【東大地理】2021年第1問の解答(答案例)と解説

第1問は世界の環境と地形に関する出題でした。東大地理では恒例の見覚えのないデータを使って思考させてくる問題でしたがいかがでしたか。

設問A

気候変化に関連する問題でした。
小問が5個登場していきなり飛ばしたくなりますが、2問が客観式問題で1問は1行問題なので記述量はそこまで多くありませんでしたね。
また、設問文が長く、指定語句も多く設定されていたのでゲンナリしてしまうかもしれませんが、問題文はヒントの宝庫なので、推論がしやすくなるぞ!と楽しみながら解き進めましょう!

設問(1)

本問ではこの地域では陸と海にどのような影響が現れるのかを「航路」「資源」「地盤」「生態系」の語句を使って答えるように指示していますね。そして、図1-1を見ると平均気温が3℃以上上昇する地域は主に北極圏であることが分かります。

まず「航路」について。指定地域が北極圏であることを前提に海と陸の両方の地形について特徴を考えると、海は夏季でも海氷が漂っていて船が通りづらくなっていることが思いつけるかと思います。世界史選択者はロシアが不凍港を求めて南下政策を推進したこともヒントになるでしょう。根本的な原因が気温の低さであると気づけば、気温の上昇で、航海に邪魔な海氷が溶けて、北極圏の航路が利用しやすくなることも理解しやすいですね。

陸には永久凍土が広がっています。地下にはメタンガスや豊富な「資源」が埋まっていますから、これが取り出しやすくなります。永久凍土なんか気温が上がっても、どうせ地面が凍っているので関係ないように思うかもしれませんが、そうではありません。気温が上がれば、氷は徐々に壊れやすくなりますし、海氷面積が縮小すれば資源開発のための船や機械が通りやすくなります。資源開発には追い風になると考えられます。
一方で、気温が上昇すると陥没の危険性が高まります。誰もいないところならまだしも、永久凍土にも人は住んでいます。この地域の住居は、永久凍土を溶かさないために高床式になっているのが特徴ですから、陥没したら倒壊しやすそうですね。

「生態系」に関しては、気温上昇による動物の生息域の変化や植物分布の変化など様々に書けると思いますので、自分が考えやすい要素を論理展開が明確になるように書きましょう。
答案構成としては、陸と海での影響について、指定語句から上述のように考えた影響を振り分けて書けば良いでしょう。

設問(2)

本問では、世界の4つの地点の雨温図が示され、図1-2で示されている降水量が増加する地域と減少する地域を4つのうちから1つずつ答えさせられました。

まずは、雨温図から気候帯を考えましょう。
慣れてくると、雨温図を見た瞬間に気候区分を判断できるようになりますから、そこまでいかない人は雨温図の問題をたくさん解きましょう。


さて、まずはAの雨温図ですが、年中高温で年較差が小さいこと、降水量が多いことからAf気候と判断できます。不安な方は、最寒月気温が18℃以上であることと、最小雨月降水量が60mm以上であることを確認してください。

Bは、降水量の差がものすごくハッキリしているので、Awだろうと目測できます。最寒月気温が18℃以上なのも確認できますし、最小雨月降水量も明らかに0に近いので、Awで間違いないことが分かります。

Cは、寒暖の差が激しく、降水量も多いことから、日本と同じCfaだと分かるのですが、最寒月気温と、最暖月気温を確認すれば、特定できます。

Dは、典型的な(北半球の)Cs気候の雨温図です。北半球では気温が山で、降水量が谷型になります。普通は夏になると蒸発量が増えるため降水量も増えます。しかし、夏に中緯度高圧帯に覆われてしまうCs気候だけは、気温が高いのに降水量が少なくなるという、珍しい現象が起こるのが特徴です。

次に、図1-2を見て、増加する地域と現象する地域を確認します。地中海付近が降水量減少の地域となっているので、減少地域はD。
赤道付近で降水量増加の地域が広がっているため、AのAfか、BのAwの2択になります。参考書などの解説を見ると、さも簡単に特定できるように書かれていますが、正直言うとやや微妙なところです。
赤道付近のアフリカ西岸や、東南アジアのシンガポールやフィリピン付近、アマゾン川流域など、典型なAf地域には、確かに降水量の増加を示す帯がありません。
一方で、Afを取り囲むように分布するAwを見てみても、あまり降水量が増加する部分と重なっていません。例えば、アフリカのAfの周囲や、ブラジル、タイやカンボジアの辺りも該当しません。強いて言うと、アフリカ東部と、インドの西部にほんの少しだけ重なっているように見えますが、微妙な判断だと思われます。

Bの雨温図がムンバイだというところまで特定できれば当たるでしょうが、そこまで求めているのでしょうか。実際に、Aの雨温図を選んだ答案も多かったようです。

設問(3)

典型問題だと思います。降水量が減少する地域で起こりやすくなる災害を聞かれていますが、乾燥地域での災害といえば森林火災や干ばつはすぐに答えられて欲しいですね。
最近では異常気象がニュースなどでよく話題になっているように感じますが、やはりニュースや新聞などで取り上げられる社会問題などに日頃から触れて、地理的に考えることが大事ですね。

設問(4)

図1-4と図1-5で示される6カ国(地域)に国名(地域名)を当てはめる問題です。2018年の二酸化炭素排出量が多い中国とアメリカがどれを指すのかは明示されていて、インド、EU、日本、ロシアの4国(地域)がどれにあてはまるか問われていますね。

図1-4から見てみると、1900年の時点で二酸化炭素排出量が一番多いaは、当時は最も工業化が進んでいたEU(ヨーロッパ地域)が該当すると考えられます。図1-5でも石炭以外のエネルギー源が平均的に多く、とくに天然ガスや再生可能エネルギーの供給量が多いことからEUに決定できるでしょう。

また、その下のbは中国と同じように、人口増加と工業化が進んで最近になって二酸化炭素排出量が急増しているインドが当てはまります。インドは国内で石炭が豊富に産出するのでこれも決定出来ると思います。

残るはロシアと日本ですが、これは図1-5の天然ガスの供給量からみてロシアがcに該当するというのは明らかに思えますが、一応図1-4でもロシアが、ソ連崩壊後に社会主義から資本主義への移行が順調に進まず、産業活動が停滞したため、二酸化炭素排出量をかなり減少させたということからcがロシアと言え、残るdが日本となります。

設問(5)

これは、最新の教科書や資料集などで情報を集めていた生徒にとってはサービス問題。
アメリカのシェールガス革命のことや、中国の再生可能エネルギーへの投資が加速していることは、かなり有名な知識になってきました。

アメリカの地下には「シェール」という名前の岩石の種類で形成された層があり、そこに天然ガスや石油があることが分かっていました。しかし採掘技術が難しく、開発が進まなかったのですが2000年代になり技術が向上し、シェール層まで開発できるようになります。
これにより、アメリカの国土から、大量のガスや石油が採掘できるようになったことを、「シェールガス革命」と言い、世界中に大きな影響を与えました。

一方、中国は正解屈指の石炭火力依存国で、経済発展とともにエネルギー需要がぐんぐん高まっています。しかし、温暖化防止などの環境への配慮から、再生エネルギーを大量導入する政策が採られ、近年開発が進んでいます。

答案の構成としては、両国のエネルギー需要が高く、それぞれの1次エネルギー源と指定語句から考えられる内容を政策として書いていくとわかりやすいと思います。

答案比較

設問(1)

Aさん
陸上では永久凍土が融解され地盤沈下を引き起こし建物に損壊を与えうるものの、資源開発が容易となる。海では気温上昇に伴い、水温が上昇する事で生態系の変化が見られるが、新規航路の発見につながりうる。

Bさん
気温上昇で海では海氷が融解して北極海を通る航路や海底資源の開発が可能になり、陸では永久凍土の融解で地盤の陥没や温室効果ガスの放出が進む。また、陸海とも生態系を失う可能性がある。

両名の陸と海を分けて最初に明示する書き方は採点しやすいので見習いたい構成ですね。

まずAさんから見ていきましょう。
はじめに、第一印象として少し読みにくさがあると思います。原因としては一文が長く、句読点が少ないことが挙げられます。
また、地盤沈下の原因が永久凍土であるかのようにも読めるので、「…地盤沈下が起こり…」くらいで書くと良いでしょう。また、上述したように、陸上での資源開発への影響は少し弱いように感じますし、原因である永久凍土の融解と資源開発が容易になるという結果が少し離れているので分かりにくくなってしまっています。
後半部分では生態系の変化と新規航路の発見が海での影響として書かれており、前者はよくかけていると思いますが、新航路の発見につながる原因の説明や、具体的に北極圏航路を指摘するなど詳しく書いてあげたら分かりやすかったでしょう。字数が厳しいですが書き方によっては可能かと思います。

続いて、Bさんは原因と影響が上手く書けていて、全体的には読みやすい解答となっています。
細かいところではありますが、最初の「気温上昇で海では」の部分は「で」が2回続いて少し引っかかりますので、読点をつけるか、「により」などの助詞で因果関係を明確にしてあげると読みやすいかと思います。
加えて、陸上での影響で言及されている温室効果ガスの放出もメタンガスなどと具体化したほうがわかりやすいと思います。
また、最後の「陸海とも生態系を失う可能性がある。」という一文は説明が不足していて取ってつけたような感じを受けます。また、生態系は「失う」よりも「破壊する」などの動詞を接続することが多いです。海底資源の開発に伴う水質汚染などの影響を書いてあげるとわかりやすいかもしれません。

設問(3)

Aさん
干ばつによる森林火災や農作物の収量減少、水資源を巡る揉め事など。

Bさん
元々の降水量が少なく、干ばつによる被害が深刻化する。

Aさんは多くの情報を書き込めていますが、「水資源を巡る揉め事」というのは曖昧な書き方ですし、災害とは呼べないと思います。また、問題で問われているのは降水量の減少による災害ですので、間接的な影響で起きる問題を書いてしまうのは少しリスキーに感じます。

Bさんはひとつの災害についてしっかりと書こうとしていますが、「元々の降水量が少なく」という表現が分かりづらいです。
おそらく現在でも降水量が少なく、干ばつなどの災害が起こっているということを表現したかったのだろうと思いますが、問われているのは「どのような災害が起こりやすくなるか」ですので、現状の説明をする必要はありませんし、文末を「被害が深刻化する」でまとめてしまうと、問いに答えられていない答案になってしまうと思います。

設問(5)

Aさん
中国では石炭を中心にエネルギー需要が高く、太陽光発電により補おうとしている。また、合衆国でも需要が高く、シェールガスの開発により補おうとしている。

Bさん
両国とも需要が大きく、アメリカはシェールオイルの利用で石油を自給するが、環境のため再生可能エネルギーの利用も進め、中国は石炭に依存しており、自給するため太陽光発電を推進している。

またAさんから見ていきましょう。
Aさんは中国とアメリカを分けて書いていて、分かりやすい答案にはなっていると思いますが、少し言葉足らずなところが目立ちます。
前半の中国の記述はとても良いですね。細かく見るなら、何を補おうとしているのか書いてあげると丁寧だったでしょう。
後半部分は字数に余裕はあるのに短縮して書きすぎだと思います笑
例えば、いきなり「需要が高く」と書かれると一瞬なんの需要なのか考えて詰まってしまいますし、中国では石炭中心にエネルギー需要が高いことが書かれているのにアメリカでは1次エネルギー供給についてはシェールガスの開発についてしか書かれていません。これでは1次エネルギー供給の特徴について書かれているのか政策的対応について書かれているのか判別できません。

Bさんもいきなり「需要が大きい」と述べていますが、言葉が足りていませんね。その後の内容は問いに答えようとする姿勢が見えて良いのですね。強いて言うならば、環境のために再生可能エネルギーの利用を進めると書くよりは環境保護と明確に書いてあげたほうがわかりやすいと思います。また、中国に関する記述での「自給するため」という記述の前にエネルギーという言葉を入れてあげるとわかりやすいでしょう。

設問B

ガンジス川の河口付近とチェサピーク湾に関連して地形や環境問題についての問題でした。
典型問題ばかりでしたが、逆にここを落としてしまうと周りの受験生に差をつけられてしまうような問題ですので、典型問題こそ気を引き締めて分かりやすい答案を書くことを意識しましょう。

設問(1)

ガンジス川河口には三角州が広がっているのは簡単にわかると思いますし、とても有名です。問題文でガンジス川だと書かれているのを見て、「あ、知ってる!」と三角州を答えた人も多いでしょう。

チェサピーク湾はリアス海岸です。起伏の差の大きい山岳地形が、河川の下刻作用によって深く侵食されてV字谷が形成され、これが沈水してできた溺れ谷の海岸地形が「リアス海岸」となります。野灘沿岸部(志摩半島)、アメリカ北東部沿岸(チェサピーク湾など)などがよく知られています。

設問(2)

これは設問(1)で間違えてしまうと雪崩のように間違えてしまうので注意しましょう。

とはいえ、設問(1)が分かってしまえば、あとは覚えている知識を引っ張り出すだけ。
三角州が河川上流からの土砂が河口に堆積することで形成され、リアス海岸が陸地の沈降、もしくは海水面の上昇いずれかの影響により陸上の河谷が沈水して形成されることは、東大受験生であれば多くが知っていると思いますのでだいたいの答案構成はすぐ思いつくのではないでしょうか。

東大では、思考力を図る問題ばかりではなく、このような基本的な論述問題も出ます。1問1答の問題集や用語集、教科書の索引などで、「用語を見たら、即論述する」というような訓練が可能です。こうした知識の問題は日頃から勉強しておきましょう。

設問(3)

これも典型問題でしたね。リアス海岸といえば養殖が思い浮かんで欲しいですし、たとえこれまでの設問が分からなかったとしてもこういう漁業関連について聞かれる時は養殖業が問われることが多いです。例えば、2013年第2問の設問Cでは、インドネシアでエビの養殖が盛んであることをテーマにした問題が出題されています。

さて、問題ではリアス海岸(チェサピーク湾)で養殖業が発達する理由と養殖業の持続を脅かす環境問題を聞かれています。
リアス海岸の湾内では、波が静かで魚を育てるいけすが流されにくいことや、水深が十分深いことなどが挙げられます。栄養分が豊富に供給されることを挙げても良いかもしれません。

環境問題については、「閉鎖性」がキーワードです。汚染された空気や海水が滞留し続けることで、環境の悪化が助長されます。盆地や湾などで顕著です。
図1-7でボルチモアやワシントンD.C.などの大都市が示されていることもヒントにできるかもしれません。日本でも生活排水や工業用水などが湾内に流入して水質汚濁につながったことを習ったかと思います。

答案比較

設問(2)

Aさん
前者は季節風帯の下で降水が多く侵食・土砂堆積が盛んな一方、後者は沈降に伴い海進が生じて河谷が沈水した。

Bさん
ガンジス川は川床勾配が緩やかで多くの土砂が三角州として堆積しているのに対し、チェサピーク湾では河谷が沈水する事でリアス海岸となっているから。

Aさんから見ていきましょう。
降水量に着目した点は素晴らしいと思いますが、ざわざわ「季節風帯」とする必要はないので、「季節風」で良いと思います。また、「下で」も「影響で」とする方が直接的な表現になり、良いと思います。「海進が進む」はうまい表現です。文末は「から」でしめる方がベターです。

Bさんはシンプルでわかりやすい答案となっています。
しかし、残念なのは、字数オーバー。いくらわかりやすい答案でも減点対象となるでしょう。Aさんのように前者後者で表すことも可能と言えば可能です(指示語は使わない方が良いと言えば良いのですが)。
「図1-6」などと書くことで示すこともできます。

設問(3)

Aさん
周辺に大都市が多く需要が大きいため養殖漁業が発達している。海水の富栄養化により赤潮が発生する問題がある。

Bさん
海流が断続的に強くなく、水深が深い事を活かして養殖業が盛んに行われている。しかしながら、都市の近くという特性上多くの排水があり、これが水質汚染をもたらしている。

Aさんは、シンプルに書けているため、すっきりしていて良い答案だと思います。しかし、少し言葉足らずなところを補ってあげると、より良い答案になると思います。
具体的には、「需要が大きい」のは、何の需要かを明確に魚介類などと書くと良いでしょう。また、なぜ海水の富栄養化が進むのかを都市排水などの原因を書けるとよりわかりやすい答案になりますね。

Bさんの答案はやはり字数オーバーしてしまっていますので、減点は避けられないでしょう。
まず、「海流が断続的に強くなく」という表現は一見してよくわからないと感じてしまいます。おそらく波が静かであることを書きたいのでしょうが、熟語を使って迂遠に表現するより、簡潔に直接的に記述したほうが採点官も採点しやすいし、字数節約もできます。「しかしながら」の「ながら」の部分もカットできます。
また、「特性上」という表現は口語的ですので、「都市の近くに位置するため」というように表すといいと思います。
文の構成としても、「多くの排水があり、これが〜」と指示語を主語に変えて文を繋げてしまうと冗長に感じますので、「多くの排水があり、水質汚染がもたらされる。」と緩い因果関係を結んであげるとわかりやすいでしょう。


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