2023年東大英語(第4問B 英文和訳)入試問題の解答(答案例)・解説

第4問B 英文和訳

(編集部注)難易度の評価など、当日解いた所感はこちらをご覧ください。

 

東京大学の英文和訳の特徴については、以下の記事でもご案内しておりますので、併せてご参照ください。本稿ではいくつかの解答例を示すとともに、東大受験生が悩むであろうポイントについて解説いたします。

2023年度の4B出典は Cupboard love−Unwrapping the comfort in foodからです。

https://www.bps.org.uk/psychologist/cupboard-love-unwrapping-comfort-food

コンフォートフードを初めて知った方もいらっしゃるかもしれませんが、その名の通り、口にすることでホッと一息つけるような食べ物を指します。
お袋の味といった家庭料理や、故郷の郷土料理を食べると、懐かしさや幸せを感じることってありますよね。
そうした食べ物のことをコンフォートフードと総称しているのです。

アの解説

さて、前置きはこれくらいにして、設問を見ていくとしましょう。

(ア)Right from the start food becomes a way to satisfy our feelings, and throughout life feelings influence when, what and how much we eat.

先ずこちらの(ア)についてですが、構文自体はシンプルで、主語や動詞の把握も難しくはなかったと思います。
一箇所訳しづらかったところは冒頭のRight from the startではないでしょうか。
「まさに始めから」と訳しても✖︎ではないでしょうが、日本語として違和感を覚えます。
日本語として違和感のある文章は和訳できているとは言えないと東大教授が仰っていたことがありますが、その観点に照らすと、少し言葉を添えたい気もします。

この点、傍線(ア)の直前の一文を読んでみますと、

Food and feelings become mixed from early childhood, according to some theories of relationships based on food and feeding.とあります。
このfrom early childhoodをさらに強化したものがRight from the startと言えるので、私なら、「我々が生まれたまさにその瞬間から」「生まれたその瞬間から」「まさに生まれたその時から」と訳すと思います。

以上より、

ア(解答例)

  • 我々が生まれた瞬間から、食べ物は我々の感情を満たす(一つの)手段となっており、生涯を通じて、感情はいつ、何をどれくらい我々が食べるのかに影響を与えている。
  • 生まれたその時から、我々は食べ物によって自身の感情を満たし、生涯に渡って、感情というものが我々がいつ、何を、どのくらい食べるのかに影響を与えるのである。

イの解説

(イ)The power of sugar to soothe appears to be present from the very beginning, with effects demonstrated in those as young as one day old.

次に、傍線(イ)ですが、こちらも(ア)と同様、シンプルな構文だと思います。
ただ、from the very beginningをどこまで詳しく書くか、(ア)のright from the startと同様に悩まれた受験生はいたでしょう。
また、焦って読むあまり、those as young as one day oldの部分を冷静に読み解けず、トンチンカンな解答を書いてしまった受験生も一定数いたようです。

TOEICや共通テストが普及するなか、速読速解が重視されるようになっていますが、その大前提には正確な構文把握能力が不可欠であることは言うまでもありません。
東京大学が時勢に呑まれず、この4Bや4Aで文法力を問うてきていることには意味があります。
昭和時代の難解な構文解釈本をやる必要はありませんが、基礎が不安な方はスタディサプリの関 正生先生の英文解釈講座を高速でチェックするなどしてから、東大対策に勤しむことをオススメいたします。
基礎に戻る勇気が合格力だからです。

 

さて、話を戻しますと、from the very beginningについて「まさに始めから」と訳しても✖︎にはならないと思います。ただ、those as young as one day oldの部分との親和性を考えたならば、「生まれた時から」と訳出したいものです。そう考えたならば、以下のような解答例が考えられましょう。

イ(解答例)

  • 砂糖がもつ人を落ち着かせる力は、生まれた時から存在しているようであり、生後わずか1日の子どもに対してもその効果が示されている。
  • 砂糖がもたらす癒しの力は、生まれた時から存在する。その効果は生後わずか1日の赤ちゃんにもあらわれている。

ウの解説

(ウ)the choice of comfort food depends on unique memories of both good and bad times and the foods associated with them; what’s comforting to me, might not be to you.

東大らしい問題が来ました!
使われている単語は大したことがないのに上手く訳せないという典型的な東大4B問題です。
いやらしいのがuniqueの訳出です。
「特有の」「独特な」と訳しても✖︎ではないかもしれませんが、いきなり「特有の記憶」「独特な記憶」といっても、正直なにそれ?と私なら感じてしまいます。
ただ、限られた試験時間の中で解答用紙を埋めるためには、ベストではなくベターを目指す戦略も重要ですから、凝った内容を書くよりもサクッと無難なものを書いて次の問題に進めるスタンスは重要です。
120分で120点、つまり1分で1点稼がねばならないわけですから悠長に考える時間的ゆとりは東大英語にはありません。

とはいえ、ちょっと面白い訳でもいくつかご紹介したいと思います。

ウ(解答例)

  • どのようなコンフォート・フードを選択するかは、人それぞれで異なる良い時と悪い時両方の記憶と、そうした記憶に結び付けられた食べ物によって決定づけられる。それは、私にとっては心が落ち着くような食べ物であっても、あなたにとってはそうではないかもしれない、ということである。

 

以上、今年度の4B設問解説でした。いかがでしたでしょうか。
簡単なように見えて、意外にちゃんとした解答としてまとめるのは難しかったかもしれません。
この4Bを10分程度で終わらせられることが理想です。
4Bについては、中3や高1生でも取り組める手頃な問題となっておりますので、早いうちから東大過去問に少しずつ触れておくと、モチベーションを高く維持できるかもしれませんよ(^^)

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2023年東大英語(第4問B 英文和訳)入試問題の解答(答案例)・解説” に対して7件のコメントがあります。

  1. 中原良介 より:

    示唆に富む解説ありがとうございます。
    一つ教えて頂ければと思うところがあり、コメントさせていただきます。
    第4問B
    (イ)The power of sugar to soothe appears to be present from the very beginning, with effects demonstrated in those as young as one day old.

    with effects demonstrated
    のところですが、
    with OCの構文とするなら
    effectsにthe がついて然るべきだと思うのですが、如何でしょうか?
    demonstratedはeffectsを修飾する過去分詞ではない、と断言できる根拠はどのようなものでしょうか?(もし仮に、demonstratedがeffectsを修飾する過去分詞とするなら、theが付かないこともしっくり来るのですが…)

    何卒宜しくお願いいたします。

    1. 平井 より:

      ご質問の件、カンマの後にwith以下の文が来ていることからも、またdemonstrated以下の文が修飾する先の候補が他に見当たらないことからも、effectsを修飾していると考えるのが自然だと思います。
      なぜtheをつけないのかというご質問ですが、with effectという熟語を受けてのものだと思います。effectは通常不可算名詞ですが、修飾語句を伴う場合はsをつけることが時々あります。

      今回、demonstrated in those as young as one day oldという修飾語句を伴っていること、並びに癒しの効果は複数種類観念されるだろうことからeffectsと複数形扱いにしたのだと思います。
      念のためNgramでも調べてみましたがm with effectに比べ少ないものの、with effectsも確かにヒットし、with effects demonstrated〜も検索結果は出ました。

      少し不親切な文だと思いますが、しっかり考えながら読み進めておられるご様子、今後の伸びが期待できる学習姿勢だと思います。

      1. 中原 良介 より:

        ご回答ありがとうございました。

        しつこくて申し訳ないのですが、
        「effectsを修飾していると考えるのが自然だと思います」とお書きになっているということは、with OCではない、ということでしょうか?
        しかし、解答例のほうは
        生後わずか1日の子どもに対しても「その効果が」「示されている」
        「その効果は」生後わずか1日の赤ちゃんにも「あらわれている」
        というように、with OCと解釈したように書かれていて、ちょっと混乱しています。

        また、Googleで、
        “with effects demonstrated in” で完全一致検索してみると、
        は2,150件ヒットするものの、effectを単数形にして
        “with effect demonstrated in” で完全一致検索してみると検索結果はゼロでした。
        どうやら学術系の文章で使われる成句表現といってもいい表現のような気がします。

        そもそも生後一日の赤ちゃんに粉ミルクに混ぜるにしても砂糖を与えるものなのか?という違和感が払拭できず、赤ちゃんがお乳を飲んでうっとりしているような、soothing な効果が砂糖にはある、ということで、as の省略された分詞構文ではないか?とも考えたのですが…。
        しかし、as のある形は
        with effects, as demonstrated by techniques…
        with effects as demonstrated previously.
        の2件がヒットするのみでした。

        一見、with OC がベタな形で使われているものを東大がそのまま和訳問題として出題するのだろうか?というのも疑問です。

        長文失礼しました。

        1. 平井 より:

          お返事遅れて申し訳ございません。

          まず、with O Cなる構文には様々な意味や形があります。

          With the button pushedであれ

          With many people talking loudlyであれ

          with your mouth fullであれ

          名詞を修飾しているとも言えます。ただ、意味で捉えた時にO C構造になっていることが多い珍しい類型だねと文法学者が気づいてwith O C構文などと定義づけを行いました。とはいえ、ネイティブはかなり自然に使っていますから、あまりwith O C構文という認識はしていないようです。withという前置詞の特殊性によるのかもしれません。詳しくは東大の文学部や教養学部の英文学講義などで学べますのでお楽しみに^_^

          その上でですが、

          with effects demonstrated in those as young as one day old

          は前回申し上げた理由からも明らかにeffectsをdemonstratedが修飾していると評価でき、そしてO C構造になっているとも評価できます。ゆえに、予備校解答のような訳になっているわけです。

          ちなみに質問者さんなら、どのように訳されますか? 東大4Bは基礎的な構文しか出されませんが、こなれた日本語にすることが難しいのです。これが学校の定期考査や模試との決定的な違いです。東大教授はこうした訳読の力を4Bで測っています。言いたいことはわかるけどうまく日本語に訳せないんですね。

          反対に一橋などは難解な構文を出します。文構造がわかれば簡単に訳出できます。ですが、東大は文構造が分かっても、良い答えを書きづらいのです。東北大学の英語講評も参考になさってください。参考になる記述が多く載っています。

          次に、赤ちゃんに砂糖をあげることに違和感があるとのことですが、粉ミルクには乳糖が入っていますね。乳糖は母乳にも入っています。我々のイメージする砂糖粒というより糖分や、ほんのりとした甘さのようなイメージも含めてsugarを使っているんだと思います。ただ、これは医学論文ではありませんから訳す時には砂糖でいいと思います。

          また、asが省略された分子構文なのではないかというご質問についてですが、質問者さんがおっしゃる「soothingな効果が砂糖にはある」という理解で正しいです。だから、with effects demonstrated〜のままでいいはずです。

          前回の解答でも申し上げた通り、それなら the effectsとしたいところでしょうが、熟語的に使っているんじゃないのかと私は考えています。また、もう一つは the power of sugar to sootheの効果には様々なものがあり、それを受けて容易に特定できないくらいあるからeffectsとしているのかもしれません。

          日本語で説明すると、

          「砂糖には人を癒やす力がある。その効果っていうのは〜〜〜生まれたばかりの赤ちゃんにも見られる」

          とするとthe effectsじゃないのはおかしい!と質問者さんは脳内で疑問の嵐が吹き荒れていらっしゃるんですよね?

          では、

          「砂糖には人を癒やす力がある。生まれたばかりの赤ちゃんにも見られる複数の効果を伴って」と考えたなら、複数の効果の詳細は本文で示されていませんからtheをつけなくても腑に落ちます。

          ただ、訳す時に、こなれた日本語にするため、そうしたeffectsは砂糖の癒しパワーに随伴するものなのだからwithが使われているわけで、実質的にthe effectsと同様に「その効果は」と訳しても文脈上違和感はないよねという思考プロセスを踏んでいると私は理解しています。

          ひとまず以上です。勉強頑張ってください!

          1. 中原 良介 より:

            ありがとうございました。

          2. 中原 より:

            人をほっこりした気持ちにさせる甘味の力は、この世に生まれてすぐから見てとれ(be present)、生後わずか一日の赤ちゃんにもはっきりとわかる効き目を持っているようである。

            てな感じでしょうか、言いたいことは。
            どうも be present(,)with effects
            という流れのような気がします。

            このコメントは表示していただかなくて結構です。
            これ以上コメント欄を汚すのも気が引けますので。

            ともあれ長いこと付き合って頂きありがとうございました。

          3. 平井 より:

            いえいえ、熱心にご質問ありがとうございました。
            頑張ってくださいね

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