点と送り仮名

答案例:皇帝が人材登用の企画の前に、極めて誠実な憐憫・同情の心で人材の待遇制度のために尽力すべきだということ。

プチアドバイス:難問です。部分点を取りに行きましょう。「誰が」「至誠側怛之心」などを書かずに白紙にした人はもったいない!
(「誰が」はリード文にあります)

 

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