2024年東大英語(第3問 リスニング)入試問題の解答(答案例)・解説
目次
【2024年東京大学 英語3リスニング総括】
先ずは、こちらの表をご覧ください。
2021年度入試の合格者のうち、英語で高得点を奪取された方の大問別得点一覧(推定)です。
配点が驚きですよね。客観式問題に推定でおよそ70点近く割り当てられています。
その半分にあたる30点が配されているのが第3問ですから、リスニングの成否は合否に直結するとも言えます。
リスニングの設問総数は例年15問(1問2点と予想されています)となっており、平均的な東大受験生は18点前後をうろうろしているように思えます。
それに対して、111点合格者や105点合格者はキッチリ26点(13問)正解を叩き出していますね。
リスニング力は一旦身につけば、点数のブレが生じにくくなる特性があります。
その領域に達するまでには、敬天塾の映像授業でご紹介している訓練法を実施しても成果が出るまでに2ヶ月程度はかかりますので、今すぐ対策を始めましょう。
さて、ここで世にも珍しい、設問別の分析考察シートをご案内したいと思います。
2024リスニング分析シートいかがでしたでしょうか。難易度順に設問が並んでいるわけではないことや、
難易度が高いとされるpartでも易問は必ず存在していること、
各設問で求められているチカラが異なっていることなどをビジュアルに理解できたと思います。
ここで、2023リスニングの分析シートと見比べてみてください。
左が2023年、右が2024年の分析シートです。
難化していることが一目瞭然です。
難化の理由にはいくつかありますが、顕著なのが設問文や選択肢の中にあるキーワードが放送英文の中では尽く別の表現で言い換えられている点が特筆に値します。
なかには、1Aの英文要約のように要旨だけを選択肢に載せているケースもあります。
1Aの過去問解説でも申し上げましたが、書かれている英文からキーワードを繋ぎ合わせるだけの稚拙な方法論は近年の東大英語では通用しなくなってきています。
本文全体の趣旨を踏まえ、要するにどういうことなのか?と言い換えられるチカラが、1Aのみならず、このリスニングでも強く求められるようになってきています。
このように2024年度のリスニングは前年比で難度の高い設問の割合が増えたわけですが、東大側がバランスを図った跡もみられました。
一つは、放送英文がわりと身近な題材ばかりだったということです。
特に地理選択の人にとっては、Part Aのスエズ運河でコンテナ船が座礁し世界の物流に大きな打撃を与えたことは教科書にも載っている基礎知識ですし、Part Bの物流の問題点は2024問題として日本でも連日のように報道されていた典型論点でもあります。
もちろん、ニュースを見聞きしていたり、BBCの6minutesシリーズなど敬天塾の映像授業でもご紹介している訓練ツールで耳トレを日々実践されてきた方には馴染み深いテーマばかりでしたから、地理選択の方でなくても、結論の方向性は明瞭だったと思います。
ただ、受験生にとって馴染み深い論点だということは東大教授もご存知です。
だからこそ、設問文だけ読んで「常識力」で解こうとすると袋小路にハマるような選択肢が例年よりも激増しているのです。
テーマが明瞭な分、設問をいやらしくしているのが2024リスニングの特徴でした。
なお、Part Cにつきましては、言語学のスペシャリストである東大英語部会の教授が好きそうなお題でした。
東大過去問を深く探究されている方であれば、言語関連の問題がリスニングに限らず頻出なのはよくご存知のはずです。
英作文であれば、2010年2Aや2020年2Aあたりが有名どころでしょうか。
もう一つは、part Bが昨年に引き続き、エコーがかかったような不明瞭な音声だったのですが、これはどの教室でもみられたことですので、音源そのものを意図的に聞き取りづらくしているということです。
ただ、そことのバランスを図るべく、男性と女性の話者の会話形式にして、設問では誰の発言かを明示することで聴き取るべき箇所がわかりやすくなっているほか(5問中4問)、易問の割合もpartAよりは多くしている点、バランスを図ろうとした形跡がみられました。
設問(14)(15)で易問が連続してきていますが、(11)〜(13)で心折れてしまったとしても、最後まで諦めなかった受験生にはご褒美を与えている点は、昨年と同様でした。
リスニングの下読みの工夫については、映像授業でもいくつかの手法をご紹介しますが、ここで注意喚起したいことは、「下読み時に設問文や選択肢でチェックしたキーワードだけを拾い聴きしても6〜7問程度しか正解できない」という事実です。
東大側としては、ある程度は得点させてあげたいという配慮から、キーワード拾い聴きで取れる問題を6〜7問用意してくれているとも解釈できます。
ただ、やはり、入試問題作成部会の教授陣としては、ちゃんと本文全体を聴き取ってくれた受験生が報われるような設問構成にしたいのでしょう。
今年度は全体的に大きく表現を言い換えている問題が大半を占めている点、きちんと本文を理解しながら聴き取ることができる猛者にとっては「実力」が点数に反映されやすい良問だとも言えそうですが、その反面、フレーズ拾い聞き作戦で突っ込んだ東大受験生にとっては東大リスニング史上最難関に感じた問題セットだったかもしれません。
さて、ここで形式面について、少し触れたいと思います。
2024年度東大リスニングの概略についてざっくりご説明すると、設問総数15問と選択肢の数が5つであるという点は2023年度入試と変わりありませんでした。
問題構成は(A)(B)(C)の3つのパートに分かれ、それぞれが独立した放送内容でした。
放送英文の概略は次の通りです。
(A) 2021年にスエズ運河で起きた座礁事事故によって世界の物流に与えた負の影響
(B) ネット通販における無料お急ぎ配達の弊害の話を軸に、物流や地球環境に与える問題点について対談
(C) パプア・ニューギニアにおける言語の多様性についての講義
気になる点としては、今年度も昨年度に引き続き、いずれのパートでも補注が付されたことでしょうか。
また、「あてはまらないもの(NOT問題)」を選ぶ設問が1つに減ったことは特筆に値すると思います。
加えて、パートBの放送英文が多くの教室で不明瞭な音質だったらしく、聴き取りが非常に難しかったという声が多く寄せられました。
昨年度もパートBで同様の報告が相次いだので、東大英語部会が意図的に曇った音源を用いていることが証明されました。
訛りについては、イギリス英語や、どこの国の訛りかわからないようなアクセントの話者がいたという報告がいくつか上がってきています。
東大模試や東大対策の教材とは異なり、一語一語を丁寧に読み上げてくれる感じではなく、普通の会話のようにナチュラルな感じで発音されていたという意見が受験生から多く上がってきています。
なお、設問ごとの詳細な解説は後掲いたしますので、ぜひご参照ください。
【東大リスニングの出題形式】
【高得点合格者の工夫一例】
ここで、高得点合格者がリスニングに際して、どのような工夫をしているのか幾つか具体例を挙げます。
- 下読みは、5分〜7分かけて行っている(長い人では10分)
- 下読みをするのは、リスニング開始直前の14時35分〜14時45分の間が多い。ただし、2023年度101点合格者はまったく別の時間帯に下読みをしている。
(編集部注)101点合格者によるリスニングの攻略法徹底解説はこちら - 下読みに際して、選択肢まで読み込むかは人による。ただし、選択肢間に共通したキーワードがある場合は、丸で囲むなどして一目瞭然化している人が多い。
- リスニング開始の直前に、長い文章を読解せねばならない大問(1Bや5)を敬遠する人が多い。理由として、リスニング前に読み終わらなかった場合、リスニング終了後にさっき読んだ内容が記憶から吹っ飛んでしまう可能性があるため。それゆえに、大問別の解法戦略が重要。詳しくは映像授業と知恵の館記事にて。
- イヤホンでリスニング音声を聞くのではなく、スピーカーの上にタオルをかぶせ、少し離れた高いところから音声を流す練習を普段からやっていた。←音質の悪い試験教室に当たってしまうケースを想定して
- 過去問や模試の問題を解いて終わりではなく、しっかりと敗因分析をしている←当たり前のことのように思えて意外とできていない人が多い。
【強力な復習用ツールのご紹介】
英語は世界の様々な地域で話されています。
そのため、各地域特有のアクセントや発音が生まれます。
アメリカ英語やイギリス英語ばかりを善とする時代が終わりつつあるのです。
そうした潮流を受け、近年、TOEICやIELTSといった英語資格試験においても、世界各地の発音でリスニング問題が作られています。
東大リスニングも例外ではなく、インド訛りが登場した年もありました。
ですが、東大対策の英語教材に、こうした訛り訓練用の音源は市販ではあまりありません。
そこで、強力な復習用ツールをご紹介したいと思います。
詳細は映像授業【東大英語 リスニング】に含まれている2023過去問実況中継解説にてご案内しております。
【東大リスニング対策の諸注意5か条】
リスニング力を上げるために、多くの東大受験生が四苦八苦しています。
いきなりBBCニュースを聴いて心折れたり、過去問に挑戦するもうまくいかずリスニングの才能がないと勝手に諦めたりと、多くの東大受験生にとってリスニングは鬼門となっているのです。
そこで、独りで勉強していると気付きにくい点について、映像授業【東大英語 リスニング】に含まれている2023過去問実況中継解説で概略をご説明しておりますので、ぜひ本稿に併せてご参照ください。
【スクリプトと音源の入手方法について】
本解説記事を読むにあたっては、事前にスクリプトをご入手いただけると幸いです。
産経新聞さんが入試問題と合わせて期間限定でスクリプトを公開されています。
https://nyushi.sankei.com/honshi/24/t01-11p.pdf
東大のホームページでも入試問題が公開されますが、英語については近年非公表になっています。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_04.html
その他、6月ごろに青本や赤本の最新年度版が発売しますから、そこで入手されるか、夏の河合東大OPで例年オマケとして東大リスニングのCDとスクリプトがプレゼントされますので(今年も必ず配布されるとは言いきれませんので、念のためお問い合わせください)、そちらをご活用いただくのもアリです。
【2024東大リスニング 問題A 総論】
【2024東大リスニング 問題A 各論】
【2024東大リスニング 問題B 総論】
【2024東大リスニング 問題B 各論】
【2024東大リスニング 問題C 総論】
【2024東大リスニング 問題C 各論】
【最後に】
日本一(?)詳しく実況中継を書いたつもりですが、学びはありましたでしょうか。
私は受験生の時にリスニングでなかなか点数が取れず毎日毎晩悩んでいました。
リスニングが得意な人や先生達にアドバイスを求めても、「本質が分かっていれば自然と答えがわかる」というなんの役にも立たない助言ばかりで落ち込む毎日でした。
ですが、そこから諦めずに過去問探究や耳トレを進めるなかで、東大はなぜ設問文と選択肢をご丁寧に問題冊子に載せてくれているんだろうかと思い始めたのです。
英語資格試験の中には、設問文や選択肢をも放送で行い問題冊子には何も書かれていないこともあります。
これは、東大側からのメッセージなのではないかと思い始めたのです。
そもそも、大学が過去問を公開しているのは、受験対策のために「うまく活用してくれ」という想いが込められているからだと私は考えています。
単に解いて、何問正解した、何点だったといった情報はどうでもよく、現時点で解けない問題や時間内に解き終わらない科目をマスターするために何をすべきかを考えるヒントを過去問に求めるべきなのです。
一度出されたことのある問題は二度と出されないからやる価値はないと言う人がいますが、それは過去問の意義を捉えられていないのです。
過去問こそ、最強かつ最高のバイブルだということを強くお伝えし、本稿を終えたいと思います。
ぜひ、敬天塾の過去問解析講座で合格力を上げていってください。
皆様の東京大学合格を心からお祈り申し上げます。
【さらに深く学びたい方のために】
敬天塾では、さらに深く学びたい方、本格的に東大対策をしたい方のために、映像授業や、補足資料などをご購入いただけます。
ご興味頂いたかたは、以下のリンクからどうぞご利用下さい。
映像授業【東大英語 リスニング】
2023年過去問に対して、これでもかと噛み砕いて説明した《実況中継》の解説もございます。
↑ まずは目次と無料部分だけでもどうぞ。